『世紀の聖女』セオさんが誘拐犯の私をニコニコ振り回していく。 作:てりのとりやき
ノヴァク・金猫の知る限り、この星には統一・体系化された法律というものがない。
それでも強いて法と呼べるものがあるとするなら、禁忌を破らず善き人として生き抜くことだろう。
人が破ってはならない禁忌。
神々の宣告は二つ。
一つ、経済活動を行わないこと。貨幣を用いるのはもっての外で、何かしらの生産活動に対価を求めることすら禁忌に抵触する。
もう一つ。それは──。
「つまりあなたは……」
殺人行為。
人が人を殺めることを、創星の瞬間に神の一つが禁止したと言われている。
「この男の人がわざと縄を切って、丸太で圧し潰そうとしたって言いたいわけだ」
女がコクコクと頷いた。喉奥に飲み込めない重いものを詰め込んだみたいに、その仕草はぎこちない。
まあ当然だろう。ノヴァクは考える。「人殺し」などというワードは善人ばかりがひしめく1997年現代においては、発した本人が気に病むほどに『重い』言葉だ。
「確認だけど、刃物なんかは持ってないんだよね?」
「も、もちろん!」
次いでノヴァクは、停止した荷馬車の縁に腰かけ項垂れていた男に確認する。女と少し距離を離した所にいるのはノヴァクの同行者──セオの提案だ。
男の意気消沈の様は酷いものだった。
……まあ、これも当然か。
荷馬車の上にまだ残っている丸太や、辺りに散らばる丸太の数々にノヴァクは金色の瞳を巡らせる。一本一本が相当な樹齢を重ねていたのだろう、セオは勿論ノヴァクが目いっぱい両腕を広げても抱えきれないほど幹が太い。
「ほ、ほんとに、この広場を通り過ぎようとしていただけなんだ。少し段差のあるところを通った時の衝撃で、縄が千切れただけで……」
『人殺し』という言葉に深く傷ついているのは勿論のこと、一つ何かが違っていただけで先の女は丸太に圧し潰されていたのだ。大けがで済めば御の字、最悪は本当に──。そういう考えが頭の中を駆け巡り続けているのか、何度も何度も頷いていた男の顔は血の気もなく蒼白だった。
今回の事件:殺人未遂?
被害者:女の人
加害者:荷馬車の男?
あらまし:運搬中の丸太が突然倒壊し、女の人があやうく死にかけた。
状況を、ノヴァクは目を瞑って整理する。
「ノバさんノバさん、事件の真相は一体……」
「うーん。う──────────ん」
その内唸り声をあげだした。首を何度か左右に振り、大いに悩みあぐね。
「つ、つまり……事件の真相は……」
「真相は……!?」
隣で、ノヴァクの言葉の続きを待ち続ける亜麻色の髪の少女──セオが固唾を飲んで修道服をきゅっと握る中。
──女の瞼が押しあがる。
比喩でなく真の意味で黄金色をした、煌めく双眸が真っ直ぐにセオを見つめ。
困惑でぱちぱちと瞬きをした。
「…………つまりどゆこと?」
背を曲げ、そっとセオの耳元に口を近寄せる。あまり他人に──特に軽度な錯乱状態にあった先の女には聞かせたくない内容だからだ。
女の艶やかな金髪が、ノースリーブのセーターの上から滑り落ちる。腕に引っ掛けるだけで上着として機能していないジップパーカーは、ノヴァクの、やけに丸い肩のラインを剥き出しにしていた。
「あ、あらあら……」
「?」
それを間近で見せつけられる恰好になった少女の顔がほんのりと朱色に染まるが、ノヴァクは気付かず小声で話し始めた。
「どう見ても不幸中の幸い、大事故に至らなかった不幸な事故だよね……?」
「こほん。……ですがノバさん、あの女性は殺されそうだったと言っています」
「でもセオさん、あの男の人は縄は勝手に切れたって言ってるんだよ? まあ正直、どっちが本当のことを言ってるかなんて証明する手段もないけど……」
