転生先はゲームの世界(意図せず曇らせフラグをへし折る系男子)   作:アンダギー

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 力こそパワー

 

 ガラガラと馬車を引く音をBGMに外の景色をニックは眺める

 

 勿論、風情を楽しむだとか、景色に胸を弾ませるだとかの気持ちは一切ない。どちらかといえばその逆である。憂鬱。ただそれだけである。それはなぜか、理由は明白である。なんせこの馬車の目的地は、試験会場でもあるベーリル学園に向かっているからである。首都の名前を敢えて学名につけるあたり、かなりの歴史があるのだろう。そんなところに編入されることを考えるとさらに憂鬱になる。勿論、不合格になることも考えたが、ミーネの手前、いや、王族達の手前、もし不合格であったらと、想像しただけで、その考えは捨てることとなった

 

 「ニック」

 

 物思いにふけていると、主人からの呼びかけられる

 

 「どうかなされましたか?」

 

 「せっかく2人っきりなのに外ばかり見て…暇なら私を見なさい」

 

 「…」

 

 「なによ」

 

 「いえ…相変わらずだなぁと思いまして…」

 

 試験当日にもかかわらず、相変わらずの主人をみて一つため息を落とす

 

 「私の顔を見てため息なんて…失礼な使用人ね」

 

 「申し訳ございません。試験のことを考えると緊張してしまって…つい憂鬱になってしまい、ため息を吐いてしまいました」

 

 「そう…あまり根を詰めすぎないようになさい。絶対あなたなら大丈夫よ」

 

 「ミーネ様は、緊張なさらないのですか?」

 

 「うーん…まぁ、少しはするけど、今はそれより合格した後のことを考えるので一生懸命かしら」

 

 「その後ですか?」

 

 「えぇ、試験に合格して、あなたと一緒に学園生活を過ごす。それが1番の目的。絶対に…絶対に叶えないといけないことなの。それに…」

 

 「…それに?」

 

 「ふふ…なんでもないわ。これは合格してからのお楽しみ♪だからねニック…」

 

 ミーネの細く美しい手が、ニックの両手を包み込む

 

 「2人で合格しましょう。そして2人で一緒に登校して、2人で一緒に勉強して、2人で一緒にご飯を食べて、2人で一緒に下校する。そして2人で帰りには、学校であったことを話し合って、屋敷に戻ったら2人で特訓をする。そう、私とあなたは一心同体。ずっと一緒。だから、不合格なんてありえないの。絶対合格する。それは決まっていることなのよ」

 

 その姿は、正に必死と言うべきなのか、いつもの優雅な主人とは比べ物にならない鬼気迫る表情をしていた。その言葉は、ニックではなく、自分自身に言い聞かせているかのように感じた。そう、ミーネは緊張などではなく、2人が離れ離れになること。ただそれだけを恐怖していた

 

 「…そうですね…準備もしてきました。絶対合格できますよね!2人で頑張りましょうミーネ様!」

 

 ニックは、まるで主人の激励に勇気をもらったかのように演じる。内心は、「ずっと一緒はしんどいな〜あ、でも私は剣術を専攻予定だからクラスは違うな!残念だったねミーネ様!!別クラスでも達者でね!」とほくそ笑むのであった

 

ーーーーーーー

 

 それから約2時間、目的地であるリーベル学園に到着をする。やはり、お貴族様の学校であるため、大きいし、なんかわからないがすごくすごかった。語彙量が壊滅的になるくらいすごかったのだ。しかし、いつまでも驚いているわけにもいかず、驚きもそこそこに、馬車から降りて主人の手を引き学園内に歩をすすめる。学園の中では受付があり、受付には大々的に入学試験受付と記されあった

 

 「「おはようございます」」

 

 2人同時に受付に挨拶を済ませる

 

 「はい。おはようございます。試験の受験者であるならば、まず、お名前を教えてください」

 

 「はい。ミーネ…ミーネ・ベルリッティと申します」

 

