地獄のヒーローになった男、青春に憧れる。   作:ナマエナガ

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最初はカヨコ視点でーす


決戦は始ま…らない?

◎ アビドス街

 

柴関ラーメンを出た私たちはアビドスの街を歩いていた。アビドス高校の面々は私たちが店を出る時も軽く見送りをしてくれた。…少し離れている席から私たちを見ていた大人と仮面の人物は怪しかったけど。

 

「それじゃあ、気を付けてね!」

 

「お仕事、上手くいきますように!」

 

「あははっ!了解!あなたたちも学校の復興、頑張ってね!私も応援してるから!」

 

社長の元気な返事が響く。

 

アビドス高校の面々は穏やかな雰囲気で私たちを受け入れてくれ、その後も満足した食事を取らせてくれた。大将も優しくて快活な人…犬ではあったんだけど…

 

「ふぅ…いい人達だったわね」

 

「………」

 

流石に社長の誤認識をこのまま放置するわけにもいかない。私たちはこれからアビドス高校と戦わないといけないわけだし、今回はバイトの傭兵も多く雇ったから止めるわけにもいかない。

 

「社長。……あの子たちの制服、気付いた?」

 

「え?制服?なにが?」

 

…やっぱり気付いていなかったかぁ

 

「アビドスだよ、あいつら。」

 

室長であるムツキがニッコリと答えてくれた。そして社長の僅かな沈黙。

 

あー、これは来るね

 

「なななな、なっ、何ですってーーーー!!!???」

 

いつもの白目と愕然と開いた口。そこから飛び出る大きな声。なんだか慣れてしまった光景に僅かに顔を顰める。普通なら見慣れる、聞き慣れるものではないはずなんだけど…

 

「あはははは、その反応うけるー」

 

「はぁ……本当に全然気付いてなかったんだ…」

 

「えっ?そ、それって私たちのターゲットってことですよね?わ、私が始末してきましょうかっ!?」

 

驚愕の事実を前に叫ぶ社長にハルカが反応する。個人的には今更引き返して襲撃しても手遅れだと思う。恐らく既にアビドス高校付近にまで戻っていることだろうし。

 

「あははは、遅い、遅い。どうせもうちょっとしたら攻撃を仕掛けるんだし、その時に暴れよっ、ハルカちゃん」

 

どうやら室長も同じことを思ったのか、ハルカを止めてくれた。それはそうと…

 

「う、うそでしょ……あの子たちが?アビドスだなんて…うう、何という運命のいたずら……」

 

なんとかして社長を起きがらせなければいけない。依頼は受けてしまったのだ。今更やめることはできない。

 

「なにしてんの、アルちゃん。仕事するよ?」

 

「バイトの皆が、命令を待ってる」

 

「本当に…?私、今から…あの子たちを…」

 

…さて、どうしよう。これ、完全に参ってるね…

 

社長はまだ悩みから抜け出せそうにないらしい。そんなとき、室長の機転の効いた言葉が響いた。

 

「あはは、心優しいアルちゃんにはちょっと厳しい状況だねー。

 

『情け無用』『お金さえもらえればなんでもやります』がうちのモットーでしょ?今更なにを悩んでるの?」

 

「くっ…ぅ…このままじゃダメよ、アル!一企業の長として、このままじゃ!」

 

室長の言葉が社長の心に火を付けてくれたようだ。すっかり顔もキリッとカリスマ風に戻して社長は言う。

 

「行くわよ!バイトを集めて!」

 

それに私たちは従った。

 

―――――

 

さて、そんなわけでバイトの傭兵を集結させた私たち。日雇い感覚で来ている彼女たちに私たちは声をかける。

 

「なんだよ〜、遅かったじゃん」

 

「少し野暮用よ。準備はできてるわよわね?」

 

野暮用、と言うには少し面倒な話だったけれど、そこは気にしない。

 

「もちろん。なんでもいいけど、残業はなしでね。時給も値切られてるし」

 

なんとも耳の痛い話だった。我ながら便利屋68の財政難が心配になる。この依頼を達成したら幾らか楽になるだろうか…

 

そして社長が最後に全体に声をかける。

 

「ま、まぁ!細かいことは今は置いておいて!さぁ、行きましょう!アビドスを襲撃するわよ!」

 

「しゅっつどぉー!」

 

「はぁ…」

 

「アル様!わっ、私頑張りますから!ひとり残さず、ぶっ潰しちゃいますっ!」

 

そうして、私たちはアビドス高校に向かった。

 

◎ アビドス高校

 

柴関ラーメンから帰った俺達は対策委員会の部室に戻ってきた。腹も埋まって皆気が落ち着いたのかゆったりとした雰囲気が流れている。窓から入り込む仄かな風が心地良い。

 

「一休みしてから、また会議をしましょう」

 

そう言ったのはアヤネだ。まぁ、元を言えば定例会議でキレたアヤネを宥める為に柴関に連れて行ったのだから自然でもある。

 

