今回のサブタイトル『進行・妖怪の宴』です。
どういう話の流れになるか、察しのいい方は分かると思います。
それでは、『妖怪の宴』 どうぞ!!
都市の中心部。兵士達が集うその巨大な建物の屋根が左右に割れる。
地響きにも似た轟音と共に開かれた屋根の穴からは、巨大な、尖端の丸まった縦長の物体が姿を現した。
全体的な大きさはどれくらいだろうか。地下から這い出てくるその巨体は、普通の人間には計り知れない。
その圧巻の光景を見て、四人の人間が口を紡ぐ。
「やっぱでかいですね、これ」
と呟いたのは『綿月依姫』。
「そうね。相当な手間だったわ」
と呟いたのは、このロケットを作った『八意永琳』。
「そうですねー。ま、私は一切携わっていませんが」
と気楽そうに語るのは『綿月豊姫』。
『あんのバカが何も言わなけりゃ、こんな物が生まれる事も無かったろうなァ……』
と文字を書き殴るのは『喜牙』。
その目に写るロケットの表面の一部が、ゆっくりと開かれていく。
そこからは内部へ移動する事ができ、そのロケットの内部は快適な作りへとなっている。
並ぶ人々が順番にロケットへ搭乗していく。
因みに、この計画において人々はあまり反論しなかった。実際に妖怪の奇襲を受けているからだろうか、むしろ離れたがっている人の方が多い。
今日に限っては、町の警備をしていた兵士達もこの場に集結している。
その兵士達を上から見ながら、永琳は小さく口を開いた。
「……こんなに兵力をここに集結させて大丈夫なのかしら?」
他の守りが薄くなっている事に不安を抱いているようだが、横から依姫が口を挟む。
「大丈夫ですよ、永琳様。この作業だって数時間で終わりですし、もし来たとしても数匹でしょう」
『ま、数匹程度なら俺達が片付けりゃ済むし、大丈夫大丈夫』
喜牙は依姫の言葉に同意する文字を永琳に見せた。
その文字を見た永琳は軽く一息ついて、再度視線をロケットに向けた。
そこには既に発射体制に入ったロケットがあった。
周りの兵士達が残った人々に離れるように指示しているのが見える。どうやら一機目にはもう人の乗る余裕が無くなり、空へ飛び立とうとしているようだ。
残った人々が大分離れてから、そのロケットの左右に取り付けられた翼の噴射口から、凄まじい音が鳴り響いた。
ゴオオォォォ、という音と共に、噴射口近くの空間が歪む。
そして数秒後、その部位から炎が勢い良く噴出した。
反作用により、巨大なロケットは炎と共に空へ舞い上がった。
大気など簡単に食い破り、重力に逆らって雲を突っ切る。
そのまま大気圏に突入したロケットは、そこで異変を見せた。
左右の両翼は切り離され、ロケット下部の噴射口から更なる炎が姿を現した。
切り離された翼は、当然のように地上へ姿を消していく。
そして地上に残った永琳達の目から、そのロケットは完全に姿を消した。
ロケットの様子を見ていた永琳達は一安心した。もし失敗でもしたら……と。
「とりあえずは大丈夫そうね」
「まあ何回か実験もしましたし、大丈夫でしょう」
永琳と依姫はそう言いながらも、まだ安心し切ってないのか目が細い。
ふと、喜牙は何かを思い出したかのように辺りをきょろきょろと見渡し始めた。
『ん?あのクソニートはどこだ?』
喜牙の問いに、豊姫が答える。
「あの人なら部屋で寝ていますよ」
『マジかあいつ、こんな時にまで布団離れしねェのかよ』
喜牙がそう書かれた紙を片手で握り潰した。
その時だった。
直後、離れた場所から音が轟いた。
その音は四方八方から鳴り響き、大気を揺るがす。
まずその音に一早く反応を示したのは永琳だった。懐から取り出した何らかの薬を口から飲み込み、常人離れした脚力で一気に屋根まで飛び上がる。
次に続くは依姫。刀を鞘から抜き出すと、そのまま床に突き刺した。すると、彼女を中心に風が集まり、小規模な竜巻が生み出された。
喜牙、依姫、豊姫の3人はその竜巻に乗り、永琳のいる屋根まで一気に浮遊する。
合流した四人は、それぞれ音の聞こえた四方向を睨み付けるように観察した。
「あれは……妖怪の軍団!?」
と驚きの声を上げる依姫に、少し冷や汗を垂らしながら豊姫も言葉を発した。
「あはは〜……こっちも大群よ……」
『こりゃ全方向変わんねェかもな、こっちも大量だ』
喜牙は、そう書かれた紙を四人に見えるように持つ。
3人の反応を見た永琳は唇を噛み締め、忌々しそうに遠くを見る。
「数が多すぎるわ……なんだってこんな狙ったような日に!」
『……偶然にしちゃおかしいな。四方向から同時に襲撃なんざ、計画していたようにしか思えねェ』
そう書かれた喜牙の文字を見た依姫は、抜き身となった長刀を肩に掛けて疑問の言葉を放った。
