次の投稿はいつになるのかな……。
まあそれは置いといて、【勝率0%!幸運を引攫う細波】
タイトルからは内容があまり分からないと思います。
それでは、勝率0%!幸運を引攫う細波 どうぞ!
その光景はまるで『津波』。
人間の数など軽く越す程の量の黒い波が、人の作った物を飲み込みながら中心地へ突き進んでいく。
本能で『人間は中心にいる。』と分かっているのか、それともただ気分で向かっているのか。それは分からない。だが、このまま行けば間違いなく殺されるだろう。
人間には機械という武器もあるが、準備が無くてはただのガラクタ。
もう人間の底は見えている、と言わんばかりの進行を進める妖怪達。もはや止まる事は無い。
だが、そこへ一つの隕石が追突した。
先頭近くにいた妖怪の背中へピンポイントに墜落した隕石は、凄まじい暴音と共に妖怪を踏み潰した。
そこを中心に衝撃が拡散される。
近くにいた妖怪は軽々と吹き飛ばされていくが、殆どの妖怪はバランスを取り戻して上手く着地していく。
全ての妖怪は『未知の破壊』に対して威嚇行動を起こした。いや、厳密に言えば、『その隕石の上に乗る男に』。
【よォお前ら。少し手加減を頼むぜ?流石にこの量はキツイし、他の場所もあるんでな】
機械的な音声を出す男、喜牙は首を鳴らしながら言った。
対する妖怪達は牙を剥き出しにし、異種族を真っ向から叩き潰す為に突撃する。
だが喜牙は慌てず、足下に転がる岩を妖怪目掛けて蹴り飛ばした。
その細足から放たれた岩は、ただの人間が発生させられる物理現象を遥かに超えた速度で、その妖怪へ襲いかかる。
グチャリ、と柔らかい物が潰れる音と共に、妖怪の首から上が消し飛んだ。
緑色の血液が飛び散った岩は止まらず、今度は大砲として妖怪の軍隊へ突き進む。だがそこは妖怪、いくら高速で飛んでいる岩とはいえ、妖怪の身体能力の前には少し足りない。
だからと、喜牙は先手を打っていた。
凝縮された運動エネルギーの塊を上空から叩き落とす、という形の。
回避行動を取ろうとしていた妖怪達は地面に、勢い良く叩き潰された。
そこから急いで立ち上がろうとするが、遅い。
運動エネルギーに巻き込まれた妖怪は一瞬で岩に潰された。
【一手先を読む。動きを誘導するのは戦いの基本って聞いたこと……ねェか、お前らは】
喜牙は構えもせず、ただバカにしたようなトーンの機械音が鳴る。
流石に『怒り』という感情はあるのか、妖怪達は怒ったかのように一斉に襲いかかってきた。
だが考えてほしい。一人の人間を集中的に襲う、というのは、違う意味で『散らばっていたターゲットが一箇所に集まる。』という事なのだ。
そして喜牙の、先程の言葉。
『動きを誘導するのは戦いの基本』
喜牙の周囲に妖怪達が集まった瞬間、周囲の地面が、まるで火山の噴火のように爆発した。そして中からは巨大な火柱が勢い良く吹き出した。
一気に焼かれ、その場に沈む妖怪達。
【……さて、次か】
倒れる妖怪には目もくれず、すぐさま上空へと飛び上がると、周囲の状況を見る。
(ふむ……さて、どうするか)
進行を進める妖怪達を上空から傍観しながら、喜牙は次にどこを襲うか検討していく。
そうして得られた結論。
間に合わない。
まず一つ一つの位置が離れており、移動に時間が必要なため。
そして次に、妖怪の数が多すぎて殲滅に時間がかかるため。
どう足掻こうと、いずれ必ず到達される。
【チッ、こっちだって無制限に能力を酷使できる訳じゃねェのによォ……】
喜牙の能力には制限があった。フルに使用できるのは、約一時間程度。
彼の能力は『その場にあるエネルギーを簡単に変換する』ではなく、感じ取ったエネルギーを解析し、世界中に満ちたエネルギーの一部と交換する。といったものだ。
