俺とシーちゃんと岸辺くんは、3人してベンチに座っていた。
視線の先には、岸辺くんが連れてきた犬たち――マキマちゃんの飼い犬だ――と戯れる1人の幼女。
一見してヒトのソレと相違ない容姿を衆目に晒す彼女の瞳は、同心円を描き輝いている。
「…で、ナユタちゃんをパチって来たわけね」
「ヒロフミには無理を言っちまったが仕方ねえ。俺は見張られて動ける立場になかったからな。マキマが死んだ影響は良くも悪くもデカい」
ライダーとして、サンタクロースに事の責任を全て押し付けた後。
ヒロフミくんを部隊長として、"公安を辞した"パワーちゃんたちで構成されたスクワッドが中国へと派遣された。
言うまでもなく目的はナユタちゃんの身柄確保であったため、色々と小細工をした上で。
「中国のどこかに転生するだろうとは言ったけどさ、よくやるよホントに。拉致まで行ったらともかく、どうやって探し出したんだか。国が本気になると怖いなぁ」
「嘘つき」
バッサリと切り捨てられた。
もう少しこう何というか…手心というか…。
「死の悪魔の手綱握ってる男が何言ってんだ。
中国側には、クァンシちゃんを寄越した件で明確な負い目がある。
師匠ちゃんのように、こちらが首都でテロでも起こさない限りは強く出られない、という事情があったにせよ
万が一が起こらないとも限らなかったため、依頼名義をライダーにした上でメンバーを民間勢で固めたのだ。
責任の擦り付け先と後ろ盾を無くした戦力の平和的処分先を、一挙に俺たちが担いつつ
ヒロフミくんを通して実際に彼らを動かすのは公安勢というキメラのような作戦だったが、成功して何よりである。
「そりゃあもう。最強のデビルハンターの代役で動いてもらうんだから、戦力は使えるだけあった方がいいでしょ?」
「むしろ、シー君には感謝をするべき。支配の私兵たちなんて、いつ粛清されてもおかしくない。あの子が押さえつけていた諸々の反動は大きいと、さっき語ったのは他でもない岸辺君」
「ならもっと老体を労わるんだな。おかげでウチのお歴々は連日発狂してんだぞ、宥める身にもなってくれ。マキマの心労は察して余りある」
色々悪だくみしてたのは、抱えすぎたストレスをチェンソーマンに甘えて発散しようとしてたからじゃねえだろうなアイツ…と
マキマちゃん限界OL概念を提唱しつつ、岸辺くんは続ける。
「お前たちが、死の悪魔の生命活動停止は人類絶滅のスイッチになると公安に垂れ込んだ時。アレは特に酷いもんだった。マキマを再起不能に追い込んだり、かと思えば手を取り合ったりする頭のおかしい2人組は、始末も制御も出来ないと断言されたに等しいから…反応そのものへの疑問はないが」
「失敬な。俺ほど、当然アンタも含めて皆を労わってるヤツなんて居ないぜー?ただ、誰より何より1番に考えてるのがシーちゃんってだけなんだけど?」
「知ってる」
俺の肩に頭を預けながら惚気るシーちゃんに対し、岸辺くんが見てはならないものを見たとでも言いたげなオーラを漂わせる。
どういう風に見えているのか、興味がないと言えば嘘になるが――こんなシーンで"何も見たくねえ…"の文言は、会話の流れとしてもファンとしてもノーセンキューだった。
「さて、俺の仕事はここまでだ。第2のマキマを生むだけだろうから、こっちで預かるのは全く推奨しないが…何か考えはあるんだろ?」
「それなんだけどさぁ…おーい、ナユタちゃん!」
「???」
シュークリームと戯れるのを止めることなく、ナユタちゃんは顔だけをこちらに向けた。
「今日からなんだけど。俺と、お姉ちゃんと一緒に住むかい?」
「やだ」
返ってきたのは簡潔極まりない拒絶の言葉と、お手本のようなあっかんべー。
シーちゃんがガーンというオノマトペを生成しそうなほど、滅茶苦茶にしょんぼりしてたのでそっと右手で抱き寄せる。
「何となく分かってたけど、こんな調子でね。だから、デンジくんみたいにアキくんちへぶん投げる予定」
「お前、アイツの家を託児所か何かだと思ってるだろ」
「質問に質問で答えるのはアレだけど、賑やかな場所の方がいいでしょ?」
「"騒がしく"はなるな。余計な仕事を増やしてくれるなよ」
スキットルを呷りながら立ち上がり、俺たちへ背を向ける岸辺くんに、シーちゃんは問うのだった。
「ねえ。都合のいいハッピーエンドは、嫌い?」
*
「大ッ嫌い!!!!!」
同日夜、三鷹アサは吠えていた。
足を止めても死ぬ、足がもつれても死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ――
この大一番でコケて、地面に倒れ伏していないのは奇跡に近いと言えた。
背後より悪魔が迫りくるこの状況で、救援も避難場所も武器すらも無いと来ては
後はもう、己の脚力および運とのガチンコ勝負を繰り広げる以外の活路はない故に。
どうして自分ばかりがこんな目にだとか、死んだらどうなってしまうのだろうだとかの
月並みなマイナス思考へ割く脳内リソースの余裕が、今の彼女にはない。
