「いや~、外はすげぇことになってんな!」
鉄火場と化した東京で、ドアの隙間から外の様子を窺いつつ
暴力の魔人ことガルガリは、世間話でもしているかのような軽さを見せる。
コベニと共に夜間の警邏に繰り出していた彼だが
レゼとサンタクロースの殺し合いへ巻き込まれる形となり
都内からの脱出手段を探りつつ、散発的に襲い来る人形を蹴散らしていた。
彼らは現在、ファミリーバーガー内に籠城を決め込んでおり
店内には、避難勧告が出ていたにも関わらず哀れにも出勤せざるを得なかった店員と
這々の体で逃げ込んできた数人の生存者たちが、神経を尖らせ続けている。
この極限状況がいつ人々を凶行へ駆り立ててもおかしくない、と直感的に理解していたガルガリは
務めて明るく振舞っていたのだが、肝心のバディは――
「は、はひっ…許して…助けて…」
ありとあらゆる体液で顔をぐちゃぐちゃにして、ガタガタと震えながら隅で小さくなっていた。
本当に命の危機へ瀕したならば、途端に超人的な動きを見せることは想像に難くなかったが
そうならない限りはてんで使い物にならないこともまた、想像に難くなかった。
もっとも、街中は勿論そこらの建物内から下水道に至るまでが、今や人形の巣だ。
今更戦力が1人増えたところで、焼け石に水なのが正直なところではある。
「ジタバタしても仕方ねぇか…おーい、店員さん!」
「は、はいっ!?」
長椅子へ勢いよく腰を下ろしたガルガリは、わざとらしく両手を振ると
フュージ〇ンのポーズへと派生させ、店内上方を指さした。
「このさ、カウンター上のメニューあるじゃない?端からオーダーね!ヨロシクぅ!」
「ふえっ…?」
流石のコベニも、ガルガリの提案に顔を上げて反応する。
「パーティーしようぜって言ってんの、ハンバーガーパーティー!俺がおごってやるよ、持ってけドロボー!」
一息。
「助かれば笑い話!助かんなくても…最後の思い出がバケモン相手にちびってました、じゃつまんないっしょ?」
水を打ったように静まり返る店内。
余計に空気を悪くしちまったか、と内心頭を抱えかけたガルガリだが
居合わせた生存者たちは、次々に呼応し始めた。
「そ、そう…だな。腐ってても、何もいいことないよな…」
「なんでもたべていいの!ありがとう、おにいちゃん!」
「いいんじゃないですか?やりましょう」
「ハンバーガー初めて食べます。楽しみです!」
「――お、オーダー入りましたァ!ファミリー!」
街灯やネオンといった光源が、人形の手で尽く集中的に破壊され
闇へと沈みかけていた空間は、微かな光を取り戻しつつあった。
*
「ギロチンちゃん、皆殺しにして」
「ギョニー!!」
殺意渦巻く都内の繁華街の地表より、十数メートル。
鳩の頭を持つ異形の猿叫が木霊すると、3人の武器人間と1人の悪魔へ追いすがる無機質な集団は
回避行動すらも空しく、ノーモーションで輪切りにされていく。
この悪魔、その名前に反して見た目通りの(?)平和主義者なのだが
今回は相手が相手であったため、パワー全開で人形たちをスクラップに変えていた。
「…嘘は、ついてなかったのか。本当に味方してくれるんだ」
半ば呆れたように呟いたのはレゼちゃんだ。
デンジくんをしっかと抱えつつ、車やバイクで執拗に追跡を続ける
サンタクロースの兵隊たちを、足の指を切り離す絨毯爆撃にて薙ぎ払っていく。
血と手数の不足により、夥しい数の敵を前にジワジワと追い詰められていた彼女だが
俺たちが合流したことで、戦局の天秤は水平に戻っていた。
シーちゃんの乱入で相当に度肝を抜かれたらしいレゼちゃんは
最初こそ、危うくデンジくんを落としかけるほどに動揺していたのだけれども。
前にも自分たちを助けてくれた、とデンジくんが咄嗟にフォローを入れたこともあり
何とか、会話する余裕くらいは確保できたようである。
師匠ちゃんへ話が筒抜けであることは重々承知で――否、敢えて聞かせるように俺は答えた。
「デンジくんたち"には"ね…それで、台風くんは?いつでも動かせそう?」
「絶対服従させたから大丈夫…私が言うのも何だけどさ、悪魔みたいな作戦思いつくねキミ~」
「それほどでも。サンタクロースの狙いは、デンジくんを文字通り地獄行きにさせること。そのためには、特定のデパートだとかの範囲指定が欠かせない。だから」
俺は凶悪に、歯を剥いた。
「本体は、きっと俺たちを近くで視ている。どこに潜んでるかは知らないけどさ?台風で全部吹き飛ばしちまえば、瓦礫に埋もれて圧死か窒息死だ」
