チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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ラブ、デス&ロボット大好き!


[第28話] 対老的ランブル

(ふーん…どうする気なんだろう)

 

日本政府の重鎮たちに囲まれながら、老いの悪魔は手の甲を顎に当てる仕草と共に思考の海へと沈んでいた。

彼の尻置きに成り下がって久しいタダシの呻き声など、耳にも入っていない様子だ。

 

(僕は、あの世界から"出る"方法を設定していない。一度放り込まれたが最後、悪魔の力も行使出来なくなる。とはいえ、向こう側から現実世界へ干渉する方法が無いわけじゃない。無理やり出口を作って脱出される可能性は、否定できない)

 

その、具体的な方法までは分からない。

しかし、宇枝からは恐怖が全く感じ取れなかったので

実際に目があるにせよ無いにせよ、何かしらの対抗策を打ってくることは間違いないと見てよかった。

あのようなことを言っておきながら、早川アキという人間の人格を残していた抜け目のなさを

逆に利用してやろうといった考えは却下し、老いの悪魔は件の3(?)人が何の材料にもならない前提で作戦を組み立てていく。

 

(一番良いのは、別の関係者に狙いを切り替えること。武器人間は不老不死だから除外するとして――血の魔人か支配の悪魔か姫野という人間が候補か。特に人間の方は、爆弾の武器人間がガードしている事実を考慮に入れても手ごろなターゲットだけど…ちょっとあからさますぎるな)

 

人間観察をライフワークとしているだけあり、老いの悪魔はこの極短期間でドローンの武器人間が相当に嫌らしい性格をしていると断じていた。

ひょっとすると、いつの間にか姫野を武器人間化させているかも…?

支配の悪魔にしても、根源的恐怖の攻撃に抗うだけの力*1を隠し持たれているかも…?

血の魔人に至っては、こっそり血液のスペアを用意させているかも…?

萌芽した疑念が、蔦のように老いの悪魔の全身へ絡んで巻き付いていく。

 

(次善策が通りそうもないとなると、つまり僕らは戦略的敗北を喫したわけだから…損切りに入るべきだ。モタモタしていれば落下の悪魔に殺される可能性もある、それは僕の本意じゃない。だけど、1つだけ奇策を思いついた。撤退するのは、コレを実行してからでも遅くない)

 

「公安諸君、一応訊くんだけど…**の悪魔、なんて飼ってたりするかい?いや、**能力を持った悪魔なら何でもいいよ。きっと、飼ってるだろ?業務の特性上、何かと便利なハズだからね」

 

あくまで余裕の態度を崩すことなく、その宣言は恐怖の象徴らしく。

 

「絶望がトリガーなら、ほんの一瞬でいいじゃないか。親しい者たちを惨殺できないなら、親しくない者たちを惨殺すればいいだけさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(この分かりやすい時間稼ぎ…既に、敵の術中なんだろう。ならば、被害を抑える方法だけを考えていればいい。宇枝がしくじる姿など想像できんしな)

 

津波のように押し寄せるフミコの大群を、自身の背後…小学校の敷地内へと1人たりとも侵入させないよう切り捨て続けながら、クァンシはそんなことを思った。

物量こそあれど、この"襲撃"は脅威度をどう高めに見積もっても嫌がらせの域を出ていないのである。

フミコたちは総じて丸腰であり、武術の心得がある様子でもなければ、性病以外の何かしらの悪魔と契約をしている気配もない。

一方でそこかしこから小学生に対する強姦欲求が漏れ出てもいたため、彼女はここぞという場面で使い潰すための捨て駒だと推測していた。

恐らくは、司法取引か何かを通してフミコとセックスすることによりフミコと化した元性犯罪者達――大方そんなところだろう、と。

 

(個体同士の脳がリンクしているなら、コスモに特大のハロウィンを1発打ち込ませてそれで仕舞いなんだが…ままならんことだ)

 

クァンシの愛人たちは、万が一の討ち漏らしをカバーする目的で既に校内へ突入していた。

最優先護衛対象は言うまでもなくナユタであったが、警戒態勢へ入ったピンツイが居るためにヒロフミが決めたような奇襲も成立しない。

ナユタの身柄を渡さなければ、人質にした子の命はないぞ…といった状況は、起こり得ないのだ。

更にもっと直接的な、例えば教室へ瞬時にワープしてピンポイントでナユタを誘拐していくケースは、輪をかけてあり得ない。

そんなことが可能であるならば、ここまでの騒ぎを引き起こす前にサッサと実行して、今頃は全てが終わっているはずだから。

 

「…ん」

 

戦闘が始まって、何度目かの断裂音。

常軌を逸したスピードでの連続攻撃にクァンシ自身の骨と筋肉が耐え切れず獲物ごと腕を落としてしまったものの、その表情には諦めはおろか焦りの兆候すら浮かんでこなかった。