正確には『解析できたエネルギーと知っているエネルギーを交換する』という能力。
制限時間のある理由は簡単で、『解析する際の脳への負荷』が原因である。
解析する際、本人の脳がそのエネルギーの情報を高速で処理していく。だが、あまりに多くの情報を一瞬で処理していくため、長時間の連続解析は無理なのだ。
【……ん、2機目が発射したか】
ようやく2機目が飛び上がったようで、空へ突っ切る巨大な物質が遠くに見える。
だが喜牙は安心しない。むしろ……
【まだ2機目かよオイ……。ほとんどの兵士共が防衛に当たってるせいで、市民の誘導が上手くできてねェのか?】
そう呟くと同時に地面へ降り立ち、喜牙は地面を見ながら更に呟いた。
【こりゃ回ってる暇ァねェわ】
次の瞬間、喜牙が地面を思い切り踏み潰した。
辺りの地面に一瞬で亀裂が入り、地面が盛り上がる。だが、それだけでは終わらなかった。
盛り上がった土と岩の塊は、まるでバネのように空高くまで跳ね上がる。
放物線を描くように移動し、それらはある場所へと降り注いだ。
そう、妖怪の軍団がいる三方向へ。
【さァて、何匹の妖怪の注意を引きつけられるかな……】
そう呟いた瞬間、またも爆音が鳴り響く。三機目のロケットが放たれた音だ。
【おーおー、妙に早ェな。まだニ機目が出発してから数分しか経ってねェぞ】
と、のんびりした口調で空を見上げる喜牙の耳へ、何か奇妙な音が聞こえてきた。
音が聞こえてきた方向へ視線を向けると、そこには黒い壁……いや、大量の妖怪が佇んでいた。
喜牙を中心とした三方向に妖怪がビッシリと敷き詰められており、もはや逃げ場となる道は無い。
【おいおい……流石に全部は生きて帰れる自信ねェぞ?】
冷や汗を流しながら苦笑いをする喜牙だったが、その目に余裕は無い。
どうするか考える喜牙だったが、妖怪という存在は容赦無く、攻撃を加えに地面を蹴った。
何百といる妖怪達の中から三匹の妖怪が飛び出し、鋭い爪を立てて襲いかかる。
人間の腕ほどの長さの爪が喜牙の心臓部めがけて突きつけられる。
だが、その妖怪の爪が喜牙の皮膚へ触れようとした
直後
三匹の爪に亀裂が入り、粉々に砕け散る。
同時に妖怪の肉体がくの字に折り曲がり、コンクリートの壁へ勢い良く叩きつけられた。
【運動エネルギーを操作して攻撃を無力化する……つか、説明されても分かる脳はあるか?】
当然、この方法は脳への負荷があるため乱用は不可能。いま喜牙へ求められるのは、自分を守る力ではなく、周囲の敵全てを纏めて殺せるほどの破壊力と範囲を持つ攻撃。
だが当たり前のように、そんな破壊力を持つ力を使うとなると、それ相応の脳へのダメージもある。
先ほどの喜牙の言葉を聞いた妖怪達は、少し後ずさって膠着した。以外と知能はあるらしい。
だが、その様子を見た喜牙は笑みを浮かべた。
【ほう、俺の言葉が分かるのか?こりゃバカにしすぎたか……でもよ】
喜牙の足が前に動く。
【つまり、お前ら妖怪が人間を襲うのは『ちゃんと考えた上で』襲ってる……そういう事か?本能ではなく、知能を持った上で】
暫しの静寂が訪れた。
その後、一匹の黒い皮膚を持った妖怪がゆっくりと口を開く。
『当然であろう。我々のような高貴なる種族である妖怪が、人間ごときに備わっているものが無いないとでも?』
妖怪の口から、平坦な言葉が漏れてくる。
『貴様は強い。恐らく『能力』を持っているのであろう?だから貴様は離れてもらった、人間共がいる所から』
喜牙は少し眉を寄せた。だが数秒後、ゆっくりと目を見開いた。
【テメェ……】
『フン、もとより此方も楽に喰えるとは思ってなかったわい。だから我らは手を打っといた訳じゃ』
黒い皮膚の妖怪の言葉が終わった直後、上空から空気を叩く音が聞こえてきた。
