チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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ザ・ギニーピッグ マンホールの中の人魚大好き!


[第24話] 残響

コイツは私という人格を消さぬよう、脳を半分残して身体を乗っ取ったため

己の生物学的アイデンティティーは、果たして魔人と呼称してよいモノなのか疑問は尽きないが

とにかく、私と戦争の悪魔――便宜的にヨルと呼んでいる――が一つになって、はや1か月以上。

有事に対する備えという名の完全な気まぐれにより、野蛮な悪魔狩りが日常となりつつある中で

私は未だに諦観・疲労・嫌悪etcを滲ませながらも、あろうことか大きな安堵と喜悦を覚えていた。

 

前者については、私個人の性格がどうだとか以前の問題であるから、当たり前の話だとは思っている。

このクソみたいな世界では、20人中7人が悪魔による被害を受けて命を落とす運命にある。

35パーセント…ドライバーが一生の内に人身事故を起こす確率と大差ないのだ。

だからつまり、その脅威の大体を大変遺憾ながら気にしなくともよい肉体を得たことにより

私は、安心してしまっていたのである。

 

そして後者、我ながら通俗的で現金な事だとの自覚はあると前置きしておくけれども。

戦争の名を冠するいかにもな悪魔だけあってか、ヨルは矢鱈目鱈に強かった。

海の向こうでは、第2次冷戦とも定義されつつある極度の緊張状態が続いているから

何らかの影響を受けているのだろうか、と根拠のない推察をしてみたりもするが――とにかく。

公安ですら手を焼きそうな怪物が危機や苦労もなく薙ぎ払われていく様を、特等席で鑑賞したり作り出したりしている私にはよく分かる。

 

(今の"私"は、最高にイケてる)

 

客観的に見ても、私の見てくれは元々かなりの上澄みだという自負がある。

その上で、人類に仇なす輩を圧倒的力で以って片っ端から処断していく姿を

隠すでもなく、誇示するでもなく、ある意味で淡々と、等身大のままに衆目へ晒し続けたらどうなるか。

果たして三鷹アサなる1匹のヒトメスは、上がり続ける知名度と人気に支えられながら

あれよあれよという間に、あのライダー教会の広告塔にまで上り詰めていて。

 

三鷹アサの特番をニタニタしながら見つめる私は、神経を炭酸に漬け込んだような快感に打ち震えていた。

セルフプレジャーでも満たされない、自尊心や承認欲求に代表される心の中で最も生臭い部分が官能的に泡立っている。

ヨルの態度や頭の中から感じ取れるモチベーションは、何ともまあ微妙なモノであったものの

顔が売れて広くなれば、チェンソーマンと遭遇する可能性も高まるだろう、と言って聞かせた。

どこまで納得してくれたのかは定かではないが、少なくとも文句の一つも聞こえてこないのだから上々だろう。

 

「筒抜けだからな」

 

「知ってる…」

 

センチメンタルエコー

 

作詞作曲

三鷹アサ

 

コケて響いた骨の音

骨だけじゃねえなマジ聞けよ

ギシギシ撓んで歪んで折れて

修復不可能ハンプティダンプティ!

 

オタマと杓子が飛び出して

生死と善悪問いかける

白だか黒だか知ったこっちゃねえけど

戦慄の超々演焼!

 

カッティングリフ!カッティングリフ!

カモンRippleアモンの火

カッティングリフ!カッ飛びライフ!

トドメ一撃マイクチェックワンツー!!

 

マイクチェックワンツー…

マイクチェックワンツー…

 

「恥ずかしい詩を読むな!」

 

「ポエトリーリーディングだからっ!」

 

居候の分際で何たる言い草。

やはり、悪魔とは分かり合えないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てなわけで、老いくんがついに動き出したみたい。あんまり気が進まないけど、公安の一派と全面戦争かもなー」

 

マキマちゃんが居なくなった今、各所から情報を抜いてくることなど赤子の手をひねるようなモノだった。

あの圧倒的な防諜ネットワークを、数か月やそこらで再構築するのは無理筋であると分かり切っていたので

気兼ねのない派手な工作を短期間で繰り返しブチかましてやったのだが、ワンオペのツケは相当に重くのしかかっていることだろう。

俺が今日の献立に悩む主婦のようなノリで切り出したせいか、ライダー教会の会議室にどよめきが走る。

(なお、歩く情報漏洩装置であるパワーちゃんには席を外してもらっている。)

 

「彼らの狙いはチェンソーマン。何らかの手段でデンジ君を絶望させて変身を促した後、老いを捕食させることが戦略目標」

 

