チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎大好き!


[第10話] 準備はしっかり

健康だった頃のマキマちゃんの計らいにより

すっかり岸辺先生の新しいおもちゃ(しかも1個はどんな乱暴な扱いをしても壊れない!)と化して

文字通りに死ぬほど扱かれ続ける宿業を背負った

デンジくんとパワーちゃんの悲哀から遅れること数日。

 

晴れてマキマちゃんの排除に成功した俺たちは

いよいよ、ライダーの正体を世間に公表せんとしていた。

舞台を彩るにあたり、シーちゃんの眷属へ"ヒール"のお願いをするでもよかったのだけれど。

こういうモノは形、リアリティが大切だとは俺の持論である。

 

それに、ここで焦ってはならない。

ハクビシンの悪魔、クマの悪魔、クルマの悪魔、薬害の悪魔etcetc、公安も手を焼く凶暴な悪魔を、千切っては投げていった結果

既に世間のライダー人気は、1部終盤のチェンソーマンへ対するソレに匹敵している。

ここから更に人気を跳ねさせようものなら、制御不能――

余りよろしい言い方ではないが、暴徒と化すのが目に見えている。

 

まずは受け皿と、引き締めるための紐が必要だ。

クラスタが大規模化するに従い、ただ騒ぎたいだけの層が流入してくるのは避けようがない。

万が一、素顔バレが不発に終わったとしても

どの道、いずれは必要になってくるプロセスと言えよう。

 

無論、シミュレーションゲームのようにはいくまい。

一度数値を下げたなら、内部の変数と関数でガチガチに制御されるパラメータと違って

相手にしなければならないのは、ヒトの、生の感情だ。

ひょっとすると、骨折り損になってしまうかもしれない。

 

しかし、そうなってしまうのならその時はその時。

メインプランを修正するなり、サブプランを実施するなりすればいいだけの話。

セーフティネットを、十重二十重に張り巡らせておくことが肝要なのであるからして。

今は、その内の1本をしっかり用意することに集中しよう。

 

「シー君、ここは…」

 

「そ、後にチェンソーマン教会の総本山になる場所だね。今はまだ一般カルト教団の巣だけど」

 

俺とシーちゃんは、とあるビルの前に居た。

当然の話ではあるのだが、ビル正面側の上方へ

チェンソーマンのモニュメントが取り付けられていないのは、中々に違和感がある。

心の中のマキマちゃんを抑え込みつつ、俺は続けた。

 

「結論から言うと、このカルト教団を俺たちで頂いちゃおうって考えてる。一から組織を作るのはとても現実的じゃないけど、丁度いい屋台骨があるんだ。有効活用、有効活用」

 

バルエムくん辺りはまだ、恐らくマキマちゃんの洗脳が解けていないハズだ。

思惑がバッティングしないのであれば、精々派手にやらせてもらおう。

 

「カルト教団のメンバーはどうする気?」

 

「抵抗するなら皆殺し、抵抗しないなら保護。アレな連中を野に放つのはぞっとしないしね…俺は前者になると思ってるけど」

 

「何か根拠があるの?」

 

「まあね。シーちゃん、この間シバいた薬害の悪魔が言ってたじゃない?何で教団は狙わずに俺ばかり、ってさ」

 

「確かに、言ってたような」

 

「カルトなんて、東京には山ほどあるけど。この世界で教団って言われたら、気になるのがファン心理。で、ちょっと調べてみた」

 

興信所ほか、各所にカネを握らせて嗅ぎまわらせた結果

まあ出るわ出るわ…まっくろくろすけがワラワラと。

実は教祖と契約していた麻薬の悪魔が、宗教法人を隠れ蓑に

ビル内を教団とは名ばかりの巣穴に変え、信者をヤク漬けにした挙句

ゾンビの悪魔よろしく、デビルハンターを殺すための私兵量産工場にしていたのだと。

 

チェンソーマン時空は悪魔が笑う世の中であるから

ヤクに縋りたい気持ちを否定する気はないけども

入信者を"問答無用で"アッパラパーにするだとか、"我欲を満たすため"テロを企てているだとかは

いつ粛清されても文句など言える立場にない悪魔だ。

押し付け、ダメ、絶対。

 

「あ。乗っ取りが完了したら、本尊はシーちゃんに挿げ替えるつもりだから。よろしく」

 

シーちゃんを、畏怖ではなく親愛で満たす。

死の悪魔を、死の女神に光堕ちさせる。

これで更に死への恐怖を薄めてやるのさ…へっへっへ。

 

「教義は2つ。1つ、死を乞う者に安寧を。1つ、死を撒く者に鉄槌を。安楽死を請け負うデビルハンター団体兼シーちゃんファンクラブ、ってのがコンセプトで――」

 