見上げてみると、そこには赤い羽で空を飛んでいる鳥の妖怪が目にうつった。
それを見る喜牙へ、黒い妖怪は得意気に語る。
『空から潰してくれる。そして当然、貴様は行かせない。ここで殺すぞい』
喜牙を囲む妖怪達は一斉に臨戦態勢へ入った。
対して、そんな絶対絶命な状況にいる喜牙の表情には、少しの余裕が存在している。
その表情を見た黒い妖怪は首を傾げて、口を開く。
『貴様、なんだその余裕は』
そこまで妖怪が言葉を紡いだ瞬間、複数の爆音が四方八方から鳴り響いた。
全ての妖怪達は何事かとキョロキョロと辺りを見渡し、そしてその全ての視線は一箇所に集まった。
そう
空を飛ぶ、約六機のロケットに。
『なっ……!?』
驚きの声を上げる黒い妖怪に、嘲るような声を出しながら喜牙が答える。
【クカカッ!なァ妖怪クゥン、お前は一気にロケットが飛び立つ事を予想していなかったのかなァ?】
喜牙の言葉に黒い妖怪は振り向く。その表情は怒り。
そんな妖怪を前に、喜牙は余裕の表情のまま言葉を紡ぐ。
【さァて、残るはたった一機。その一機は防衛状態にある兵士達が乗るロケットだから飛び立てなかったが、全てが避難した今、それもあともう少しで飛び立つ】
喜牙はそのまま戦闘態勢に入り、妖怪へと戦いの意思を見せる。
【さて、こっちはお前らの足止めをすりゃァ勝利。さて、間に合うか……】
そこまで言った喜牙の脳内に、一人の人間の姿が思い浮かんだ。
月夜見。
(そォいやあいつ……部屋にいるんだっけか!?待て!あいつ自分で言ってたよな、自分は他の兵士に知られていないって!!)
恐らく、月夜見は部屋でゴロゴロしている頃だろう。
退避中の兵士は『市民が逃げた』と解釈して避難しているはず。豊姫だってそう解釈している筈だ。
つまり、『月夜見は取り残されている』。更に『ロケットはもう一機しかない』。
つまり、今を逃せば月夜見だけ逃げれない。
『おや?急に表情が硬くなったの』
喜牙の異変に気付いた妖怪は、再度首を傾げながら尋ねる。
『まあ良い、ならば貴様だけでも殺すとしようか』
黒い妖怪が片手を上げた。
それを合図に、何百の妖怪が喜牙めがけて一斉に襲いかかる。
黒い波が青い空を塗り潰す。もはや逃げ場どころか、視界すらも無い。
まるで自分の視界が、黒い円型のカプセルに覆われているかのような光景。
そんな妖怪達に対し、喜牙は
【邪魔くせェ!!!!】
腕を横薙ぎに一振りした。
瞬間、辺りの空気は暴風と化し、暴風は竜巻となって波の一角へ突っ込んだ。
闇は竜巻により引き剥がされ、邪魔な妖怪は渦に飲まれながら吹き飛ばされていく。
黒い背景に出来た一つの亀裂。そこへ喜牙は猛スピードで走った。
他の妖怪がその穴を防ごうと動くが、喜牙の起こす暴風によって意味なく吹き飛ばされる。
黒い亀裂の修復も許さず、喜牙は開けた穴から無理やりに脱出を成功した。
黒い妖怪の声が聞こえてくるが、喜牙は振り向かない。
時間が無い。
「うーん、うるさいなぁ、外」
外で何が起こっているのか分からない月夜見は、布団の中に下半身をうずめながら呟いた。
「そういえば今日だったっけ、移住計画。どこの星なんだろ?その辺りは永琳に一任してるから地味に楽しみね」
そう呟き、手元のみかんを手の中で弄びながら
「まだかなー、永琳が迎えに来てくれる筈だし、寝とこうかな」
みかんを枕元に置くと、月夜見は全身を布団で覆って枕に頭をうずめる。
「ふー、やっぱ落ち着くわー」
息を吐きながら幸せそうな表情で目を瞑る。
「あいつ私をニートってバカにしてたけど、ニートのどこが悪いのよ。こんなに有意義に過ごせるのなら、むしろ誰よりも楽しんでいるといっても過言では……」
月夜見が喜牙の事を愚痴り始めた。その瞬間。
ズガァァァァンッ!!!
