転生先はゲームの世界(意図せず曇らせフラグをへし折る系男子)   作:アンダギー

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 第二の爆弾

 

 「「「「「ぉ…おぉーーーー!!!」」」」」

 

 数秒の沈黙の後、蜂の巣をつついたかのようにあたりが騒がしくなる

 

 「何があったかわからないけどなんかすげーー!!」

 

 「全く見えなかった…何があったんだ…でも、取り敢えず2人ともすごいことはわかった!」

 

 「いきなりレベル高すぎだろ!後の俺たち肩身狭いわ!でも、2人とも凄かった!!」

 

 受験生が各々感想を述べる。しかし当の本人達の心中は周りの受験生達とは真逆であった。ニックはただ計画が上手くいき安堵しており、対するバーチェは目の前の現実を受け入れられていない様子であった

 

 「試験官!結果を伝えないと!」

 

 「あっ!?えっと…ニックさんの…」

 

 その声に面接官は我に返ると、試合の終了を告げようとする

 

 「ちょっと待ってください」

 

 試験官が終了を告げようとしたその時、その合図を遮るかのようにニックは言葉を発した。その声にみんなの視線が釘付けとなる

 

 「面接官、この試合は相打ちです。勝者はいません」

 

 「…?どういうことですか?」

 

 面接官含め周りの人達は首を傾げる

 

 「それは…こういうことです」

 

 そういうと、ニックは首に突きつけていた木刀を軽く投げた。すると、地面にぶつかるや否や木刀は真っ二つに折れたのである

 

 「ね。私の木刀も使い物にはなりません。よって、この試合に勝者はいません。引き分けです」

 

 試験官を含め周りは呆然としている

 

 「それを加味した上で、早く終了を告げてください」

 

 ニックは試験官に考える時間を与えないように、矢継ぎ早に試験官に圧をかけた

 

 「はっ、はい!わかりました!ゴホン…お互いの武器が破損したため、この試合は引き分けとします!」

 

 そうして短くも濃い一戦は、ドローという形で終わりを告げた。かのように思えたが…

 

 「バーチェさん。立てます?よかったら手を貸し…」

 

 「触らないで!!」

 

 バーチェは差し出された手をバシッと払いのける

 

 「ッ!?」

 

 強めに払いのけられたせいか、痛みにニックの顔が歪む

 

 「馬鹿にしないで!貴方全然本気で戦ってなかったでしょ!どれ程私を辱めれば気が済むの…」

 

 「!?」

 

 「何?その反応…気づいてないとでも思った?私のこと気遣ってたつもり?いい勝負に見せかけておけば私の尊厳が守れるとかまわりに虐められないで済むとか考えてたわけ?ほんとに……っ…ばかに…馬鹿にしないで!!!」

 

 「そ…そんなつもりでは!」

 

 その言葉を最後にバーチェは、会場を駆けるように後にした。ニックを含め周りは騒然とする

 

 時間にして数秒、あるいは数十秒か。ニックは呆然としていると、肩にポンッと手が置かれる

 

 「お疲れ様ニック。さすがだったわ。でも、あなたの対戦相手の方、最後の挨拶もなしにいきなり会場を飛び出すなんて…何かあったのかしら?それとも…」

 

 「あなたが何かしたのかしら?」

 

 呆然としているニックの瞳をミーネは見続ける。その瞳は、まるでニックの心を見透かしてるかのように。それと同時になにか怒りを灯しているかのように、そうニックは感じた。そのためニックは、慎重に言葉を選びながら先ほどのやり取りを伝える。その内容を聞くとミーネは一つため息を落とした

 

 「やっぱりね…、ニック。あなたの優しさは確かに素晴らしいものだと私は思うわ。それと義理堅さもね。ちゃんとギルバートの教えを守ってる姿は主人として信頼に値するわ。だけどね、事情を知らない人からしたらどう思うかしら?逆に相手の立場になって考えてみなさい。何年もかけて必死に努力した結果を軽くあしらわれ、挙げ句の果てには相手に情けをかけられた上に最終的には勝敗もつけてもらえなかった。相手からしたらこれほど惨めなことはないのではないかしら?」

 

 「ミーネ様…私は…なんてことを…」

 

