転生先はゲームの世界(意図せず曇らせフラグをへし折る系男子) 作:アンダギー
「3分が経過しました。試験を終了してください」
無慈悲なアナウンスが会場内に響く。やはり、ニックとミーネの見立ての通り、かなりの受験生が苦戦をしており合格点をだせないでいた。それもそのはず、なんせバリアーの中では、複数の的が不規則に動いているのだから。止まっている的や、規則性がある動く的であれば、合格者は多少はでていたであろう。しかし、不規則に動く的を撃ち抜くとなると、よっぽど魔法のコントロールが上手く、魔法を変幻自在に使える者か、もしくは、周囲のすべてを吹き飛ばすくらいの高火力の魔法を扱える者しか受からない、この試験を立案した者の性格の悪さが伝わってくる。それほど難関な試験なのである
「ねぇニック」
どう合格するか考えていると、ふと主人から声がかかる
「いかがなされました?」
「あなた、特大花火と線香花火なら、どちらがいい?」
さて、我が主人の言葉遊びのお時間だ。長年連れ添った私ならその言葉の意味を難なく読み解くことができる。では、簡単に質問の意図を説明するとしよう。ミーネ様が言いたいこと、それは「ド派手に的を全部ぶち壊す」か「正確に華麗に的を撃ち抜くか」という意味である。なお、魔法についても花火ということなので多分であるがミーネ様の得意な火の魔法である可能性がある。特に特大花火の場合は確実に火の魔法だろう。この場合、ミーネ様の執事として、最善の回答としては
「…線香花火ですかね」
そう。線香花火を選ぶことである
「あら?それはどうして?」
不思議そうにミーネは、首を傾げた
「ミーネ様の可憐さ、更に優雅さ、そして、繊細さでこの試験会場にいる全ての人を魅了してほしいからです。特大花火は、いかんせん華々しさに欠けます。それに比べて線香花火であれば華があります。そして、なにより…」
「なにより?」
「私がミーネ様に魅了されたいからですかね」
その言葉にミーネは、顔を赤める
「…もぅ…ちょっとキザすぎよ。ギルバートの入れ知恵かしら、でも、そうね…悪くないわ。でも、勘違いはしないで、私が魅了するのはあなただけ。他の有象無象には興味ないわ」
「承知しました。では、何卒、私めだけを魅了してください」
「えぇ、任せなさい♪」
機嫌を良くしたミーネは、鼻歌混じりに試験開始の開始を待つのであった
当のニックはというと
(あっぶねぇぇぇぇ!!!!何が特大花火だよ!!この会場吹き飛ばすつもりだったのか!?あの魔法は使うなって言ったばっかりなのに…というか、よく納得してくれたな。よくよく考えたら意味わからんし、何が線香花火は華があるだよ!言ってて恥ずかしくて死にたくなったわ!それにしても、師匠が言ってた通りだった…キザなことを言えば、勢いでなんとかゴリ押せる。あとは、その場の雰囲気でなんとかなるだったか…ありがとう師匠!もう二度と使いたくないけどたまにキザなこと言ってみるよ)
ご機嫌な主人と違って、試験開始前にかなりの神経をすり減らすのであった
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「…では、次の方…あっ…ミーネ様…」
試験場が一瞬静寂に包まれる。やはり試験官や周りの人間からしたらミーネ様に対して、なぜ試験を受けるのか疑問に思ったのだろう。私も仮にミーネ様のことを知らなくて魔法が使えない人だという認識のみ知っていたら、同じような反応をしてしまっていたことであろう。が、しかし、今のミーナ様は違う。この会場の誰よりも魔法に精通していると言えるほどの実力を持っている
「試験官、早く合図をお願いします」
周りの空気を全く気にしていないのか、ミーネは試験官に始まりの合図を催促する
「…で…では…」
試験官が始めの合図を送る刹那、ミーナは傍聴しているであろうニックにウインクを投げかける。
(随分と余裕があることで…ふふ…ミーネ様。頑張ってください)
ニックは、心の中で主人にエールを送るのであった
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「開始してください!」
その合図で、宙には複数の的が出現する
(さて、一瞬で終わらせるとしましょうか…まずは、索敵、更にロックオンをしてっと…)
ミーネは、的が出るや否やすぐに追尾魔法の準備に取りかかった。使用する魔法は、威力こそそこまでないが(ミーネ視点では)スピードがある火と水を応用した複合魔法である、「レーザー」と、「レーザー」に自動追尾性能を付けた応用版名付けて
「ホーミングレーザー」
両手を前に出し、詠唱をする。すると、凄まじい勢いで指先から複数のレーザーが展開され、数秒もたたないうちに全ての的を撃ち抜くのであった
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「…は?」
ニックは目の前の現実に呆然とした。理由は明白であり、ニックは先程ミーネが放った魔法を初めて見たからである
(いやいや!なにあれ!?知らない!私知らないよ〜!いつのまにあんなことできるようになってたの!?ていうか、何「ホーミングレーザー」って!普通に目で追うのがやっとだったんだけど!!絶対合格じゃん!というか、明らかに私より数段レベル上じゃん!訓練の意味ないじゃん!逆に今度稽古を…いや、やっぱりそれはやめとこ!怖いし!何要求されるかわからないし!やっぱり常日頃から索敵展開してるからなのか、ロックオンの精度もずば抜けてたし…ストーカーから魔法の達人兼達人ストーカーに早変わりだよ!私は怖くて仕方ないよ!)
