チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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ホステル大好き!


[第14話] 今時の高校生

夜の、とある校舎内。

 

デンジ君と一緒にこっそり忍び込んだ私は、完全に開き直っていた。

使命を放棄したわけではないが…要は、"チェンソーの悪魔の心臓さえ奪取できればいい"話だ。

つまり、心臓に付随するデンジ君の生死は問わないということであるからして

彼を合法的にソ連へ招待する作戦を遂行中だと説明すれば、HQも文句など言えまい。

上としても、外交問題になりかねない荒事は回避できるのであれば回避したいハズ。

 

昼間に経験した世にも恐ろしい記憶は、一旦無かったことにしている。

こうして冷静になった今でもなお、まるで対処できる気がしないためである。

アレの正体が死の悪魔であろうが何であろうが、どの道私の手には余る案件だ。

加えて、立ったままで逝った私を蘇生させてくれた(?)こともある。

であれば、これはもう気に病むだけ無駄・野暮というものであろう。

 

だから私は何の気兼ねもなく、目標を篭絡するためにあの手この手を尽くす。

デンジ君が幸せなら私も幸せであるし、任務成功率も上がるため良いこと尽くめではないか。

これは水族館デートの際に知ったことだが、彼も義務教育を受けていないらしい。

それを憐れんだからなのか、共感したからなのか…私を突き動かした感情の正体は定かではないのだけれども

とにかく私は、だったら学校へ行ってみないかという提案をして今に至る。

 

「ほーら、サッサと入った入った!デンジ君、泳ぐのへたっぴなんでしょ?私が、全部教えてあげる!」

 

「いや…でも俺、水着なんて持ってきて――!!?」

 

「どーだっていいじゃん、そんなの。全部脱いじゃえばいいよ!」

 

プールサイドへ立つ私に、大きく、深く、返しのオマケ付きで突き刺さる、杭のような視線が浴びせられる。

シャツを脱ぎ、ズボンを脱ぎ、下着にもお別れをする頃には、羞恥心が全く顔を覗かせないわけではなかった。

とはいえ、好意・興味・驚愕・性欲その他諸々の、隠すつもりもないストレートな気持ちが伝わるのは

全く悪い気分ではない、どころか明確な好ましさすらあった。

もっと夢中になって欲しくてたまらないのは、本心と実利を兼ねた嘘偽りのない私の本音だ。

 

「わお、ご立派」

 

半ば呆然とした表情を晒しながらも、目にもとまらぬ超高速脱衣を決めたデンジ君を見ると

先ほど抱いた感情は自惚れでなかったことの証明が、それはもう高らかに主張していた。

 

「んのエロ女…もぉ知らねえかんな!ウらあ!!」

 

謎のポーズと共に着水するデンジ君を見届け、あれ痛くないのかな…とかいったバカみたいな所感を浮かべている内

一度プールの底に足をつけて蹴りあがってきたのか、水面へと急浮上してきたデンジ君に抱きしめられてしまう。

 

「捕まえたぜ~?こっからレゼせんせーは、どうやって泳ぎを教えてくれるんすか…んっ」

 

減らず口は、こうしてしまえば静かになる。

唇や舌へと歯を立てつつ、僅かに血の味が滲むまで吸い付くのだ。

 

「これはパネルに書いてあったことなんですけどね?エイが噛みついて求愛する理由ってさ、交尾の時に身体を固定させるためなんだって」

 

「…オスが噛むんじゃなかったか?」

 

「当ててるくせに、デンジ君は細かいこと言いますなー。こっちの方はキミがリードしてよ…こういうこと、初めてじゃないんでしょ?」

 

「止まれねぇからな」

 

「ケダモノ」

 

ベッと出した舌を、丸ごと口へ含むような野蛮さを私は静かに受け入れて――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日、夜。

空を駆け回りつつ、俺はめちゃめちゃに焦っていた。

原作からの大きな乖離が、とうとう看過できない歪を生み始めたからだ。

いつかは訪れるであろう破局であったことは重々承知の上だが

いくらなんでもタイミングというモノがあるだろうに。

 

「サンタクロースが動き出している…!」

 

いや、来なくなることがあり得ないとは思っていた。

何せ俺たちがマキマちゃんを再起不能に追い込んでしまったから。

好機とみて、個人から国家に至るまでが刺客を送り込んでくるのは必然である。

また、漫画のコマ数の関係で描写が無かっただけで

実はとっくに日本で根を張っていた可能性だってあるのだ。

 

