憑依・青春・始まり
「ふあぁ〜…あ?」
朝、俺は自室のベッドの上で目を覚ました…はずなんだがな。
ガタンゴトンと揺れる電車の中、まばゆい光が差し込む席に俺は座っていた。向かいの席には、青い髪の少女がいる。
「私のミスでした。」
少女は綴る。まるで自らの罪を嘆くように。まるで過去の行いを悔いるように。
「私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況。」
少女の顔を俺は見たことがある。何度だってスマホ越しに見ていた彼女の顔。
「結局、この結果にたどり着いて初めて、あなた達の方が正しかったことを悟るだなんて……」
少女の身体には多くの傷がある。血が服に染みて赤い領域を作り出す。少女はそれを気にせず続ける。
「……今更図々しいですが、お願いします。」
そして、静かに俺の名前を呼んだ。
「■■君」
なぜ、この少女が俺の名前を知っているのか。なぜ、俺はこの少女と出会っているのか。
「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。」
「何も思い出せなくても、おそらくあなた達は同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから」
君は、俺に何を託そうと言うのか。俺は平凡でボッチで不真面目なクソガキだ。でも…
「ですから……大事なのは経験ではなく、選択。」
「あなたにしかできない選択の数々。」
ふと、脳裏によぎる数々の生徒たち。きっと俺がこれから親交を交わしていくであろう彼女たち。
「責任を負うものについて、話したことがありましたね。」
「あの時の私には分かりませんでしたが……。今なら理解できます。」
彼女たちの日々が思い出される。笑顔と涙、時には喜び時には悲しんだ日々の数々。
それは、とてもまぶしくて、温かいものに思える。
「大人としての、責任と義務。そして、その延長上にあった先生と、あなたの選択。」
「それが意味する心延えも。」
少女は少しばかり息を整え、小さな微笑みを向けた。そこでようやく、少女の顔が見えた気がした。
「ですから、■■君。」
「私が信じられるあなたと先生になら…」
「この捻れて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を……。」
綺麗な瞳を俺に向けて少女は言祝く。祈るように、囁くように。
「そこへ繋がる選択肢は……きっと見つかるはずです。」
「だから■■君、どうか…」
そんな風に頼まれちゃあ、断ることなんてできない。そう俺の心臓が叫んでる。
「よく分かんねぇけど…まぁ、俺がすっげえ~ドカンと頑張って皆を助ければ、大丈Vでしょう!」
最後に少女は少しばかり目を見開いて、優しく笑った。
そして、俺はハッと目を覚ました。
――――――――――
「あ~…どこ、ここ?」
俺は真っ暗な路地裏のような場所で目を覚ました。
あれ〜…おっかしいなぁ。俺は確か自室のベッドの上でぐーたらゲームをポチポチしていたはずである。
それが気付けば見知らぬ路地裏…
「もしかして俺、誘拐されちゃった!?」
や、やべぇよ!俺誘拐されてんじゃね!?
「スマホ…は充電中で置いてきたんだっけ…。財布…も机ん上だ…。」
や、やばい…本格的にやばい。財布もなきゃりゃ、スマホもねぇ。これじゃ、誰とも連絡が取れねぇじゃねぇか。
「ク、クッソ…」
取り敢えず、この路地裏から出るのが先決か?誘拐されていたって仮説がマジだとして、ここに残ってても犯人がやってくるかもしれねぇしな…
兎に角、街の大通りに出ねぇと…!
「あぁ、もう…!明日は中間試験だってのに…!」
我武者羅に走って出口を探す。すると、小さな光が見えてきた。ようやく出口を見つけられた…!
「ようやく、出れ…た…」
突然だがこの現状について、俺は3つの選択肢があると思う。
①これは夢で俺はまだ家のベッドの上でグースカピースカ寝ている。
②これは何かのアトラクション、ドッキリで全部嘘っぱち。
③現実は非情である。この光景はマジのリアルで俺は寝てもいないし、ドッキリを受けているわけでもない。
「いてぇ…」
自分の頬をつねってみる。普通に痛かった。つまり…
「①はない…ま、まだ②があるよな…?」
でもよぉ、ドッキリでもこれはねぇだろ…
俺の視界に映るのは、綺麗な街並みとそこで過ごす少女たち。わー、皆可愛いし、何故か犬が二足歩行で歩いてるし、ロボがスーツ着てる。
「おら!撃て撃てぇ!」
「お前ら負けんなよ!」
しかも、皆銃器をもってバチバチに撃ち合ってる。なのに誰も血ぃ流してねぇし、平然としている!
やばい、混乱で頭がおかしくなりそうだ…!
つーかさ、なんか俺の声違くね?さっきから自分の声が、なんかこう…聞き覚えのある…。
バッと、路地裏にある窓を見る。反射した俺の顔は…
「デンジじゃねぇか!」
デンジ。チェンソーマンの主人公。
「じゃ、じゃあ…!」
胸に手を当てる。違和感。
襟からシャツの中を見る。胸元から生えているチェンソーのスターターがあった。
「②も、なさそうだな…」
拝啓、お父さんお母さん。
どうやら、俺は…デンジになって異世界に来ちまったようです…
ちなみに主人公くんの本名はまだ設定途中。