という、凄まじい轟音が部屋に響き渡った。
「ふへ!?な、なに!?」
驚いて文字通り跳ね起きる月夜見。その目には、とある人間が写った。
外部から無理やり破壊され、空洞と化した屋根の一部に立つ男が。
その人物を見た月夜見は両目をパチクリとさせて、思わず呟いた。
「喜牙……?どしたの、ドアはそこじゃなあぁ!?」
予想外の所から来た喜牙へ質問をしようとした月夜見だったが、喜牙の予想外の行動に、月夜見の声が裏返った。
そう、自身の体をお姫様だっこする喜牙を前に。
「ええ!?ちょっ、いきなりなに!?」
僅かに頬を赤らめる月夜見が喜牙へ抗議する。だが、喜牙に下ろす気配は見られない。
【いいから黙って掴まってろ月夜見!!ほら得意だろ!いつも布団にしがみ付いてるしよォ!!!】
「誰が布団に掴まってる……って、あれ?喜牙声が……!?」
【機械音だ!いいから掴まっとけ!!】
そして月夜見を抱えたまま、喜牙は空高く飛び上がった。
「ちょっ?なななな何!?」
月夜見の、絶叫というよりはパニックに近い声が空に響く。
その声を無視し、どんな建物より高く飛び上がった喜牙は、空中で僅かに態勢を整え直すと、斜め下方向へ超スピードで急降下した。
「ちょ、ああぁぁぁぁぁ!?」
パニックになり声を響かせる月夜見。
その目には喜牙の顔が写っている。だが、喜牙の目には月夜見は一切写っていない。
どこを見ているのか、月夜見が興味本意で肩越しに背を見た。
喜牙の視線の先。そこには巨大な鉄の塊……いや、これがロケットと言われる機械。
そしてその近くには、急いでロケット内部へと避難しようとしている少数の兵士がいた。
大半は中に避難し終えたのか、それ以上にいる様子が無い。
と、月夜見が観察している所に、その思考を遮るような声が響いた。
「喜牙さん!……に、月夜見様!?」
地上から喜ぶような、驚いたような声を発する女性がいた。
その人間を見た喜牙は安心したように少し息を吐き出し、地面に降り立つ。
【よォ豊姫、避難は終わったか?】
豊姫。
そう呼ばれる女性は、喜牙のセリフを聞いた瞬間に首を縦に振る。
「はい、兵士は全て退避完了しました!後は月夜見様と喜牙さんが乗れば、いつでも発射できます!!」
「え、いや、あのさ。少し説明をいい?」
すぐに退避するように促す豊姫と、まだ何が起こったのか分かっていない月夜見。
喜牙は二人を見て、ホッと一息ついた。恐らく、家に帰ってきた時のような安心感があるのだろう。
【ハイハイ、とりあえず説明は後だ。まずは中に……】
緊張感が僅かに解けた喜牙は、二人の背中を押しながらそう言った。
が、
ズンッッッ!!!と。
希望を一瞬で抉る一撃が放たれる。
【ッ!!??】
喜牙の腹部に鋭い痛みが走った。
着ている服の中心が、真っ赤に侵食されていく。
『……安心してしまったかの?』
肩越しで全貌は掴めないが、黒い皮膚の生物がすぐ後ろにいるようだ。
喜牙の腹部からは、真っ赤な鮮血に混じるように黒い腕が飛び出している。
「「え?」」
それはもう反射的な行動だったのだろう。喜牙は豊姫と月夜見、二人の首元を掴み、ロケットの搭乗口まで強引に投げ飛ばした。
入り口近くにいた兵士の一人が二人を両手で受け止める。
【行け!!】
口から血を出しながらも、機械の声でその兵士へと叫ぶ。
【その入り口を閉めて逃げろ!!】
兵士は躊躇するが、その言葉を聞いた豊姫は跳ね上がるように立ち上がった。
「喜牙さんダメです!こっちに!!」
豊姫はそう叫びながら手を伸ばそうとする。だが、喜牙の背後の光景を見て、豊姫の動きは完全に止まった。
その光景を見た月夜見は、ようやく事態を飲み込んだようで、目を見開いている。
【いやァ、そっちに行きたいのは本心なんだがよ……】
喜牙の背後。
そこには黒い壁が築かれていた。
【俺がそっち乗ったら、その瞬間にロケットがやられちまう】
ザワザワと、風の影響を受けた茂みのように揺れ動く『黒』。
その圧倒的数と光景に、二人の動きは封じられた。