ノヴァクはそれぞれの証言の信憑性は無視している。縄が切れたか切られたのか──そこはそれぞれの主観に依る些事でしかないと。
人は善人ばかりだが、嘘を吐くことは
「セオさんセオさん、殺人未遂だよ? 故意か過失か──あの
しかし、殺人行為だけは神々も許していない。1997年現在、殺人事件なんてものは故意・過失問わず数百年は起きていないのだ。
「つまり……ノバさんは……」
「うん! まったくわからない!」
「ま、まさか……!」
「この事件……解決できる気がしない!」
体を離すノヴァクに、セオがなぜか両手を拳にしてぶんぶん振りだした。興奮気味に。
「『また』なのですか! 『また』なのですか!」
少女の声音は場違いなほど期待に満ちていた。
頷き返し、自信満々に胸を張る女の顔もまたドヤ顔である。
「今回も残念ながら迷宮入りだー!」
「迷宮入り、って」
女が戸惑ったようにそう呟くと、セオがなぜかとても満足げな表情で応える。
「ノバさんはどのような事件も何一つ解決することができないけれど威勢だけは素晴らしく良い人ですから!」
「フフフセオさんセオさん、自信満々に言うことじゃないよそれは」
「……なんなのあなたたち、本当に」
◇
さて、世には神が三つ実在する。
規模・数量共に無制限な万物創造の槌。
宇宙における大空洞、
そして宇宙究極の自然現象──
さて、世にはそんな神々が衛星軌道上を周回する惑星がある。
惑星とセットで神によって創り出された人類は、神々の庇護下ですくすくと文明を育てた。
早2000年弱が経つかという現代においても尚、神々の祝福は有効だ。
さて、世にはそんな神々を『主の方々』と捉え、信仰を捧げる宗教がある。
むしろそれ以外の宗教が無いのでその宗教には名称がなかった。
神は神で、信仰は信仰だ。
それぞれが現実に存在する実効力によって硬く結びつく世界では、解釈の相違による別派閥の誕生も、神の在り方による信仰の捧げ方の違いも発生しなかったのだ。
信徒数599億人を擁する“教会”には、神々の教えを人々に伝え広めることを職業とする者たちが居る。──聖職者と呼ばれる者たちのこと。
「……で、騒ぎが収まらないから私が呼ばれたというわけですか」
ノヴァクとセオの前で、眉間に皺を寄せている少女もまた聖職者の一人だった。
服装は上から下まで着崩している箇所が一つもない黒の
きりっとした吊り目がちの猫目に、はきはきとした張りのある声。癖のない黒髪を、後頭部の高い位置で結んだポニーテールは少女の几帳面さを表しているみたいだった。
「今朝がたぶりですねツアワリさん」
「こんにちはセオ様。……またノヴァクさんと一緒に居るんですか、あまり教育上よくない人ですよこの人」
少女の名をツアワリ・
「やっほーツアワリちゃーん」
気楽な挨拶と共にひらひらと手を振るノヴァクに、黒髪の少女──ツアワリが眦を釣り上げた。
「ノヴァクさん……いちいち私を見てニヤーっと笑うの、いい加減やめてもらいたいんですけど!」
「ひどいな〜新愛の証だよこれは。あ、おまんじゅういる?」
「もらいますけど! ……あまくておいしいですね! 恵みをもたらす主の方々とノヴァクさんに感謝を! ありがとうございます!」
「ツアワリちゃんはお礼がしっかりできてえらいねぇ」
「子供扱いはやめてください! ……あっ、こ、こらっ、頭撫でるなッ、やーめーてー!」
形の良い頭の上で踊っていた手がバチィッと勢いよく叩き落とされる。「痛い!」とノヴァクがわざとらしく痛がった。やりすぎたと顔に出すツアワリが何か言うより先に、二人のやり取りをニコニコ眺めていたセオが会話に参加した。
「まあ。では同い年の私がよしよしするのは子供扱いではありませんし、許されるということでしょうか?」