 ニックはミーネの言葉を聞き、先ほどでていったバーチェを追いかけようとする

 

 「待ちなさい。私のニック」

 

 「しかし…」

 

 「追いかけてどうするの?なんて声をかけるつもり?いくらあなたがバーチェさんに言葉を送ってもさっきの試合の言い訳にしかならないわ。だから、さっきのことは忘れてさっさと屋敷に戻るわよ」

 

 「ミーネ様…」

 

 「はぁ…さぁ帰りの支度をしなさい。大丈夫、あなたが気に病む必要はないわ。それに、あなたの優しさを理解できずに勝手に飛び出した相手も悪いじゃない。だから、もう相手のことは忘れてすぐに私と…」

 

 「ミーネ様…私はそれでも…」

 

 「それでも?」

 

 「…私は…私は!間違ったことをしてしまった…しかし、ミーネ様のお陰でそれに気づくことができました。だから、私はちゃんと礼儀を持ってバーチェさんに謝罪をしなければなりません。それがミーネ様の執事として…いえ男として通さなければならない筋だと思います。ですから、大変勝手ではございますがもう暫くお待ちいただくことは出来ませんか…?お願いします」

 

 主人に対し、懇願するように頭を下げる

 

 「ふふ…あなたらしいわね。さすが私が愛した人…いいでしょう。なら、しっかり話してらっしゃい」

 

 「ミーネ様!!ありがとうございます!!」

 

 喜びや感謝、その他諸々が含まれた笑顔で主人にむける

 

 「あ、やばい…今日は寝れないかも…」

 

 何故かモジモジしている主人に疑問を抱きながら、ニックは気持ち新たにバーチェの元に足を進める

 

 「あ!少し待ちなさい!」

 

 が、突然ストップがかけられる

 

 「私を待たせるのだからちゃんと代償は支払ってもらうわ。そうね…もし仲直りできなかったら」

 

 「できなかったら?」

 

 「すぐに入籍」

 

 「は?」

 

 「ん?」

 

 「え?」

 

 「にゅーせき」

 

 「あ、いえ、聞き取れなかったわけではなく…」

 

 「あらそう。ならいってらっしゃい。できれば失敗して欲しいわね」

 

 先ほどミーネに向けた笑顔とは真逆の顔つきでバーチェの元に足を進める。決して失敗できない新たな戦いが火蓋をきったのであった

 

 

ーーーーーーーー

 

 「お兄ちゃん…私…まだまだだったよ…やっぱり私ってダメなのかな…お兄ちゃんの代わりなんて…やっぱり…」

 

 私は会場を飛び出し、気づいたら先ほど昼食をとっていた広場に辿り着いていた。ベンチに腰をかけ首にぶら下げているロケットペンダントを開く。中には私の大切な。大切だった双子の兄の姿の写真が入れられている

 

 「ぐす…お兄ちゃん…私の努力っていったい何だったの…無駄だったの?辛いよ…助けてよお兄ちゃん」

 

 兄の写真を見ていると涙が止まらなくなっていた。今までの血反吐を吐くような鍛錬を思い出す。したくもないことを強制され私の心が限界に達していた。まぁいっそこのまま…

 

 「はぁはぁ…見つけた…リーチェさん」

 

 「!?」

 

 その声に私は驚愕してしまう。あいつが追いかけてきたのだ。私のことを私の努力を嘲笑ったあの男が

 

 「貴様!!何のつもりだ!どのツラを下げて私の前にきた!まさか笑いに来たのか?そうだよな!私のような弱い人間なんてお前からしたら笑い物だろう!このゲスが…お前なんか…お前なんか…しん」

 

 頭に血が上り流れていた涙を拭うこともなく、男に対して罵声を浴びせていた最後の一言を「死んでしまえ」を伝えようとしたその時だった

 

 「本当に申し訳ありませんでした!!」

 

 男は笑うわけでもなく、弄ぶわけでもなく、泣きながら…そう、泣きながら地面に頭をつけて私に謝罪をしてきた

 

 「私は…私はあなたに対して不誠実なことをしてしまった。それをしっかり謝罪させてもらいたいのです!どうか…どうか」

 

