[第34話] レザボアデビルズ
台風くんであるとか、ナユタちゃんであるとかの実例が、原作描写内だけでも存在したために
まあ、こうなるだろうな…との予測は前々からしていたものの、愛しい"かぐや姫"を見ていると生命の神秘を感じる。
4月4日に無事産まれた、シーちゃんと俺の愛娘――ケムトレイルの悪魔こと、ミク(未来とcheMICal trailのダブルミーニング)ちゃんの話だ。
ヒトが存在しなければ自然界では発生しえない、陰謀論を核として生を受けた背景の影響なのか
まるで童女然としたストラ〇クウィッ〇ーズのような容姿をしている。
そう、赤子ではなく童女なのだ。
日に日に凄まじいスピードで成長を続けたミクちゃんは、背格好やコミュニケーション能力へ注目するのであれば、既に幼稚園児のソレを思わせる程である。
悪魔の生態を考えた場合、地獄-現世間のリスキループにハマりかねないことを加味すると、これでも悠長な方ではあるのだろうけれども。
脳内で延々と気味悪がり続けるドローンちゃんを華麗にスルーしつつ、ミクちゃんの遊び相手になっている俺の服を、ちょいちょいと引っ張ってきたのはシーちゃんだ。
何か用事でもあるのだろうかと振り向けば、明らかに拗ねてむくれている様子だった。
「ごめん」
「許す。その代わり、今夜は覚悟して」
嫁の可愛らしすぎる嫉妬とかまちょに、脳は焼き尽くされ意識も刈り取られそうになりながら、何とか娘との輪に彼女を加えた。
「ありがとう」
「どうしたのよ、シーちゃん。急に改まって」
甘えてくるミクちゃんを両手で抱きしめるシーちゃんの、顔だけが俺の方を向く。
「シー君が居なかったら、この世界はきっと酷いことになってた。"主人公"が不在ではないから、最悪は免れたかもしれない。でも、悲劇が悲劇を呼んで…出す必要もなかった犠牲は、山のように積み重なって。少なくとも――」
ハグから、高い高いへ流れるように移行すると同時に断言した。
「私が、この子を授かることは絶対になかった」
ひょっとしなくても半分はギャグでやっているのであろう。
この、エッジを利かせたエスプリ溢れるデスジョークよ。
炸裂するエモさとブラックユーモアが、俺をますますダメにしていく。
「だから、ありがとう。私の傍に居てくれて、ありがとう。妹たちも、きっと幸せを掴んだ…飢餓はどうだか知らないけど」
キガちゃんの扱いに思わずコケかけたが…俺は柄にもなく、泣きそうになっていた。
デンジくん、いや既に義弟と呼んだ方が正確だろうか?
ヨルちゃんとナユタちゃんを悲しませたら、鬼いちゃん許しませんわよ??
「俺の方こそ。愛してるよ、シーちゃん、ミクちゃん」
「へっ、ヘイユー!宇枝クン、業務連絡です…よー?いーまお時間の方よろしい?大丈夫??あっ、あっあっあっ…しししシーちゃんの機嫌を損ねそうなら、後で…も…」
2人をめがけ両手を広げた瞬間、それはそれは情けないコールが脳内に響く。
ドローンちゃんに制御を預けておいた両目へ、何かあったのだろうか?
「かっ…空撮写真、吐き出すね!け、けどほら!漫画やアニメと違って、ここ現実世界だしっ!?実姉のチェックを入れた方がいい、って言ったのは宇枝クンだしっ!?ボク…ボクは悪くない」
裸エプロンにでもなりそうな勢いのまま、俺の口から写真をゲロさせたドローンちゃんは、そそくさと意識の底へと引っ込んでいった。
が、どうにもイドレベルからチラチラと視線を感じる…猫かな?
