東方主双録   作:紅魔館の下っ端

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投稿遅くなってしまい、申し訳ございませんでした!
今回のサブタイトル【喜牙の覚悟】。
タイトルだけはシリアスっぽいですが、ちゃんとギャグも織り交ぜるので安心を←何を安心しろと

では【喜牙の覚悟】。どうぞごゆっくり!


喜牙の覚悟

『あ?妖怪がどォしたって?』

 

「だーかーらー、最近妖怪が活発になってるって言ってんの!」

 

話を聞いていない喜牙へ、月夜見は布団の中に下半身をうずめながら声を張り上げた。

ここは月夜見の部屋。家具などは何も無く、あるのは布団のみ。

この部屋の主、月夜見と喜牙は仲が悪いようなのだが、なんだかんだで毎日顔を合わせている。

月夜見のうるさい言葉を聞いた喜牙は、ペンと紙を懐から取り出して文字を描いた。

 

『活発になるも、あいつらは毎日活発だろが。外に出した人間が一日で餌になるくらいに』

 

今更こいつは何を言ってんだ?とでも言いたげな喜牙に対し、月夜見は頬を膨らませ、

 

「いつも以上に活発化してんの!最近に入って、都市への侵入が何回あった!?」

 

『約5回程度だろ。確かに以前に比べりゃ増えたろうが、何も騒ぐほどじゃねェ』

 

騒ぐ月夜見に対し、喜牙はそこまで慌てた様子は見せない。

 

『毎日衛兵が守ってんだ。何か異変がありゃ即座に対応できる。数が多いならこっちも人海戦術使えるし、強けりゃ俺が出る』

 

すぐそばにあるお茶を飲み、喜牙はダラダラと過ごす。

月夜見は『んー』と唸りながら首を捻る。どうやら本当に安全か心配なようだ。

 

「あ、そう言えば、永琳の作ってた『アレ』はどうなった?」

 

『あれ?……あァ、「ロケット」の事か?』

 

それは月夜見の『地球から出ればいいじゃん!』という言葉から生まれた、宇宙へ飛び出すための物体。

作り終えるために20日ほどを費やした、正に手間の結晶。

 

『あれならもう完成してるぜ?確か10機ほど完成したはず』

 

「1機に乗れる人数は?」

 

『約100人だそうだ。とりあえず、巨大すぎるから地下シェルターに保存しているみたいだがな』

 

それを聞いた月夜見は暫し考える仕草を見せた。因みに隣では喜牙が煎餅をバリバリ食べている。

数秒の思考。その後、月夜見は顔を上げて口を開いた。

 

「ねえ喜牙。都市中の人間を集めるのにどれくらいかかる」

 

『都市の人間全員だ?……2日は必要だな』

 

ふむ、と月夜見は顎に手をやり、何かを考え出す。

 

「……よし、喜牙。二日後に決行よ」

 

『……何が』

 

月夜見は布団に下半身をうずめたまま、

 

「他の星に移住計画!」

 

そう叫んだ。

それを聞いた喜牙は無表情のまま固まる。いや、その口からは煎餅が零れ落ちる。

 

「あ、ちょっと汚ない!まずその口に含まれた硬いものを噛み砕け!」

 

ガリガリ、と喜牙の口にある煎餅が噛み砕かれていく。

その間に喜牙は紙にスラスラと文字を書いて、それを月夜見へ見せた。

 

『流石にいきなりすぎんぞオイ!別にそんな急ぐ必要はねェだろ!心配せずとも都市は大丈夫だっての!!』

 

「いいやあるわ!いつ強力な妖怪が来たらどうするの!?」

 

『そんなのが来たら俺が排除する!!』

 

いつもの喧嘩が始まる。

 

「そんな悠長な事で大丈夫なの!?今日だってねえ、なんか変な奴を都市の外に見たのよ!」

 

『変なやつ?』

 

喜牙の怪訝とした文字。それを見た月夜見は説明を始める。

 

「なんか人型で髪が……灰色?それでいて灰色のコートを着た……」

 

そこで月夜見は気が付いた。いつも無表情な喜牙の表情が、少し険しくなっている事に。

 

「えーと、どうしたの喜牙?」

 

『……オイ、そいつ。この都市の近くにいたのか?』

 

明らかにいつもと様子の違う喜牙の問いかけに、月夜見は少しゆっくりと頷いた。

 

「私の『遠くを視る程度の能力』で見た時には、この都市の周辺を歩いて……」

 

そこまで聞いた喜牙は少しうつむき、その後、ゆっくりと立ち上がった。

 

『……よし、準備する』

 

「え?何を?」

 

『地球移住だ』

 

そう書かれた紙を月夜見の近くに放り、背を向けて歩き出す。

 

「え、ちょっ、なんでそんないきなり」

 

『いきなり言ってきたのはお前だろうが。とりあえず永琳様には俺から言っとこう』

 

喜牙から流れるピリピリした空気。それはまるで、凶暴な何かを警戒しているかのようだった。

部屋の扉へ手をかけ、喜牙がその部屋を出ようと……。

 

「って待てこら!勝手に人様の煎餅とお茶飲み干したな!?」

 

『知ってるか?この世は早いもの勝ち弱肉強食だ、悔しけりゃ先に食っとけバカ』

 

「こ、んのヤロォォォォォォ!!!」

 

月夜見の叫びは虚しく、喜牙に扉を閉められた。

中から微かに負け犬の遠吠えが聞こえてくるが、喜牙はそれを気に止めずにポケットの中を漁りながら歩いた。

 

(……さて)

 

隠し持った煎餅を片手に、喜牙は思考を働かせる。

 

(どうすっかな……)

 

