転生先はゲームの世界(意図せず曇らせフラグをへし折る系男子) 作:アンダギー
妻が死んだ
息子も死んだ
わからない
なぜ僕だけ生きているのか
なぜ…
「物乞いかしらね…ずっとあそこから動いてないのよ」
「ほら、あまり近づいちゃいけません!病気がうつるわよ!」
ガヤガヤと街の音が聞こえてくる
「どうでもいい…どうでもいいんだ…もう…」
2人が僕の前からいなくなってから全てがどうでも良くなった
家に帰ることも、食事をとることも、寝ることもなくなった
目に映る全てが白黒になった
終わりのない日常がただ続いていく
昼も夜もない、ずっと終わりのない永遠が続いていく
確か誰かを追い続けていたような気がするが…どうでもいいか
「…あな…です…ほんと…むの…」
「…グス…グス」
白黒の世界でノイズがはしる。子どもの泣き声のような
子ども…
何故かわからないが声の主の元に足が進む
その場にたどり着くと身なりのいい小さい女の子を、同じく身なりのいい女の子より少し大きい男女のグループが取り囲んでいた
「まさか王族であるミーネ様とあろうお方が…魔法が使えないなんて…とっても悲しいことですわ〜皆さんもそう思いますよね?」
「はい。とてもとても悲しく思います。まさかあのミーネ様ともあろう方が魔法一つすら使えないとは…嘆かわしい限りです」
「これに比べてあなたのお姉さまはとても優秀ですわ〜魔法もさることながら勉学まで…あなたとは大きな違いですわね」
その言葉にただ少女俯き涙を流していた
子どもながらなんとも残酷でなんとも醜いものなのだろう
ただ魔法が使えないだけで
ただ他の人と少し違うだけで
なぜこんなにも世界は残酷なのだろうか
僕は泣いている子から目が離せないでいた。それは同情なのか、はたまたその他の感情なのかわからないがめを離せないでいた
「そういえばあなたのお母様、今日も顔を出してなかったわね。もしかして…愛想が尽きちゃったのかしら?あなたが無能だから」
その声に周りはキャッキャと笑いだす
「貴方のお父様も、もしかしたら貴方のこと捨てるかもしれませんわよ!なんせ、無能なのだから!」
何が面白いのか笑い声がひどくなる
頭にノイズがはしる
「どうせ捨てられるわ!貴方のご両親とも愛してないのよ!あんたのことなんて!」
「…違う……グス…私は愛されてる…お父様もお母様も…私をちゃんと愛してくれている…私は無能じゃない…」
「はて?何か聞こえまして皆さん?あ、無能だから人間の言葉を話せないのかしら?誰か教えてあげなさいな」
「私は!!無能じゃない!!」
怒声ともに女の子はいじめのリーダーの子に掴み掛かる
しかし、多勢に無勢なのかすぐに引き離され取り囲まれる
王族の子ということもありさすがに手は出せないのだろう
取り囲むと今度は全員で女の子に罵声を浴びせていた
それでも負けないように言い返している少女
涙ぐみながらも愛されていることを証明しようとしている少女の姿を見て気付いたらその少女の前まででていた
「なんですの!?あなたは!?」
リーダーの女の子が話しかける。イライラも溜まっていたこともあり少し脅しをかけることとした
「貴様ら…海と山どっちが好きだ?」
全員がポカンとする
「どっちが好きかって聞いてるんだ!!!!!!早く答えろ!!」
突然の怒声に全員ビクッと肩を震わせる
「…う…うみです……」
「そうか、わかった。じゃあお前を埋めるのは山にしといてやる。せいぜい嫌いな山で楽しく過ごしな」
その言葉と共に腰の剣に指をかけると蜘蛛の子を散らすかの如く逃げて行った
「…逃げ足だけは立派なようだな…さて、お嬢ちゃん大丈夫かい?」
少女の前に腰を下ろし様子を伺う
「…助けてくれてありがと…でも、貴方の方が大丈夫?」
「え?」
「とても、悲しい顔をしているわ…」
ーーーーーーーー
「お父様がここのパンが美味しいって言ってたからいつか行ってみたいと思ってたの…よかったあなたがいて」
少女に心配されて少し動揺していたら、いきなり手を取られあれよあれよと連れ回され気付いたらパン屋で来ていた
「…お嬢ちゃん…僕はそろそろ…」
「あなた名前は?」
「僕かい?僕の名前はギルバート」
「ならギルバート、私の真似をしてみて」
「え?」
「あなたの名前は?」
戸惑う僕に少女は早く真似するよう促す
「えっと…貴方の名前は?」
「ふふ…私の名はミーネ!お嬢ちゃんって名前じゃないんだから!」
お嬢ちゃん呼びはお気に召さなかったのか…
「罰として、あのパン屋さんであなたが私にオススメできるパンを献上しなさい!」
「…罰なら仕方ないね…わかった。付きあうよ」
「あ!あなたの分もちゃんと買うのよ!!」
「…了解…」
ーーーーーーーー
「まだつかないのー?」
「もうすぐだよ…ほらここを越えたら…」
「あっ…」
パンを買った後、そのまま一緒に食事をしようと誘われた上、見晴らしのいいスポットを紹介するように頼まれた。そのため前に家族で一緒に行っことのある隠れスポットを案内することとした
「すごい…こんな見晴らしがいいところがあったなんて…すごいギルバート!よくやったわね!」
「…喜んでもらえて何よりだよ」
喜んでもらえたことに喜びと、少女の姿がなぜかニックを思い出させ胸が痛くなった
「さぁ、早くパンを食べましょ!一緒に!」
「あ…あぁ…」
ガサガサと袋を取り出して彼女にパンを一つ渡す
それと同時に自分用に一つパンをてにとった
「いただきます!」
「いただきます…」
彼女は一口食べるとすごく驚いた顔をしてこちらを見つめる
「っ…く…ごく…ギルバート!美味しいわ!とっても!!」
『おとうさん!これすっごくおいしいよ!!』
「……あぁ…それはよかった……」
「あなたも早く食べなさい!早くしないと私が全部食べちゃうんだから」
『おとうさんも早く食べないと僕が全部食べちゃうよ〜』
「…うん…うん…いただくよ…」
あれ、このパンってこんなにしょっぱいかったかな…なんだよ…ミーネちゃん嘘つきだな…美味しくないじゃないか…こんなの…こんなの…
「…ギルバート…」
「…ぇグ…グッ…あぁ…ズズ…」
しょっぱいよ…どこを食べても全部…
「ギルバート…」
ミーネちゃんは涙を流し続ける僕をただそばで見つめていた