チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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ヘルタースケルター大好き!


[第30話] first death

「さて、ヨルちゃん。チェンソーマンが適度にシバかれて無理やり老いくんを食わされる前に、思いっきり彼をシバいて無力化して欲しいんだけど…義兄から1つ、注文があるんだ」

 

「何だ、言ってみろ。今、私は最高に気分がいいからな!お前の願いなら聞いてやらんこともないぞ?」

 

「うん、その無力化する方法なんだけどさ?チェンソーマンだけを狙うこと…つまり、人的被害を出さないことを約束してくれ」

 

「何を…?知っているだろう、私は戦争の悪魔だと。戦争に犠牲はつきものだ。兵士は勿論、兵器も物資も無辜の民も、等しく蒸発していくものだ。違うか?」

 

「ソレが戦略・戦術上有効な場合、またはやむを得ない場合は…ね。今回の標的はチェンソーマンだけだし、実行するのは戦争の化身たるヨルちゃんだ。まさか、余計な破壊を伴わなけりゃ悪魔の1体も倒せないなんて、美しくないことは言わないでしょ?」

 

「む…ぅ」

 

「そんなことしても、誰もヨルちゃんを恐れない。恐れられるのはきっと、虐殺の悪魔とか破壊の悪魔とか、その辺りだろうね。義妹には美しく、強大であってほしいんだけどな~」

 

「…」

 

「戦争は冷酷だけど、どこまで行っても国益が根底にある外交の一環だろ?つまり、インテリな話し合いの一種だ。ルール無用で討論する馬鹿がどこに居る?罵倒に終始したら、ガキの癇癪と何も変わらないじゃない」

 

「…!!」

 

「当然、ヨルちゃんは違うよね?目的のための暴力じゃなく、暴力のための暴力を振るうなんて――みっともない真似は、しないよね??」

 

「当たり前だぁ!!!!!」

 

わなわなと震えていたヨルちゃんから、裏切った航海士を前にした船長の如き雄叫びが上がる。

同時に、俺の腕へ抱き着きながらしなだれかかって来たシーちゃんより、小声で可愛らしい称賛が上がる。

 

(シー君、すごい。戦争にはいつも手を焼かされてるんだけど…コツが知りたい)

 

(コツはね、とにかくプライドを刺激してやること。ヨルちゃんみたいな能力と自尊心が高くて単純なタイプは、誘導したい方へムキにさせるのよ。ミソは能力が伴っている場合はって所で、これが例えば自尊心が高いだけの子は逆効果だから要注意。実行できる能が無いとただの正論パンチになっちゃって――)

 

「見てろ…一撃で仕留めてやるぞ」

 

シーちゃんとの内緒話が続く中、ヨルちゃんは自信たっぷりに宣言する。

ライダー教会と公安、最後の攻防の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒ぶるチェンソーマンに対し、まず先手を取ったのは老いの悪魔だった。

会議室に居合わせた全公安職員より、生爪という対価を前払いで徴収すると

彼は強力な遠隔攻撃――原作でも披露した、腐食のような描写を伴う一撃だ――を発動した。

この何ともインチキ臭い所業に、チェンソーマンがなすすべもなく四肢を失ったと見るや

彼はノータイムで地獄のヒーローのもとへ瞬間移動し、顔を近づけて囁いた。

 

「さあ、僕をお食べチェンソーマン。食うに難儀するなら…美しくないけど、僕の方から口に入っていこうか?」

 

落下の悪魔が応援に来るとしんどいから、なるべく早く頼むよ…との希望が音声信号へ変換される前に

そこへ今度は、戦争の悪魔による超出力のエネルギー弾が飛来した。

ピン刺ししてくれてありがとう、格好の的だと言わんばかりに着弾したソレはしかし

 

「これは…?僕への…いや、チェンソーマンへの攻撃か。なんて無粋」

 

射線上で老いの悪魔が手をかざすと、実体を持たないハズの弾丸は砂埃の如く舞い散ってしまった。

 

「この程度の力じゃ、僕には嫌がらせにしかならないな。さて、気を取り直して…」

 

根元を薙ぎ払われたことで老いの悪魔側へと倒れ込む、廃ビルを残して。

 

「ふーん、色々考えてはいるみたいだ。けど残念…物理攻撃も通用しないよ」

 

返す刀で廃ビルをも、瞬く間にチリへと還した老いの悪魔は

武器と化した銃の悪魔へ対して気だるげに指を差すと、宣言した。

 

「…念のため、始末しておこう。えい」

 

すると、哀れ洋上に浮かぶ銃の悪魔だったモノまでが、朽ちて果てて海の藻屑となっていく。

蹂躙という形容すらも生ぬるい、消去とでも言うべき一方的かつ事務的なやり口に、ヨルは思わず地団太を踏んだ。

 