 「!?ミーネ様であられましたか!?申し訳ございません!すぐに手続きを…」

 

 受付の女性は、ミーネと名前を聞くや否や、動揺したのち慌てて手続きの準備を進める。さすが王族だな〜と呑気に思っていたら、ミーネ様に睨まれた。ミーネ様いわく、視線がバカっぽかったとのことであった。それと、あなたも王族として少しは自覚をもちなさいと叱責された。理不尽である。それにしても王族としてとはなんだったんだろうか…多分、王族の使用人としてと、言うことを言いたかったのだろう

 

 「お待たせしました!手続きは済みましたので、今から席にご案内を…」

 

 受付の女性がミーネの隣に移動し、手を差し伸べる。ニックは、立った際の女性の美しい曲線美につい目が奪われてしまった。そう、素晴らしいマウンテンであったのだ。でるとこはでておりそれはもう、朝からけしからん気分になる。いや、眼福眼福

 

 「いえ、まだこのどすけべむっつり主人大好きマンの受付が終わってないので待たせてもらいます」

 

 目の前のお山に思いを馳せていると、主人の若干怒り気味の声で現実に引き戻される

 

 「だれが、どすけべむっつり主人大好きマンですか!すみませんお姉さん…私の名はニック。以後、お見知りおきを…そして、ミーネ様の使用人であり1番がぁぁーーーーー!!!痛い痛い!!!曲がらない!!その骨はそっちに曲がらない!!!」

 

 「デレデレするな!このアホ執事!!」

 

 その言動と共に、主人から技をかけられる。きっと師匠から学んだのだろう。関節が完璧にきまっており脱出不可能である。さすがミーネ様、組技も一流である

 

 

「ギブ!ギブ!!ミーネ様!!タップです!許して!!デレデレなんてしてません!ついみてしまっただけです!ね!ミーネ様も目の前に綺麗な蝶々が飛んでたらみるでしょ?それといっしょぉぉぉぉー!!!なんでもっとキツく締めるんですか!!」

 

 「他の女に綺麗なんて言葉を使うんじゃないわよ!もう怒った!両目くり抜いてやる!!」

 

 怒りを通り越して怒髪天である。ニックに残された道はただ一つしかなかった

 

 「ミーネ様!私はミーネ様を1番美しいと思っています!そして!誰よりも綺麗で可憐で!そして、華々しい!まるで地上に現れたビーナス!立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花 !才色兼備の最高の女性です!」

 

 その言葉に徐々に力が弱まっていく

 

 ニックはあまりミーネの容姿を褒めることはない。主人と使用人の関係になってから軽はずみな言動を避けて、かなり気を遣っていたのである。あと、あまり褒めすぎると取り返しのつかないことになることも考慮していた。だからこそミーネにはニックからの言葉が効いた。その結果、現に技から解放され、今は、真っ赤な顔をした主人と対面しているのである。そこでニックは気づいた。あれ?これもある意味詰んでないか?と

 

 「そんな…ニックったら…お前しか見えない(言ってない)お前しか愛せない(妄想である)お前の全てが欲しい(虚言である)早く結婚したいなんて(何一つあってない)…」

 

 「いや、何一つ」

 

 「もぅ!本当にダメダメな執事ね!もっとムードがあるところで告白してほしかったわ!でも、あなたの情熱を受け止めてあげるのも主人の役目よね!わかりました。あなたのプロポーズ受けさせてもらいます。私ミーネ・ベルリッティは妻として「ミーネ様!!!それより早く受付して試験を受けましょう!2人の関係はゆっくり!本当にゆっくり進めていきましょう!ね!ね!」

 

 暴走しつつある主人を強引に妄想の世界から引き戻し、ニックはなんとか受付を済ませることができた。その際、主人からの子どもの人数や名前などを執拗に聞かれたが、夢でもみていたのでは?と、ひたすらとぼけ続け、先ほどのやりとりを夢ということでなかったことにした。それはそれとして周りの人間から少し距離を置かれてしまい無事、試験デビューは失敗に終わったのであった。

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