チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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マリグナント 狂暴な悪夢大好き!


[第17話] チェンソーマンハンター

デンジとレゼは、気を切らすことを刹那ほども許されぬまま

サンタクロースによる最後の猛攻を、その一身に浴び続けていた。

レゼの血液は枯渇寸前であり、爆発を利用した空中飛行も

既に当初ほどの移動距離を稼げなくなってきている。

スピードで言うならば、時速40キロは優に下回っているであろう。

 

「ごめんね、デンジ君。痛いね?ごめんね?」

 

「い゛、ぃぜ…べ…っにぉ~…レゼん、くわぇ…じぬん、な゛ぁ…んぞぅとこ…ぜ」

 

デンジは物理的に干からびた、ミイラのような状態となっており

愛しい女のエネルギーとなるために、その下半身の全てを喪失させていた。

青息吐息の絶命寸前にも関わらず、彼女の心を乱さぬように

消え入りながらも明るく、いい意味で適当なセリフを、恥ずかしげもなく口にする。

彼の漢気に応えんと、レゼは干し肉と化した上半身へ齧り付き、咀嚼し、血の一滴までも啜って嚥下した。

 

「ありがとう、デンジ君。愛してるよ、デンジ君」

 

補給を終えたレゼは、ある賭けに出ようとする。

このまま逃げ続けたところで、数分弱もすればデンジの奪取を許してしまうのは火を見るよりも明らか。

だから、逃げることを諦めてタイムリミットまで隠れ切ろうというのである。

本体がチェンソーの悪魔の心臓の、オーラのようなものを追尾しているのではなく

あくまで肉眼を頼りにしているのであれば、まるで分の悪いギャンブルとも言い切れない故に。

 

即断即決、事態は一刻を争う。

手刀にて、まずデンジの上半身を心臓ギリギリで切り裂くと

そのまま自分の首も切断し、スターターを口でガッチリ咥えた。

そして髪の毛を掴んで投擲態勢に入ったレゼは、ビルの壁面より迫る横側の人形の群れの方へと

鎖鎌の分銅を使う要領で、爆弾に変えた頭部をブチ込んだ。

 

少しでも軽量化を行って稼げる時間を増やす戦術への不自然さはなく、むしろ理に適っていたし

頭を失ってなお、デンジの上半身半分を抱えて逃走を図るレゼを視たサンタクロースが

危機的な状況にあった本体の焦りから、ミスをしてしまったのも致し方あるまい。

空を弱々しく駆ける、彼女"のみ"の追跡を選択してしまうというミスを。

レゼの狙いは、人形の群れなどではなかった。

 

「…」

 

露払いを兼ねた一手だとのカモフラージュを施した彼女が投げつけた真の対象は、ビルのガラス窓。

爆発・炸裂音・煙、その全てがミスディレクション。

フロア内のデスクの影へと、鮮やかに"転がり込んだ"レゼは

血という血を振り絞って全身を再構築し、デンジを割れ物の如く大事に愛しそうに抱きかかえる。

宇枝が一刻も早くケリを付けてくれることを祈り、息を殺しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最初から知っていたのですね、私が人形たちと脳を共有していることを。だからこそ、知らない風を装った作戦のリークで私をハメにかかった」

 

ターゲットへの接触を許した時点で、形勢逆転は避けられませんでしたか、とサンタクロースは不敵に微笑んだ。

通常であれば絶体絶命以外の何物でもないこの状況――実際、呼吸は乱れに乱れているというのに――

それを傍目には悟らせすらしない、その胆力だけは俺も見習いたいものだ。

 

「知っていることをそのまま伝える。知っているのに知らないふりをする…口先だけでも、案外色々出来るもんさ」

 

「貴方ほど頭が回り、それでいてネジの外れた男でしたら。この状況、まだ私を詰ませられないことはお判りでしょう」

 

「まあね。アンタを殺そうにもダメージは人形が肩代わり、俺を無力化しようにも不死身な上に人形化も出来ないと来てる」

 

今にも椅子から立ち上がり、師匠ちゃんへ飛び掛かりそうなガルガリくんを、ジェスチャーと言葉で制す。

無理すんなよ、足が震えてるぜ?

シーちゃんの気配を間近で浴びせられて、よくぞ闘志を失わないものである。

 

「ハイ、そこで切り札を投入です。シーちゃん?」

 

首尾よく自身の口内から眷属を引き抜いていたシーちゃんが、一言告げる。

 

「…――蜘蛛」

 

本来の姿を取り戻したのは、蜘蛛の悪魔ことプリンシちゃん。

途端に、師匠ちゃんの頬を一筋の汗が伝う。

ポーカーフェイスが、崩れ始めている。

頭が良いのも考え物だな、察しちまうだろう?