 その必死な姿に動揺してしまう。だか、私の心の奥が「信じるな、顔を見えないようにして嘲笑っているだけだと」と告げていた。気づいたから私は土下座をしている彼の脇腹目掛け足を振り切っていた

 

 「嘘つき!どうせ!どうせ笑ってるんだろう!!あいつらみたいに!!誰が信じるか!!この嘘つき!!私だって…私だって…強くなりたかった!お兄ちゃんみたいに…ずっとずっと努力をしてきたんだ!それを…馬鹿にして!ふざけるな!ふざけるなー!!!」

 

 蹴りを入れるたびに男は苦しそうな声をあげていた。それでも彼は謝ることをやめなかった。私が疲れるまで、私が全てを男に対してぶつけるまで男は謝ることをやめなかった。気づいたら足は上がらなくなっていた。どれほど蹴り続けたのだろう。私は疲れてその場に座り込む。涙と疲労で頭がこんがらがっていた。その時、私が座り込むことで必然的に彼と目がった。彼は泣いていた。とてもとても悲しそうな顔で。その姿がなぜかわからないがとても…いや、違うありえない!そんなことはない!否定する。私は男を否定する。あるはずがない!そんなことを思うわけがない。呼吸が浅くなる、目の前がチカチカする。このまま意識を手放そう…そしたらきっと楽になる…「リーチェさん!!」彼の必死の表情が何故か今は亡き兄の姿と被って見えた

 

 

 「…ん…?」

 

 重い瞼を開ける。私は倒れてしまったのか…では、誰がここに

 

 「起きられましたか?」

 

 私の目の前に男の顔がアップで映り込む

 

 「何故…ほっておかなかった…私は…私はもう…」

 

 男に対する怒りはもはや呆れに代わっていた。この男はきっと何をしても謝罪をやめない。なら、もう諦めてしまい男の話を聞こう、そう考えた

 

 「リーチェさん。どうか私の話を聞いてくれませんか?」

 

 「…わかった。それと、どうして私の名前を?」

 

 「まずあなたの名前については、私のスキルによるものです。その人のステータスがわかるスキルでして、その際にあなたが名を偽っていることを知りました。それと、あなたが女性であることも」

 

 「そのスキルは性別までわかるのか…怖いものだな」

 

 「いえ、性別まではわかりません」

 

 「…?では何故私が女だとわかった?」

 

 「声と、あと匂いですかね…」

 

 男に言葉に怪訝な表情を浮かべてしまう

 

 「いや!?決して変態的なニュアンスではなく、なんというか…そのいい匂い!そう!とってもいい匂いが!あっ!?これもダメだ!あ〜何で言えば…」

 

 男は弁明しようとアワアワと慌てふためく。あの試合の男と同一人物ののか疑問に思うほどの変わりっぷりに、私は何故か笑いが堪えられなかった

 

 「ふふ…あははは!」

 

 「えっ!?なに!?なんですか!?どうしたんですか!?まさか、後遺症!?すぐに病院に…」

 

 「ふーー…、あはは!ごめんなさい、後遺症なんてないわ。私は正常よ。慌てているあなたを見ていると少し思い出しちゃってね…ふふ」

 

 「…誰を…ですか?」

 

 ここまできたらいいか。どうせただの身の上話。この男に話したところで特に困ることではない

 

 「そうね…私の兄によ。とっても優しくて頼りになって、でも、どこか抜けてる大好きなお兄ちゃんに」

 

 「お兄様にでしたか…それは光栄ですね」

 

 「え?なんで光栄なの?」

 

 「いえ、あなたの顔を見たら本当にお兄様のことを尊敬なされてるということが伝わってきましたので…もしかして、お兄様もこの学園に?」

 

 「…お兄ちゃんは…お兄ちゃんは…いないわ…」

 

 「…この学園にはって意味ですか?」

 

 男の顔つきが神妙なものになる。男は私の雰囲気で少なからず事情を読み取ったのだろう

 

 「いえ…この世によ」

 

 男はショックで顔を歪ませた。そうこの話はここで終わり、思い出したくないことまで思い出しちゃうから

 

 「ねぇ、今度は逆に私から質問させて」

 

 「え…えぇ…」

 

 まさか、兄の話から急に質問が来るとは思わなかったのだろう。少し遠慮気味な男に素朴な疑問をぶつける

 

