転生先はゲームの世界(意図せず曇らせフラグをへし折る系男子)   作:アンダギー

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誉は屋敷で捨てました

 

 大変なことになってしまった

 

 私はただ泣いている彼女を放ってはおけなかった。そう、ただそれだけだった。いや、もしかしたら模擬戦での罪滅ぼしも兼ねていたのかもしれない。だからこそ彼女のそばを離れることはできなかった。それがまさかこんなことになるとは…

 

 「えへへ…お兄ちゃん♪私のお兄ちゃん♪やっぱりいなくなってなんかいなかったんだ…もしかして私のこと心配で天国から戻ってきてくれたのかな…えへへ♪どっちにしても会えたからいいや…これからずっと一緒だもん」

 

 嬉しそうに腕を組む彼女に私は遠慮がちに横目で視線を送るしかできなかった。彼女の私に対する嫌悪感はどこにいったのやら…ただひとつ言えることはこの姿が我が主人にバレなくて良かった。それだけだった

 

 

 さて、彼女が満足するまでぬいぐるみと化していた数分間、抱きつきホールドに終わりがないことを察し、私は重い口を開くこととした

 

 「リーチェさん。そろそろ…」

 

 「?」

 

 声をかけても反応がない…まるで屍のようだ。と、冗談を頭で挟みながら今度は強めにアプローチをする

 

 「リーチェさん!!聞いてください!!」

 

 彼女は無言で視線を向ける。しかしその面持ちはあきらかに不満があり文句を言いたそうな、そんな面持ちであった

 

 「リーチェ」

 

 「…はい?」

 

 不機嫌そうな面持ちのまま彼女は言葉を発する。私は何故この場面で彼女が自己紹介をしだしたのか疑問に思い訝しんだ

 

 「お兄ちゃんは、私にさん付けなんてしなかった。絶対やめて。なんか、他人みたいじゃない…せっかくまた会えたのに」

 

 「いやいや、リーチェさん…私はお兄ちゃんでは…」

 

 「違う!!!!!!!!」

 

 彼女を諭すため、それと彼女の認識を改めるため優しく声をかけたが、彼女から返ってきたのはものすごい剣幕と怒声であった。恥ずかしながらその剣幕に私は少し尊厳を破壊されかけた。情けなく言うとちびった。その威圧感に、私はリーチェさんと主人の姿を重ねていた

 

 「…ごめんねお兄ちゃん…ちょっと怒鳴っちゃって…でも仕方ないよね?ちゃんと私のことを呼んでくれないお兄ちゃんが悪いんだもん。今度からちゃんと呼んでね。それと、お兄ちゃんは私に敬語なんて使わないから。そこもちゃんとなおしてね。次、もし他人行儀な態度で接したら…かなり怒るから」

 

 なるほど…先程の怒鳴り声をちょっとと表現するのか…うん。怖い。めっちゃ怖い。なんで私の周りにはこんなに怖い子しかいないのかな…何か間違ったことでもしましたか神様、女神様、ウェンビィ様…いや、思い出したらそもそもリーチェさんに対するフォローもほぼミーネ様と同じようにしてしまったわ。それが原因だわ。ほぼ私の責任だわ。というか、この世界の女の子達、それぞれの生い立ちや心に闇抱えすぎだわ。でも、放置はできないわ。八方塞がりだわ。次からは気をつけるわ。反省だわ

 

 「…ねぇ?お兄ちゃん?ちゃんと聞いてる?」

 

 原点回帰、自分の行いを悔い改めている中、曇りまくりの眼でリーチェさんは私を見つめる。呼び捨て、敬語封印、注意点を頭で復唱し声をかける

 

 「いや〜!ごめんね!少しぼーっとしちゃってて!ちゃんと話は聞いてたから大丈夫ブイ!でも、敬語使わないのとか久々すぎて間違えそうだよ〜」

 

 どうだ…少しテンション高めになったが…いけるのか…?

 

 少し警戒をしながら彼女の様子を伺う

 

 「もぅ!しっかりしてよお兄ちゃん!本当に抜けてるんだから〜」

 

 彼女の眼を見たらわかる。乗り切ったことを。我々の勝利である

 

 「それで?」

 

 「?」

 

 安心したのも束の間、第二の矢が私を襲う

 

 「私の名前は?」

 

 「あ、あ〜…まぁ、そう急かさなくても…」

 

 「なんで呼んでくれないの?」

 

 なんとびっくりハイライトさんのご帰宅だ。前から思っていたが、主人もこの子も簡単にハイライトさん帰宅させすぎだと思うな。この瞳で見られたら怖くて逆らえないんだわ。もう死活問題ですわ

 

 「リ…リーチェ…さ…」

 

 ボソッとさん付けを試みると同時にぴとっと首筋にひんやりとし感触が襲ってきた

 

 「え?なんて?」

 

 わかる。みなくてもわかる。鋭利なものだ。きっと選択を誤ればこの世界での私の冒険の書は消去されることだろう

 

 「次はないから…」彼女はボソッと呟いた。残念ながら彼女はやると言ったらやる凄みがある。何度も言うが次の選択を間違えたら私はこの世界からおさらばすることになるだろう。しかし、本当に従っていいのか?このままやられっぱなしの状態で…本当にいいのか?私は…私は…

 

 「リーチェ!リーちゃん!リーリー!冗談だよ〜!少しイタズラ心が働いただけ♪だから、その怖い怖いブツはしまって、お兄ちゃんと一緒に会場に戻ろ?ね?ね?」

 

 ごめん…やっぱ、こえーわ…

 結果を伝えると、媚びた。それは見事なほどにめいいっぱい媚びた

 

 プライド?尊厳?知りませんねそんなもの。命があってなんぼですから。死ぬこと以外はかすり傷なんですよ?知りませんでした?

 

 「あっ!お兄ちゃんリーちゃんって久々に呼んでくれたね♪ふふ♪嬉しい♪そうだなぁ…今後もリーちゃんって呼んでくれたら許してあげようかな〜」

 

 カァー卑しか女バイ。脅迫までして、何がリーちゃんか!何が久々か!一回も言ったことも呼んだこともなか!女の子を愛称で呼ぶなんて九州男児として恥ずかしか!今後は絶対呼ばんとよ!

 

 「…………あれ?無反応?許してあげないよ?」

 

 ふっ…そんな脅しきかんとよ!

 

 「リーチェ…」ピトッ

 

 「リーちゃん!」

 

 ひどいよ…こんなのあんまりだよ…たまにぎられたら反論できないよ…やり方がヤクザだよ…

 

 「そう。それでいいの。私はリーちゃん。あなたのリーちゃん。そしてあなたはお兄ちゃん。私のお兄ちゃん」

 

 NO!!!!

 

 「ん?」

 

 「アイアムブラザー!!!フォーーーー!!!」

 

 闘う?誰と?目の前の彼女と?無理無理!いくら私でもこの至近距離からの攻撃は防ぎようないよ!強がりとか誉れなぞ、屋敷で捨てましたわ!

 

 こうして、無事?に頭のおかしい妹ができました。

 どうか誰でもいいので代わってくれませんか?

 

 

 

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