それに定例会議で出た案は結局、懸賞金狩りくらいなものだけ。他にも策はないか、一休みしてから再び話し合おう、ということで全員が頷いた。

 

と、なると幾分か余裕もできるわけなもんだから。

 

「ふぁ〜あ…」

 

あ~、眠みィ…アビドスって基本ポカポカしてるし乾燥してるけど、それに慣れれば案外寝れるんだよなぁ…軽く三十分くらい昼寝すっかなぁ…

 

と、そんな事を思っているとアヤネが焦ったように口を開いた。

 

「校舎より南15km地点付近で大規模な兵力を確認!」

 

アヤネのその声に全員が反応した。俺は先生に叩き起こされた。解せん。

 

アヤネの言葉を聞くと、どうやら向かってきているのは大規模な傭兵集団らしい。ヘルメット団ってわけじゃないのが気になる所だが…

 

どっちにしろ、相手がアビドス高校を狙っていることには変わりない。襲撃される前に叩く。そう作戦を立てた俺達はすぐさま学校を出た。

 

◎ アビドス・市街地

 

ドタドタドタドタッ!!

 

「ぎゃー!逃げろ逃げろー!!」

 

「こんなの聞いてないってー!!」

 

砂煙をあげながら逃げていく傭兵たち。低めの身長と数の多さは猫を前にしたネズミみたいに見える。恐れと焦りで顔を真っ青にして逃げていく彼女たちを前に、俺は困惑で包まれていた。

 

「流石によぉ…逃げるの早くね?」

 

「ま、まぁ、それだけチェンソーマンが敬われているってことで…」

 

俺の呟きに隣にいた先生が答えた。傭兵たちが引いて前線である俺の所まで来たらしい。

 

つーか俺が集めんのは恐怖とか畏怖だろ。

 

内心で先生の言葉にツッコミを入れつつ、少し離れたところにいる便利屋を見る。社長たるアルは白目を向いてあんぐりと口を広げていた。

 

「な、なんで逃げるのよー!?定時まで時間はあるでしょ!?」

 

「チェンソーマン相手とは聞いてないよ!あの怪物相手にするなら断ってたって!」

 

アルの叫びに傭兵の一人が逃げながら答える。そして最後の一人がポケットから財布を取り出してぶん投げる。

 

「貰った分のお金は返すから!あとはどうにかしてー!」

 

「ちょ、ちょっとー!?!?」

 

うわぁ…ちょっとだけアルが可哀想になってくるぜ。

 

――傭兵の反応があったポイントまで辿り着いた俺たちは便利屋68と再開を果たした。

 

どうやらアビドス高校を襲撃しようとしていたのは便利屋68だったらしく、柴関ラーメンでの事を色々言い合って戦いになったんだが…

 

「俺が出た途端にコレかよ」

 

傭兵たちは俺がチェンソーマンに変身した途端に逃げ出してしまった。別に戦うことが好きなわけじゃないけど、一応はヤル気を込めて来たのに些かガッカリだぜ。

 

「なんか皆逃げちゃったけど…君たち、どうする?」

 

ホシノが先頭に立って便利屋68に向かって言った。ホンワカとしつつも便利屋の中心であるアルを真っ直ぐと見つめている。

 

「社長…どうする?結構ピンチだけど」

 

「ありゃりゃ…まさかチェンソーマンがいるとはね。アルちゃん、逃げる?」

 

「ぐっ、うぅ…ここは撤退を…でも…」

 

アルは震えた瞳で俺を見ていた。その視線は傭兵たちが俺に向けていた恐怖ではなく…なにか、別な感情が見えた。

 

「…はぁ…ふぅ…ここは、撤退するべきなのでしょうね。でも…」

 

アルは息を整えると、俺を見つめてライフルを構え直し、啖呵を切った。

 

「憧れを前に、無様は晒せないのよ!」

 

その言葉に口角が上がるのを自覚する。

 

「…いいじゃねぇか。好きだよ、そういうの」

 

「…光栄ね。」

 

二年前に見かけたときから随分と変わったらしい。いいじゃねぇか…少し見ない間に本当に面白い奴になった。

 

「皆…ごめんなさい。逃げたいのなら、逃げていいわ」

 

アルの言葉に各々が言い返す。

 

「はぁ…負けそうになったら、すぐに逃げるからね」

 

「クフフ、私はアルちゃんらしくていいと思うよ」

 

「わ、私はアル様の言う通りに吹き飛ばすだけですから…」

 

アルを先頭に便利屋68はそれぞれ銃を構える。俺たちも警戒態勢を取り、アルたちの動きに注意する。

 

「皆、行くわよ!」

 

「皆、来るよ!」

 

アルと先生の言葉が重なって、恩知らずの決戦は始まった。




チェンソーマン次回で最終回ってマジですかい?さ、三部始まるよね…?パワーちゃん探してイチャイチャスローライフ送る三部は存在するよね…?
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