チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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テリファー大好き!


[第2話] はじめての形

「漫画…チェンソーマン…転生…宇枝慈郎…」

 

 

俺は結局、自分の持つ手札を――簡単にではあるが――一旦、開示することにした。

口を滑らせてしまった以上、上位存在相手に噓をついたり

黙秘を貫いたりするのは得策ではない、と

冷静かつ打算的に囁いた理性に、耳を傾けたことは勿論一因ではあるけども。

本音はきっと、この娘に隠し事をしたくなかったのだと言い訳のように思う。

 

常識的に考えて、忌避される以外にありえないであろう

全生命体の天敵、と形容しても過言ではない概念をつかさどるにも関わらず

ヒトの姿で顕現した*1、いわゆるおもしれー女に。

先送りないしは、より酷い未来となるだけかもしれないのに

それでも人類を絶滅させたくなくて、原作にてテレ東の番組よろしく

身体の内臓全部抜く自殺(未遂)を敢行した、いじらしい少女に。

 

「…」

 

考えごとしてる姿も絵になるな、などと

もはや開き直る形で、デンジくんさながらにシーちゃんを見つめていると。

突如、質量を感じるほどの豪雨がピタリと止んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザァ―――――ッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

否、雨が止んだのではない。

弾丸を思わせる無数の雨粒が、俺だけを不自然に避けて降り注いでいた。

物理法則を捻じ曲げる、悪魔の力。

知識や経験としては身体に刻み込まれていたものの

実際に目で観るのとでは、衝撃が段違いである。

 

「こーのいかつい重力操作…近くに居るのね、落下ちゃんが」

 

根源的恐怖の名を冠する彼女の姿を、目視できる位置に確認できなかったのは

少々、いやかなり残念ではあったが。

 

「落下のことまで知ってるんだ。少なくとも、知識は本物かな。これはもう、偶然じゃない」

 

言いながら、コツコツと通りの方へ歩いて行き

こちらに向かってくるりと半回転。

 

「これ以上外にいると風邪をひく。落下の力で傘を作らせたから、近くのカラオケ屋にでも行こう」

 

話、長くなるでしょ?と結ぶ前に、俺はシーちゃんの手を引いた。

 

「平気。私、悪魔だから。こんなことしないでも――」

 

「いや、悪魔がどうとか以前にさ。女の子をびっちゃびちゃにさせといて、傘の下で涼しい顔してる男はダメでしょ」

 

「――…」

 

「いいから入んなよ。まあ、これ落下ちゃんが作った傘だけどさ…あれ、何か範囲が狭まったような」

 

「慈郎君は、死が怖くないの?」

 

「全然?生きもんが生まれた時から最期まで傍にいてくれる優しい子を、怖がってどうすんのよ」

 

生きるのが辛くなったら、最後の拠り所にもなってくれるしな。

そう続けつつ、シーちゃんを思い切って引き寄せた。

…うわほっそ、すげぇいい匂いもする。

ついでに、どこかから荒い鼻息の気配もする。

 

「あと、慈郎って何かダサいわ。俺はあだ名で呼んでるのに、他人行儀だし」

 

一息。

 

「そうだなー、エッジだと別の作品になっちゃうだろ?ウェッジ…も同じ別の作品か」

 

「詩ー君」

 

「ん?」

 

「エ(ッ)ダだから、シー君。どう?」

 

「お、おお…」

 

俺は今、とても感激していた。

機嫌を損ねないどころか、話に乗ってくれて

しかも、おそろのニックネームとな!

みたび被っていたエッダを回避したのもヨシ!

 

「悪魔的ネーミングセンスだ…!!」

 

「悪魔だからね」

 

見慣れた無表情で、おかしい人…と

ぼそりと呟いた口元は、心なしか釣り上がった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某カラオケ店内にて。

改めて、隣にちょこんと座ったシーちゃんへ、俺は全てをぶちまけていた。

 

ポチタことチェンソーマンが、デンジという少年と融合して1つになること。

マキマこと支配の悪魔が、ポチタを分離して我が物とするために謀略の限りを尽くすこと。

その過程で、デンジを中心に多大なる犠牲が生まれること。

そして、支配の悪魔の計画は公私ともに破綻すること。

 

暫くして、ヨルこと戦争の悪魔が、アサという少女と融合して1つになること。

シーちゃんこと死の悪魔が、ヒトの死に対する恐怖を制御するために蠢くこと。

その過程で、アサとデンジを中心に多大なる犠牲が生まれること。

そして、死の悪魔の計画は破綻しプラン修正を余儀なくされること。

 

何もかもを静かに聞き届けた彼女が果たして

 

「シー君の話したソレ。今のところ、全部ただの与太話」

 

発した第一声は、全否定の言葉。

だが、しかし。

 

「支配が最近、そわそわしているのは把握済み。もしかしたら、"原作開始"が近いのかも」

 

