チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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インビジブル大好き!


[第26話] どうだい?

一番初めは、本当に穏やかなものだった。

ライダー教会のフロントに、7課のデビルハンター:三船フミコを名乗る女がやって来て

人探しをしているから協力を願えないか、と申し出てきたのである。

尋ね人の名前は早川アキ、今朝から無断欠勤したまま行方知れずとのことだった。

(当然、辞表の類も未だに発見されていないらしい。)

 

正味、文字通り命がけとなる業界の性質上、職員が蒸発することなどままある。

夜逃げ同然に辞めていくならまだマシな方で、本部が把握していない内に恨みを買った人間や悪魔にシバかれて

コンクリートの染みへ転職していることは、珍しくも何ともないのだ。

言ってしまえば、一々真剣に取り合っても意味のない…とまでは言わないが

案件としては下の上~中だと断言して差支えの無い、"いつもの"話に過ぎない。

 

ご相談いただきありがとうございます…何か進展がございましたら、折り返しご連絡させていただきます…。

マニュアルそのままの定型文が交わされ、普段通りに終わるはずだったやり取り。

しかし、ここからフロアには剣呑な気配が漂い始める。

話が続いた上に、妙な方向へと流れだしたのであるからして。

曰く、ライダー教会が早川アキを拉致監禁している等という事実はございませんよね?と。

 

少し前、総帥より直々にフロントへの事前通達があった。

"早川アキという人物について、教会へ探りを入れる者が現れた場合は合言葉を訊け。合言葉は――"

 

「無論です。おか"えり"の際はお気をつけて」

 

「ええ。では、"さよなら"」

 

瞬間、フロントに緊張と戦慄が走る。

本当に来ただとか、同伴者が居なかった理由はコレかだとか、公安はそこまでやるのかだとか

一抹の怒りすら抱きつつも、全員が改めて女を見据えた。

 

「三船様、恐れ入りますが。そちらの玄関口は入館専用でございます」

 

「おや、失礼いたしました」

 

「僭越ながら、お出口へ案内させていただきます。どうぞこちらへ」

 

この場に居る全員が、恐らく生きた心地がしていないであろう。

何せ、敢えてとはいえ教会の奥へと招き入れようとしている存在は

時限式か、はたまたリモコン式か…爆弾を抱えていることが確定したのだから。

 

「"お時間"取らせてしまい、申し訳ございません。出入口は、この2か所だけなのです」

 

「とんでもない。"大丈夫"ですよ」

 

たった今、時限式の機構が否定された。

つまり、起爆のタイミングは完全にスイッチを持つ者のさじ加減一つだ。

盗聴器や発信器の類が仕込まれていても、何ら不自然さはない状況だと言える。

"だから"、案内役は総帥からの指示に従った。

今目の前にある危機に震え上がりつつも、彼女の巧みな心理誘導に舌を巻きながら。

 

公安の作戦は、人間爆弾を用いて出入口のどちらかを潰して建物を袋小路にした後

残った方から教会内へと突入し、落下の悪魔対策に鏡を組み立てて老いの悪魔を召喚。

推定最大戦力を釘付けとしている内に、速やかに早川アキを捜索し

惨殺する様子を録画して撤収する、というものだ。

無論、人間爆弾には盗聴器が仕込んである。

 

一方で、教会側が危惧していたのは全くランダムなタイミングでの自爆だ。

自らは危険を冒さずに、作戦本部でふんぞり返っている司令室のメンバーが

公安の計画など知ったことかと好き放題にやらかすような、イカれた輩であったのなら

あるいは違った結末を迎える可能性があったのかもしれない。

盗聴器の拾う、作戦は順調であるような耳障りの良い会話が、安心という毒を盛っていた。

 

故に、まずは出鼻を挫かれることとなった。

尤も、彼らを無能だと謗るのは酷な話だと言わざるを得ないが。

一体、この世の誰が想像できようか?

信じて送り出した生物兵器が、ギロチンの悪魔によって音もなく切り刻まれ

身体に括り付けた爆弾だけを制服ごと解体されて、MAPPAで通路を歩いていよう等とは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スケベな子…」

 

フミコちゃんを連れて地下へとやってきたギロチンくんを観て、ポツリと呟いたシーちゃんに俺は思わず噴き出した。

ギョと叫んだ瞬間、オブジェの姿に戻されたのも中々どうしてポイントが高い。

今回はガチ目に引かれてしまったのか、ギロチンくんがそのまま床に放置されてしまう。

可哀想()に…拾っておいてあげるか…。

流石のフミコちゃんも多少の羞恥心を覚えているのか、頬に朱が差していた。

 

「あぁ、もう!確かに制服を脱ぎ捨ててライダー教会へ駆け込みたいとは思ったっすけど!言葉の綾っすよ、綾!!」

 

何もかもを観て改めて思うけど、フミコちゃんもめっちゃレベル高いよな…あ痛。

ゲラゲラ笑い続ける俺に、ほんの少しの怒気を込めて詰め寄るフミコちゃんに向けて咳ばらいを一つ。

 