当然、本来であればもう少し先の未来において死を迎えるハズだったことなど知る由もない。
死期が前倒しになったという意味では、間違いなくアサは不幸の真っただ中に居たが
「身も心も一つにぃ!」
「「「「「一つに!!!!!」」」」」
「個を滅して全てを受け入れろぉ!」
「「「「「受け入れろ!!!!!」」」」」
脅威の名は、愛の悪魔といった。
何とも名状しがたい、無機物のようでもあり有機物のようでもある、意思を持った巨大な塊。
抱擁という名の同化能力を余すことなく振るい、追跡先の全てを飲み込みながらアサへと執着するソレは
体表より無数に浮き出た顔らしき何かから、うわごと同然の2フレーズを連呼している。
仮に何者かの助けがあったとしても、民間レベルではほぼ間違いなく手に余りそうだ…と、素人目にも分かる有様だ。
皮肉な話ではあるのだが、この哀れな少女を窮地に追い込んでいる責任の一端はライダーにもあった。
十把一絡げの野良悪魔から、刀の悪魔・爆弾の悪魔・人形の悪魔・銃の悪魔に至るまで
一般人にとっての曇らせフラグを手の届く範囲で折りに折った結果、人々の心には余裕が生まれプラスの感情が育ち
その象徴へ良くも悪くも呼応する形で、勇気の悪魔だとか希望の悪魔だとかいった手合いが地上に出現していたのだ。
悪魔たちのおおよそはヒトの姿をしており、概ね人類には友好的な態度を示していたのだが。
アサは、運の無いことに例外と遭遇してしまったというワケである。
死の悪魔の存在が示す通り、必ずしも名は体を表さない。
善意の押しつけという歪み切った愛を振り回す怪物が、ヒトの姿ですらないひとでなしが
たまたま負の側面を抱えて顕現し、たまたまアサを追い詰めていた。
(尤も、人の輪に入っていけないことへコンプレックスを抱えていた彼女だから、目を付けられる理由自体は存在したのが悲哀を誘う。)
「あっ」
果たして、運命の時は訪れてしまった。
愛の悪魔はアスファルトすらも同化させながらアサを追っていたものだから
彼女の逃走経路へと偶発的・瞬間的に亀裂が走り、つま先を捕まえて容赦なく全身を地面に叩きつけさせたのだ。
体勢を立て直す時間もなく、悲鳴を上げる暇もなく醜悪な軟体へと取り込まれ
羊水を思わせる体内に拡散していく意識の中で聞いたのは、犠牲者たちの怨嗟の声だった。
(あんな奴より…!あんな奴より私の方が顔も学歴も経済力も上なのに、何でッ!?)
(彼女が好きだったのは、結局僕の地位だった。首を切られた途端にコレだ…誰も僕なんか見ていない…)
(アイでくわせられるか!カネがなくちゃどうにもなんねーよ!クソッ!!クソッ!!)
…ああ、そうか。
授業中もお風呂でも寝る前も…私、ず~っと嫌な事考えて生きてた。
だからず~っと皆にムカついてた…私はこんな大変な目にあってんのにみんな普通に生活しやがって、って。
みんな同じだったんだ。
みんなこんな感じで、何かに苦しんでたんだ。
(もうちょっとだけ、自分勝手に生きてみれば良かった)
その時、闇夜に輝いたのは2つの瞳。
鳥のような姿をした何かが、愛の悪魔の中で絶命寸前の命に囁く。
「生きたいなら体を貰うぞ」
「!!?」
瞬間、愛の悪魔の身体が弾け飛んだ。
否、あたかも歪なオブジェを早送りで作成する様子を見せつけるが如く
バラバラになった肉片がアサ(?)の手に集結し、凝縮されていく。
「溺愛の鞭」
そうして形成されたのは、先端が多弁状の鞭。
先程までの喧騒は何処へやら、すっかり静寂を取り戻していた夜の街へソニックブームが響き渡った。
「ふん…出来合いの武器ではこんなものか」
使用感に不満を漏らしつつ、アサ(?)は続ける。
「待ってろチェンソーマン…!核兵器を吐き出させてやる…!」
[第22話] 恐ろしいへいき
それは小さく、しかしどこまでも力強い宣戦布告。
――大いなる運命のうねりは、未だ収まる気配を見せず。
宇枝 慈郎:オリ主。将来の夢はポケモンマスター。カオスの権化だがDSJの追加ロウルートは好き。
死の悪魔:最強の悪魔。キガ名義で巻き起こる世界的熱狂に引き気味。会員は日本だけで450万越え。
岸辺:1課のデビルハンター。大切な女が人類絶滅の引き金になるところだった。甘いぞアメリ!
ナユタ:支配の悪魔。存在Xたちのおもちゃと化したTS中年男性。ナユタへいきだもん。
三鷹 アサ:原作主人公。バトンを渡す相手すら居なかった。サードインパクトの主犯。
鳥:戦争の悪魔。孫悟空だったりアンパンマンだったりでキャラブレしてる。池袋駅から飛んできた。
愛の悪魔:オリ悪魔。ブレオン部屋を主任砲担いで荒らすのが大好き。星の王子様。
早パイどうする?
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助けて…
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おこがましいとは思わんかね