頭の中で色々とツッコミを入れてしまう。それほど衝撃的な出来事であり、周りも全員ポカンとしている
まぁ、魔法の魔の字も知らないし、使えないような人がいきなりあのような化け物じみた芸当を見せたら誰だって呆然だろう。当の本人はそれに気づいていないのか首を傾げて終了の合図を待っている
「あの?試験官…終わったのですけど…」
「あ…えっと…あ!タイム!タイムをお伝えしますのでもう少々お待ちください!」
ミーネの言葉で現実に戻されたのか試験官は慌ててタイムを確認する。そのタイムにみんなが固唾を飲んで見守っていた
「…5秒…です…」
驚愕のタイムにあたりがざわめき立つ
「ミーネ様、新記録です。おめでとうございます」
「ありがとうございます」
とんでもないことをしでかした当の本人は、感謝の意を簡潔に述べ、本来の目的である人物に足早に駆け寄るのであった
「ミーネ様…」
そう、最も1番に見て欲しかった相手。1番に褒めて欲しかった人。1番に労って欲しかった人。たった1人の大切な人。そう、珍しく呆然とする私の執事
「無事、終わったわ」
呆然とする姿もずっと見ていられるが、私は今すぐに彼の声が聞きたかった。彼は、少し考える仕草をした後、言葉をなげかけてきた
「お疲れ様でした。さすが我が主人。お見それしました」
(えっ…今、私の主人って(言ってない)惚れ直したって(一文字もあってない)もぅ、本当にこの人は…私の欲しい言葉を絶妙なタイミングでくれるんだから♪式のドレスのこと考えないと…いや、まだ早すぎるかしら…もう少し恋人関係も続けたいし(付き合ってもいない))
(なんか、フリーズしたかと思ったら、今度はクネクネと揺れてるんだが…まさか!?間違えたのか!?言葉の選択!言葉のチョイス!しまった〜どうすればいい…どうすれば…やむおえん…こうなれば…)
2人の間まで微妙なすれ違いが生じる中、何を血迷ったのか愚かな執事は目の前の現状を打破すべく、間違った行動にでる
「ミーネ様!」
主人の方に手を置き、目を見つめる。突然のことでミーネは、びっくりしながら現実に戻される
「な…なにかしら…ニック…」
冷静を保とうと言葉を送るが、残念ながら茹蛸のように顔は赤く染め上がっている
「此度の活躍。感動しました…私、不詳ニック、ミーネ様に魅了されてしまい、立っているのもやっとでございます。そう、それほどまでに素晴らしかった。それでなのですが、それほど素晴らしい主人を讃え私、ニックも主人になにかできないかと思いまして。なんでもお受けしますので、何なりとお申し付けください!いつでもお受けしますので、今すぐにでも、または、来年でも、ずっと先でも24時間365日いつでもお待ちしております」
「あ…なんでも…また…だめ…」
「ミーネ様?」
そう、あろうことかまたこの愚者はなんでもを発動してしまった。鴨がわざわざ出汁と具材を持って鍋に飛び込んでくる様なものである
「…その…なら、今日の帰りに少しお願いがあるの…」
「…っ!勿論!なんでも致しますので!今日の帰りにお聞かせください!!」
愚かな執事は、主人が機嫌が良くなったと間違った解釈をし、自分の選択は間違っていないことに安堵した