武器人間が継戦能力を維持するために必要不可欠な"輸血パック"はそこら中に転がっており、次から次へと使い切れないほどに補充されてくる有様だ。

これが宇枝相手なら、血液感染する病気の悪魔を仕込んでおくといった罠を警戒しなければならないし、実際に仕込んでくるとの確信を持って立ち回ることであろう。

ピンツイによる血液成分の確認こそ怠りはしないが、最初のデビルハンターとしての勘は"完全な急造部隊であり、仕込みをする時間も価値も無かった"と告げていた。

 

(本命への対処は、上手くやってくれると願うしかないか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(俺は一体、何をやらされているんだ)

 

気乗りしない様子をいっそ見せつけるかのように、アキは心の中でぼやいていた。

この状況は確かに、宇枝を除く誰にとってもお手上げとしか言いようがない。

生還するためには彼の作戦に乗りかかる他ない、と頭では分かっていてもなお

己を客観視せずには居られないような、余りにもシュールな光景であった故に。

 

「なあ、キミ…こんなことして何の意味があるんだ?」

 

パンイチの自称デビルハンターが、アキの胸中を代弁する。

 

「はい、つべこべ言わない。もう脱出作戦は始まってるんだから、集中集中!この次のプロセスが"俺たちには"どうしようもないんで、しっかり待つのよ」

 

当の宇枝は草原の上で腹ばいになっており、ギロチンの悪魔のオブジェを握りしめた腕を前方に突き出していた。

その両足を1本ずつ木々の傍に立つアキとパンイチが片手で持ち、もう片方をガッチリと幹へかませている。

 

「あー…何か僕、副総帥の意図が分かっちゃったかも。相変わらず、無茶苦茶やるなぁ…」

 

僕は人格交代したくないし、感覚もしばらく切るから後ヨロシク――

そう言い残して、天使の悪魔のビジョンがアキの視界から消失した。

ロクでもないことに付き合わされるのが確定した瞬間である。

アキはいよいよ観念した様子で、ヤケクソ気味に宇枝へ問うた。

 

「…分かったから、これだけ教えてくれ。その"次のプロセス"をクリアした場合、俺たちはどうすればいい?」

 

「何も難しいことはないよ。アキくんもおじさんも、俺からの指示に従ってくれるだけでいい。たった1つの、子供でも分かる指示に」

 

必要な話はそれで終わりだと言わんばかりに、再び場へ奇妙な静寂をもたらした宇枝は

魚影に神経を尖らせる釣り人よろしく、集中モードへと移行していた。

そして待つこと現実時間でおよそ数分、ついに彼らの命運を決定づける瞬間が訪れる。

 

「俺は、また…幻覚を見ているらしいな。うん」

 

「何だ、ありゃあ」

 

無理もない反応と言える。

やおらに虚空より生え伸びてきた死の悪魔の右手が、ギロチンの悪魔のオブジェをはっしと掴んでいたのだから。

 

「待ってたシーちゃん!やったぜシーちゃん!流石しごでき愛してる!"二人とも、木から手を放して"!!」

 

やたらと上機嫌な宇枝の声と共に、不変の世界へ亀裂が走ろうとしていた――

*1
闇の悪魔との戦いで使用した謎念能力




宇枝 慈郎:オリ主。今回ばかりはガチで肝を冷やした。サンキューギロチンフォーエバースケベ心。

死の悪魔:最強の悪魔。ウェンズデーへの出演を目論んでる。差別化点は常に唾液でベトベトな所。

早川 アキ:4課のデビルハンター。脳の共有により、天使の悪魔への同情が天井知らず。守護らねば。

天使の悪魔:堕天使の悪魔。脳の共有により、アキへの同情が天井知らず。マキマ株がストップ安。

クァンシ:民間のデビルハンター。"フミコ"に反応してしまい戸惑ってる。岸辺は今すぐTSすべき。

ピンツイ:クァンシの愛(魔)人。全一の水泳能力持ち。ボカロソングと平野に執着を見せている。

三船 フミコ:7課のデビルハンター。個体の出自はクァンシの推測した通り。いわゆる無双ゲーの草。

老いの悪魔:根源的恐怖の悪魔。実は作中で誰よりも宇枝を追い詰めていた。根源勢だし、多少はね?

ギロチンの悪魔:モブ悪魔。巣が雑という風潮に物申したい。思った以上に凄い役立ってる(小並感)

長谷川 タダシ:元財務大臣。日を跨いでるハズだがまた椅子になってる。一寸法師が踊ってそう。

82年前のデビルハンター:モブ。環境で狂った所に素で狂った奴が来てヒエヒエ。キチゲ解放の達人。
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