 「あなたは何故、私との試合に手を抜いたの?今までの言動や姿を見るとあなたは人を故意に傷つける人には見えないのだけど…」

 

 ゴクリと男は息を呑む

 

 「…それについて、今一度謝罪をさせていただきます。本当に申し訳ありませんでした…」

 

 「わかった…ちゃんと受け取った。それに…いぇ、何でもないわ続けて」

 

 「ありがとうございます。一言で言えば、私のポリシーの問題です。勿論、言い訳に過ぎないのやもしれません。リーチェさんも気を悪くするかもしれませんが、聞いて欲しいのです」

 

 そこから彼の話を聞くこととなったが、要約すると彼の師匠の教えということらしい。彼は義理堅い性格のこともあり忠実教えを守っていただけであった。しかも今回が初めて女性との手合わせであったため凄く動揺してしまい。怪我をさせないためにやむを得ずお互いの武器を損壊させる手段を選んだとのことであった。しかし、私は、彼の話に一つ疑問が浮かんだ

 

 「あなたなら最初から武器のみを破壊できたのでは?それと、最後の一撃、あなたの木刀が壊れたのってあなたがわざと折ったのではないの?」

 

 彼はイヤイヤと首を振る

 

 「さすがにあの少しの立ち合いで武器のみを攻撃するのは不可能ですよ。もしかしたらあなたに怪我を負わせてしまうリスクもありえたかもしれませんでしたし…それに、私の木刀を折ったのは純粋にあなたの力です」

 

 「えっ…」

 

 「私がいうと嫌味になるかもしれませんが、一つだけ言わせたいだきたいことがあります」

 

 そういう時彼は私の手首を掴んだ

 

 「あなたはまだまだ強くなる。その証拠にこの手のマメの数、相当の修練を積んできたことでしょう。だから、あなたの努力は無駄じゃない。誰が何で言おうとあなたがいくら叫んで否定しても私がそれを否定する。あなたはとってもすごい人です。そしてあなたはとっても強い人です」

 

 彼はそういうと優しい顔で私を見つめた

 

 『リーチェ、リーチェはとっても絵が上手いな〜僕にはとってもできないよ…よそ、僕も負けてられないな!リーチェは、芸術、僕は剣術でどっちが先に成功するが勝負だ!」

 

 『え〜さすがにそれはお兄ちゃんが有利すぎるよ〜私の絵なんてたかが知れてるし…それに私の周りには私より絵が上手い人達がいっぱいいるし…私なんて…』

 

 『いやいや!そんなことはない!いくらリーチェが否定しようとその否定を兄である僕が否定しよう!誰が何で言おうとリーチェはすごい!絶対に将来すごい画家になるぞ!』

 

 『え〜!でも、少しだけ自信ついたかも!ありがとうお兄ちゃん!』

 

 兄との幸せな記憶が逆流してくる

 頬には涙が伝っていた

 

 彼は泣き続ける私の背中をさすってくれた

 

 私はお兄ちゃんが亡くなる、数日前に投げかけた質問を彼にぶつけることとした

 

 『「私もう疲れちゃった……(お兄ちゃんが死んじゃったら)私もお兄ちゃんのそばにすぐに行ってもいいかな?」』

 

 彼は少し驚いた後、包み込むように私を抱きしめた

 

 「疲れたなら少し休みしょう。休むことは悪いことではないのです。次に飛び立つための準備ですから。今まで頑張ってきたのだから休んでも大丈夫。だから『生きることを諦めてはダメ』です。お兄様も悲しまれますし、怒られますよ?『そんなに早くきたらお兄ちゃんも怒るよ!だから…』だからこそ『「生きてくれ(ください)」』

 

 「お兄ちゃん…お兄ちゃん!!!」

 

 彼はあの日のお兄ちゃんと、同じ言葉を言ってくれた。私のことをすごいと、生きて欲しいと言ってくれた。私に生きる意味を与えてくれた。そうだ…そうだったんだ…彼は…

 

 

 

 …私のお兄ちゃんだったんだ…




目標である10万字突破しました!
まだまだ物語的には序盤なんですけど
これからも頑張りますのでよろしくお願いします
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