チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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チェンソーマン レゼ篇大好き!


第一部 転生編
[第1話] 死とチェンソーマン


黒い太陽が沈まぬ街で

誰もが黙って奇術めき働く

 

金属の壁に囲われた部屋

私は朝まで死んだように眠る

 

あなたが見えない

この眼は見えない

我ら造りたまいし神

 

コッペリアの柩

人は踊り疲れた人形

祭壇の羔

機械仕掛けの夢はどこに向かってゆく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

激しい雨が降っていた。

――摩天楼が天を衝かんとひしめき合う、東京の路地裏。

滝のような降水が、全てを押し流していく。

こまごまとしたゴミを、すえた臭いを、血を。

 

ビルとビルの隙間に、男が打ち棄てられたかの如く横たわっていた。

その様相は壊れた人形さながらだ。

手足はあらぬ方向へとひん曲がり、頭は半分ほどが潰れてしまっている。

胴体はさらに酷い。

骨を、臓腑を、惜しげもなく体外に晒し、尽くが食い散らかされた様は

男が悪魔に襲われ、無残で、しかしこの世界においては普遍的な最期を迎えたことを

如実に物語っていた。

 

いつか厚い雲の切れ間から、太陽が顔をのぞかせた頃には

きっと道行く誰かの目に留まり、通報を受けた警察だとかデビルハンターだとかが駆けつけ

悪魔被害による事件として処理される。

ある意味で、ごく日常的な光景。

 

「最悪だ」

 

だが、ここまで歪み切ったヒトの文明にもイレギュラーは存在する。

そんな馬鹿な、と…見る者が己の瞳と耳と脳を疑うであろう

およそ、どう控えめに見積もっても、普通だとは形容できない事象が。

 

「ここ、チェンソーマンの世界じゃんか…」

 

死体が喋っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界の終わりを予言が告げる

隣人の扉を兵士たちが叩く

 

幾千の指が翼のように

折られ畳まれて祈りだけが昇る

 

あなたに会えない

ここでは会えない

我ら救いたまえる神

 

コッペリアの柩

流れる涙はもう枯れ果て

血に飢えた孤独

死は天使の和毛の匂いをさせて舞う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[第1話] 死とチェンソーマン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザァーーーーーッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転生。

近年では、ネット小説なんかで良く耳にする言葉だと思う。

転移・憑依など類似パターンこそあれど、大まかには同じだ。

自分の意識や記憶はそのままに、新たな身体と共に

世界や時代を問わず、活躍したりしなかったり。

 

人間とは、多種多様な考えや価値観を有する生物であるからして

転生という概念に憧れや希望を持つ純朴な存在を、俺は決して否定したりはしないのだが。

ごく個人的な考えとして、有体に言って罰ゲームと変わらないんじゃないかというか

極寒の山で遭難するのと何が違うんだというか、まあ要するに。

少なくとも、プラスのイメージなどこれっぽっちもないのである。

 

その上で、転生先がチェンソーマンと来た。

尊厳だとかのヒトに保障された最低限の財産が、ケツ拭き紙よりも軽くなりがちな少年漫画世界の中でも

ネームドだろうがモブだろうが、スナック菓子の食いカス感覚でポロポロと命を落としていく生き地獄。

事実、今の今まで前世の記憶が呼び覚まされなかったとはいえ

俺はこの世界で、1度悪魔に殺されている。

神は死んだ。

 

それでも神は甦るものだ。

ちょうど、立川でバカンス中のジョニデよろしく。

俺は豪雨に浸かりきった脳で考えた。

デンジくんだとかレゼちゃんだとかいった、いわゆる武器人間たち。

あの手の存在以外に、(半)不死性を持った輩は居ないハズ。

そして、暗がりから突然襲ってきたあの悪魔。

空中を漂う、サイボーグじみたアメンボのような姿。

自分の記憶が間違っていなければ、アレはきっと――

 

「…ドローンの悪魔」

 

非常に短絡的で穴だらけのロジックではあるものの、何にせよ仮説を持つのが大事だ。

つまり、俺はドローンの悪魔と合体して武器人間になったということか。

本来なら奴さん"が"、俺の死体を丸ごとジャックして魔人になりそうな流れなのだが。

俺の自我がたまたま人類最強クラスで、ドローンの悪魔はポチタのように何らかの理由で死にかけていて

乗っ取りを図ったが逆に取り込まれた、あるいは交わした契約を融合のショックで頭から飛ばしてしまったか。

細かいことは正直分からないし、理解しても意味のないことだろう。

そんなことよりも、仮説を立てたなら検証するのが肝要だ。

 

グジュグジュと、腐った果実を踏み潰したような音が身体のそこかしこから響く。

ああでもないこうでもないと思索に耽り、今後の方針を固めようとする間にも

損傷部位の再生が始まっていたらしい。

数秒もしない内に眼球が再構築され、視神経と脳とが再接続を果たし

俺は、「宇枝(うえだ) 慈郎(じろう)」は、この世界へ真に目覚めた。

 

「ぁあ゛ー…予想は大当たり、と。しっかり目の前が見えてますわ」

 

溜息一つ。

 

「記憶は戻らないほうが良かったかもな」

 

