地獄のヒーローになった男、青春に憧れる。   作:ナマエナガ

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遅すぎるあけおめ・ことよろ


憧れとラーメン

 

アウトロー、とは。

 

それは、自らの信念とポリシーに従い孤高の道を突き進む者。例え世界の全てが敵に回ったとしても自分が信じるものの為に戦う孤独の戦士。

 

私が憧れてやまない存在。

 

憧れのキッカケは…二年ほど前のことだった。

 

◎ ブラックマーケット

 

その日、私は一人でブラックマーケットにいた。

 

理由は単純だ。

 

いつも通りにスーパーで買い物をして、いつも通りに家へ向かっていた。時刻は午後五時を回ったあたり。夕日が眩しいわね、なんて考えながら歩いていた。

 

そんなとき、路地裏で偶々見かけたその光景に、私は目を見開いた。

 

スケバン達に囲まれ、カツアゲされていた生徒がいた。中学生あたりだろうか。弱気な態度は低い身長と相まって更に弱々しく見える。

 

そして、そんな彼女を見て…まともに戦う力もないクセにただ『見捨てたくない』と思った私は、スケバン達に駆け込んだのだ。

 

結果、当たり前のように標的は私に変わった。元々絡まれていた生徒は私を置き去りにして逃げ去り、残ったのは私だけ。

 

「おい!テメェのせいでアイツ逃がしちまったじゃねぇか!」

 

「気弱な奴で丁度いいカモだったのによぉ…どう落とし前付けてくれるんだぁ!?」

 

スケバン達は私を壁に押し付けて、その手に握っていた銃を向けた。

 

「す、すみません…で、でも、あの子が嫌がってたから…」

 

あぁ、今更ながら後悔する。こんな事になるなら買い物なんてしなければ良かった。助けに入るにしても、一歩留まって幼馴染を呼べば良かった。

 

「くだらねぇお情けは他所でやってくんねぇかなぁ!イラつくんだよ!」

 

ひっ、と怖気付いて声を出す。背中には壁がピッタリとくっついているが、それさえ忘れて後ずさろうと無意識に動く。

 

「持ち物全部置いて土下座しな。そうしたら許してやるよw」

 

あはははは!!

 

恐怖に震える私を眺めてスケバン達はゲラゲラと笑う。心底楽しそうに、心底嬉しそうに笑った。

 

……最悪ね。こんな小悪党どもに怖気付いて、恐怖で震えて…こんな自分が嫌になる。自分の行動に後悔はない。間違ったことをしたつもりもない。

 

ただ…

 

ギリッと、奥歯を噛み締める。

 

こんな奴らに、私は間違っていないのに…『すみません』?ざっけんじゃないわよ…!自分の弱さに吐き気がする…!

 

「おい、黙ってねぇでいい加減金出せよ」

 

スケバン達が私に銃口を向ける。今度のは本気だ。私の返答次第では本当に撃ってくるだろう。

 

私は…私は、こんな奴らに…屈することなんて…!

 

「わ、私は…!」

 

そう叫ぼうとしたとき、場違いな騒音が裏路地に満ちた。

 

ヴヴン!!

 

「おっ、ターゲット見ーっけ!狩りの時間だぜ〜!」

 

突如現れたその存在は真っすぐにスケバン達に突っ込んで、瞬く間に彼女達を薙ぎ倒した。

 

「これで十四人目…今日はこんくらいでいいか」

 

スケバン達が倒れ伏し、静寂がこの場を包む。その中で一人だけ、彼だけが立っている。

 

赤い頭部。そこと、両腕から生えたチェンソー。先程の人間離れした身体能力。グロテスクな見た目とチェンソーに付いた血。

 

「…ぁ、あ、貴方は…」

 

恐怖で竦んでいた喉をなんとか震わせて彼に話しかける。そのとき彼はようやく私に気づいたのか、正面から視線を向けた。

 

「あ?貴方はって…いや、つーかお前誰。なんでここにいんの?」

 

「わ、私は…スケバン達に連れ込まれて、お金取られそうになって…」

 

彼の疑問に簡潔に答える。すると彼は興味なさげに息を吐いた。

 

