チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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世にも奇妙な物語 映画の特別編(雪山)大好き!


[第18話] みんなベット

クァンシちゃんの存在を脳が認識した刹那、俺は全速力でファミリーバーガーから飛び出していた。

自分の不死性と飛行能力、何より頭と胴体が泣き別れになってもなお行動不能とはならない

レゼちゃんのような体質(?)に感謝しつつ、脇目も振らず上空への離脱を図る。

原作知識となけなしの戦術眼を総動員し、奇襲を仕掛けるならこの辺りだろうという予測は立てることが出来ても

反応できるか、また対応できるかは全くの別問題だ。

 

前者であるが、こちらは想定の段階でスッパリと割り切っていた。

最強のデビルハンターから、お墨付きをもらっている人類最強の腕力。

公安のデビルハンターから、姿を消す能力持ちと疑われるほどの脚力。

ピンツイちゃんたちと対峙するシーンにおいて、10メートルの距離が空いていたと仮定すると

ヒトの視野角から0.1秒で逃れるためには14メートルの移動が必要だから――

 

(超ザックリした適当な概算だけど、クァンシちゃんは最低でもマッハ0.4で走れる計算。しかも、曲刀を正確に振り回しながら)

 

これは、俺の出せる最高時速*1を僅かながら上回る計算となる…反応など出来るわけがない。

山中で飛行訓練を行っていた時に、俺は奇襲そのものへの対策を放棄していたのである。

未来視込みとはいえ、反応して受け切ったアキくんは筋肉の悪魔と契約しているのかな?????だとか

素でシバき合って、大した怪我もなかったヒロフミくんと岸辺くんは人間じゃないでしょ?????だとか

詮のないツッコミは一旦忘れることにして。

 

要するに、活路を見出すとするならば必然的に後者なのだが。

俺が武器人間である以上、クァンシちゃんの打ってくる一手は大まかに2つのハズ。

1つは俺に出血を強いて、再起不能に持っていくこと。

1つは俺を眠らせたりして、行動不能に持っていくこと。

そして、彼女が選択したのは出血戦術だったというワケだ。

 

(なら、まだ巻き返せる。俺をボコさなきゃいけない、っていう猶予があるからな。最後のカードさえ切れたら…)

 

「…私は、お前を信頼している。お前は狂犬と同じ匂いがするからだ。放っておくと何をしでかすか分かったものじゃない、ここで徹底的に叩く」

 

遥か空へと逃れた俺に、背後から踵落としが叩き込まれた。

 

「か…は、ぁっ」

 

今にも気絶しそうな意識を気合で無理やり保ち、状況を把握する。

 

「頑丈だな。フレームごとへし折るつもりで蹴ったんだぞ?」

 

クァンシちゃん、マジクァンシちゃん。

後ろの方へ目を向けると、煙を上げる2つのビルが見えた。

SASUKEの、ギミックみたいに…壁蹴りの要領で跳躍してきたのか、無茶苦茶してくれちゃってまー…。

 

「女の子、には。普段から頭を…蹴られてるからね」

 

「そうか。なら、切り刻まれた経験は?」

 

いつの間にか、クァンシちゃんの両手には曲刀がギラリと輝いていた。

獲物は全部で3本、1本は奇襲で使い物にならなくなったハズだけれども。

 

「ないかもっ…!!?」

 

引っ掛けた踵をフックにして、俺の頭へ飛び乗った彼女は

まるで鉄棒なしの逆上がりをするような縦の回転と共に、刃こぼれ一つない流水の如き斬撃を見舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フロアのデスクに背を預け、私はいよいよ絶望していた。

割れたガラス窓から聞こえる音が、風の音だけになったことは朗報だ。

人形の蠢く音の消失はつまり、サンタクロースが敗北したか

少なくとも、私たちを追跡するどころではない状況に置かれたということ。

恐らくは、本体を特定したライダーが決めたのだと思う。

 

「次から、次へと…」

 

しかし、戦況は上向かなかった。

安心したのもつかの間、部屋の中に4人の魔人が殴り込んできたから。

いずれもアジア系の顔立ちをしていたので、恐らくは中国から来た新手の刺客だろうとアタリを付ける。

この満身創痍でも、不意打ちで一人くらい始末できそうではある。

だがそれだけだ、戦略的には何の価値もない仮定だということなど言われるまでもない。

 

ズドラーストヴィーチェ(ごきげんよう)、爆弾のモルモット。初対面でご挨拶じゃないですか~?」

 

「ハロウィン!」

 

「黙れ」

 

「…」

 

勝利条件…いや、敗北条件を考えろ。

こいつらに、デンジ君を掠め取られるのが最悪の結末。

それを阻止するため、一番手っ取り早く効果的な一撃は

ビルの基礎ごと爆破して、自分ごと全てを圧し潰してしまうことだが

残念ながら燃料不足であるから、精々この部屋を吹き飛ばすのが関の山だ。

 

討ち漏らしをケアするのであれば、それこそ台風の悪魔はどうだ?