「いやセオ様は……」
セオの言う通り二人は同い年で14歳だ。とはいえ背はツアワリの方が頭半分だけ高い。そんなセオに頭を撫でられるのが恥ずかしいのか、それともセオが“教会”においてどれほど重要な立場にいるかを知っているからか、黒髪の少女の態度には謙遜が多い。
「セオさんセオさん、あまりツアワリちゃんをからかっちゃだめですよ」
「ノバさんノバさん、これもまた親愛の証なのです」
「やりづらい二人組だなあ……!」
ツアワリの反応が一々面白いのと好ましくて仕方がない二人が満足するのに少々の時間がかかった。それを見計らって、ツアワリは二人の背後にいる男女へと目を向ける。
「それで? 一体何事ですか」
「実はね──」
事のあらましをノヴァクが伝えると、ツアワリは女に情けないものを見るかのような眼差しを向けた。えへえへと誤魔化し気味に笑うノヴァクは拝むように手を組み合わせる。
「お願いツアワリちゃん。もうツアワリちゃんにしか頼めないの」
「む、む……!」
情けない大人に頼られるのもそれはそれで自尊心がくすぐられるのだろう。
耳をぴくぴく揺らしながら、ツアワリはちょっとだけ顔を赤くしている。
「……わかりました。やれやれ、ノヴァクさんは仕方がない人ですね! この事件、『都市』の聖堂を預かる身、主席司祭であるこのツアワリ・
「よっ! 将来の神事監察官! 枢機卿団入りまで一直線! エリートの中のエリートー!」
持ち上げすぎですよ、ノリ良くはしゃぐノヴァクを言葉で諫めたツアワリは、改めて状況を詳しく聞いた。
かくかくしかじか……。
──聞き終えた少女は怪訝そうな半眼になっていた。
「……先ほどから思っていましたけど、話を聞く限り、どう解釈しても不幸な事故としか思えないんですが」
「でもあの女の人はそんなありきたりな結論じゃ納得しないって感じなんだよね」
三人が集まって何を話しているのかわからないからか、所在なさげに立つ女。ちらりとその様子を見たツアワリが、意を決した表情で女へと歩み寄った。
「あの、よろしいですか?」
「あ……。は、はい、何でしょうか司祭様」
聖職者の中でも司祭を意味する服装──黒の
そんな女に、ツアワリもまたやや緊張しつつ口を開く。
「神々は人と人の間にある不和、不理解、不仲を……その概念が存在する事を
「……」
「禁忌でなく、神々の深淵なる裁定において存在を許されたもの──それはつまり神が人に与えた試練であると」
丁寧な言葉と、歯切れのよい滑舌。話し慣れている者の言葉はそれだけで心地良い。ツアワリ・桜花は若干14歳で司祭を務めるだけあって如才ない少女だとノヴァクは思う。
「一時の怒りや相互不理解もまた、人が生涯をかけて克服すべき修行です。もしよろしければお時間のある時に聖堂へお越しください。懺悔室はいつでも人々の告白を受け入れ、許しますから」
「ま、まあ、確かに主席司祭さまがそう仰るならそうかもしれませんけど……」
ツアワリが──というよりも、畏れ多い司祭様が教え諭しているからか、女は幾らか冷静さを取り戻しつつある様子だった。
周辺に散らばっていた丸太も騒ぎを聞いて集まってきた善意の第三者達が協力し合い、荷馬車に積み直している。丸太を運搬していた男も人一倍汗を流していた。
全てが思い込みで、行き違いがあっただけ。
不幸中の幸いとして誰一人怪我もしていなかった。あれだけあった丸太が人々の手で元に戻っていくのを、女がぼんやりと眺める。広場はまた活気ある平和を取り戻し始める。石畳を、往来を行く人々の足が打ち鳴らす……。
おっ事件解決かな? ノヴァクはツアワリの説教ひとつで解決されつつある雰囲気を感じ取り、すげーすげーと拍手した。
