地獄のヒーローになった男、青春に憧れる。   作:ナマエナガ

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今回はマジで難産だった…
色々足りない所もあるかもしれませんが、楽しんでもらえればありがたいです…!


狐とチェンソー

 

◎ シャーレの部室付近

 

ヴヴン!!

 

「ギャハハハハハ!!さっきまでの勢いはどーしたんだよ〜!もう終わりかァ〜!?」

 

不良たちを前に、一人の男が嗤う。飛び交ってくる銃弾を紙一重で避けながら、まるで遊ぶように不良たちを倒しまわっていた。

 

チェンソーが唸りを上げる度に、銃が吹き飛び、又は砕けて、不良たちが悲鳴を上げて後退していく。

 

「おい!なんでアイツがここにいるんだよ!?噂に聞くチェンソーマンが!?」

 

「し、知るか!!私だって今すぐ逃げたいよ!なんでこんな化け物が…!」

 

彼が現れたことで、状況は一気に混沌と化した。

 

突如現れたチェンソーの音に不良たちは怯え、戦意を段々と失っていく。次々と逃げ出す者、武器を捨てて降伏する者、それでも抵抗しようとする者…

 

その光景を、私は呆気にとられて見ているしかなかった。あまりの光景に声も出ない。

 

「あ、あの子は…一体…」

 

ようやく声を絞り出すと、隣にいたユウカが少しだけ緊張した面持ちで答えてくれた。

 

「あの人はチェンソーマン。キヴォトス全域に唐突に現れては不良たちを退治していく…怪人、ですよ」

 

ユウカの声には驚きはない。どこか慣れた様子で、不良たちを薙ぎ倒していくチェンソーマンを見つめている。彼女も何度か噂を聞いたことがあるのだろうか。

 

「怪人…」

 

その言葉を反芻する。確かに、あの見た目は怪人そのものだ。頭と両腕から飛び出したチェンソー。金属的な赤い頭部。人間離れした動き。

 

正直言って普通に怖い…特にあの両腕から生えたチェンソー。ソレに付いている、恐らくは彼自身の血。あの見た目からするに両腕が裂けて現れてるってことだよね…?それってとんでもない激痛なんじゃ…

 

でも、今は…

 

「今は、味方だと思っていいのかな…?」

 

私の問いに、今度はスズミが冷静に答えた。

 

「少なくとも、私たちに危害を加えるつもりはなさそうですね。むしろ、狙われていた先生を庇ってくれましたし…」

 

そう、彼は私を助けてくれた。あの弾丸から守ってくれた。

 

ギャハハハハハ!!

 

彼の笑い声が再び木霊する。怪物のように暴れる彼だが、よく見るとその動きには規則性があることに気づく。

 

不良たちの銃だけを狙って破壊している。もしくは足で蹴飛ばしたり、チェーンを飛ばして拘束したり…直接チェンソーで攻撃はしてない。

 

「…優しいんだね」

 

思わず、呟いた。

 

「え?」

 

ユウカが驚いたような声を上げる。でも、今はその疑問に答えるような暇はない。

 

「…ううん、なんでもないよ」

 

段々と後退していく不良たち。逃げ出す者が増えていき、包囲網が崩れ始めている。

この調子なら、あと少しでシャーレの部室に辿り着けそうだ。

 

「ならここは…!」

 

私は、決断した。

 

「皆!今はチェンソーマンに協力するよ!彼をサポートしつつ前進!」

 

四人が一斉に私を見つめる。

 

「彼が前衛を務めてくれてる今がチャンスだよ!ユウカとスズミは左右の敵を牽制!ハスミは高所の敵を警戒!チナツは負傷者の回復を最優先で!」

 

「「「「はい!」」」」

 

私の声に四人が勢いよく返事を返す。そして一斉に動き出した。

 

チェンソーマンが中央で暴れる間に、私たちは着実に前進していく。

 

不思議と、彼の背中は頼もしく見えた。

 

◎ シャーレの部室前

 

不良どもを薙ぎ倒し、先生が向かっていたらしいビルへと向かっていく。

 

にしても、先生を間一髪で助けられて良かったぜ。ブルアカの主人公たる先生が死んだらどうなるか分からねぇからな。

 

ワンチャンキヴォトス崩壊とかあり得そうだし…いやねぇか!流石にそんな杜撰な場所だったらとっくに滅んでるわ!

 

それに俺は基本的に先生の側にいるつもりだからな。先生が学園を回って色んな奴を助ける。それを手助けして俺もモテモテ、おこぼれでいつか誰かの胸を…!そんな計画だ!

