チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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ガンニバル大好き!


[第33話] ファイトララバイ

富の悪魔は、私たちとデンジが名指しされるだけあって中々の強敵だった。

会社のビルを一撃で倒壊(はさん)させる大規模な質量攻撃を次々に繰り出すパワーもさることながら、全身から発する輝きが持つ一種の洗脳効果が特に厄介で

一般市民の目を次々に眩ませ、奴の手駒として――カネの亡者とでも形容すべき状態に――持っていかれてしまったのだ。

ライダー教会に所属する前の私だったなら、洗脳された人間(ひとじち)など気にもかけることなく悪魔ごとブチ殺していたところなのだが。

全く美しくないそのやり口を、今や検討することすら忌み嫌っていた私は…さてどうしたものか、と防戦に回っていたのだが。

 

「まさかサメの魔人を潜ませておいたとはな!地中から丸のみにされた時の、奴の顔と来たら傑作だったぞ!」

 

「ああ、あいつぁ大暴れしてる俺とヨルに夢中だったからなー…後は、光が届かねえ地面の中から攻撃すりゃ終わりなんだぜ。冬ん間高校で勉強したオレのインテリ脳みそと、ジロウのスーパーインテリ脳みそが混ざったみて~だ」

 

これが闇と絆ん力だと続く言葉に、私はとうとう吹き出してしまった。

だってそうだろう、デンジが小学生でも知っているようなことを学んだ結果、ジロウの常套手段である伏兵による奇襲を猿真似した結果

偶々全てが強力に悪魔のメタとしてぶっ刺さり、あっけなく討伐してしまった上にこのような頭の悪い台詞を吐かせているのだから。

"原作知識"に加えてこういった出来事も手伝い、近頃は常々思うようになった。

絶対的な力などありはしない、それらしきものが見つかったとしてもアッサリと綻びを突かれるだけだ、と。

 

(そんな曖昧なモノより、不変の事実こそが重要!"チェンソーマン"に戦争(わたし)の偉大さを知らしめた瞬間に比べれば、本当にどうでもいいことだ)

 

「ところでよ、ヨル…」

 

「――ん、どうしたデンジ?」

 

「…俺ぁ、素晴らしい人間なんですけど。シンシテキで、女性の味方なんですけど。こんなことされたら、その魅力は伝わらなくなっちまいますぜ」

 

淡々と、粛々と進んでいく被害現場の復旧作業を見下ろしながら、私は屋上へ備え付けられたベンチに座るデンジを椅子代わりにしていた。

彼の股間に臀部を押し付け、体重を集中させて擦るように下半身を動かしているのは、勿論わざとである。

 

「…人間は、平気で噓をつく。契約すらも信用ならない、醜い生物だ。だがデンジ、お前はどうだ?言葉が正直だ、身体も正直だ」

 

私の尻に、剛直が主張を始めている。

頬が熱を持つ一方だ…今、私は獣欲塗れの凄絶で淫蕩な笑みを浮かべているに違いない。

 

「お前は魅力的な男だ、誇れ。どういう形であれ、私を認めてくれたお前が大好きだ…愛しているぞデンジ」

 

振り向きざま、間抜け面を晒している愛しい男への熱烈なキスが決まる。

顎を右手で抑えて口内をまさぐっていると、デンジも負けじと舌を伸ばしてきたのでいったん唇を離す。

 

「誰も、"どちらか一方を選べ"とは言ってないものな?欲望に正直なままのお前でいてくれ」

 

腰を前後にくねらせ、娼婦のように甘ったるい刺激と誘惑を欠かさずに告げた。

 

「さっきは死ぬほど気持ちよさそうにしていたが…それだけに、手と口でイッたくらいでは切ないだろ?私とエッチ、したくないか??」

 

――左手(アサ)による全力グーパンが、私の顔面にクリーンヒットした。

 

「このっ…黙って聞いてれば脳内ドピンク色ボケクソバード…!」

 

派手に鼻血を垂らしながら、割とトサカに来ている様子のアサが私を詰る。

だがしかし、その顔の紅潮は今しがた自分自身で殴ったり単にキレていたりというだけではあるまい。

 

「デンジっ!その…そう、何度だって言うけど!勘違いしないで!ヨルとは脳を共有してるから、アンタを好きになってるだけで…こんなの、私の意志じゃないからっ!!」

 

「おっ、おぉ…?」

 

「それはその通りなんだが、好意を認める墓穴を掘ってるぞアサ。それに、出撃前の行為を止めなかった理由になってないな。お前、私とデンジを食い入るように観ながらオ――」

 

「うわあああああぁぁぁぁぁっ!!?」

 