愚痴を垂れつつも、しっかりと確認。

この最高にゴキゲンな世界で生き抜いていくための生命線は

ご丁寧にも、左の手のひらにてデカデカと主張していた。

コイツがきっと、スターターだとかピンだとかに相当する変身スイッチ。

善は急げ、今すぐにでも押下して色々と確かめてみたい衝動に駆られたけども

一旦、ここはぐっとこらえよう。

 

あの藤本タツキ版ミザリーこと、生姜焼きの悪魔に目を付けられでもしてみろ。

不穏分子とみなされて始末されるならまだいい方で

悪ければ、支配の能力に絡め取られて永遠の奴隷だ。

生来の気質と、一度の死を経験したことも手伝って

アイツに逆らってくたばることは全くと言っていいほど恐れてはいないが

好きでもない女に何もかもを束縛されるのは、いくら美人相手でも御免被る。

 

武器人間となってしまったのは、仕方のないこととして。

マキマちゃんの監視の目が及ばないような、どこかの山の中ででも

仕様確認等はひっそり、かつ確実に行うとして。

次は――短期でも長期でもいいが――目標の設定だ。

 

例えばこれが、ま〇がタイムき〇ら系な世界への転生だったとしたら

そのままボケーっと生きるのも吝かではなかったのだが。

生憎、チェンソーマン…いや、漫画によく似た並行世界であるだとか

そういう要らん揚げ足は取らないで欲しいモノだけども

とにかく、修羅道同然のフィクションライクな世界で覚醒してしまったからには

フルクトースのように甘ったれたことは言っていられないのだ。

 

(まずは、今がいつなのかを正確に知らなきゃな)

 

とても重要なことである。

今が原作開始前なのか、1部の途中なのか2部の途中なのか。

時期如何で、取るべき行動が余りにもガラリと姿かたちを変えてしまう故に。

とはいえ、この程度のことを把握するにも俺の脳みそは余りにも無力だ。

 

当たり前と言えば当たり前の話で、言わばその辺の名もなきモブが

世界の命運を左右するイベント群のチャート進行度を知っているハズもなく。

記憶の海からどうにか絞り出せたのは

銃の悪魔が約13年ほど前に世界各地へ同時多発的に顕現し

人類社会へ甚大な破壊をもたらしたということだけ。

 

1部~2部間の時間経過が不明瞭であるために

事実上、何も分かっていないも同じと言っても過言ではなかろう。

少なくとも、何か致命的な乖離でも発生していなければ

デンジくんは16歳、未だド底辺の生活を送っているのか

はたまたポチタと1つになってしまった後なのか。

 

幸いにも、宇枝くんは民間のデビルハンターであったらしい。

腕っぷしはそこそこ。

餅の悪魔や酒の悪魔なんかを、安定して血祭りに上げていたようだ。

年はハタチ、高校卒業後は2年間ずっと悪魔をシバき続けていた…ふむ。

実力も経験も、とりあえずは申し分無さそうか?

 

さておき、そうであるならばデビルハンター東京本部に諸々の確認を取りに行くのが早いかも。

いやいや、魔女の体内に自分から飛び込むなど正気か等々。

己の意識が、更なる思考の深淵へと溶けゆく最中。

"ソレ"は突然、しかしどこまでも自然に

あたかも、共に下校中の生来の友人が雑談を振るかのような気安さで

路地裏のさらに奥の方、俺の背中側から話しかけて来たのだった。

 

「貴方、何?」

 

「は…えっ?」

 

「不思議な匂い。武器人間とは何人も会って来たけど、そのどれとも違う」

 

両耳から垂れ下がる特徴的なピアスに、ゲッター線に侵されたかのような同心円状の瞳。

まつ毛なっが!とか、そりゃあこんな美少女の妹ならデンジくんなんてコロッと行くわとか

自分の中の原作ファンとしての側面が、思わず顔を覗かせてしまったのが良くなかったかもしれない。

口は禍の元、沈黙は金、雉も鳴かずば撃たれまい。

慣用句の数々が走馬灯のようにチラつくが、時既に遅し。

 

「しっ…シーちゃん?!何で、こんなところに…」

 

「…?」

 

コテン、と頭を傾げる仕草。

かわいい、違うそうじゃない。

 

「ごめん、どこかで会ったっけ?確かに、シーちゃんって呼んでと、そう自己紹介するとは思うけど」

 

振り向いた眼前には、怪訝そうな表情を湛えた死が満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも触れたい

この手で掴みたい

我ら護る唯一の愛

 

コッペリアの鼓動

生きることは痛みを知ること

脱ぎ捨てた靴を

もう一度踏みならし迷わず歩き出す

 

コッペリアの柩

暗闇から目覚める光よ

祭壇の羔

螺旋の途切れた夢はどこに向かってゆく




宇枝 慈郎:オリ主。元、漫画「チェンソーマン」のファン。死の悪魔推し。やらかした。

死の悪魔:最強の悪魔。キガちゃんを騙ろうとしたら先制攻撃された。宇枝に興味津々。

姫パイどうする?

  • 生きろ、そなたは美しい
  • 死んでくれ姫野、若く美しいまま
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