「自慢するわけじゃないんだけど。こんなんでも一応、僕は超越者さ。本気で止めたいなら――」

 

ここで、老いの悪魔の動きが目に見えて鈍った。

 

「ヴァ…?」

 

「止めたい、なら…」

 

チェンソーマンまでもが、思わず声を上げる。

今では最早、さながら彼の冠する名前のように、召されかけのヒトじみた挙動だ。

加速度的に重くなっていく自身の身体へ、たまらず老いの悪魔は呻いた。

 

「これ、は…"契約不履行"の、症状…?ま、さ…か」

 

何か謀ったな、ドローンの武器人間…との言葉は既に吐き出すことも出来ない。

一方で、容疑の目を向けられた当人は

 

「チェックメイト。以上で作戦終了。俺たちの勝ちだ」

 

それはそれは下卑た笑みを浮かべていた。

誰が悪党なのか、分かったものではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェンソーマン時空は基本的に、いわゆる俺ルールと呼称する程のことでもないのだけれども。

言ったもん勝ち・やったもん勝ちなファクターで満ちていることを、否定する原作ファンは居ないハズ。

マキマちゃん然りヨルちゃん然り…デンジくんのじゃんけんの件は、その最たる例であろう。

だから、大した力を持ち合わせていない俺は、勝つために穴という穴を突いて突いて突きまくるのである。

今回悪用させてもらったのは、国の中枢と老いくんが交わした契約内容だ。

 

注目したのは、以下の点。

・日本国籍を持つ児童の実在性に関する言及がない

・同一人物の扱いに関する言及がない

・殺す方法に関する言及がない

もし、俺がここまで説明したのであれば、老いくんを詰ませるために何をやったのか勘付く人も出てくるように思う。

 

「うおおおおお!節子ちゃあん!!」

 

「グスッ…私、アニメ映画なんて初めて観ました。ちょうかなしいですね、火〇るの墓…」

 

「ねー。ひっさんだよな、仮に第2次世界大戦なんてモンが起きたらさ」

 

ビデオを観ながらおいおいと涙を流すガルガリくんとコベニちゃんに、俺は適当な相槌を打つ。

契約違反を犯した者は死ぬ*1、俺の元居た世界のIPが存在する*2、チェンソーマンが消去した概念の関連物は消えない*3…全て原作で描写された話だ。

火〇るの墓…いや、別に必ずしも火〇るの墓である必要はなかったのだけれども

とにかく、"鏡という鏡の前で創作における日本児童の死亡シーンを繰り返し垂れ流した"のが本作戦の全てである。

人類や生半可な悪魔の力ではどうにもならない老いくんでも、自然法則からの絶対的即死攻撃に晒されては一溜りもあるまい。

 

無抵抗でチェンソーマンに食われてやると約束したのに、フミコちゃんからの依頼という形ではあっても

俺たちが公安関係者として契約条件を満たした後で、アンタは彼を"攻撃"してしまった…やあやあ、実に由々しき事態だ。

ダメ押しとばかりにヨルちゃんからの攻撃にも2回、ご丁寧に反撃も含めて抵抗してしまったものだから、コレはもう言い逃れが出来ない。

前者だけなら、チェンソーマンの捕食をアシストするためなので攻撃ではない!と言い訳もできただろうに。

(老いくんが苦しみだすのにラグがあったのは恐らく、このように釈明の余地が残っていたからであろう。)

 

「アンタらは、食い物にしようとした"子供"と舐めてかかった"戦争"に負けた。ちょっとしたネズミ掃除のハズだったのに…忙しくなるな、こりゃ」

 

ぼやきつつ、老いくんの死体をどうしてくれようかと

俺は脳内の電卓を叩き続けるのであった。

*1
原作第17話参照

*2
原作第137話参照

*3
原作第174話参照




宇枝 慈郎:オリ主。揚げ足取りギフテッドの足フェチ。回避するには足を宇宙よりも高く揚げるしかない。

死の悪魔:最強の悪魔。根源的恐怖の悪魔を旦那が実質的に処したことで舞い上がっている。しぃおぼえた。

チェンソーマン:地獄のヒーロー。今回は老いの悪魔を釣りだすチーズ兼舞台装置。マキマーマン、ステイ。

ヨル:戦争の悪魔。へ な ち ょ こ 。(※相手が悪すぎる)止めたら?チェンソーマンとの最終戦争。

ガルガリ:暴力の魔人。清太に自分を重ねてしまってもう色々ダメ。この後コベニへ飴をありったけあげた。

東山 コベニ:4課のデビルハンター。結局何と契約してるの?話の持って行き方次第でおはじきを食べそう。

老いの悪魔:根源的恐怖の悪魔。"念のため"が致命傷、石橋を叩いて壊した。絶命シークエンスはオリ要素。
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