チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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SAW大好き!


[第20話] 小指

その日、日本に…いや、世界に激震が走った。

関係各所へ睨みを利かせ続けた、裏の屋台骨たる支配の悪魔――マキマが死んだというのだから。

壁に耳あり障子に目あり、隠し通すことなどハナから無理だとは誰もが思うところではあったが

事の発覚した経緯も手伝って、政府・公安・TV局・その他諸々の回線は完全にパンクしている。

何を隠そう、我らが宇枝のやらかしである。

 

サンタクロースとクァンシが無力化され、チェンソーマンの暴走が止まった翌日の話だ。

あらかじめライダー名義でTV局に投げつけておいた、死の悪魔のビデオ付き声明文が爆心地となった。

いわく、兼ねてより注意喚起していた強大な悪魔の討滅はライダーの手により成し遂げられた、と。

いわく、その正体は史上最悪のテロリストが契約した悪魔だったのだ、と。

いわく、"テロリストはソ連人であり国の息がかかっていた"、と。

 

当然、このようなド級の厄ネタを地上波で発信したのだから追及の矛先は当人に向かう。

いつものマスクを着けぬままこれ見よがしに都心にて、何食わぬ顔での悪魔狩りを続けていたライダーの元へ殺到する取材陣に対し

ビデオ内ではわざと曖昧にしていた箇所を補う形で、オマケのように付け加えて死の悪魔は答えた。

テロリストの名前はサンタクロース、悪魔の名前は人形の悪魔、差し向けたのはドイツ。

そして、作戦の協力者たるマキマは奮戦の末に殉職したのだ…と。

 

こうなるとまず、国レベルでの責任の擦り付け合いが始まるのは必然と言えよう。

ソ連とドイツは喧々諤々、非難の応酬を恥も外聞もなく繰り広げる羽目になり

ソ連を片やチクチクと刺し、片ややんわりと肩を持つ、アメリカと中国という構図が生まれた。

アジア・オセアニア・ヨーロッパ・南アメリカ・アフリカ諸国は完全に素知らぬふりをしている。

誰がどう考えても、藪蛇以外の何物でもないことは火を見るよりも明らかであったためむべなるかな。

 

次に、個人レベルの話だが…こちらもこちらで、各国にとってはハッキリ言って火薬庫でしかない。

ここで、例えばクァンシがライダーによって裏事情の何から何までを暴露されでもしたらどうなるか。

途端に火の手が回り始めた中国は、仲介役気取りでいられなくなること請け合いだ。

レゼを含め、結局彼女たちがどういう扱いに落ち着くかといえば、所謂"当局とは一切関係ありません"だ。

武器人間である以上、始末することも叶わないために尻尾を切るしか選択肢がないとも言えるが。

 

そこでちゃっかりと2名の取り込みを図った公安へも、ライダーにより大きな楔が打ち込まれることとなる。

そのような真似をしたら最後、マキマが政府と結んでいた契約内容を国民にバラ撒くぞという、脅迫同然の楔が。

周知された場合にソ連やドイツへマキマ討伐の大義名分を与え、日本が被害者面出来なくなるだけであればまだマシで

まかり間違うと内紛に発展しかねない火中の栗など、拾いに行く体力と度胸は残されていなかった。

宙ぶらりんとなったレゼとクァンシの身柄が、ライダー教会の保護を受ける扱いとなったいきさつだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪魔だね」

 

「悪魔だな」

 

「酷くない?」

 

その、ライダー教会内の一室にて。

俺はレゼちゃんとクァンシちゃんに呆れられていた。

解せぬ。

俺、デンジくんを狙う師匠ちゃんもクァンシちゃんも分からせたんだよレゼちゃん?

俺、アンタの魔人たちは殺さないように立ち回ったんだよクァンシちゃん?