サッと呼び出したのち、即座に彼の血を頂戴する。

デンジ君を抱えて素早く離れつつ、4人まとめて生き埋めにしてしまえばどうか。

血の補給までは通せるだろうが、ステップ数がかさむ分割り込まれる可能性が高い…とはいえ

もう私に残された武器は、この隠し玉1つだけ。

 

「こいつ、血が残り少ないね。何で気を失わないのか不思議なくらいだ」

 

ブラフをかまそうにも、口を開く前に魔人の1人がアッサリと看破してくる。

 

「もう、私たちを殺すだけの火力は出せないよね~?念のため、盾になってよロン」

 

当たり前の話ではあるが、最低限の警戒も怠ってくれない。

もっと引き付けてから、最後の賭けに出てやろうと覚悟を決めた時

 

「焼け死んでくれ~」

 

不意に、4人の魔人の背後から男の声。

場の誰もが男の姿を見ることも叶わぬままに、部屋は猛火で包まれた。

酸素の消費があまりにも…異様なほど早い、これでは声を発することも出来ない――

消えていく意識の中で私が最後に見たのは、焔をものともせずにこちらへ歩を進める、火炎放射器の武器人間だった。

 

「下手を打てば、ここで俺はお陀仏か。全く、損な役割を当てられたな…」

 

現場を一通り焼き払った後で武器人間形態を解除したバルエムは、胸元からトランシーバーを取り出すと

愚痴を垂れつつも、しかし一言一句聞き逃されることの無いように、明瞭なトーンで報告した。

 

「こちらブラボー。ネズミ狩りを完遂、至急応援を求む。繰り返す、こちらブラボー。ネズミ狩りを完遂、至急応援を求む」

 

そうして最早ヒトの原型を保っていないデンジの横へ、おもむろにトランシーバーが置かれる。

散乱していたガラス片で自身の手を切りつけ、カップ1杯分前後の血をデンジの口に垂らし終えたバルエムは

レゼを抱える両手で、酸欠で痙攣する魔人たちをも器用に引きずって

廊下へと出たところで振り返り、露悪的に白い歯を光らせて言い放った。

 

「"お前の彼女は頂いた。""洗脳して、いいように扱き使ってやるよ"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――上から聞いた話だが、マキマは日本政府に見捨てられたらしいな?」

 

ズタズタのジャンクと化して、アスファルトの上で無様に転がる俺に

クァンシちゃんの靴音が近づいてくる。

 

「奴には公安のデビルハンターという肩書こそ残っちゃいるが、平たく言えば誰とも契約していない野良悪魔同然だ」

 

一息。

 

「一番厄介だった、日本国民を生贄扱いするゾンビ戦法も実行できない。お前はよくやってくれたよ、ドローン男。おかげで、条件が随分緩くなった。こうしてお前を伸してしまえば、後は何とでもなるようになった」

 

「そりゃ…どうも」

 

血が足りない、身体が再生できない…目が、霞む。

俺は息も絶え絶えに、強気で皮肉に噛みついた。

 

「俺はさ、ハァ…出来るならこのカードを切りたくなかったんだ…ゴボッ!ハァハァ…何故なら、一時的とはいえ俺の手でデンジくんを嫌な目に遭わせるから、ねッ」

 

「急に何を?」

 

「マキマちゃんにも、ゲボ!ゲホッ!悪いことしちゃったな~。せっかく、続編が出るなら糞映画も悪くない…って、ッフゥ――決心してくれたのに…残機を1つに絞っちまったせいで」

 

「何の話をしているんだ。時間稼ぎのつもりなら――」

 

「もう遅いよ、クァンシちゃん?アンタは、もう…ハァ、時間稼ぎへ付き合わされた。ッ十分すぎる、ほどに」

 

"俺に"残されていた手は、フルスロットルで落下ちゃんの所へ告げ口に向かう、お粗末でシンプルな作戦のみ。

つまり、結局クァンシちゃんが俺を止めなければならなかったのは確かだ。

だが悲しいかな、それは俺がつけ入る最後の隙となった。

圧倒的な武力と制圧力を誇るクァンシちゃんも、どこまで行っても所詮はワンマンアーミー。

師匠ちゃんのように、右を見ながら左を見るような真似ができないという、明確な弱点を突くための。

 

「…アンタは、店内でプリンシちゃんを始末しておくべきだった。"ゲート"を…ハァッ、閉じておくべきだったんだ」

 

そうさせないために、俺はノータイムで外に飛び出したんだけどな…とは続けられなかった。

クソ…もう声も出ないか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファミリーバーガー店内にて。

血だまりから弱々しく漏れた声を、トランシーバーが拾っていた。

 

「助けてチェンソーマン」

*1
第4話参照




宇枝 慈郎:オリ主。実はここまで想定内だった。唯一の誤算は、マキマがクァンシの奇襲に巻き込まれたこと。

レゼ:ソ連からの刺客。もうお前が嫁でいいよ。人形の大群を振り切るも、バルエムに窒息させられ再起不能。

マキマ:支配の悪魔。ギャザのマスティコアみてーな女。タフネスは1だけどパワーが7くらいありそう。

バルエム:5課のデビルハンター。天使の悪魔が諸事情で使えないので抜擢。チェンソーマン覚醒の永世名誉スイッチ。

クァンシ:中国からの刺客。アンケ結果によりルート分岐。回転寿司が選ばれたため、宇枝の無力化を図った。

ピンツイ:クァンシの愛(魔)人。チェンソーマン時空が誇るメスガキ。性格と能力と見た目的に多分、暴露の魔人。

コスモ:クァンシの愛(魔)人。やたらと頑丈な連続殺人鬼の兄がいる。時天空を屠ったケン=イシカワの後継者。

ロン:クァンシの愛(魔)人。契約時に世界の半分という名の小屋をくれる。名前と能力と見た目的に多分、龍の魔人。

ツギハギ:クァンシの愛(魔)人。何が書きたくないかより何が書きたいかで自分を語れよ!作者が扱いに困ってる。
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