再びの顔面全力グーパン。

私の人格はもう引っ込んだから意味がないというのに、相当にテンパっているのであろう。

 

「はぁ、はぁっ…!そ、そうだ!みて、見てよこの顔!デンジ、アンタどうせ好きなのは私の顔なんでしょ!!こんなボコボコの顔でエッチなことなんて」

 

「ぁ~顔も好きだけど、しねぇから落ち着けって…悪かったよ、アサん身体で勝手に気持ちよくなってさ」

 

「…ズルい、デンジのくせに。それ言われたら、私が一人で空気読めずに大騒ぎしてる初心なガキみたい」

 

アサに触れることはせず、しかし目線はしっかりと合わせて、デンジは黙って彼女の言葉を待つ。

こういうところだよな、と私は改めて思う。

デンジは――無論、敵が相手であればその限りではないが――女には本当に優しい。

通常の舌戦ならばともかく、こうなっては恋愛弱者のアサなど勝負の土俵にも立てぬことであろう。

 

「気持ち、よかった?」

 

「あん?」

 

「私の、手と口。気持ちよかったんだ」

 

「ん、ぉ…おお~、めっちゃ気持ち良かったぜ?」

 

「ふっ、ぅぅぅうー…ん?じゃっ、じゃあ…せめて。せめてヨルじゃなくて、私を抱いてよ…!アイツの頭の中、何回もデンジとせっ…クスする気で満々だし。こっちは初めてなのに、そんなっ居候のついでみたいな扱いは…絶対にいy」

 

言い切る前に、再び唇が塞がる。

但し、今回塞いだのはデンジの方からだが。

軽く、少しだけ啄むような、そんな口づけ。

 

「アンタを、本当に好きにさせて…デンジィ~…」

 

「ドカンと任せとけ」

 

力強い、Vサインが添えられていた。

 

「…もう、副総帥から色々っ!聞いてる、かもだけど。私、私ね…悪魔に襲われたお父さんを見捨てたの!重傷を致命傷にしてやろうと、わざとSOSを遅らせたり。お母さんの"トドメ"を、見て見ぬふりしたり。浮気だとかを、免罪符にして…!!」

 

「…」

 

「最低だよね。女を侍らしてるタイプの男へ、自分のことは棚に上げて図々しく要求して。私を邪険に扱わない確信へ、つけこんで…」

 

「――アサ。あ~…何で今更、思い出したんだろうな?」

 

「え…?」

 

声色は弱々しく、かなり苦しそうだ。

うっすらとだが、全身に汗がにじんでいるのも分かる。

捻りだす言葉を吟味するかのような表情や仕草と共に、顔色を悪くしたデンジはポツポツとソレを形にしていく。

 

「あんさぁ、アサん方こそジロウの奴から聞いたかもしんねーけどよ。俺ぁ人殺しだ…親父を自殺に見せかけて、殺っちまってる」

 

これは本気で初耳だ。

当たり前と言えば当たり前の話ではあるが、恐らくジロウが意図的に伏せた"キャラ設定"。

目に見えて、先ほどまでとは違うベクトルでアサが狼狽している。

 

「!!?…でっ、だけど!きっと…何か、事情がっ」

 

そして、しかしデンジはハッキリと宣言した。

荒い息遣いは、取り繕うこともなく。

さながら、"自分の娘"を諭してあやすかの如く。

 

「まぁ、そりゃどうでもいいんだ。大事なのは、そんな野郎でも最高に幸せな人生送ってるってことだぜ」

 

「…!!」

 

「アサは俺を、最低だと思うか?」

 

「…。…――思う!最低!不潔!女の敵!!!!!」

 

「だよな?だから、アサも…えぇ~~~~~っ!!?「だけど」」

 

「だけど、それなら。最低同士、お似合いだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[第33話] ファイトララバイ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦争の化身たる私が、それを見つめるのは奇妙な光景であるとは思ったけれども。

2人の、小学生ほどの男女が、日の光の中で笑い合っていた――




デンジ:原作主人公。ポチタがここぞと、雪と苦みの代わりに敢えて思い出させた。マキマと一緒に大歓声を響かせている。

三鷹 アサ:原作主人公。自意識があるままエロ催眠受けてるようなものだしね。ヨルとの軋轢は原作比で相当マイルドに。

ヨル:戦争の悪魔。平行世界とこの世界のアメリカに失望。チェンソーマンより上だと認めてくれたデンジに半端なくラブ。

ビーム:サメの魔人。画面外では主に被害者救助で大活躍している。老いの悪魔になすすべもなかった推しを全肯定する漢。

富の悪魔:オリ悪魔。白と黒のツートンカラーで明智光秀。少し目を離すと掃除のノリで月光蝶を発動するため注意が必要。

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