「ごめん、ごめんて。で?状況は?」

 

「はい!今しがた保護した"三船フミコ"による奇襲失敗を、公安に察知されました」

 

声を上げたのはアサちゃんだ。

監視カメラの映像を映す数々の画面から、こちらへ向き直って続ける。

 

「教会は一時、爆弾で武装した三船フミコの群れに包囲されていましたが…現在は、落下の悪魔が応戦中です。重力制御で1人1人を空中にトラップして、その」

 

「爆弾ごと肉団子に変えてる最中ってワケね。オッケー、それでいいよ。馬鹿でも分かる時間稼ぎだけど、出血を強いてるのは確かだから…落下ちゃんはこのまま、フミコちゃんたちを皆殺しにしちゃって」

 

どうせ、その内に老いくんがこっちへ出向いてくる。

そうなったら、落下ちゃんを老いくんにぶつけて…もし、討ち漏らしが居たらガルガリくんたちを出そうかね?

当初の予想通り地獄くんは出しゃばってこないみたいだし、武器人間ズは天使くんに任せよう。

アキくんのガードにはアサちゃんを回せばいいから、俺とシーちゃんで向こうの(恐らく忍ばせているであろう)隠し札を潰せる。

それで、こっちの陣営にはカードが1枚温存される。

 

(迎撃戦力に抜かりはない。イレギュラーが起きても、対処する余裕はある。けど…何か、嫌な予感がするな)

 

「アサちゃん、アキくんは今どうだい?」

 

「はい!ご指示通り、地下の隠し部屋にて天使の悪魔に匿わせています。これから、天使の悪魔と交代する形で近辺で張り込みをする予定です」

 

(何だ?何が引っ掛かってるんだ…?隠し札とは言っても、十中八九ヒロフミくんが仕掛けてくることなんて分かってる。確かに脅威ではあるけど、落下ちゃんの重力障壁を抜けない以上は)

 

「私に任せてください!水も漏らさぬよう、しっかりと警護しますから!!」

 

「…それだ」

 

「は?」

 

正に悪魔的危機察知。

まさかそんなことが、とは思ったけれども。

俺とシーちゃんは、"原作に描写されていない"連中からこの施設を丸ごと奪ったんだろうが。

行方を晦ましているヒロフミくん…今は不可能な外部からの侵入…蛸の悪魔…。

隠し札を今切るべきだ、"ありえない"なんて事はありえない。

 

「"台風くん"」

 

「ナンダ?」

 

彼が、俺の隠し札。

姿なき幼い声に、俺は命じた。

 

「1ミリ程度でいい。地下を浸水させて、今すぐに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に、紙一重だった。

突如広がった、フロアへの浸水。

最初は、何者かによる攻撃を受けつつあると思ったのだが…それは半分正解で、半分間違いだった。

これは、緊急事態を僕たちに知らせるためのシグナルだ。

僕と人間君しか居ないハズの隠し部屋の床に、靴跡がもう1つ浮かび上がっていたのだから。

 

「危ないっ!!」

 

僕がタックルで彼を突き飛ばした刹那

丁度、その正中線が存在した位置を教本のようになぞる斬撃が走り

僕の右腕と右足は、スッパリと持って行かれてしまった。

 

「ごめんな。恨みなんて一切無いんだが」

 

激痛に揺らぐ意識の中、気合だけで顔を上げる。

暗視スコープを装着した、死神がそこに居た。




宇枝 慈郎:オリ主。アンケ結果によりルート分岐、神懸かり的直感と洞察を発揮。おう、お前を追い詰める禁じ手に近い切り札やぞ(泣)

死の悪魔:最強の悪魔。クセになってんだ、旦那に肘打ちするの。えっちなのはいけないと思います!

三鷹 アサ:原作主人公。アンケ結果によりルート分岐、最後のピースと対抗手段に繋がる発言。またしても何も知らない女。

早川 アキ:4課のデビルハンター。死ぬよ、~たくさんね!→フミコたちのこと。オマエはせ→オマエは潜伏していたデビルハンターに"してやられて"死ぬ。

天使の悪魔:堕天使の悪魔。真理君と邂逅してしまった。その姿はさながらフェニックス。

落下の悪魔:死の悪魔の眷属。最近は肉団子ばかり作っているので、別の料理にチャレンジしたい。ひとりでできるもん。

台風の悪魔:扱いは野良悪魔。アサにすっごい苦い顔を向けられている。全時空でアキと天使を繋ぐヨスガ。

三船 フミコ:7課のデビルハンター。タダシの傍に居たフミコと同一個体。失禁をお願いしたら失禁しそう(UEHR)

吉田 ヒロフミ:5課のデビルハンター。飲まず食わずで丸1日隠れ潜んでいた。吹き込んだのはもちろん未来の悪魔。

ギロチンの悪魔:モブ悪魔。まさかの再登場。服だけ溶かすスライムの亜種。
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