「つまり、『奴ら妖怪は都市周辺への注意が逸れる今日を狙った』という訳ですか?」
『そうじゃねェとこんなタイミングで攻めてくるかよ』
依姫の言葉に無表情で答える喜牙。
そこへ、地上にいる人間達の動きを観察しながら豊姫が口を開いた。
「さて、どうします?兵士達も異変に気付いて武器を取り出してるけど、数や戦力では彼方が圧倒的に優ってますよ?」
そもそも、この都市の人間全てが妖怪一匹一匹と張り合える訳では無い。当然、全く戦えない人間だっているのだ。対して、彼方は全員が戦闘要員。
もし同じ力同士がぶつかり合ったら、果たして勝敗は何で決まるか……。
それは恐らく数だ。
だがそれは軽く負けている。だとしたら、永琳達が勝つ方法は一つ。
「……四方向に別れて戦う?」
豊姫はそう呟いた。
そう、数や単純な戦力で負けているのなら、地形や戦術等で敵を撹乱するのが最も正解だろう。
だが、喜牙は首を横に振った。
『いや違う。俺らの目的は「市民を守る」であり、殲滅じゃねェ。つーかあの数をどうこう出来るとも思えねェしな』
あまりの数差を見て流石に不利だと思ったのか、喜牙はそう答えた。
その後、自分達のいる周囲の地形をグルリと見渡し、一言。
『ここの近くまで侵入させての防衛戦、背水の陣だ』
「なッ……!?」
そんな提案をした喜牙に対し、依姫が驚きの声を漏らす。
そんな依姫の代わりに、その横にいた永琳が喜牙へ発言した。
「ちょっと!あの数をどうこう出来るとは思えない、って自分で言ったわよね!?そのどうこう出来ない数を一箇所に集わせるとでも言うの!?」
『もし離れた場所に散らばり、各々が交戦したとする。確かに安全なのはそれだが、広い場所で戦えば穴が空く』
怒鳴る永琳へ、喜牙はあくまで冷静に文字を綴っていく。
『その穴から妖怪が侵入してしまい、ここに辿り着いたら?守る人間が居なくて残った人々は餌だ』
そう書きながら、喜牙は逆の手で別のものを描いていた。そこに描かれているのは、この場所周辺の見取り図。
そこに描かれたロケットの発車場所を中心とし、計画を練る。
『俺、永琳様、依姫、豊姫の四人を四方それぞれの位置に置き、俺達の隙間を埋めるように兵を配置する』
慣れているかのようにサラサラと文字を書いていく喜牙へ、依姫は小さく訪ねた。
「……勝ち目は?」
『そもそも勝ち目なんざ作る必要はねェ、俺達はロケットで逃げりゃいいんだ。なら持久戦をして、準備が出来たら即トンズラだな』
そうこうしてる間に、2機目のロケットが地下から這い出てくる音が響き渡る。同時に妖怪達の進行も進む。
喜牙は急いで文字を書き、それを三人に見せた。
『迷ってる暇ァねェ、今すぐ指示出さねェと間に合わねェぞ』
それを見た永琳はほんの数秒だけ悩み、すぐに懐から無線機を取り出してスイッチを押す。
「全隊、この場を中心として部隊を円状に展開。持久戦のため、弾の消費は出来るだけ抑えること」
言うだけ言うと、その無線機のスイッチを躊躇なく切り替え、永琳はため息を吐いた。
「はいはい、あんたの無茶を聞いたげるわよ」
『どうも有難うございます、永琳様。そして……有難うございました』
喜牙の持つ紙の最後の文字を見た永琳と依姫は顔を歪めた。
直後、二人の口をハンカチのような布切れが覆った。
「「ッッ!!??」」
二人は驚いたような表情になるが、それは一瞬だけで、数秒経つと同時に永琳と依姫の意識は刈り取られる。
豊姫は落ちる二人を肩に担ぎ、手に持った布切れを地面に落とした。
喜牙が文字を綴る。
『しまったな、依姫に何も言ってねェわ』
「大丈夫ですよ。貴方がうまく生き残ってロケットに避難すれば、また会えるのですし」
『ま、それはそれで怖い訳だが。とりあえず一年ほど雑用やらされるんだろうな……』
「じゃ、私達は作戦通りに持久戦しときますよ」
そう言うと同時に、豊姫は喜牙へ背を向けて歩き出した。
『くかっ、頼んだぜ?まあ出番なんて作らせないがな』
そう書かれた紙を豊姫に投げ渡し、喜牙は踵を返した。
喜牙の振り向いたその方向は、四方向から攻めてきている妖怪の中で、最も進軍が進んでいる妖怪達がいる方向。
僅かに腰を落とし、身構える。
普段開かないその口が、ゆっくりと左右へ裂けていく。
閉じられていた十本の指が広がる。
眉が上がっていき、小さくなる瞳孔に獰猛な光が宿る。
【さァさァ、愉快に苦しく時間稼ぎの人形として行かせて貰いますかァ!!】
声が出せない喜牙のため、永琳が作り出した『自動音声機械』から発せられる機械的な音と共に、喜牙が大空へ飛び出した。
目標は無数の妖怪達ー。
妖怪の宴ってタイトルだから妖怪が沢山来ると思いました?残念、それは錯覚だ←
妖怪との争いは次回です!
次回、【勝率0%!幸運を引攫う細波】
お楽しみに!!