「さっすがツアワリちゃんだ。伊達に14歳で司祭やってないよね」
「私と同い年とはとても思えません。ツアワリさんはすごいです!」
「ヒュー! あれこそがカッコカワイイ主席司祭ツアワリ・桜花チャン14歳だッ!」
「聡明で理性的、大変立派な司祭さまですツアワリさん!」
「すごい!」
「すてきです!」
「そこの二人! 恥ずかしいからやめてください!」
「──でも、やっぱりおかしいですよ!」
声は唐突だった。氷を辺りにぶちまけたみたいに広場の喧騒がぴたりと止む。
女の顔は真っ赤だった。
「だって急に崩れ落ちてきたんですよ!? いきなり、私の目の前で……!」
死にかけた瞬間を思い出してしまったのだろう。瞬間的な怒りが、故意か過失かなんてどうでもいいと言いたげに爆発していた。
荷馬車の男が、本当に申し訳なさそうに体を小さくして、項垂れる。
「そう言われても、あの、本当に偶然の出来事で……俺……」
「あなたみたいな男なんか信用できないに決まってるじゃない!」
女のヒステリックな叫び声が広場に木霊する。
「あの、えっと、お二人とも。どうか落ち着いてください。あの」
冷静さをまた失いつつある女の態度に、ツアワリはどう声を掛ければいいか分からなくなったのだろう。二人の「やった」「やってない」の押し問答に介入できずおろおろしている。セオもまたどうしたものかを頭を悩ませていたが──。
「? ノバさんノバさん、何をしているのですか?」
「いやー。見てよセオさん」
まだ積まれていない、地面に転がったままの丸太の前でノヴァクがしゃがみ込んでいた。
ちょいちょいと手招きするノヴァクに呼ばれるまま隣で屈みこんだセオは、女が丸太を撫でる仕草を見つめる。
「大きな丸太ですね」
「うん。立派だよね~って思ってさ、これくらいになるのに何年かかるんだろうね──あててっ」
唐突な、痛がる声。
少し大きな声音にツアワリがこちらを振り向く。セオもまた口に手を当てて目を丸くした。
「あら、切り傷」
「うーん。木の皮に鋭いところがあったみたい」
三人の視線が、女の掌に集中する。そこには伐採された木の表皮が棘となってしまったのか、浅い切り傷が一筋走っていた。
赤い線が浮かび上がるのを、セオが慌ててハンカチを当てようとする。それを「大丈夫大丈夫」と笑っているノヴァクを見て、──ツアワリが目を瞠った。
「おじさん、この丸太はどれくらい運んでいたのですか?」
ツアワリに訊かれたのは、押し問答と女の怒りで疲弊していた荷馬車の男だ。唐突な問いかけに、真意は分からずとも男は答える。
「だいたい丸三日くらいです。『都市』から北に行ったところにある村で聖堂の修復をしているんですよ。建材にこの樹木が使われていたんですが、ここらじゃ南の方でしか取れないので、林業を営む知人から譲っていただきまして……」
「おー。じゃあずっと荷馬車の上で縛りっぱなしってわけだ」
と、ノヴァク。
掌の傷も気にせず女は千切れてしまったロープを手に取った。日に透かし見るように天に掲げる。
「結構使い込んでるね」
「頑丈なロープだったので、ずっと仕事で使ってまして……」
「物を大事にするのは美徳です。とても善いことだと思います」
「──そ、そうか! そうですよ!」
ツアワリが、まるで天啓を得たかのように四人に向けて喋り始めた。
「縛り続けていた縄が、いつ千切れてもおかしくないくらい経年劣化を起こしていて……」
言いつつ少女の人差し指がノヴァクを指差す。
「え? 私? 私なんかしたかな? ……もしかしてツアワリちゃんが楽しみに取っておいた花風堂の栗饅頭を食べちゃったのがもうバレたの!?」
「違いますその縄です! ──っていうか栗饅頭食べたんですか?」
「……」