「はーん…ま、次からは気を付けろよ。これからは絡まれねぇようにすんだな」

 

そう言うと彼は背中を向け、ゆっくりと歩き出した。私は、衝動のままに彼に最後の問いかけをした。

 

「ぇ…ぁ、あ、あの!名前を…教えてください!」

 

すると、彼はニヤリと笑って答えた。

 

「チェンソーマン。名前、広めてくれていいぜェ」

 

―――――

 

これが始まり。私の憧れのスタート地点。

 

彼は、チェンソーマンは孤独に戦っていた。自らの信念に従って不良も学園の公的機関も倒してきた。

 

その度に、私は彼への憧れが増していった。

 

彼のようになる。それが私の目標。そしていつか超えるのよ!

 

そうしてアウトローを目指した。弱気な自分を抑えてスケバン達に挑み、威厳を出せるようにイメチェンもしてみた。

 

そうしていたら、いつの間にか幼馴染が助けてくれるようになり、部下ができて仲間が出来た。

 

私は皆と一緒にアウトローになるわ!悪でありながら自らの信念だけは曲げない!真のハードボイルドに!

 

と、言うことで…

 

「早速、アビドス高校を襲撃するわよ!」

 

「クフフッ、アルちゃん今日もやる気あるね〜!」

 

「ア、アル様の為なら何処までも…!」

 

「はぁ…面倒な事にならなきゃいいけど…」

 

◎ アビドス高校

 

とある日のアビドス対策委員会の教室にて、いつも通りに私達は集まっていた。

 

「それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます。

 

本日は先生とチェンソーマンさんもいるので、いつもより真面目な議論ができると思うのですが…」

 

そう言って、定例会議の進行役を務めるアヤネは苦笑した。

 

アヤネの言い方的に疑問に思ったんだけど、普段のアビドスってどんな会議してるんだろう…

 

「はーい☆」

 

「もろん」

 

「何よ、いつもは不真面目みたいじゃない……」

 

「うへ、よろしくねー。先生とチェンソーマンくん」

 

アヤネの言葉にそれぞれが返答した。セリカはツンと、ホシノは相変わらず緩〜い挨拶だ。アヤネはコホン、と咳払いをすると気合を入れて声を張った。

 

「コホン……では、早速議題に入ります。本日は私たちにとって非常に重要な問題…

 

『学校の負債をどう返済するか』について、具体的な方法を議論します。ご意見のある方は挙手をお願いします!」

 

そうして議論は始まった。

 

最初はセリカの『ゲルマニウム麦飯石であなたも一攫千金』プラン。結果、アウト!セリカは後でちゃんと詐欺について学ぼうね。私とアヤネで張り切って教えちゃうから…

 

次!

 

ホシノの『他校の生徒誘拐』プラン。結果、アウト!ホシノ、在校生を増やそうって考え方はいいと思うけど度が過ぎるよ!冗談は程々にね!

 

次!

 

シロコの『銀行強盗』プラン。結果、アウト!シロコ!それ普通に犯罪だからね!?あとデンジはちょっと賛成しかけるんじゃないよ!

 

そして最後に…

 

ノノミの『スクールアイドル』プラン。

 

結果は…

 

「いいわけないじゃないですか!!」

 

「わー!出たー!アヤネちゃんのちゃぶ台返しー!」

 

アウト!アヤネのちゃぶ台返しによって反対となったのだった…

 

私としては普通にスクールアイドルの皆も見たかったんだけどなぁ…一昔前にやっていたアイドルアニメ好き好き大好きな私からすると大興奮ですよ!

 

と、そんなザワついた教室の中でデンジが悩みながらも冷静に言った。

 

「つーか、懸賞金のかかった不良ども潰すしかなくね?」

 

デンジのこれまでで一番現実的な案によって、教室はシーンと静まり返り定例会議は終わった。

 

◎ 紫関ラーメン

 

「いや~、悪かったってアヤネちゃん。ラーメン奢ってあげるから怒らないで、ねっ?」

 

「別に怒っていません…」

 

ホシノと眼鏡っ娘…アヤネの会話を聞き流しながら俺は紫関ラーメンの暖簾をくぐった。俺達はあの後、アヤネのご機嫌取り兼昼メシを食いにここにやって来た。

 

「アヤネちゃん、お口拭きましょうねー☆」

 

「アヤネ、チャーシューいる?」

 

「ふぁい…(もぐもぐ)」

 

アヤネが対策委員会の面々からお世話をされている様子を見ながらラーメンを啜る。ホシノの視線を気にするとやっぱり食いにくい…が、相変わらず紫関のラーメンは美味かった。

 

……それはそれとして、チョッピリだけアヤネが羨ましいぜ。あんなにあ~んされてお口拭かれて…俺もされてみたいじゃん…!!

