転生先はゲームの世界(意図せず曇らせフラグをへし折る系男子)   作:アンダギー

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 周知と注意

 

 鳥は今日も空を自由に飛んでいる。私も鳥のように羽が生えていたのなら、きっと誰よりも早く誰よりも高く飛ぶだろう。外では今日も激しく虫が鳴いている。その声はまるでこの社会に対する不満を言っているかのように。私はその声に心の中で同調する。理不尽に抗い続けるその姿がとても美しく感じた。まぁ、実際は子孫を残すために鳴いているだけなのだろうが、今の私にはそうなことどうでもよかった。今は、どんな些細なことでも自分を勇気づける何かが欲しかった

 

 しかし、現実はあまりに残酷であった。鳴いている虫を空から現れた鳥が捕食する。涙が出てくる。所詮この世は弱肉強者。強きものが弱きものを支配する。人間社会で例えるのであれば能力が優れているものや権力のあるものが他者を支配する。それ以外は皆、弱者である。なんと理不尽なことか。鳴いている虫も、今馬車の中で1人怯えている私もみんな一つの命なのに。私は憤怒する。そして私は同時に決意する。戦わなければならない。力に屈するのではなく、抗い戦い続ける。私は王家の圧力などには負けない!!絶対に!!

 

 

 

 そう思っていた時期も私にはありました

 

 

 

 城が開場され、そのまま中に案内され、気づいたら王の眼前にいた。不思議なことに王を目の前にすると冒頭で意気込んでいた決意も一瞬で揺らいでいた。今回は仕方ない。ガンガン行こうぜではなくて命を大事にだ。人生には負けることも時には必要なのだ

 

 「お〜ミーネよ。長旅ご苦労だったな。さて、それとお主はニックであったな。今回の件、誠に大義であった。褒めて遣わす」

 

 「は!ありがたき御言葉、誠に恐悦至極に存じます」

 

 オーラがすごい。もうなんて言うか、存在自体が王!って感じな人だ。逆らったらすぐに打首にするか!って言いそうな感じ。言葉には細心の注意を払うこととしよう

 

 「して、ミーネよ。他のものより聞いた話なのだが、このものをお前の従者とすると言うことは真に本当か?」

 

 早速本題に入っていく

 

 「はい。お父様。私は今後ずっとニックといるつもりです」

 

 おいおい…まじかよミーネ様。従者にするかどうかだよ?君のパパが聞いたのは。その回答だと角が立つよ

 

 「…ニックよ…お主の意思はどうなんだ?」

 

 どうなんだって…ぶっちゃけていいの?勇気があればすぐにでも言いたいよ「なりたくありません!さすがに王家は無理です!許してください!」って

 

 「そこは大丈夫です、お父様。ずっと一緒にいたいって言ってきたのはニックの方からなので」

 

 さらっと嘘つくじゃん。パワハラと偽造だよ。現実世界だったら免職案件だよ?

 

 「ね、そうよねニック?」

 

 ね?じゃねーよこのパワハラ王女が!この場ぶっ壊してやろうか?

 

 「いえ…事実無根…」

 

 「え?」

 

 「ですから…事実」

 

 「この場で一生分の責任を取らせるわよ」ボソッ

 

 「はい!私からお願いした次第であります!若輩ではありますが骨身を惜しまず、全力でお仕えする所存ですので、何卒ご了承いただけたら幸いです」

 

 「おぁ…そうか…心持ちは良しとしよう」

 

 私のあまりの力説ぶりに王がたじろいた。違うんです国王…できれば止めて欲しかったんです…

 

 「色々と問題があると思うが…まぁ今はよかろう。ニックよ、ミーネの従者として節度ある付き合いを心がけよ。なにより、私を失望させるなよ」

 

 「はい!命にかけても節度ある付き合いを心掛けます!節度ある!付き合いを!命にかけても!!」

 