もう遅いけどな。

 

「マトリョーシカ…アンタのとこの、民芸品みたいでしょ。何が出るかな、っと」

 

「呼べ」

 

瞬間、プリンシちゃんの顔から身体まで繋がるジッパーが勢いよく開き

体内に広がっていた異空間より、一人の女性が現れた。

初見では着ぐるみを纏っていたようにしか見えないのだが…これはマジックではない。

正真正銘、全くの別地点にて待機していた彼女が

プリンシちゃんの身体をどこでもドア代わりにして、この場へと降り立ったのだ。

 

「こんばんは、サンタクロース。慈郎君に随分と追い詰められているみたいだね」

 

優雅な夜会に招待したのは、黙示録の4騎士が一人。

支配の名を冠するホワイトライダー、最恐最悪のファムファタール。

対魔特異4課の長たるデビルハンター:マキマちゃんだった。

 

「そんな、バカな話がありますか。貴女は何者かの攻撃を受け、再起不能になったハズ。まさか、我々を釣りだすための…?」

 

「そこまでバレちゃってるのか。社会不安を煽った公安内(とかい)のネズミも、この後で一掃しないといけないかな」

 

一息。

 

「まあ、今はどうでもいいや。重要なのは、サンタクロース。貴女が、慈郎君の策に引っかかって戦術的敗北を喫したこと。それも、奇襲や不意打ちの類じゃない…真正面からの、知恵比べで」

 

「今、支配に課して限定解除している"枷"は肉体的なモノ。つまり、能力は据え置き」

 

「言ってみれば、マキマちゃんの気分の問題なんだけど…精一杯、お膳立てはしたつもりだよ」

 

唖然とするガルガリくんとコベニちゃんへ、見せつけるかのように

マキマちゃんは師匠ちゃんとトーリカくんをめがけて、銃撃のポーズを取る。

 

「死に縛られるのは業腹だけど、それはそれ。ぱん」

 

トーリカくんの上半身が、平行世界のパワーちゃんの如く消し飛んだ。

崩れるように斃れた彼の、身体からの大量出血ならびに濃厚な鉄の匂いを

店内に存在する全員が認識していたのだけれども、事ここに至っては悲鳴が上がる様子もない。

 

「貴女は、明確に、私よりも劣っているね、サンタクロース。"絶対服従します、と言いなさい"」

 

「"ぜ"…嫌です。"絶対服従"きょひしm"――絶対服従します"」

 

静寂が、夜を支配していく。

師匠ちゃんへの支配が決まってしまえば、後は優しい。

人形たちのコントロールをも奪取して上書きして、マキマちゃんが丸ごと掌握してしまえば良いだけだ。

原作で、コスモちゃんのやったことがクラッキングなら

こちらはハッキングといったところか?

 

「終わったよ、全部。サンタクロースの人形は今、根絶された」

 

それは、終戦を意味していた。

人形の悪魔による犠牲者こそ多数であったものの、全体的な被害は軽微も軽微。

レゼとサンタクロースが武力介入した現場として考えたならば

奇跡的な戦果、と形容しても過言ではなかった。

 

「ならコレが、最高で最後のチャンスだな」

 

なかっ"た"。

 

「手品の種は、もう出し尽くしただろう?」

 

最初のデビルハンターが、俺たちの前へ出現する直前に

俺とシーちゃんとマキマちゃんと師匠ちゃんの首は、既に胴体を離れていて。

事務的で抑揚のない、当人の声すら置き去りにして――

 

「後は落下の悪魔に勘付かれるよりも早く、お前の血をカラにするだけだ、ドローン男」

 

最終ラウンド、スタート。




宇枝 慈郎:オリ主。クァンシの奇襲に反応できず。残る手札は後1枚。

死の悪魔:最強の悪魔。クァンシの奇襲に反応できず。危うく全人類を殺しかけた。

デンジ:原作主人公。まさかの前作主人公とキャラ被り。愛と勇気だけが友達。

レゼ:ソ連からの刺客。魔球も悪魔もハリケーン。デンジ君ってこんな味かぁ…(恍惚)

マキマ:支配の悪魔。クァンシの奇襲に反応できず。熊本県阿蘇郡南小国町生まれ。

プリンシ:蜘蛛の悪魔。脱ぎ散らかされていたため、クァンシの奇襲を免れる。肌が水色の宇宙人。

ガルガリ:暴力の魔人。長椅子に座っていたため、クァンシの奇襲を免れる。ハーブか何かやつておられる?

東山 コベニ:4課のデビルハンター。体育座りをしていたため、クァンシの奇襲を免れる。正体はAI。

サンタクロース:ドイツからの刺客。クァンシの奇襲に反応できず。しぶとくない地獄の傀儡師。

トーリカ:ドイツからの刺客。最期は潰してハンバーグにする予定だった。本名不詳なのでパンとなった。

クァンシ:中国からの刺客。クレイジー最古レズ。頭も服もポポポポーン。
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