転生先はゲームの世界(意図せず曇らせフラグをへし折る系男子) 作:アンダギー
「それでは、試験を開始してください!」
その合図と共に、会場に集められた受験生が一斉に答案用紙を書き進める。かくいうニックとミーネはというと、日々の自己研鑽のお陰か、開始から1時間ほどで全ての回答を済ませていた。試験時間は2時間ほどあるため残りの1時間は手持ち無沙汰となる。その間にニックは、次の試験項目である実技(魔法)のことを考えていた
(魔法の試験…問題はミーネ様だな。会場に入ってからというもの、ミーネ様は、周りの令嬢たちからあまりいいようには見られていなかった…きっとミーネ様を前に虐めていたメンバーなのだろう。そして、ミーネ様が見返したいと言っていた相手なのだろう。しかし、いくら見返すためとはいえ、ミーネ様はさすがにあの魔法は、使わないだろうか…それだけが唯一の懸念材料だな。いや、やっぱり使わないように伝えておこう。もし使ったとしたら…うわぁ〜考えるだけでも震えてきた…)
周りの受験生が、答案で苦戦している一方ニックは答えのない問題に苦しめられていた。当の主人はというと
(やったわ!ニックが褒めてくれた!魔法のことや教養に関しては褒めてくれることは多々あったけど、使用人になって初めて私の外見を褒めてもらえた…嬉しい!本当に嬉しいわ!あまりにも最近そっけなかったからもしかしたら私に興味がないのかと思っていたけど…ふふ…ふふふふふ…やっぱりニックも私のことをちゃんと好きだったのね♪私の人柄も外見も愛してるなんて(言ってない)しかも、あの大勢の前で…これってやっぱりプロポーズなのかしら…帰ったらスターニャに聞いてみようかしら…いや、それよりお父様に報告が先かしら…あーーー!!迷うわ!本当に手のかかる執事ですこと!もぅ!今日の帰りは容赦しないんだから♪)
と、あまりにも自分の都合のいい妄想に浸っていた。ましてや、過去の清算など微塵にも思ってはいなかったのであった
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「ミーネ様!」
筆記試験が終わったため、ニックはすぐに主人の元に駆けつける。理由は勿論、次の試験である魔法の使用について警告をするためであったが、その行動が悪手であった
「あら!そんなに慌てて…そんなに私が恋しかったのかしら!!いつも屋敷ではずっと一緒ですものね!!ごめんなさいニック!!こんなに離れてしまって!!!」
「ちょっと黙ってください!!」
無礼を承知で口に手を添える。これ以上、主人(バケモノ)に喋らせないようにと。しかし、現実は非情である。今更口を塞いでも、全くの意味をなさない。現に、周りは先ほどの発言をネタにざわめき立っていた
「うわぁ…あの使用人…主人に対して必死すぎ…顔はいいのにあれはストーカーよ…怖いわ」
「もしかして…あの2人って主従関係以外の関係を築いてるのかしら…なんと破廉恥な…特にあの男。顔からして破廉恥ですわ」
「王族と使用人とは…全くけしからん。それにしてもあの男…ふむ…なかなかいい尻をしている…使用人✖️ゴブリン…今度の作品はこれにするか…」
ヒソヒソと周りから声が聞こえてくる。というか、何故か全ての原因である主人ではなく、被害者である私が、あまつさえ破廉恥のレッテルを貼られなければならないのか…と、ニックは嘆き悲しんだ。それと同時に、使用人✖️ゴブリンなどという、とんでもない程の化け物の性癖モンスターが受験者にいることに、恐怖も感じた。さて、当の主人(被疑者)はというと、ニックから口を塞がれている状況に少し興奮を覚えていた。ある意味1番試験を楽しんでいるのはミーネであった
それから数分後、周りが少しずつ落ち着いてきたため、気持ちを切り替えて、ミーネにしか聞こえないような声で試験についての注意点をニックは説明をする
「ミーネ様、次の試験は魔法ですが、もちろん、聡明な我が主人はわかっているとは思いますが、一応、気をつけてほしいことを一つだけお伝えします。あの魔法だけは絶対に使用しないでください。対象物が物でもダメです。人ならもっとダメですので、悪しからず」
「…はなから使うつもりはなかったわよ。でも…そうね」
クックックと悪役令嬢の如くミーネは、ほくそ笑む
「新技なら試すかもね♪ふふ…ふふふふふ」
「新技!?待ってください!!私が知らない技は、極力…」
