転生先はゲームの世界(意図せず曇らせフラグをへし折る系男子) 作:アンダギー
「…どうかしら…なかなか、応用は効くとは思うのだけど」
「いやはや…やはりミーネ様の応用力には驚かされます」
訓練場にて、ミーネの放った魔法にニックは驚く
「まさか、索敵魔法を応用し攻撃魔法に追尾性を付与されるとは…恐れ入ります。それにしても、いつ索敵魔法を会得されたのですか?」
「えぇ、貴方が私を助けてくれた際に、そんな魔法があるってことは知ってたから。隠れて練習していたの。成功したのは今日が初めてだけどね♪貴方に指南を受けて正解だったわ。それにしても…ふふ…これで何処にいても見つけれるわね」
「…私欲で使用されるのはあまりよろしくないかと…」
「え?でも、この屋敷は私のものだし…自分の屋敷を守るために使用するのはいけないことなのかしら?」
「…いえ、そのようなことはございません。失言でございました」
「ふふ…索敵♪索敵♪ニックをロックオン♪」
「ミーネ様!!明らかに私情が漏れておりますが!?私をロックオンするのはやめてください!!プライバシーの保護を!」
懇願するように頭を下げる
すると、ミーネはビシッとニックを指差し
「この屋敷は、私のもの。貴方は?」と告げる
「私めは…その…」
「ギルバートもメイドも私のもの、さて、貴方は?」
「…へへ…」
「ふふ、笑って誤魔化すなんて。無駄なことはやめなさい。さて、最後のチャンスよ」
「あ、な、た、は、だ、れ、の、も、の?」
「……ッ……ミ……さ」
「んーーーー???聞こえないわ??もっとはっきり言わないと!主人泣かせの使用人ですこと!スターニャに相談ね!」
「ミーネ様のものです!!」
悔し涙を流しながらニックは告げる
「ふふ♪そうよね?偉いわニック♪ご褒美に頭を撫でてあげましょう」
よしよし、ニックの頭をミーネは撫で続ける
「だからねニック。私がこの屋敷で索敵魔法を使用することはみんなのためなの。私もできるなら使用したくないわ…みんなのプライベートもあるでしょうし…主人として辛いのよ…でも、わかってくれるわよね?私のものを守るためですもの!ニックなら!わかって!いただけるわよね!?」
「…はい…主人のお心のままに…」
「…不満そうね…」
「はい!主人の御心のままに!!!」
ニックは、1番教えてはいけない人に、教えてはいけない魔法を教えたことを後悔した。
さて、何故このような絶望的な展開になったかをざっくばらんに説明すると、私も訓練がしたい→貴方が教えて→断るの?→なんでもするっていったよね?ということで、あれよあれよといった感じである。
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「うーーん!今日はこれくらいにしておこうかしら」
「そうですね。かれこれ1時間は経ってますから、この辺にしておきましょう。それでは私は片付けをしますので、ミーネ様は、先にお屋敷に戻っておいてください」
「わかったわ。それじゃ、先に失礼させたもらうわね」
「はい!お疲れ様でした!ごゆっくりとおやすみください」
「………」
少しの沈黙の後、ミーネは訓練場を後にする
「ふーー…まさか、お願いが魔法の訓練に付き合ってとは…しかし、索敵魔法は、失敗してくれた方がよかったな…これからは何処に行ってもバレちゃうし…いや、そもそも何処にも行かないけどさ…でも、多分だけどこの屋敷以外でも使うだろうな〜1人の時間が欲しいものだよ」
独り言を呟きながらトホホと肩を落とす
片付けも終わったため、屋敷に戻る前に庭の花を少しみて帰ろうと思い、ニックは庭に足を進める
花達は月明かりに照らされ、美しくそして、儚く咲き誇っていた。何度見ても感動的であり、その花達を育てている師匠には感銘を覚える
「やはりいつ見ても美しい。今度師匠に園芸を教えてもらうのもありだな…そしてゆくゆくは…ふふ」
育てた花を女性に渡す自分の姿を想像し、ニックは、周りから見たら少しだけ気味が悪い顔でほくそ笑みながら花を愛でる。しかし、許して欲しい、この世界に転生して早10年。この世界の女性は皆、美しいのである。勿論、主人であるミーネを筆頭にではあるが…
未来のお嫁さんのことを考えながら、花を愛でる。それはとてもとても丁寧にまるで割れものを扱うように。花に未来のお嫁さんを投影するかのよう「随分と楽しそうね」に…
最高の時間は終わり、最恐な時間が訪れる
声の主は先程の訓練とは打って変わって不機嫌そうな声質をしている
もしかしたら、聞き間違いの類、もとい幻聴かと思い一度スルーをする。が、ふとニックの頭に電流が走る。そう、ニックはただ、庭の花を愛でているだけ。確かに邪なことは考えてはいたが、側から見たらただ単に、不気味な顔をしながら花を愛でている。ただそれだけなのだ。逆にシカトをする方がことを荒立ててしまうのではないか?そう自分に言い聞かして、声の発信元に顔を向ける
