地獄のヒーローになった男、青春に憧れる。   作:ナマエナガ

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今回は難産だった…

どうでもいい事かもしれませんが、一応のご報告。
イラストについて学ぼうかと思っています。つまり絵を描きたいわけですね。そのために液タブを買う予定もあります。と言うことで、イラストの練習をするにあたって小説の投稿頻度が遅くなるかもしれません。まぁ元から不定期なつもりだけども。
それでもよろしければ、このままこの小説を読み続けてほしいです!


遭難とチェンソー

 

◎ シャーレの部室

 

「クソ…せんせー、次会ったら引っ叩いてやる…」

 

目の前に積み込まれた書類を睨みながら遥か遠く、アビドスに向かった先生に苦言を漏らす。ペラペラと積み上がった書類の一枚一枚を捲る度に溜息が出て仕方ない。

 

リンに叱られてから数日が経過した午前十時。俺は朝っぱらからバカみたいな量の書類を片付けていた。

 

積み上がった書類はもはや俺一人では捌ききれず、机をはみ出して床にも置かれている。その様子はまるでタワーのようでシャーレの部室は書類のタワー街となっていた。

 

書類の内情として、俺が血で濡らしちまった分+本来先生がやるはずだった書類+今も尚連邦生徒会から送られてくる嫌がらせなのか疑いたくなる量の書類。まさに書類地獄。キヴォトスに仕事の悪魔がいたらクソ強くなるね、断言できるぜ。

 

そんなわけで俺は死にかけながら働いていた。この前の事もあってチェンソーマンに変身してイカれた脳で働くこともできないし、マジに何回か過労死していたりする。

 

「はぁ…先生はどうしてんだろ…」

 

先生がシャーレを足ってから数日。アビドスからの手紙に応じて向かったはずだが…

 

「俺のお陰で借金は五億くらいにはなってるはずだけど…流石に数日じゃ無理だよな」

 

……なんか嫌な予感がするなぁ…んん?

 

つまり、つまりだ。

 

先生がアビドスに行く→先生はアビドスが抱える借金を知る→先生はそれを解決しようとする→俺の仕事が増える。

 

「よし、行こう」

 

無理だ。そんなの無理だ!もう受け入れられるか!俺は後何回過労死すりゃいいんだよ…!もう死ぬのは嫌だ!主に戦いではなくつまんねぇ過労死なのが嫌だ!

 

それに先生はおっちょこちょいの方向音痴だからな…もしかしたらユメ先輩みたいにアビドス砂漠で遭難してるかもしれねぇ。

 

と、言うわけで行くぜアビドス高校!

 

「…ホシノとは出来るだけ会わねぇようにしよう…」

 

そんな事を言いつつ俺はシャーレの部室を飛び出した。ん?書類はどうしたのかって?

 

シーラね!

 

◎ アビドス・住宅街

 

灼熱の太陽が降り注ぐ昼前。強い日光によって照らされた砂は異様なほどに暑くて、上からも下からも身体を熱される。

 

「う、うぅ…最悪だぁ…」

 

そう、私は今…アビドスの住宅街のど真ん中で倒れ伏していた。

 

アビドス高校からの手紙に応えようと勢いよくシャーレを飛び出したは良いものの、アロナが用意した地図は数年前のもので全くアテにならず…遂には食料も水も尽きて限界を迎えていた。

 

『先生すみません…まさかアビドスの地図が数年間も更新されていなかったなんて…!』

 

そう、アビドスは既に荒廃して久しい。居住者は少なく、残っているのは空き家ばかりだ。そんな過疎っている街に用のある人間なんていないだろう。必然、アビドスの地図は更新する必要性もなく、そのまま放置されていたわけだが…

 

「…私…このまま死んじゃうのかな…」

 

今更、デンジをシャーレに残してきたことを後悔してしまう。

 

デンジ、今頃大変なことになってるんだろうなぁ…リンちゃんに怒られて、いっぱい反省文書かされて書類を捌いて…

 

数日前まで一緒にやっていた作業。彼の隣で、彼に支えられて二人でやっていたはずの仕事。

 

『せ、先生…』

 

自然と、涙が浮かぶ。アロナがそれに反応して心配そうに声を出した。

 

私は…私は、このままデンジと再会することもなく、デンジの夢を叶えてあげられずに死んでいく。キヴォトスで初めて私を助けてくれた彼に、何も報いることができずに野垂れ死ぬ。

 

それは…あぁ、それは…そんなことは…!