「嬉しい」

 

わお、めっちゃ喜んでる。

最推しが自分の愛で幸せになってくれるのは、何と素晴らしいことだろうか。

…この未来は絶対に実現させよう。

胸の奥より迸るプロミネンスに身を焦がし、俺はビル内へと征く。

いざ、嗚呼いざいざ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

公安が管理する地下牢にて。

アキは己の力不足を実感していた。

 

「この部屋に居る悪魔と、アキ君は契約してもらいます」

 

黒瀬ユウタロウと名乗った、京都公安所属の男が告げる。

 

自分で申請を出したのだから、望むところであった。

決して、狐の悪魔だとか呪いの悪魔だとかが

弱いなどという傲慢を抱いているわけではないのだが

先の襲撃事件で、分からされてしまった。

不死身の化け物に抗うためには、火力よりも継戦能力の方が重要なのだと。

 

高い代償(呪いの悪魔:カースの場合は寿命)を支払い

必中の即死攻撃を決めたところで

スナック感覚でポンポンと蘇生されてしまっては意味がない。

"殺害"が可能である以上、足止めにはなるのかもしれない。

しかし、費用対効果が釣り合っているとは到底思えなかった。

 

どの道、時間稼ぎにしかならないのであれば

よりコストが少なく済む悪魔との契約を検討することは

自分や仲間の命がかかっている以上、必然だと言えよう。

 

「いるのは『未来の悪魔』。公安でコイツと契約している人は2人。1人は寿命半分、もう1人は両目と味覚、嗅覚を差し出しています」

 

物々しい扉を前に、ユウタロウは続け

 

「気に入られれば安く済みますよ」

 

鍵を開錠すると、扉を開けた。

 

「じゃあどうぞ」

 

アキが静かに入室し、扉が再び閉められた直後。

暗闇にポツンと浮かぶ、1つの眼球と目が合った。

怯えず、怯まず、じっと見つめ返すアキを他所に

眼球の持ち主が暗がりより現れ、大げさな身振り手振りと共に騒ぎ始めた。

 

「未来!最高!未来!!最高!!」

 

アキの視線は動かない。

 

「オマエも未来最高と叫びなさい!!」

 

「俺はお前と契約をしに来た。お前は俺の何が欲しいか言え」

 

「…」

 

「…」

 

「過去最悪な態度だぞオマエ!」

 

萎えに萎えたらしい未来の悪魔はしかし

あからさまな空元気と共に言い放った。

 

「まあいい、オマエの未来を見せな!未来次第で契約内容は考えるぜ!」

 

何が何だか分からない、と言いたげな顔をするアキに

 

「早くお腹に頭を突っ込め!じゃなきゃ未来が見えないだろ!」

 

キレ気味に宣言した。

そう言われては、突っ込まざるを得ない。

渋々頭を突っ込んだアキの未来を、つぶさに観察する未来の悪魔は果たして

 

「ム…フ、フフ。ウフフフフ…」

 

気味の悪い笑いを隠そうともしない。

お目当ての未来を発見したようであった。

 

「契約はこうだ!お前の右目をくり抜いて俺の目を入れろ!そうすればお前の力になってやる!」

 

一息。

 

「思っていたより安い…って顔だな?なに、オマエの未来を最前列で見たくなったからな」

 

悪魔らしい、酷薄な笑みを浮かべつつ

未来の悪魔は心底愉快な様子だ。

 

「なぜならオマエは未来で最悪な死に方をする!どういう死に方をするか聞きたいか?オマエはせ――」

 

「言わなくてもいい。自分の死に方には興味ない…さっさと目をよこせ」

 

契約は、ここに交わされた。

 

「…イェイイェイ」

 

今度は露骨にションボリと小さくなり、いじけだした未来の悪魔に背を向け

端正な顔を自身の血に染めたアキは、独房を後にするのだった。




宇枝 慈郎:オリ主。そりゃ少年誌でネタにできんわ(※オリ要素です。)と納得。この後めちゃくちゃ豊久した。

死の悪魔:最強の悪魔。宇枝と共に居られない時間が多大なるストレスになりつつある。結婚しよ。

早川 アキ:4課のデビルハンター。元凶排除後に何故か死亡フラグが立った。金太郎飴みてーな人生してる。

未来の悪魔:例のアレ。現代に足りないのは前進と平和。愉悦系バイツァ・ダスト。

黒瀬 ユウタロウ:京都公安のデビルハンター。宇宙貨物船の整備士から転職した。来世は米津玄師。

マキマどうする?

  • 自分は生姜焼きが好き
  • 自分は回転寿司が好き
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