 

「いや~、アヤネちゃん怒ると凄いでしょ?優しい人が怒ると怖いってやつだね」

 

「それ言うとお前も怒ったときエグそうだな…」

 

向かいに座るホシノからこしょこしょと小声で声をかけられて答える。つーかエグかった記憶しかねぇ。

 

今更だけど俺がいなかった二年間でどうしてそうなったんだ…?

 

ツンツンしてて鋭い剣みたいだったお前がユメ先輩みたいなふにゃ~んって感じの豆腐みたいになった理由が知りたい…

 

と、そんな事を考えていると紫関ラーメンの扉が音を立てて開いた。

 

がららっ

 

「あ、あのぅ…」

 

気弱な声と共に入ってきたのは紫色の髪をした生徒だった。何気に着ている軍服っぽい制服がカッチョイイ。

 

「このお店で一番安いメニューって何ですか…?」

 

「ええっと…一番安いのは580円の紫関ラーメンです!看板メニューなんで、美味しいですよ!」

 

紫髪の生徒にセリカが答える。するとソイツは嬉しそうに店を一度出ると、新たに四人組となって入店してきた。

 

「えへへっ!やっと見つかった600円以下のメニュー!」

 

「ふふふっ。ほら、何事にも解決策はあるのよ。全部想定内だわ」

 

「さ、流石ですアル様…!」

 

「はぁ…」

 

入店してきた四人の言葉的に相当に貧乏だったんだろう。苦労人っぽい雰囲気を纏う白髪…白髪?アレ白髪でいいのか?…黒メッシュ?は特に大変そうだ。

 

四人はセリカと会話を交えると席に着いた。そして運ばれてくる特大ラーメン。それを四人は一口啜ると…

 

「おっ、おいしいですっ…!」

 

「中々イケるじゃん!こんな辺鄙な場所なのに、このクオリティなんて…!」

 

その美味しさに感嘆の声を上げていた。そんな四人を眺めていた先生が呟く。

 

「良かったね、あの子たち。大将も凄く優しいし」

 

それに頷きながら、四人組に歩み寄るアビドス対策委員会を見守る。

 

「えへへ……私達、此処の常連なんです、他の学校の生徒さんに食べて頂けるなんて、何だか嬉しいですね」

 

「きょ、きょ、恐縮です……」

 

「その制服、ゲヘナ? 遠くから来たんだね」

 

「私、こういう光景を見た事があります☆一杯のラーメン、でしたっけ……」

 

「うへ~、それは一杯のかけそばじゃなかったっけ?」

 

ウ~ン…なんかなぁ…あの四人組、どっかで見たことある気が…

 

ウ~ン…ウ~ン…

 

◎ 紫関ラーメン前

 

ウ~ン…ウ~ン…

 

「それじゃあ気を付けてね!」

 

「お仕事、上手くいくといいですね☆!」

 

「ふふっ、ありがとう!貴女たちも学校の復興頑張ってね!私も応援しているわ!」

 

スタスタとご機嫌に立ち去っていく四人組。特にリーダーであろう赤髪の生徒はウッキウキな様子だったけどよぉ…

 

「それじゃあ、私も行こうか…って、どうかしたの、チェンソーマン」

 

「おう先生…なんかな、アイツらどっかで見たことある気がしてよ…」

 

あぁ~ん…ウ~ン…あっ

 

「あ~、思い出したぜ」

 

「もしかして知り合いだったの?」

 

「いや、別にそんなんじゃねぇけどよ」

 

アイツ、もう不良どもには絡まれなさそうでチョットだけ安心したぜ。




どうでもいいがからあげクン美味い
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