 

嫌だ。嫌だ…!嫌だ!まだ死にたくない!まだ生きたい!もっと楽しく、生徒の皆と出会って笑い合いたい!

 

まだデンジを助けられてない!まだデンジの夢を叶えられてない!私は、先生としての責務を果たせていない!

 

そんな私のままで死ねるか!そんな私のまま逝けるか!私は、まだ…!

 

「生き、たい…!」

 

暑いアスファルトの上をゆったりと進む。倒れ伏した身体を無理やり引きずってアビドス高校へ向かう。

 

そんなときだ。何処からか、自転車の走る音がした。その音は段々と近付いてきて…そして、私の前で止まった。

 

「…ん?」

 

キキッー!

 

「あ、あの…」

 

ゆっくりと顔を上げる。そこにいたのは…

 

「……大丈夫?」

 

灰色の髪。犬のような耳が頭にちょこんと付いている。よく見れば瞳はオッドアイで、首元にはマフラーが巻かれている。

 

「全然…大丈夫ではないかな…」

 

「あ、生きてた。道のど真ん中に倒れてたから、てっきり死んでたのかと」

 

酷くない!?確かに死にかけの自覚はあったけど、そんなに生気ない感じだったかな!?

 

「お、お腹が減って倒れちゃって…」

 

「ん、ホームレス?」

 

ぶんぶんと首を横に振る。すると彼女は自転車から降りて私の顔を覗き込んできた。その視線には疑問が宿っている。私は渇いた喉を何とか動かして口を開く。

 

「そ、それが…用事があってここに来たんだけど…土地勘がなくて遭難してしまって」

 

「ん、そっか。ここは元々そういう所だからね。食べ物があるお店なんか何処にもないよ。郊外に行けば別だけど…」

 

彼女はそう言うと、ガサゴソと鞄を漁ってペットボトルを差し出してきた。

 

「これ、エナジードリンク。ライディング用だけど、お腹の足しにはなると思う。えっと、コップは…」

 

「ごめん!それちょうだい!」

 

彼女の言葉を待たずにペットボトルをかっさらう。そのまま勢い良くキャップを捻って喉を潤す。

 

ゴクッゴクッ!

 

「ぷっはぁ…!久々の水、最高…!」

 

「ん、それ…い、いや、やっぱりいいや…」

 

何か言ってるけど気にしない!生死を彷徨っていた時に飲む水は今までのどんな飲み物よりも美味しくて心地良い。カラッと乾いていた喉が潤って全身に広がっていくかのような感覚がある。

 

私は水を飲んでなんとか回復した身体を起き上がらせて地面に座り込む。その状態で彼女と向かい合って声を出す。

 

「助けてくれてありがとうね…君が来なかったらここで干からびてたところだよ」

 

「ん、全然いい。見たところ連邦生徒会の大人の人みたいだけど…もしかして…」

 

彼女は僅かに疑いがかった視線を向けて来る。私は彼女の疑問に応えようと静かに頷いた。

 

「そうだよ。私はシャーレの先生。アビドス高校からの手紙を見てやって来たんだ」

 

「…そっか、久々のお客さんだ」

 

彼女はそう言うと、少し悩んだようにして自転車のハンドルを掴んだ。

 

「それなら、私が案内してあげる。すぐそこだから」

 

「いいの!?」

 

よ、良かったぁ…これでまた、デンジと会える。先生として、生徒の役に立つことができる。本当にこの出会いには感謝しないといけないや。

 

まぁ、それはそれとして…

 

「それはすっごくありがたいんだけど…体が動かなくって…」

 

「ん、それは困った…」

 

エナジードリンクを貰って喉を潤したとはいえ、それで体力が全快になったわけじゃない。まだまだ疲れ切った身体は動きそうになかった。

 

「えっと、ソレ、乗せてくれないかな?」

 

彼女の自転車を指差して言う。彼女は少し悩んだようにしながらも、快く頷いてくれた。

 

「ん。今はそうするしかなさそうだし…いいよ」

 

そうして、私は彼女に支えられながら自転車に跨る。彼女の背中にしがみついて落っこちないように注意する。

 

「あ、それと…私の名前は砂狼シロコ。よろしくね」

 

ペダルを踏み出すシロコ。走り出した自転車は心地良い風を浴びながらアビドス高校へと進んでいく。

 

――ちなみに!シロコの背中からとってもいい匂いがしました!恥ずかしがってるシロコも可愛かったよ!

