チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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ドールハウス大好き!


[第3話] マキマを殺せ

都内某所、とあるカラオケ店の1室。

観る者が観たならばパンデモニウムもかくや、と

悍ましい瘴気の充満を幻視しかねない空間で

ドローンと死による悪だくみが続いていた。

 

議論の的になっているのは、支配の悪魔。

生かすのか、殺すのか…もっと言うと、その扱いについて。

いわゆる1部の話には介入しないのではなかったのかと

至極真っ当なツッコミが聞こえてきそうだ。

 

しかし、俺の計画をシーちゃんが吞んでくれた所で話は変わったのだ。

シーちゃんをよわよわにしちゃう大作戦を決行するにあたり

マキマちゃんは十中八九、俺たちの障害になる。

根拠は1つ。

 

実にシンプルな話だが、マキマちゃんの計画と俺たちの計画が相容れない点だ。

彼女の考えでは、死とは、なくなったほうが幸せになれるものである。

シーちゃんが世論に幅を利かせるような流れなど、面白いワケも無かろう。

こちらが不干渉を宣言したところで、貫いたところで

規模こそ未知数ではあるが、直接的にせよ間接的にせよ横槍を入れてくるのは必至。

 

だが俺は知っている、覚えている。

アメリカが2部において、チェンソーマンが食らって概念ごと消し飛ばしたハズの

核兵器を再発明してしまう、という展開を。

つまり、マキマちゃんも日本の中枢にいるお偉方も

何のことはない、ただのピエロだったということになる。

 

勿論、アレに関しては――恐らく私怨めいた感情も混ざっていたとはいえ――

彼女なりに、人類を想ったが故だ。

発案そのものを頭ごなしに否定する気など、毛頭ないのではあるけども。

原作の明確な描写内ですら、破綻しますよと宣言されたプランのために

ちょっかいをかけてくる(であろう)マキマちゃんは邪魔なのだ。

生姜焼きの悪魔への転生を待っていたら、俺たちの作戦に支障をきたす。

 

「シー君の話だと、支配が居なくなることで詰んでしまう盤面はない」

 

「むしろ、一刻も早く排除すべきだよ。マキマちゃん、日本人の命を残機にしてるし」

 

「始末に舵を切ると、それがネック。私たちには、デンジ君の奇策が使えない」

 

殆ど屁理屈というか、暴論同然のロジックだが

攻撃判定を受けなければ、マキマちゃんを再生・復活させることなく殺せるらしい。

例えば愛ゆえに、一つになることを目的に料理して食べてしまう、とか。

どこぞの孤島の3重人格系魔女も裸足で逃げ出すこと請け合いだ。

確かに、ゴミ箱の中でデンジくんと融合したポチタを、デンジくんに攻撃されたとは評さないだろうが…。

 

「色々試してみるしかないかな?適当な職員を結核菌に感染させて、東京本部に向かわせるとか」

 

「おおう、流石は名高いペイルライダー。そのえげつない発想、染みる~」

 

要はこういうことだろう。

 

「たまたまマキマちゃんにヤバい病気を感染させて、行動不能に持って行くって?」

 

目をゆっくり閉じるシーちゃん。

 

「あくまで一例。でも、意図せず病気をもらうのは普通のことでしょ?」

 

「仰る通りで…あ、それで言うと俺も思いついちゃった。最高にゴキゲンな応用戦術」

 

「聞きたい」

 

「シーちゃんは知ってるかもしれないけど、マキマちゃんってさ…」

 

シーちゃんに耳打ちする。

一言二言と告げていくうちに、シーちゃんの目が見開かれていく。

全容を伝え終わると、おもむろに顔がこちらを向く。

 

「…シー君、悪魔よりも悪魔らしいね。だから凄く気に入った、タイミングはどうする?」

 

「混乱の隙を突く。具体的には、姫野ちゃんがデンジくんにゲロキスをブチかました翌日。こんなのまず気づかれない、あの時マキマちゃんはそれどころじゃないハズ」

 

確か、パワーちゃんはこう言ってた。

ウヌら昨日交尾してないのか?と。

あの、可愛いだけで許されてる半天狗みたいな魔人も

質問へ意味のない嘘を混ぜ込んだりは、流石にしないだろう。

姫野ちゃんも、特に訂正を入れることなく反応していたしな。

 

「それよりも。シーちゃんの眷属に…」

 

「もちろん居る。安心して」

 

無表情でVサインするの止めて欲しい、かわいすぎる。

思わず、はわわ、となっさけないリアクションをしそうになる身体を気合で抑える。

が、勝手に限界化した俺をよそに、Vサインをしたままのシーちゃんから追い打ちが入った。

 

「シー君、私のこと好き?」

 

「死ぬほど!!」

 

食い気味に、0.ン秒の即答。

 

「どういうところが?」

 