「目を逸らすな!」
ヤッベ失言だったと口を噤むノヴァク。こめかみに青筋を浮かび上がらせるツアワリは、見事に感情をコントロールしてノヴァクが手に持つ縄をもう一度指し示す。
「いつ切れてもおかしくなかった縄に、重量物であり表面が鋭くなっていた丸太。そこに荷馬車で揺らされ続ければ……」
ツアワリの前には今、使い込まれた縄とノヴァクの手に出来た切り傷、ずっしりとした重みを持つ丸太という事実が並んでいた。それらの点は少女の中で容易く線として繋がり、──そしてそれを聞く女もまた心の何処かでは分かっていたのだろう。
「つまり……この事件の真相は──管理不行き届き、です!」
故意による殺人などこの世界ではあり得ないのだと。
分かっていても尚、感情面で折り合いが付かないのだろう。表情を目まぐるしく変えながら、女は俯く。
「でも、でも……!」
「──深呼吸をして、少し、目を瞑ってみませんか?」
そんな女に柔らかな言葉を投げかけたのは、あまり会話には参加してこなかったセオだった。
女が、充血しきった眼を向け──息を呑む。
激情の火を打ち消される。
それほどに、少女の笑みは慈愛一つで完成されていた。
「自分の中にある刺々しい感情が、本当にあなた自身の本性でしょうか。過去を振り返ったとき、あなたに優しくしてくれた人や、あなたが誰かに優しくできた過去は何一つ存在しませんか?」
黒を基調とする修道服を着て、まさしく修道女然と祈りの手を組む姿には特別な所など何一つない。どこの街でも見かける見習い修道女の女の子でしかない。しかしそれでもその所作は完璧だった。まるで、生まれた瞬間から神々への信仰を捧げていたかのように。
怒りの矛先を向けられても尚、聖女の祈りは揺らがない。
「あなたの正しい形を決めるのは、あなたの今でありこれまでの過去です」
ツアワリが説くような洗練された響きこそなかったが、柔らかく、口溶けのよい声音だった。ささくれ立った心を癒すには十分すぎるほどの効果があったのだろう。女はみるみる内に怒りや混乱といった気配を沈めていき、やがて男に向き直ると。
「…………ごめんなさい」
ばつが悪そうに、それでも申し訳なさそうに、頭を下げた。
「少し、私生活のことでイライラしていて……責めても許される相手ができて、八つ当たりだったかもしれない」
「いやこちらこそ、本当に申し訳ない。司祭様がおっしゃった通り道具の管理ができていなかったこちらの落ち度が大きい」
ぺこぺこと頭を下げ合う男女を見て、ほっとツアワリが息を吐く。強張りが解けて緩んだ様子にニコニコ微笑んでいるセオ──聖女の笑顔の理由に気付いたツアワリが、慌てて背筋をぴしっと伸ばした。
「ンフフ」
つい、ノヴァクも笑い声が漏れた。
「事件解決ゥ! いやーさすがうら若き司祭さまと聖女さまだよね! 私感動しちゃったなー」
「きゃっ」
「ぎゃー!」
うら若き司祭様が出してはいけない悲鳴が上がった。ノヴァクの頭よりも高い所から。
女が唐突にセオとツアワリを抱き上げて、その肩に載せたのだった。
「な、な、な、何するんですかノヴァクさん!」
「んー? 感動の身体表現」
「いいから下ろしてください! ちょっ、こ、こらっ、どこ触ってるんですかちょっ手っ──手に力を込めるなー!」
顔を真っ赤にしてギャアギャア叫ぶ司祭の少女と、あらあらと火照った頬に手を当てる同い年の聖女。
二人の少女を肩に乗せ片方からはぐいぐいと押し退けられようとしているというのに、驚異的なことにびくともしない体幹の良さを発揮したノヴァクが、右頬を潰されながらもダブルピースを周囲に見せつけた。
「これにて一件落着! だね!」
あんた何もしてないだろ……という視線がたくさん集中した。