 

そんな訳で、私はアビドス高校に辿り着いた。

 

◎ アビドス・住宅街

 

「ふぅ…やっぱアチィなアビドスは…」

 

電車を乗り継いでやって来たアビドスは相変わらずの暑さだった。輝く太陽が眩しくて手をうちわのように仰ぎながらアビドス高校へと向かう。

 

唐突だが、俺はホシノと会いたくない。背中をぶち抜かれて以降、二年間も顔を合わせていなかったのだ。今更会ってもどんな顔をすればいいのか分からねぇの本音だ。

 

だから、今日はこいつを持ってきた。

 

鞄からある物を取り出す。それはオレンジ色のグルグル模様が特徴的な仮面だ。

 

「ミレニアムで買ってきた変声機付き仮面。これなら顔も声もバレねぇ」

 

某忍者漫画のキャラと同じデザインにしてみた。黄色のグルグルのやつな。素材は合金だのセラミックだの使ってるらしくて、普通の弾丸じゃ壊れないらしい。まあ値段は高かったが…黒服バイトの金で何とかなった。

 

仮面を顔に装着する。視界が少し狭まるが、問題ない。

 

「よし、これで完璧だぜ」

 

と言うわけで、アビドスに行くにあたって必要なことは解決した。今まで遠目に見ていただけだったからなぁ…ホシノがどんな変化を迎えたか若干楽しみでもある。

 

そんなことを考えつつ歩いていると、あまり時間も経たずにアビドス高校に着いていた。さて、まずはここに先生がいないか確認して居なかったら先生を探しに…ん?

 

ババババババッ!!

 

「…戦ってンのか?」

 

校門から顔を僅かに出してグランドを見渡す。そこには沢山のヘルメット団員と…アビドス高校の生徒たちと先生がいた。

 

「ノノミ!牽制でいいから撃ちまくって!」

 

「シロコとセリカはホシノのサポートをしつつ前進!ホシノも突っ走っちゃって!」

 

「アヤネ!ホシノの回復をしつつ傷を負った子がいれば治してあげて!」

 

先生は後ろの方で身を隠しながらホシノたちに指示を出していた。アビドスの生徒たちは先生の言葉に従ってヘルメット団と戦っている。

 

…ホシノもいるな。髪は以前と変わって長くなり、表情もどこか柔らかさがある。…でも、相変わらずの強さのようで少しだけ安心した。表情もよく見れば鋭さが隠れている。変わっているようであまり変わっていない。その事実に無意識に胸をなで下ろした。

 

…ぶちゃっけた話、このままでも勝てそうには勝てそうだ。

 

だが…ふと、昔を思い出した。ホシノとユメ先輩と俺、三人で過ごしていたあの頃の記憶。たった一週間ぽっちしかなかった…でも、胸の中にちゃんと刻まれている確かな記憶。

 

ここは俺の母校みたいなもんだ。今は学籍さえ消えて死んだことになってるだろうけど…それでも、ここはキヴォトスに来て初めて、俺が居て楽しいと思えた場所だ。

 

だから…

 

仮面を静かに外す。シャツの隙間からスターターを出して指をかける。

 

「ここは、俺の出番ってわけだぜェ!!」

 

ヴヴン!!

 

胸のスターターを思いっきり引っ張って、俺はグランドに飛び出した。アビドス高校に再び、チェンソーの唸り声が上がる。




今回は何だか動きの少ないお話になりましたね。やっぱり小説って難しい…

YouTubeとかネットとかでイラストのコツを学んだり、ラフを描いてみたりしているのですが、やはり分からないことばかりです。
良ければイラストのコツなど、コメントしていただければ幸いです。
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