 大事なことなので2回言った。だからさミーネ様、そんな顔で見ないで、パパもドン引きしてるよ。というか、王様絶対知ってるよね?あくまで従者って建前であること。ミーネ様露骨すぎるからな…うん。頭が痛いよ…早く終わってくれないかな…

 

 「お待ちください国王!!」

 

 頭痛を堪えていると突然城内に怒声が響いた。何事かと声の出所をみると1人の青年が立っていた

 

 「このようなものをいきなり従者とは納得できません!!他のものも皆同じ気持ちです!!」

 

 声の主はすごい剣幕で国王に異議を申し立ててた。いいぞ!その通りだ!私は心の中で応援をする

 

 「そうか…では、何が不満なのか私を納得させてみよ」

 

 「聞いてみれば、彼は平民の出とか聞きました。王家の従者が平民など異例にもほどがあります。さらに、今回の件も少し疑問に思います。本当にこのような子どもが賊を討伐したのでしょうか?そこを確認しないと納得いきません」

 

 「ではお主はどうしたら納得するのだ?」

 

 「今から私と手合わせをしてもらいます。そこでもし、私に傷をつけることができたのなら認めます」

 

 「ふーむ」

 

 青年の主張に王が少し考え込む

 

 「お主が認めるか認めないかなどどうでもいいが…うむ。ニックよワシも興味がある。このものを叩きのめしてみよ」

 

 「王様?傷をつけるだけで勝ちなんですよね?」

 

 叩きのめす?

 

 「従者となるのであれば、それなりの力を見せてもらわねばならぬ。ましてや傷をつける程度などつまらぬしな。まあ気にするな!いくら叩きのめそうとも不問とするので、心置きなく死合うがよい!」

 

 いやいやいや!逆に叩きのめされたらどうすんの!?しかも試合って意味じゃなくて死合ってなに?知らない言葉すぎて怖いんだけど

 

 「ニック、腕の見せどころね♪勝てばみんなに認めてもらえるんだからまたとないチャンスだわ!私のために頑張って叩きのめしてちょうだい」

 

 ミーネ様はノリノリで私に語りかける。誰のせいでこんなことになったと思ってるんだ…

 

 「もし、断ったら?」

 

 「そうね…本当に残念だけど貴方の人権を剥奪せざるを得ないことになるわね。それはそれで私はいいけど…」

 

 「ミーネ様に勝利をお届けします。命に変えても」

 

 負けることも逃げることもできないことが確定した。人権剥奪するって恐ろしいことを平気で提案するとはやっぱりミーネ様は末恐ろしい人だ。鳥肌がおさまらない

 

 「おい、平民。すぐに死合うぞ、ついてこい」

 

 すでにやる気満々な青年に言われるがまま、後ろをついていく。少し移動すると広場のようなところで青年が止まった

 

 「準備ができたら教えろ。まぁ安心しろ平民よ。殺しはしないさ」

 

 最初から余裕綽々な態度で鼻につくがとりあえず聞き流し準備を行こととした。その際に父から鍛錬用に渡されていた父お手製の木刀を武器として用意する。自然と手に馴染むし、叩きのめすには充分だろう

 

 「武器は自前か…それにしても随分と…」

 

 相手の様子を見ると肩を震わせていた。何かおかしいことでもあるのだろうか?

 

 「何かおかしいですか?自慢ではないのですが父から作ってもらったもので鍛錬にはうってつけなんですよ?」

 

 「はは!!やはりか!随分と貧乏くさい。さすが平民だ!お前の親の程度もしれるわ!!」

 

 「は?」

 

 すみませんミーネ様。叩きのめすという約束守れそうにありません。こいつは絶対に叩き潰します。のめすでは済ませません。私の父を馬鹿にすることは何人たりとも許せません

 

 「貴族様。先にお伝えしておきます」

 

 「なんだ?」

 

 「この武器を見てその程度の感想しか出ないなんて、程度が知れますよ?」

 

 「この平民が!!」

 

 合図も待たずに青年が突っ込んでくる、さて、お仕置きの時間だ

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