だから、実際の所はまだまだ様子を窺っているだけであり

本格的に暴れるのは、もう少し先の話なのかもしれない。

しかし、どうにもサンタクロース(偽)の爺さんの発言が引っ掛かる。

あの時は確か、あたかもこの時点から人形の感染を広げ始めましたよとの

含みを持った独り言を吐いていたハズ。

 

「多すぎでしょ…あー、実際に観ると"人形"気持ちわる!」

 

捕捉出来たのは、本当の本当にラッキーだとしか言いようがない。

レゼちゃんが弾けるであろう前日に、最後の哨戒を行っていたところ

俺は見つけてしまったのだ、モーション流し込みで寸分の狂いもなく

同じダンスを踊り続けるMMDのように、手の動きから呼吸音まで画一化されたヒトの集団を。

それも1グループだけではなく、複数で多地点に渡って。

 

1度そうと分かってしまえば、探してマークすること自体は容易だった。

ライダーの通達により、ここら一帯の交通量が限界集落の如く激減していることも手伝い

アレは悪目立ちしすぎだ、その筋の人間にバレることを前提で動かしているとしか思えない。

まあ…つまりはそういうことなのだろう、向こうだって馬鹿じゃない。

作戦が露見しても問題のないフェーズに入ったか、もしくは業界人に分かりやすく脅しをかけている。

 

「手を出すな、お前も蝋人形にしてやろうか…って感じ?ヤダヤダ、今日ほど武器人間に生まれ変わって良かったと思う日は無いぜ」

 

サンタクロースが契約している、人形の悪魔は本当にヤバい。

俺みたいな武器人間や、パワーちゃんみたいな魔人にこそ発揮されない能力ではあるが

服越しだろうが何だろうが、触れられただけで人形にされてしまうというもの。

しかも、人形化の力は人形にも宿ると来た。

発動条件がガバガバすぎて、封じ込めの困難さもピカイチだ。

 

正直、出力の無法さで言えば支配等に大差を付けてこちらへ軍配が上がるのではなかろうか。

一応、コスモちゃんが欠けたパターンでも完全な鎮圧が可能なように

対策自体は講じてあるのだが…コレ、クァンシちゃんが乱入して来たらどうなっちまうんだ。

彼女の相手は、最強の未練タラタラ酒カスおじさんに任せるつもりではあったけれども

俺単騎でどうにもならない相手だし、最悪の場合また落下ちゃんに頭下げなきゃかもなぁ。

 

「そういえば、シーちゃんも何か変なこと言ってたな…デンジくんとレゼちゃんの仲が良すぎるとか何とか」

 

そちらは、別に捉え方の問題では?と思ってしまうのだが。

だって、レゼちゃんは電話ボックスの中でデンジくんに一目惚れしてしまったハズなのだ。

でなければ、ボックス内で自爆しない手がないから。

何もかもが一言一句レベルで大元の流れをなぞっているわけではないのだし

そうでなくとも、コミックスで読んだ時も映画で観た時も俺にはイチャつくカップルにしか見えなかった。

 

何なら、バトルへ移行した後ですら痴話喧嘩にも見えなくて。

――勿論、被害規模等を考えれば当人ら以外はたまった話ではないが――

アクティブなデートを楽しんでいるようであった、とは

流石に、俺の趣味というか主観というかが入り込みすぎた考えと言われても納得は出来る。

出来るが、要するにレゼちゃんのアレコレは素でエンジョイしてるんじゃないのかというのが俺の持論だ。

 

(そもそも演技じゃないんだから、演技に見えなくてもおかしなところはない…と思うんだけど)

 

祭囃子の音が近づく。

向かう先は、もう誰にも分からない。




宇枝 慈郎:オリ主。死の悪魔のやらかし(不可抗力)に気づかず。似たもの夫婦。チャートが壊れそう。

デンジ:原作主人公。宇枝から姫野への発言が巡り巡ってえr…エラいことに。ほっとくとソ連に片道旅行する。もげろ。

レゼ:ソ連からの刺客。素の好感度が原作より高い。その上死の悪魔と出会い本能が刺激された。任務?奴さん死んだよ。
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