 

「ギャハハハ!我ながら天才だなぁ〜!こりゃノーベル賞モンだぜ!!」

 

そんなことを思いつつ進んでいくと、一人の女が俺の前に立った。

 

「まさかこんな所に貴方がいるとは…また殺されに来たんですか?」

 

ソイツは狐の仮面を被った一人の生徒。どこか色っぽい響きがありながらも明確な敵意を込めた声を俺に向けている。静かに銃を構えて戦闘態勢に入った。

 

「ハッ!この前誰がお前を矯正局にぶち込んだと思ってんだァ?」

 

「あの時は邪魔なSRTの狐共がいたからでしょう? 貴方一人なら私の圧勝でしたが?」

 

「あぁん?負け犬の遠吠えはよく響くなぁ!いや、テメェの場合は“負けギツネ”か!」

 

「…ぶっ殺して差し上げます!!」

 

ヴヴン!!

 

チェンソーが唸る。火花が散り、銃弾が弾け、空気が震えた。

 

その瞬間にはもう、二人の姿は煙の中だ。

片やチェンソーを振り回す悪魔の男。

片や仮面の少女。狐火のように滑るような動きで、銃を放つ。

 

絶えない銃声とチェンソーの音。

周囲は瓦礫と煙だけ。――完全な一対一だった。

 

懐かしいなぁ。前にコイツと戦ったとき、何回死んだか覚えてねぇぜ。SRTのFOX小隊が協力してくれなきゃ負けてたかもなぁ…

 

パンッ!ワカモの銃弾が俺の肩を貫く。

 

「イッテェなぁ!でもよぉ…!」

 

ヴヴン!!

 

「相変わらず、鬱陶しい回復力ですね!」

 

現在、ワカモと俺の戦闘は互角…なわけねぇんだよな。

 

俺がワカモと比べて勝っているのは回復力のみ。それ以外だと力なら互角かもしれないが…やはり防御力では逆立ちしても勝てない。

 

だが、黒服の元で過ごすようになって二年弱…

 

俺は馬鹿みたいに戦わされた。キヴォトス中を駆け回って不良どもをブチのめし、その中で黒服から実験を受けたりして過ごした結果、俺の回復力は以前と比べて飛躍的に上昇した。

 

まぁ血が必要なのは変わらねぇが…全体的に回復に必要な血液の量が減った。つまりは継戦能力の向上だ。

 

パンッ!

 

ワカモが俺の左腕を撃ち抜く。俺の左腕は吹っ飛び、赤黒い血とともに地面に落ちた。俺はすぐさま残った右手で輸血パックを取り出して飲み込む。

 

「ングッ!プハァ〜…やっぱ血ってマジィよなぁ!!これがいちごジャムだったらテンション上がんのによぉ!!」

 

「それならソレ(輸血パック)を捨てては如何ですか!?今すぐ貴方をいちごジャムみたいにして差し上げますよ!」

 

「なら、そうさせてみろよバ~カ!!」

 

まるで子供の喧嘩みたいな会話をする。

 

ワカモとの戦闘において重要視するべきは時間だ。継戦能力が以前と比べて上がったとは言え、輸血パックが尽きれば俺はただの肉塊になっちまう。

 

だから、するべきは接近戦からのグルグルパンチ!

 

「クッ…!ちょこまかと…!」

 

ワカモの周りを走り回る。なるべく視線を逸らすように瓦礫や車を利用してある一点についた所で止まった。

 

砂煙が立ち込める戦場。その中から俺は車の背後に隠れ、そこからワカモに向かって瓦礫を投げ付ける。

 

「…ッ!こんな小細工で…!」

 

「小細工なきゃ勝てねぇんだからしょうがねぇだろ!」

 

ワカモは飛んできた瓦礫をすぐさま撃ち抜く。砕け散る瓦礫の後ろから、俺は飛び出した。瓦礫によって視界を阻まれ、その後ろから来る俺に気付けなかったワカモは防御態勢を取る。

 

「これでも防げるのどうかしてんだろォ!?」

 

「伊達に厄災の狐と呼ばれていないということです!」

 

俺のチェンソーとワカモの銃が当たる。チェンソーは少しずつワカモの銃を削るが、流石キヴォトス製。中々に頑丈なワカモの銃を壊す前に俺は腹を蹴飛ばされて距離を取ることになった。

 

睨み合いが続く。このままだとヤベェな…決め手もなく凌がれ続けたら俺の負けだ。

 

パンッ!

 

そんなとき、俺の背後からワカモに向かっていく銃弾があった。ワカモはそれを躱すと視線を凄める。

 

「先生!見えました!狐坂ワカモとチェンソーマンです!」

 

「…!連邦生徒会の子犬たちが来ましたか…仕方がありません。ここは一足先に行かせてもらいましょう」

 

どうやらやって来たのは先生たちらしい。不良どもは蹴散らしたようで、残っているのはワカモだけになったようだ。

 

「あっ!逃げんのか…ってまぁ、ここはそっち方がありがてぇか…」

 

思わず、先生に助けられる形になってしまった。ワカモはすかさずビルへと入っていく。見てみれば、先生が目指していたというビルだった。

 

「今追っても負けるよな…なら先生と合流…しても周りの奴らに警戒されちまうか」

 

なら、ここは一端引くのが吉と見たぜ。ビルの中で先生がワカモに撃たれないか心配だが…そこは監視中の黒服に頼むとしよう。

 