そんな二人へ、喜牙は腹部を貫かれたまま紙を一枚飛ばした。
月夜見はそれを受け取る。
内容は
『じゃあな、さようなら』
次の瞬間、月夜見と豊姫の視界が遮断された。
二人の瞳に写るその灰色の壁は、内部と外部を遮断する唯一の壁。
「なっ、何を!!」
二人を止めようとする兵士を押しのけ、豊姫は強引に出入り口をこじ開けようと試みる。
だが、豊姫の手が触れた瞬間、その手は全く見当違いな方向へと弾き飛ばされた。
「ッ!?弾かれた……まさか、エネルギー操作……!!」
置き去りにされた喜牙の能力。
恐らく豊姫がこじ開けようとしても防げるよう、自分の命すら危ない状況で、他人の為に能力を使ったのだ。
エネルギーが目標まで到達しなければ、実際に運動させる事は出来ない。
豊姫が自分の手首を抑えた直後、ロケット全体が揺れ動く。
席に座っていなかった兵士と豊姫、月夜見は立ったままバランスを崩し、床に倒れた。
「くっ、ッ!!」
床に倒れ込んだままも、月夜見は何とか這い上がり、近くの窓から外を覗いた。
「喜牙!!」
月夜見がそう叫ぶも、音は聞こえないし届かない。
『ふむ、酔狂な奴じゃ』
喜牙に密着しながら、黒い妖怪は呟くように話す。
『普通の人間なら、ここは命欲しさに助けを求めて無様な姿を晒すものじゃがのぉ』
ドクドクと溢れ出る喜牙の血には目もくれず、既に発射態勢にあるロケットへ視線を向けた。
『今から破壊するのは不可能じゃが、お主を破壊するのは容易そうじゃ』
喜牙の腹部から、黒い妖怪はゆっくりと腕を引き抜いていく。
引き抜かれた場所には穴がぽっかりと空いており、血が一気に溢れ出している。
『おや』
喜牙が地面に膝を付くのと、ロケットが空中に飛び上がるのは、ほぼ同時だった。
ロケットは、もう手を伸ばして届く範囲から外れた。
空に舞い上がっていく。
黒い妖怪は哀れそうな目で倒れた喜牙を見た。
『やはり人間は自分勝手じゃの。仲間を見捨てて逃げおった』
僅かな笑みを浮かべながら、黒い妖怪は笑う。
『はっはっは。愉快じゃのぉ、どうじゃ?お主』
わざと喜牙の前に立ち、空を指差して問う。
『あれが、貴様を裏切った人間ど……』
得意気に語る黒い妖怪の言葉が途切れた。
目を細め、黒い妖怪は呟く。
『貴様……なぜ笑う?』
腹部に空いた穴から血を流し、見捨てられた状態でなお、喜牙は得意気な笑みを残していた。
震える足を堪え、なんとか立ち上がる。
【…裏切られた……?何を見当違いな事を言ってやがる】
嘲るような声で、喜牙は妖怪に語る。
【裏切られたのは俺じゃねェ。本当に裏切られたのは、あいつらだ】
両手を左右に広げ、天を扇ぐように構える。
【戻ってくるって言っといて、結局は戻れなかったんだからな、俺にあいつらは裏切られたんだ】
その時、黒い妖怪は気が付いた。
影が赤い。
見てみると、待機していた妖怪達は冷や汗を掻きながら上空を見ていた。
釣られるように上空を見る。するとそこには……。
『な……ッ……!?』
巨大なオレンジ色の球体が空へ君臨していた。
球体としては少し歪んでおり、特定の形を取らずに揺れ動く。
喜牙は言った。
【俺はエネルギーを操るだけじゃねェ。辺りのエネルギーを集結させて、あるエネルギーに変換できる】
喜牙は頭を抑えながら、苦しそうにしながらも、能力を中断しようとはしない。
一言。
【問題でェす!星の核エネルギーを一箇所に集約して放出したらァ、どォなるのでしょうか!?】
次の瞬間、黒い妖怪は逃げ出した。これ以上ないくらいの速度で。
その部下達も逃げていく。
喜牙は一人残された状態で、尚もオレンジ色の球体に意識を持っていく。
【くたばれクソヤロウ共。そして、これが最後の手向けだテメェら】
オレンジ色の塊が少しずつ形を崩していき、中からは眩い光が漏れ出してくる。
瞬間、都市全てを飲み込む熱の大爆発が巻き起こった。
ハッピーエンドは許しません、主人公は上げて落とします←
次回、【『喜』の終わり・名は諏訪の神】
お楽しみに!