続くシーちゃんの言葉に、居合わせたメンツの混乱は頂点に達した。

涼しい顔をしているのは武器人間ズに、(元4課の)人外勢くらいだろうか。

コスモちゃんは、まあ…原作どころか"全部"を知ってるんだろうけど、頭ハロウィンだし。

室内でもひと際パニックに陥っているであろう心境を駄々洩れにしながらも、何とかといった様子で挙手したアサちゃんへ

俺は大げさに手を向けて、発言権を与えた。

 

「は、発言許可に感謝します副総帥!その、えっと…申し上げにくいんですけど。公安と全面戦争だとか、チェンソーマンだとか仰られても、あの…何というか、何もかもが唐突でして。しょ、詳細なご説明をいただけないでしょうか!」

 

彼女だけが説明を求めているのではないらしい。

他にも少なくない参加者が、首を縦に振っている様子が窺える。

 

「ごもっとも。そんじゃ、どこから話そうか?」

 

俺とシーちゃんは、語りに語った。

老いくんのプロフィール・目的・公安との関係から始まり、チェンソーマンとは何者なのかについても詳らかにし

果てはノストラダムスの大予言を制御するという、未来を受け入れる前提で動く公安とは似て非なる

ライダー教会の設立目的までを、誇張も偽りもなく伝えきった。

前述のメンツを除く皆が愕然とする中、再び手を挙げたのはアサちゃんだった。

 

「つ、つまり私たちはテロ行為に打って出ると…!!?」

 

「見解の相違だね。さっきも言ったように、チェンソーマンには概念消去だけじゃなくて復活能力もある。しかも、消された概念は復活させるまでもなく自然発生的に再生し得る…アサちゃん?こんな可逆性に塗れた力を行使させるためだけに、1人の少年とその周りへ不幸を撒き散らして、児童1万人を生贄に捧げろって?冗談キツいぜ。"冷徹"な見方をしても、釣り合いが全く取れてない」

 

向こうのお偉いさんにも、メリットが無いからやるな…って釘は差しといたんだけどな、と独りごちる。

 

「それでも、日本は法治国家で…悪人に、生きる権利なんて…」

 

「アサちゃんの、勝利条件は?」

 

「――え?」

 

「天寿を全うすること?平和に暮らすこと?法律を遵守すること?」

 

俺はわざとらしく顎に手を当てつつ、視線を天井の方へと送った。

 

「1つ目は違うよね、何故ってもう終わったことだし。特殊な例とはいえ、アサちゃんは魔人である以上…命運は1度尽きたんだから。2つ目も違うかな?TVニュースで自分を観てる時のアサちゃん、めちゃめちゃに緩んだ顔してるもの」

 

「ぁ、なあっ…な、ななな――」

 

「3つ目。なるほど、確かにアサちゃんは赤信号ならいついかなる時も歩道を渡ろうしないくらい、遵法精神に溢れているのは知っているけど…それって、自分がしたくてそうしてるの?要は、常識だからだとか万が一轢かれた時に自分の隙を残したくないからだとか。ただただ間違わないように生きたいだけで、決して能動的な動機じゃ」

 

「ああああああああああ!!?わー!!わー!!」

 

茹でダコの一丁上がりである。

うん、知ってたけどやっぱり可愛いなアサちゃん…あ痛。

シーちゃん?無言で肘は痛い痛い。

 

「ん゛んっ!とにかく、俺たちは正義の味方ヅラも無理強いもする気はない。正直、向こうも法へ抵触しまくりのウェットワークになることなんて承知で来るだろうけど。じゃあこっちも気にすることなんてない、と思う人が居るだろうけど。そういう正当性の話もする気はなくて」

 

シオニストも唸る机叩きを、威勢よくかましつつ

俺は立ち上がり、告げた。

 

「スカッと生きようぜ。いたいけなガキの命を食い潰す悪の組織を許せるかぁ?許せねーよなぁ!!?」

 

パチパチ、とシーちゃんの無言拍手が追随する。(当然、仕込みだ。

すると、徐々に室内が無数の拍手と歓声で包まれていき――ここに、意志の統一は成った。




宇枝 慈郎:オリ主。野菜とか好きそう。美大を目指してたのにいつの間にか伍長になってそう。

死の悪魔:最強の悪魔。おっぱいぷるんぷるん!当小説は胸を盛るな高校卒業者に監視されています。

三鷹 アサ:原作主人公。演説のダシにされた。手が吹っ飛んだら話なんかしていられるもんですか。

ヨル:戦争の悪魔。ボルテージがブチ上がっている。こよなく愛してやまない動物はアシカ。
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