俺は漂う砂煙に紛れてその場を後にした。

 

◎ シャーレの部室

 

「はぁ〜…疲れたぁ〜」

 

シャーレの部室、その中央に置かれたデスクと椅子。私はそこに腰掛けて大きな溜息を吐いていた。気づけば時刻も午後五時を回っている。

 

あれから、私は無事にシャーレの部室へと辿り着いた。そこからワカモと出会い、シッテムの箱を手に入れてサンクトゥムタワーの行政権を回復させた。

 

そういえばあのときのワカモはなんで私を見て逃げてしまったんだろう…?顔を真っ赤に染めて可愛らしい叫び声を上げていたし…

 

そこからはずっと書類仕事ばっかり!確かに先生としては当たり前の仕事ではあるんだけど…にしても書類多くない!?この書類って本当に私がサインしないといけないやつかな!?

 

そんなイライラをなんとか抑え込んで、私は椅子の背もたれに沈み込んで天井を見上げる。

 

真っ白な天井は綺麗なもので、それなりに手入れされていたことが分かる。シャーレの部室は私一人きりで、静かな溜息が木霊する。

 

結局、チェンソーマンはワカモと不良たちと戦った後に消えてしまって行方不明となった。現在も周辺を捜索中とのことだが、まだそれらしい連絡は来ていない。

 

「どうせなら、お話してみたかったな…」

 

チェンソーマン。その詳細はアロナから聞いた。

 

曰く、キヴォトス全域に現れる怪人。時には不良を倒し、時には連邦生徒会や各学園の公的機関の邪魔をする正体不明・目的不明の謎の存在。

 

特徴は圧倒的な戦闘力と回復力。大抵の生徒なら簡単に制圧し、七囚人と言われるワカモともある程度張り合える力を持つ。それに加え、血を摂取することでどんな傷でも瞬時に回復する能力まである。

 

各学園・連邦生徒会からも注視されている存在。キヴォトスの多くの企業や学園が彼を求め、その存在の探求を目指している。

 

「お礼、まだ言えてないのに…」

 

彼はキヴォトスにおける要注意人物だ。ただでさえ物騒なキヴォトスで生活するのなら、彼との関わりはない方がいい。

 

でも、私は命を助けられた。彼に救われた。なら、お礼くらいはしないといけない。これは大人としてでも先生としてでもなく、一人の人間としての感情だった。

 

コンコン

 

そんなときだ、部室の扉が静かにノックされた。

 

誰か来たのかな?そう思って私は椅子に背筋を伸ばして座り直す。そして、扉の向こうの誰かに声をかけた。

 

「入っていいよ」

 

「お邪魔しまーす」

 

私の声と共に入ってきたのは金髪の少年だ。スラッとしたスタイルと不敵な笑み。服装は白いシャツに黒のズボン。

 

全体的にヤンチャな男の子って感じだ。

 

わ、わぁ…私キヴォトスに来て始めて男の子を見た気がする…それにこの子はヘイローもないようだし、もしかして私と同じように外の世界から…

 

「始めまして、私はシャーレの先生だよ。君は?」

 

「俺ぁ、デンジって言います!ここに入部しに来ました!」

 

なんだか元気のある子だなぁ。デンジは私の目を正面から真っ直ぐと見つめて…いや、なんだか視線が上下している気がするけど…ま、まぁ気の所為だよね…?

 

「デンジだね。えっと、私はキヴォトスに来てそんなに時間経ってないから分からないことばかりで、きっとデンジには凄い頼ることになると思うけど…」

 

「いいっすよ。俺ぁ先生を支えるために来たんすから」

 

私を支えるため…?その言葉に困惑してしまう。初対面の人にそこまで言われるようなことを私はしただろうか…?そりゃ、サンクトゥムタワーの政治能力を回復させたことは大切だろうけど…

 

「あぁ、それと…」

 

私の困惑を他所に、彼は数歩距離を取って私に向かい合った。シャツの合間に手を突っ込み、スターターのような紐を出して指にかけるとニヤリを笑って…

 

「俺、地獄のヒーローやってまーす!」

 

ヴヴン!!

 

私は、その光景に目を見開いて声を出せなかった。




キヴォトスでのデンジ君の強さは、中の上か上の下くらいになってます。
具体的に言うとイオリ以上、ヒナ未満。シロコ以上、ホシノ未満。ハスミ以上、ツルギ未満。みたいな感じになってます。
2年前のデンジ君だともう少し弱いんですけど2年間の黒服からのシゴキと実験で強化されましたね。

あとワカモとの関係ですが、喧嘩してばっかりの腐れ縁みたいになってます。作中でデンジ君はFOX小隊と共にワカモを倒したみたいに言ってますが、貢献度はそれぞれ半分ずつくらいでぶっちゃけFOX小隊がいなければ絶対に負けてましたね。

それと先生とシャーレの部室で会ったときの視線の上下は胸と顔を上下してましたね。ちゃんと先生と話そうという意思とsay欲がぶつかった結果です。
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