 

「常軌を逸してるよ、慈郎君。私たちを踏み台扱いしたのはまだしも、見ず知らずのテロリストを抱き込むために世界中へ中指立ててさ」

 

「これほどの大立ち回りを見せて、私たちに何の要求もしないと来ている。奉仕の一つくらい――ああ、何だお前。ホモか?インポか?」

 

「酷くない??」

 

失礼な話である。

シーちゃんと毎日のように睦み合っていれば、確かにいつか枯れてしまう可能性を否定できないが。

無事ヘッドハンティングに成功したから、というのが主な理由ではあるのだけれど

腹を割って全てを話したというのに、何という言い草であろうか。

2人そろって真顔であったから、俺は諭すように続ける。

 

「さっきも言ったけど…俺はね、レゼちゃんやクァンシちゃんたちのファンなんだ。幸せになってもらいたいと思うのは、全然変な話じゃないでしょ」

 

「チェンソーマンっていう、デンジ君が主役の漫画の話?信じざるを得ないのは確かだけど、それにしたってキミを全く理解できない」

 

「当然だな。ハッピーに生きるコツは無知で馬鹿になることだ、と私も説いたりするが…画面越しのレポーターのために、命を張ろうなどとは思わんよ」

 

「おっ、その例え。クァンシちゃんらしくていいね、耳の保養になる…けどま、そうだね。俺のことは別に、理解してくれなくてもいいよ。愛は見返りを求めない、一方通行の献身だからさ。そんなちっぽけな承認欲求を満たすために、俺は2人を助けたわけじゃない」

 

しばしの沈黙。

風船でも膨らませるつもりなのかと問いたくなるほどに、それはそれは大仰な溜息と共に

身体ごと頭を沈ませつつも、切り出してきたのはクァンシちゃんだった。

 

「それで、お前はこれから何を?話を聞いた限りじゃ、もう"原作"とは相当にかけ離れちまっただろ。死の悪魔を弱体化させるプランに支障はないのか」

 

「そうねえ。銃の悪魔がオラついてこなくなったのは想定外…ってくらいかな。それだって、想定内の想定外だし。マキマちゃんのやり残したことを代行すれば、リカバリーは余裕だと思ってる」

 

「あの魔女のやり残したことっていうと…」

 

公安内(とかい)のネズミ掃除。フミコちゃんの内の誰かがやらかしたのかも、とは思ってるけど…ねえレゼちゃん、クァンシちゃん?俺はシーちゃんをシンデレラにしたいんだ、皆と同じように。馬車を牽いてくれなかったり、御者になってくれないネズミなんて、いらないよね」

 

「悪魔だね」

 

「悪魔だな」

 

「酷くない?????」

 

再びハモったレゼちゃんとクァンシちゃんは、薄く笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日夜、アキの自宅。

悪夢に魘されていたアキは、現実への帰還と同時に飛び起きた。

よほど酷い内容であったのか、軽度の嘔吐感まで覚える始末だ。

その過剰なまでの息切れも、彼が喫煙者であることと因果関係などあるまい。

右目を押さえ、彼は力なく呻く。

 

「未来の悪魔…姿を見せろ…」

 

「未来最高!って言えば出てくるよ!」

 

声のした方へ顔を向けると、さながらシュールギャグアニメのように

ベランダから徐々に、ぬるぬるニョキニョキと生えてくる未来の悪魔と視線が交差した。

 

「ふざけるな」

 

「ふふふふふ…」

 

いつにも増してあからさまにテンションが高い、動物とも植物ともつかないような存在は

未来視など使うまでもなく、ロクでもない発言が飛び出してくることを想起させた。

 

「今、俺に見せたアレは何だ?」

 

「あれはね、もうすぐ来る未来」

 

この上なく愉快そうに、未来の悪魔の目が見開かれた。

 

「絶対に変えられない未来」

 

芝居がかった仕草で大げさに両手を広げ、高らかに宣言する。

 

「死ぬよ、キミのせいで皆!さっき見せた光景なんて、目じゃない程たくさんね!その後、悪魔に最も恐れられる悪魔が現れるだろう!」

 

ふと彼の頭をよぎったのは、デンジとパワーの顔。

この世界線においても共に絆を育んだ、今や第2の家族と形容しても差し支えのない2人の姿。

不快感を煽る、未来の悪魔の下品な笑い声を務めて無視するも

アキの表情は苦く、強張っていく一方であった。




宇枝 慈郎:オリ主。ついに地球中からマークされた。死の悪魔を遍く人類に布教出来たことで脳汁がマッハ。

レゼ:民間のデビルハンター。平行世界の自分の選択に変なニヤつきが止まらない。いま、会いにゆきます。

クァンシ:民間のデビルハンター。ネジを飛ばせない常識人のため恩は感じている。死の悪魔をチラ見してる。

早川 アキ:4課のデビルハンター。一人だけファイナルデスティネーション時空に居る。Anotherなら死んでた。

未来の悪魔:例のアレ。ゲーミングPCの化身。あんた、嘘つきだね。
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