どうやら、心当たりらしきことはあったようだ。

 

「仮に、デビルハンター東京本部へデンジ君が配属された場合。私はシー君の話を全面的に信用する」

 

「…ありがとね。つまり――」

 

こくり、と頷くシーちゃん。

 

「杞憂なら、それでいい。だけど、始まってからじゃ遅いね。対策を立てるなら、今の内」

 

「そうこなくちゃ」

 

やはり、シーちゃんは"人類の"味方だ。

 

「とりあえず、シー君が言う所の1部は無視?」

 

「解決はする話だから、とりあえずはね…で、2部だけど。問題の根本は、1つ」

 

「…人間たちの恐怖が頂点に達した時、解放される私の力に制御が効かないこと」

 

結局、ここなのである。

極端な話、恐怖の大魔王が何者で、何をやらかしてくれるのかはどうでもよくて

ソイツをトリガーに発動する、死の悪魔の能力がマズい。

だから、原作2部においてシーちゃんサイドはトリガーの除去を

ヨルちゃん(の取り巻き)サイドは能力の除去を試みて

デンジくんが板挟みになっていたのは記憶に新しい。

 

「自分のことながら、穴が多い」

 

「例えば、ヨルちゃんをシバいたデンジくんが新しいトリガーになったらどうするんだよ…ってね」

 

とはいえ、シーちゃんをどうこうするのはもっとナシだ。

殺した場合は問題の先送りにしかならず、新しく生まれる死の悪魔が俺たちに敵意を持っていたなら

ただのそれだけで、一巻の終わり。

チェンソーマンに食わせた場合も、シーちゃんを吐き出させるまでもなく

再び、死の概念が勝手に生えてくるかもしれない。

現実には不老の生物が存在するが…彼らの遺伝子に突然変異が起きて、寿命を持つ個体が誕生することを

誰も否定など出来ないように。

 

「一見、八方ふさがり。そこで、俺にプランがあるんだけど」

 

「詳しく」

 

「シーちゃんをよわよわにしちゃう大作戦」

 

…推しの冷えた視線も悪くないな!

違くて、まあ待つんだマイハニー。

 

「要は、マキマちゃんがチェンソーマンに対して仕掛けた作戦を応用するのさ。」

 

悪魔とは、ヒトの持つ恐怖心の総和がそのまま力の強さに直結する存在だ。

こんな奇っ怪な生態をしてるので…もし、コーヒーの悪魔なんかが実在したとしても

それはそれは弱っちい悪魔として生まれるハズ。

逆に、それこそ死のような普遍的かつ強い恐怖心を抱きがちである概念より生まれた悪魔は

それはそれはクソ強く、特に死なんて正攻法じゃどうにもならないんじゃないかと思う。

搦手が、必要とされている。

 

「ミソは、あくまで人類がどう思うかであって、シーちゃん本人が何かする必要はないとこにある」

 

「ああ、そういうこと…シー君、私をヒーローにする気なんだ?」

 

「実際には、俺が悪魔を狩って狩って狩りまくって、ね。手柄を全部、シーちゃんのモノにしちゃえば」

 

「悪い悪魔たちに絶対的な裁きを下す、最強のヒーロー悪魔像が出来あがる」

 

「敵を即死させるっていう触れ込みも付けるけど…いいでしょ?分かりやすいし、皆好きだろうこういうの」

 

題するなら、【私の即死チートが強すぎて周りからは悪魔と呼ばれていますが人類のために尽くします】

――なーんてな。

 

「そうして、シーちゃんが弱体化したなら。強すぎる力も制御が出来るように…なるよね?」

 

「なるね。トリガーに誰かが手をかけても、私の意志で力を抑え込めるよ」

 

完璧じゃん、と。

俺は思わず指パッチン。

 

「更に良いことに、制御できるってのは――ヨルちゃんと殺り合わなきゃならないような――緊急事態が発生した時も、強い効力を持つ」

 

「殺せるね。戦争だけに指向性を持たせて、周りへ被害も出すことなく」

 

部屋の主役たるカラオケ機器にガンシカトを決め込み、地球の今後を占う議論は白熱していく。

*1
人に近い容姿の悪魔は比較的人間に友好的。




宇枝 慈郎:オリ主。やらかしにより開き直った。死の悪魔との対等なコミュニケーションに浮かれてる。自認デンジ。

死の悪魔:最強の悪魔。宇枝を完全にロックオンした。人間との対等なコミュニケーションに浮かれてる。自認レゼ。

落下の悪魔:死の悪魔の眷属。そのグンバツのスタイルで根源的恐怖は無理があるでしょ。傘はわざと狭くした。主への忠誠心が鼻から漏れてる。

姫パイどうする?

  • 生きろ、そなたは美しい
  • 死んでくれ姫野、若く美しいまま
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