「顔。身体。仕草。喋り方。イケイケのファッションセンス。クールな感じに対して食事の行儀は良くないとこ。死の悪魔なのに人類の破滅を望まないギャップがあるとこ。実際に人間の友達と仲良さそうにしてるとこ。人間みたいに羞恥心があるけどポーカーフェイスを崩さないとこ。必要なんだか必要じゃないんだか良く分からない嘘をつく茶目っ気。転生して分かったことだけど声が――ぅん?????」

 

紡がれる愛は、不意に口で塞がれた。

目を白黒させる俺を尻目に、すぐに顔を離したシーちゃんは一言。

 

「もういい、むず痒い」

 

マキマちゃん助けて。

俺この娘に殺されちまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――数日後、某国道にて。

 

「木ィ切って、月収6万だろ~」

 

少年と犬が歩いていた。

簡潔に文字として起こせば、極々ありふれた光景。

普通ではなかったのは、1人と1匹の姿。

 

少年には、右目が無かった。

眼帯を付けているのは、伊達や病気のせいなどではない。

借金返済のため、売り払ってしまったのだ。

 

犬には、頭からチェンソーが生えていた。

耳の代わりに取っ手が付いており、尻尾にはスターター。

最早、犬と形容する正当性も疑わしい有様だ。

 

「残りの借金がぁ…3804万円」

 

呟く独り言も、およそ少年的なソレではなかった。

あたかも身持ちを崩した、社会的な落伍者のような。

無論、少年自身には瑕疵などこれっぽっちも無いのだけれど。

 

「悪魔を一体殺せば、だいたい30万」

 

"現場"に到着し、ターゲットを見据えた少年は

慣れた手つきで犬の取っ手を持つと、スターターを吹かした。

 

ヴン!!!!!

 

「やっぱデビルハンターが一番儲かるな」

 

相対するは、民家の前を我が物顔で闊歩する異形。

身体の半分ほどを占める、赤く丸い頭部には無数の眼球が蠢く。

8本の人間的な形をした腕が、それをアンバランスに支える。

トマトの悪魔は、数メートルほどの体躯を揺らしながら、呑気な様子であった。

 

「デカい悪魔は好きだぜぇ?ぶっ殺すのがちぃとめんどくせーけどよ~。その分高く売れっから、な!」

 

言い終わる前に、少年はトマトの悪魔に躍りかかった。

狙いは腕だ。

チェンソーで1本や2本も切断したなら、きっと体勢を崩す。

すかさず、頭部を刺して刻んで終わらせるのだ。

 

「ひとぉつ!」

 

獲物を勢いよく振りかぶり、切るというよりは叩きつけるように振り下ろす。

肉を切り裂く生々しい感触もつかの間、トマトの悪魔の腕が宙を舞った。

返す刀で、別の腕を切りつける。

 

「ふたぁつ!」

 

2本の支えを失った巨体が、土煙を上げて倒れ伏した。

反撃を許してなるものか、と言わんばかりに少年は頭部へ飛び乗ると

矢鱈目鱈にチェンソーを振り回した。

キックバックなど微塵も考慮しない、無茶な連撃。

しかし、リスク度外視の狂気的な暴力は、トマトの悪魔をすっかり震え上がらせており

 

「ごっそさんっと。俺ん回される依頼の全部が、今日みてーにらくちんだと助かんだけどな~」

 

返り血をぬぐいながら軽口を叩く少年の足元へ、無様に転がることとなった。

戦闘開始から数分も経たぬ内に、本能で計算した通りに

この場で動く者は、少年と犬だけになったのだった。

故に、そこへ近づく足音に気づいた少年は振り返りつつ報告を行う。

 

「コイツぁトマトの悪魔ですね~。種からまた復活するんで焼いといてください」

 

報告を受け取ったのは、老いた髭面のヤクザ。

死んだ魚のような両の目で、眼鏡越しに少年を見上げると、こう告げた。

 

「よくやったデンジ。闇市でコイツの死体売りゃ相当いい値になる。報酬は40万だ」

 

「あざっす!」

 

「そっから借金と利子引いて17万。さらに仲介手数料とその他諸々を引いて…」

 

デンジの表情が徐々に曇っていく。

 

「残りが7万…」

 

運命の歯車が動き出す。




宇枝 慈郎:オリ主。推しのためなら死ねると真顔で言えるタイプ。心の早口オタクを飼い慣らせず。ショート中。

死の悪魔:最強の悪魔。口を滑らせたら最強の呪文が飛んできた。本気で恥ずかしがってる。パニクってキスした。

デンジ:原作主人公。この後ポチタと合体して生姜焼きの悪魔の脳を破壊する運命にある。間男。

ポチタ:チェンソーの悪魔。この後デンジと合体して生姜焼きの悪魔の脳を破壊する運命にある。NTRヒロイン。

トマトの悪魔:モブ悪魔。トマトじゃなくてイチゴに見える…見えない?得意技は7歳児からのエネルギー吸引。

ヤクザ:モブ。正義のヤクザ。女子供は殺すしヤクも売りさばいちゃうやべーやつ。

姫パイどうする?

  • 生きろ、そなたは美しい
  • 死んでくれ姫野、若く美しいまま
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