「…さっきぶりですね。ミーネ様」
いたって冷静に主人に話しかける
「…さっきぶりね、ニック」
「よく私の居場所が…あ〜、成程…早速お使いになられたのですね」
言葉を紡ぐ前にニックは勘づく。「あ、索敵魔法使ったなこいつ」と
「えぇ。この魔法のおかげですぐに貴方の居場所はわかったわ。本当に便利ね、この魔法」
「喜んでいただけたなら何よりです。教えた甲斐がありましたよ。と、いっても私は少しアドバイスをしただけですが」
「ふふ…でもアドバイスがなかったら未だに体得できてなかったと思うわ。本当にありがとうニック」
「いえいえ、ミーネ様の役に立てることが私の最大の喜びですから」
「あら♪嬉しいことを言ってくれちゃって♪」
2人で笑い合う。その時ニックは、もしかしたらミーネ様は怒っていないのでは?と軽率な考えが頭をよぎる
「さて…」
ミーネは、ふーと一息を吐いて、穏やかな空気を一変させる
「そろそろいいかしら?」
「?」
言葉の意味を理解できずニックは首を傾げる
「貴方…他の女のこと考えてたでしょ?」
ニックはその時、初めて恐怖を覚えた。蛇に睨まれたカエルとはよく言ったものだ、ニックも同様に一歩も動けなかった。訓練で師匠から威圧された際も、逃げることなく、どんな恐怖にも打ち勝ってきた。が、そんなニックが目の前の少女の瞳一つで動けなくなっていた。その事実がまた、ニックを硬直させていく
「は…はは!何をおっしゃいますことやら!他の女?そんなことがあるわけないでしょう?さすがにそのようなご冗談には、私も笑うしかありませんよ!はは!はは「スターニャ?それとも他のメイド?いえ、それ以外かしら?」は!?」
そういうと、ミーネはニックの隣に近寄り、花を愛ではじめる
「どうしたの?気分でも悪いのかしら?顔が真っ青よ?それと、もう笑わないのかしら?」
「……あ…いや…はは…」
「あら、どうしましょう…心配だわ…あ!そうだわ!」
そういうと、ミーネは愛でていた花を一つとり
「この花を貴方に送るわ。どう?愛する主人からのプレゼント!喜んでくれるかしら?」
ニックに手渡しする。その花はピンク色のサザンカであり、受け取るのに少し躊躇をする。それと同時に何故この花をミーネは選んだのかとニックは動揺する
「あら?どうしたの?受け取らないの?」
「いえ…その…」
歯切りが悪くなる。ピンクのサザンカ、その花言葉は永遠の愛。ミーネがもし仮にそのことをわかっていたらと考えると受け取るのに躊躇してしまう
「じゃあ、命令にするわ。ニック。受け取りなさい」
「はっ!!」
つい、条件反射で受け取ってしまう。社畜ここに極まれりとは、まさにこのことである
「はっ!?あっ!?え!?」
受け取ってしまった花をみてニックは動揺する
「ふふ、よかったわ。受け取ってもらえて。それじゃあ、ニック、重ねて命令よ」
ニックは動けずにいる。次の言葉を聞きたくないしすぐにこの場から離れたい一心であるが、それでも足は主であるニックの意思に反し、ブルブルと震えるのみである
「私に、同じ花を渡しなさい。気持ちを込めて」
「…い…や…」
辛うじて拒絶の言葉を紡ぐ。が
「あら?きこえなかったかしら?命令よ。私が、貴方に渡した花と同じものを私に渡しなさい。再度伝えるわ。これは、めいれいよ」
「は、はい!!」
気持ちに反して身体は主人の命令に従い動いてしまう、気づいたら、手の中には美しいピンクのサザンカが握られていた。それをミーネの前まで持ってきてしまう
「あら、どうしたのニック?その花。もしかして、私にくれるのかしら?」
白々しいとはこのことである。あくまでミーネは自主的に、ニックがミーネに渡したという事実が欲しいのである。乙女心は複雑である。しかし、ニックもまだ堪えていた。渡しそうになる手を無理やり押さえこみ静止を促す
「…往生際が悪いわね」
ボソッとミーネは呟く。ニックは渡すまいと必死でありその声は届いていない
「あ…頭が…」
その言葉と同時に、ミーネは後ろに倒れ掛かる。主人の危機にニックは片手で主人の背中を抱き抱えるように支える
「ミーネ様!?大丈夫ですか!?」
ニックは、純粋に主人を心配する。しかし、気づいていなかった。片手にはまだ、花が握られたいることを、倒れたのはあくまで策略であることを
「情熱的ねニック…抱きしめるなんて、それにこの花、ありがたく受け取るわね」
主人を支えるため片手は使えないため、あっさりとニックのもう片方の手は制圧された
「ふふ…ありがとうニック、大切にするわね。貴方からの永遠の愛」
そう告げると足早に主人は走り去っていく
ニックはただその後ろ姿を眺め続けるしかなかった
この出来事が今後、大きなことになるとは、今のニックにはとても想像はできなかった