そう思いながらも、その足は永琳の部屋へ向かっていた。

だが、その目は『地球を出る』事について、あまり考えていないように見える。いや、それ以外の『何か』を危惧しているようだ。

するとそこへ、

 

「あれ、喜牙さん、こんな所で何をしているんですか?」

 

女性の声が飛んで来た。

聞こえてきた方向へ視線を向けると、そこには一人の女性が立っていた。

 

腰ほどもある長さの金髪。金色の瞳で、服装は白い長袖。襟の広いシャツのようなものの上に、左肩側だけ肩紐のある、青いサロペットスカートのような物を着ている。

赤の依姫とは対象的な服を着た、その名も『綿月豊姫

 

「そんな何か考えているような雰囲気のオーラを出して、何か悩み事ですか?」

 

『……オーラで無表情の俺の事が分かるのはお前くらいだな』

 

「あ、それ褒め言葉ですか?」

 

全体的にのほほんとした女性、豊姫は頭をかきながらそう言った。

因みにこの豊姫、粒子などの知識がズバ抜けて長けており、その知識だけなら永琳に引けを取らないレベルだ。最近は、妖怪を粒子状に分解できないか?とあれこれ模索しているらしい。

恐らく、知識の面なら都市内において、永琳に1番近付けているだろう。

 

その豊姫は腕を下ろすと、改めて口を開いた。

 

「それで、どうしたんですか?喜牙さん。私にできる事なら何でも、とまでは言いませんがやりますよ?」

 

『いや……そうだな、お前なら信用できる、か』

 

紙の表面に、ペンでサラサラと文字を書くと、それを豊姫の目に写るように見せた。

 

『豊姫。永琳様に「二日後、地球移住計画を始める」と伝えておいてくれ』

 

「はーい。まあそれくらいなら」

 

『それと』

 

喜牙は付け加え、更に文字を書いて、その紙を豊姫に見せた。

 

「ふむふむ……って、え?」

 

その内容を見た豊姫の目が丸くなった。驚いたような反応を見せ、豊姫は口を開く。

 

「喜牙さん……これは……」

 

見開いた目で顔を見上げられる喜牙は、こんな反応を返した。

 

『これに関しちゃ永琳様も依姫も、ニートも、他の兵士共もアテに出来ねェ』

 

文字を綴る。

 

『実力があり、尚且つ命令を完璧にこなせそうなのはお前くらいだ。できるか?』

 

少しの沈黙があった。

やがて豊姫はゆっくりと頷き、喜牙の渡したその紙を懐にしまう。

 

『……よし、いいか。永琳様や依姫には言うな。言ったりしたら絶対に邪魔してくるに決まってる。あの二人、正義感がつえェからな』

 

「……はい」

 

豊姫は返事をした後、早足で永琳の居る部屋へ足を進めた。

その背中を見届けた後、喜牙は踵を返して道を戻った。別に月夜見をからかいに戻る訳では無く、

 

(……つっまんね)

 

そう思いながら自室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「はあ?二日後?」

 

何枚もの書類へ凄まじい速度で目を通していく永琳の動きが止まる。そして信じられないようなものを見る目で、自分の部下である豊姫の持つ紙を見た。

 

「一体どこの誰が……と言いたい所だけど、この文字は見るからに喜牙ね」

 

イスの背もたれに体を預けながら、いかにも気だるそうにため息を吐いた。

 

「そして、喜牙の一存では動かせない。大方、話を切り出したのが月夜見様で乗ったのが喜牙……って所みたいね」

 

豊姫の手から紙を受け取って、少し苦笑いしながら呟く。

 

「あの二人は本当に仲が悪いのかしらね?喧嘩するほど仲が良い、って事かしら」

 

その紙を机の端に置いて、複数の書類の内容を確認しながら

 

「ま、市民全員を丸ごと送る準備は出来てるし、何より……」

 

永琳は目を細くしてその書類を睨んだ。

内容は『妖怪の襲撃による被害知らせ』。

 

「建物3件、軽傷者3人、重傷者8人。最近になって妖怪達が活発化している……このまま居座り続ければ、いずれ死者も出る可能性もあるわね」

 

顎に手を当て、永琳は暫く考えた。

このまま先延ばしにして居座り続けるリスクと、先にこの星を離れて別の星に移住するリスク、両方を吟味しているのだろう。

 

「……出来れば実際に何人か星に送り込んで情報が欲しかったけど、この際仕方ないか」

 

手に持った紙に落としていた視線を豊姫へ戻し、

 

「じゃあ書類を作成するわ。それを依姫と一緒に他の皆に見せてきてくれる?」

 

「はーい。あ、でも依姫は今外で妖怪を狩ってるので時間かかるかもですよ?」

 

「そう?なら喜牙でも使いなさい。私からの命令って言えば協力してくれる筈よ」

 

「わっかりましたー!」

 

了解のポーズを取り、豊姫は小走りでその部屋を後にした。

一人になった永琳は、書類に目を落としながらある事を考えていた。

 

(あんな事を言ったけど……普段の喜牙なら『何とかなる』で済ませる筈。わざわざ月夜見様の意見を取り入れるか……?)

 

普段の喜牙の思考と、今回の行動を結び付けて考える。

どうも合わない、あの喜牙の行動とは。

 

(……いや、深く考える必要は無い。私は私の事を)

 

そう考えを改めると、永琳はその手を早めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歯車は回る。

ゆっくりと、しかし確かに。

その行方を知るのは。

『力』を失った少年にしか分からない。




まだギャグを続けるネタはあったのですが、この小説はあくまで『東方』なので幻想郷まではサクサクいかないと、と思い急展開にしました。

それでは次回、【進行・妖怪の宴】お楽しみに!!
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