「くどいわ、あなたの主人は、そこまで愚かではなくってよ。新技も安全面は保証するし、だから、黙って見ときなさい」
そういうと、ニックの手を掴みスタスタと歩き始めるのであった
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目的地である試験会場までたどり着く、ただの多目的ホールのような場所であったため、ニックは少しだけ困惑する。その間にも手はずっと握られている
「それでは、今から試験の説明を致します。まずはお手本として私が実践しますので、よく見ておいてください」
試験官は「はじめ!」と合図を送る。すると、試験管の周りに薄い円状のバリアーが展開される、バリアーの中では試験官の周りに無数の的が出現していた。試験官はそれを的確に打ち抜き続けると、約1分ほどでブザーの音が鳴りバリアーが解除された。
「わかりましたね?では…」
「いや!わかりませんって!なんですかさっきの!?いきなりバリアーと的がでて、それを打ち抜いて、全て打ち終わったら、終わりって…」
1人の受験生が抗議を唱える
「はい。その通りです。わかっているではないですか。そう。ただそれだけなのです。皆さんにも同じようにしてもらうだけです。時間は3分。その間にすべて打ち抜けば早めにでれます。もしすべて打ち抜けなくても3分経てバリアーは解除されますのでご安心ください」
試験官は、あっけらかんと答える。その雰囲気当てられ、周りの受験生は、「なんだその程度か」などと、緩やかな空気に包まれる
「ニック。この試験…」
周りの雰囲気とは打って変わって、隣の主人は神妙な顔つきで尋ねてきた。やはり、主人も気づいたのだろう
「えぇ、そんな悠長にしてられる試験ではないですよこれは。実際やってみると難しさに度肝を抜かれますよ。彼ら」
「そうよね…まぁ、私達には大したことないけど」
「そうですね…残念ながら。しかし、いい練習にはなるでしょう。しっかり見せつけちゃってください。我が主人」
「えぇ、あなたの期待に答えてみせるわ。マイダーリン」
「マスターファイト」
「マイダーリン」
「ノーダーリン、マイバトラー」
「ノーバトラー、マイダーリン」
「らちが飽きませんね。とりあえず手を離してください」
「…わかった、今回は退いてあげる。でも、次は愛してるよハニーくらいいいなさい」
「はは!ご冗談を!まずは受からないとですね!一緒に頑張りましょう♪」
「いけず」
少し唇をとんがらせて、名残惜しそうに手を離す
「それでは、私達も並びましょうか」
「えぇ」
2人で移動しようとした矢先、ドンっと肩をぶつけられる
ぶつかってきた相手は、先程の試験会場でミーネをあまりよくない目で見ていた女性達の1人であった
「あら?あなたは落ちこぼれのミーネさんじゃありませんか?」
肩をぶつけたことも謝りもせず、我が主人に対して失礼千万な態度を見せる。多分、挑発をしたかったのだろう。ニックは少し頭に血が上りかけるが、主人が動かない以上、ニックも何もできないため目の前の女性を睨んでいると、ミーネがすごい勢いでぶつけられた肩をハンカチで拭き始める
「ニック!大丈夫!?ごめんなさい!すぐに拭いてあげるから…あぁ…なんて汚い…屑肉が、腐敗肉が…ゴミ肉が…私のニックの肩に…あぁ、気持ち悪い…気持ち悪い…気持ち悪い…気持ち悪い…」ブツブツ…
「…ミーネ…様?」
声をかけるがひたすらに肩を拭き続ける。病的に、ただ気持ち悪いと言いい続けながら
「…っ!?この!落ちこぼれ!!私のことを無視する…」
ぶつかってきた女性もその態度が頭にきたのか、私とミーネ様を引き離すように手を伸ばしてくる…が
「…ひっ!?」
女性の手は、私達の前でぴたりと止まってしまった。原因は目の前の主人の威圧である。目力のみで人が殺せるのではないか?と思ってしまうくらいの迫力であった。正直、ちびりそうだった
「貴様…一度ならず二度までもニックに触ろうとしたな?」
「…だ…だから…なによ…」
モゴモゴと言い返す女性。その姿に逆にもうやめておけという気持ちになっていく
「私のものに触れるな。次触れたら…」
その後のセリフは、女性の耳元でわざと囁いたため聞こえなかったが、女性の顔が恐怖に染まっていたためかなりえげつないことを言ったのであろう。御愁傷様である
「さぁ、ゴミは置いといてさっさと試験を終わらせましょう。ついてきなさい」
そういうと、ミーネはスタスタと歩き始める。私は置いていかれないようにすぐに主人の元に駆け寄るのであった