「マジかよ~!?すっげぇワルの敵が使ってくるヤツじゃ~ん!?」
「名高い"ライダー"のセリフとは思えないな」
「ミソはね、俺たちには何の瑕疵も残らないとこ。ここら一帯には避難指示を出してあるし、話を聞かなかった人らは今やほぼ人形の餌食。つまり、一般人を気にする必要がない。しかも、台風くんは別にレゼちゃんと契約をしてるワケじゃない謂わば野良悪魔。事後の悪評は、全部サンタクロースと台風くんのモノだ」
例え台風くんが暴走を始めたとしても、一瞬かつド派手に制圧する用意もあると付け加えると
2人はいよいよ、軽く引いた様子であった。
こちら側には背を向けて、ギロチンちゃんに人形の対処を淡々と命じていたシーちゃんが
この上なくドヤっていたことも、俺は当然見逃さないのであった。
*
サンタクロースは内心、大混乱に陥っていた。
何故かライダーに嗅ぎつけられていた自身の目的、台風の悪魔という伏兵、何よりもライダーの正体が死の悪魔であるという事実。
今となっては、ターゲットの身内を捕え損ねたことなど些事である。
このままではドイツからの依頼達成を兼ねた、己の悲願の成就どころか
生きて日本…いや、東京を脱出できるのかということにすら大きな疑問符が付く有様だ。
(地獄の悪魔との契約がバレているということは、その先の目的まで勘付かれていることも想定しなければ)
(師匠、どうしますか?無理やりこの場を離れることも、出来なくはありませんが)
サンタクロースは、不出来な弟子トーリカを思わず呪う。
ここで引くのが最も愚かな選択だと分からないのか、と。
サンクコスト効果に囚われたワケではない、ないのだが
そもそも、ヒトとしての肉体に残された寿命など微々たるものだ。
闇の悪魔の力を借りないことには、どの道先がない。
(台風の悪魔の呼び出し阻止は、もう間に合わない。人形たちに進路誘導をさせて、何とか時間稼ぎを――)
その時、彼女の思考を遮るように様々な声が響いた。
「家族で食べようファミリーバーガー!」
「パパママ大好きファミリーバーガー!」
「トマト!」
「レタス!」
「チーズ!」
「パン!」
「主役はハン――」
バリンッ!!!!!
突如、どこからともなく高速で飛来した2つの人影が、ガラスを突き破って侵入してきた。
「ハンバリーン!!?」
ダイナミック極まりない入店を果たした男は、"ガルガリの"上げた奇声を無視して、抱きかかえていた女を優しく下ろすと
舞い上がる粉塵に咳き込みつつも、その場の全員に言い聞かせるように、ゆっくりと語りだす。
「見分けるのは…ゲホッ、簡単だったよ。ゴホッゴホッ!今、周辺の呼吸音は殆ど人形からのモノばかりだ。画一的で気味の悪い、故に"除外対象"になる呼吸音」
「あっ…な、なあっ?」
「とはいえ、圏内にはまだまだ生存者が残っている。10人や20人なんてレベルじゃないし、呼吸音も様々だから隠れ潜まれたら判別するのは無理だった」
"トーリカの"声にならない一驚を無視して、語りは徐々に朗々としていく。
「だから俺は、アンタが人形の耳を通じて戦闘経過を窺っていることを利用した。敢えてショッキングな作戦を垂れ流してさぁ?まあ…炙り出せないなら炙り出せないで、そっちを本線にする気ではあったけどね」
指を差して突き付けられたのは、一部の者にとって衝撃の真実。
「まんまと動揺したな、サンタクロース。"呼吸音を急に乱した"、そこのアンタに言ってんだ」
本来であれば、油断とも言えない油断。
その僅かな隙を全くの死角より突いた宇枝が、サンタクロースを射程距離に捉えていた。
宇枝 慈郎:オリ主。ライダーの素顔どころか正体までをもメン限公開。ポール監督と馬が合う。
死の悪魔:最強の悪魔。珍しく言うことを聞いたギロチンの悪魔に満足。8話の夢、叶えし者。
デンジ:原作主人公。南国のポンプが水の代わりに血をため込んだすがた。偽物が出てきそう。
レゼ:ソ連からの刺客。彼女面超えて嫁面してる。血ぃ吸うたろか?
ガルガリ:暴力の魔人。ヒロカズ君はね、"転校"しちゃったの。当たりが出たらもう1本。
東山 コベニ:4課のデビルハンター。ファミリーバーガーだけは転職先にしないと決めた。目指せDDRプロ。
サンタクロース:ドイツからの刺客。師匠居たんかワレ。皆様は気付きましたか?
トーリカ:ドイツからの刺客。ハンバーガーを味わわせることは出来ず。うどんでも食べさせなさい。
ギロチンの悪魔:モブ悪魔。VTuber事務所を運営している。チャパティってナンだっけ?