転生先はゲームの世界(意図せず曇らせフラグをへし折る系男子) 作:アンダギー
カンカンと木刀がぶつかる音が広場に響く。
青年の一方的な攻撃が繰り広げられる。私はそれを淡々と受け流す。周りのギャラリーは、その姿を見てきっと私が手が出なくて苦戦していると思っているだろう。しかし、現状は違う。こいつは完膚なきまでに叩きのめすと決めたのだ。疲れ果て、絶望に染まったのち徐々に追い詰めていく。その為に今はただ受け流す。
青年の猛攻から早5分ほど、最初の威勢はどこに行ったのやら青年からは苦痛の表情が見てとれた。待ちに待ったお仕置きの時間だ。私はまず、もはや使い物にならない青年の足を殴打する。これで逃げることもかわすこともできない。そこからは剣を持っていない左手を執拗に狙う。武器を持つ手は最後にとっておく。理由は武器を離さない限り周りは止めに入りずらいからである。だから、そこまでいたぶり続けることとする。
苦痛で顔を歪める青年。うちの家族を侮辱さえしなければこんなことになってはなかっただろうに…あの横柄な態度が今では必死に攻撃から身を隠すことしかできていない。何と哀れなものなのだろう。最早、戦う意志すら感じない。そろそろ終わりしようと青年の武器目掛けて木刀を振り下ろす。バキッと音と共に青年の武器は破壊される。それを合図に私は一仕事終わったかのように周りを見渡すと会場が静寂に包まめていた。その空気でふと我にかえる
やばい。やりすぎた…と
頭の中でどうするか考えるがこの状況を切り抜ける策が思いつかない。冷や汗が溢れる。もしかしたら不敬罪とならないか…と不安が胸を支配する中、王の声が広場に響き渡った
「勝負あり!全く見事な武者ぶりであった!!さすが私の娘!!人を見る目がこの歳で備わっておる。皆のものもそう思わぬか?」
その声につられるよう、周りの人間が皆、王に賛同する。しかし、やれミーネ様は慧眼であられるや、先見の明があるなどと、私のことは全く褒めてくださらないのが癪ではあったが、きっと、私が標的にされぬよう敢えて話題を逸らしたのだろう。そう思うことにした。たがら王がボソッと「負けなかったか…」と落胆していたことも不問にすることとした。早く子離れしやがれとは思ったが
「ニック!!」
「うおっ!?」
そんなことを考えていると背中にミーネ様が突っ込んできた。正面からだと避けられることをわかっていたのだろう。周りのいう通り慧眼であるのは確かかもしれない。今後は背後にも気をつけよう
「さすが私のニック!かっこよかったわ!!」
自分のことのようにはしゃぐ主人をみて、嬉しい気持ちになる。それと同時に、この笑顔を守らなければならないなと思った。
「勿体なきお言葉。主人に勝利をお届けできて幸いであります」
少し堅苦しいが、礼儀に倣い主人の前に膝をつき主人に言葉をおくる。ふふ、決まった!
「堅苦しい。なんか似合わないから次からはやめてねニック」
普通に酷評であった。次からは控えよう
「ニックよ」
少し落ち込んでいると子煩悩国王から声をかけられる
「いかがなさいましたか?」
「貴様、何か失礼なことを考えなかったか?」
「い…いいえ…滅相もございません」
王の鋭い眼光に怯む。余計なことは考えないようにしよう
「まぁよい。今回は不問としよう。さて、お前に一つだけ感謝を伝える。有り難く受け取るが良い」
「はい?」
「あくまで道化を演じるか…まあそれもよい。娘に対する忠義と受け取っておこう。遺憾ではあるがな」
「えっと…意味が…」
目の前の子煩悩が1人で納得していることに理解が追いつかない
「よいよい。しかし、まさかここまでやるとはな…やはりうちの娘の目に間違いはなかった!お主、この前ミーネが襲われた件、王室のものが企んだと踏んでいたのであろう?そこで敢えて自身の力を見せつけ、周りに牽制を図るとは…その歳にしてやりおるわ。これでお主の実力が知れ渡り安易にミーネを襲うことはなくなろうよ。それゆえ、貴様に感謝をと思ってな。よくやってくれた。誠に大義であったぞ。ニックよ」
あーーー、違うんです国王。そんなこと考えて戦ったのではないのです。ただ、うちの家族を馬鹿にしたから腹いせにいたぶっただけなんです。そこまで聡明ではないんです私は。どうすっかな…このままやり過ごすか…というか、ミーネ様すごいみてるよ。「私のためにそんなことを考えて戦ってくれたのね」って目だけで伝わってきてるよ。うん。今回は計画通りということにしておこう。否定したら後が怖いし
「さすが国王。バレていましたか…ミーネ様は今後ともしっかりお守りしますので、これからもよろしくお願いします」
「うむ。こちらこそ頼むぞ。節度ある付き合いでな」
「無論。そのつもりでござい…グェ!」
急に後ろから首を絞められる
「お父様。私のニックの実力はわかっていただけたと思います。それと、私に対する忠誠心も。最早、愛と言っても過言ではありません。私は主人としてその愛に応えていくつもりです。それが私にできる最大限の彼への褒美だと考えております。それにニックもそれを望んでいます」
「いぇ…のぞ…んでい…ま…せ」
「え?のぞんでいま?」
国王に違うことを必死に伝えようとするが、その度に気管を圧縮され言葉が紡げないでいる。あと捏造やめろミーネ様
「もう一度だけ聞くわね。望んでるわよね?イエスかはいで応えなさい」
それを合図に拘束が少し外れる。てか、どっちも肯定じゃないか!詐欺師め!だか、残念でしたねミーネ様!世の中はそんなに甘くないんですよ!!否定してやるかんね!!
「望んでおりま………ピト………すーーー」
背中に何か押し付けられた。私にはわかる鋭利なものだ。そうか…ミーネ様そこまでするのか…うん!そんな状況だったら流石にみんなも断れないよね!だから、今回は私は悪くない。悪いのはこの社会だよ
「……おぉ…そうか、まぁ精進せよ。ニック…あと、頑張れ」
何だよ国王。急にそんなに優しくすんなよ。お前見ただろ絶対。私の押し付けられてるものを。お前の娘だぞ責任取れよ
「お父様にも認められちゃったわ!やったわねニック♪」
あ…悪魔だ…私の目の前に悪魔がいる!!
というか、背中の外してー!!!誰か代わってくれー!!!