「…あー、と。ドローンちゃんからだね。4騎士の皆が視覚じゃ個人を判別しづらいことは知ってるけど、一応さ」
俺は写真を拾うと、それをシーちゃんに思いっきり近づけた。
距離の関係でかなり被写体は小さいが、90年代のソレとは思えぬほど克明に"彼女"を捉えている。
「第四東高等学校に、キガちゃんが現れたみたい」
*
私は決して、舐めていたワケではないのだ。
そもそも全盛期からは大幅な弱体化を強いられているとはいえ、黙示録の4騎士が次女。
その呆れかえるほどのタフネスを予めジロウ君から聞き及んでいたため、警戒を怠ることもなかった。
加えて、戦闘状態に入ってしまったとしても、こちらにはデンジ君とアサちゃん・ヨルちゃんが居る。
根源的恐怖の悪魔と対峙したような場合は、流石に苦しいと言わざるを得ないのだが。
(それでも、こんなハズじゃなかったんだけどな~…)
自己紹介もそこそこに、救済!という叫び声と共に繰り出されたハイキックを両手でガードした結果――
衝撃を逃がしきれず、足元から校庭へヒビが入ってしまったのだから。
この余りにも速く重い一撃には、いい蹴りだったよ等と軽口を叩こうとも思えない。
情報にあった弱々しいテレフォンパンチは何処へ行ったのか、といった疑問は全て頭の隅に追いやり
身体を半身に構え、武器人間形態へ移行するタイミングを模索していく。
「ヴぅ~…今のを、凌ぐんですね。まずは小手調べと思いましたが、これは全力を出さなければ…!」
デフコンレベルを更に上昇、どうやらまだギアが上がるらしい。
背後で様子を窺っていたデンジ君も、流石にマズそうだと思ったのか躊躇いなくスターターを吹かしていた。
「美人にこんなことすんのは気が進まねーけどよぉ~…!」
「!そこに居ましたか、チェンソーマン!!」
「ジロウの奴はともかく、ヨルからもイッパンジンに手ぇ出すなって言われてっからなァ!センテヒッショウだぜぇ~~~~~!!」
「擦過傷剣!!」
言うが早いか、放置されていたサッカーボールで生成した鋸を思わせる剣にて、デンジ君の両手を落としたのはアサちゃんだ。
「な、何をっ…!?」
飢餓の悪魔が、涙目の瞳をかっぴらいて驚く隙を見逃さない。
すかさず私も武器人間形態へと移行すると、ド派手な爆炎をスモーク代わりに投擲されたデンジ君の両手が、チェンソーごと彼女の後方へ突き刺さる。
「お前はちゃんと観てんのかよ、教育テレビ!こないだ言ってたぜ~?鎖ぁ引っ張る力にゃメチャつよだってなあァァァ!!」
断面から伸びていた鎖を器用にしならせ、荒っぽく彼がぐるぐる巻きにした飢餓の悪魔めがけ、両足を爆破して急突進した私は
その勢いを殺すことなく、攻撃エネルギーへ変換する形でアッパーを放ち、遥か上空へとカチ上げていた。
「お空に人間なんていねーだろ、っと!ヨル、ぶっ放せ!!」
「ドカーン」
邪悪で妖艶な笑みを浮かべながら、ヨルちゃんが行使したのは戦車の悪魔の力。
武器化したガントレットより射出される圧倒的な暴力は、文字通り飢餓の悪魔を消し飛ばした…ハズだった。
「…チッ。あの忌々しい生命力は健在だな」
肉片というよりは細胞の塊と評した方が正確でありそうなほど、飢餓の悪魔だったモノがパラパラと降る中
空中で肥大したそれらはスライムめいて結集し、組織を形成し臓器を形成し
数秒も経つ頃には、寸分も違わぬ形で元の姿へと復元されていった。
「ずっり~」
「空気中の微生物から生命力を吸い取ったのか。聞いてはいたけど、何てパフォーマンスの良さだ」
「無駄です。力を取り戻しつつある私は、そんな半端な攻撃じゃ斃れませんよ」
そうして再びファイティングポーズを取ると、飢餓の悪魔は高らかに宣言した。
「だから救済!救済を始めますっ!私はここの生徒を皆殺しにして、潜伏している火の悪魔を引きずり出して、チェンソーマンに食べさせて、人類を救わなければいけないんです!!そのため、なら…妹でも容赦しませんからっ」
「「「…?????(※デンジ・アサ・ヨル)」」」
「…あー、ちょっとタイムタイム」
どうやら、にわかに話し合う必要が出てきたようだ。
こういう娘を相手にするのは面倒なんだけどな~ジロウ君が代わってくれないかな~、と
心の底から、私はそう思わずにはいられないのであった。
宇枝 ジロウ:オリ主。ロマン派リアリストはルールで禁止スよね?下地のキャラはもちろん卑劣様。
ドローンの悪魔:オリ主。相棒と新能力の覚醒って熱いよね。精神衛生も鑑みて専ら使いっぱしり。
死の悪魔:最強の悪魔。モノは口から取り出す系夫婦。そんなところでデンジの義兄義姉感を出すな。
ミク:ケムトレイルの悪魔。世界初の地獄生まれでない悪魔。ヒトの因子も色濃く発現した愛の結晶。
デンジ:原作主人公。やべー女吸引力の変わらないただ一つの概念掃除機。例外はシーちゃんのみ。
レゼ:民間のデビルハンター。懐妊してないのは作劇上の都合。設定を詰め切れてない作者が悪い。
三鷹 アサ:原作主人公。ヨルとすっかりカツマタ。想いを自分のモノにしたデンジとのコンビは◎。
ヨル:戦争の悪魔。推定ラスボスの座は完全譲渡。ミクをチラ見しつつデンジを誘惑するのが日課。
飢餓の悪魔:ちいかわ。愛機はヴァルヴレイヴ。お前こそがポスト山田奈緒子だったかもしれねェ…。