チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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キャラクター大好き!


[第39話] チェンソーズ・ラバー

混乱に乗じて暴れたいだけの馬鹿、火の悪魔の影響による変異者…大雑把に、ヒトへカテゴライズされる集団への対処は急務であり重要なことだ。

しかし今は、ひとでなしへの対処もまた同様のレベル感を求められていた。

――狂騒の坩堝と化した地球における諸秩序の主要害たるライダー教会本部を、正義の悪魔が強襲。

本部自体はレゼとアサ・ヨルがガチガチにガードを固めていたため、"何を命知らずな"という印象を持たれるだけかもしれない。

あくまで、彼我の戦力差のみを観点として語った場合に限る話だが。

 

「アイツ…!周りの建物ばっかり狙って、私たちの方へはチクチクチクチク…!」

 

「典型的なゲリラ戦を仕掛けて来てるね。狙いはむしろ民間人で、後は私たちの焦りと疲労…血迷って深追いしてくれれば万々歳ってところかな?」

 

悪魔だって阿呆ではないのだから、まともにぶつかったら一瞬でお陀仏なのは百も承知なのだろう。

正義の名を冠するには余りにも醜悪なビジュアルを晒すこの脅威は、触手のような器官を縫い針の如く家屋等へ貫通させて絶えず蠢いた。

そうして隙を見計らい、触手を用いた攻撃を散発的に彼女たちへ繰り出すことで、いわゆる人の盾を構築しながらの負荷を強いたのである。

 

「いっそ一帯を更地にしてくれれば、私も最大火力で殲滅できるのだがな。ジワジワと非戦闘員が嬲り殺されていくのは屈辱の極みだ」

 

アサの脳内で悔し気に歯噛みするヨルを知ってか知らずか、レゼは提案を一つ。

 

「一応、作戦は思いついたよ。ヨルちゃん次第な点はあるけど」

 

ヨルへの人格交代を待つことなく、即座に耳打ちした。

すると、同心円を描く瞳が見開かれていき…口元には、不敵な笑みが形成された。

 

「気に入ったぞ。レゼ、私はお前のそういうところを買っている。素晴らしい!ふふっ…同じデンジの女なら、そうでなくては!」

 

「生意気。けど、頼もしいや。じゃ…早速だけど、お願いねヨルちゃん」

 

「うわあ。うっわあ…私、ヨルやレゼのことは大切な家族だと思ってるし、大好きだって胸を張って言えるけど。やっぱりこの手のTHE・悪魔みたいなノリには、まだ積極的になれないかも…」

 

戦争の悪魔とはやや距離を取りつつ無造作にチョーカーのピンを引き抜いたレゼは、そのまま左手を首に押し当てて己の頭を吹き飛ばした。

自爆させた生首を起点に武器人間形態への身体再構築が始まる一方で、残された元々の身体はその場で直立不動の構えを見せる。

そして、立ち尽くす首なしの肩へとおもむろに手をやったヨルが告げた。

 

「派変手榴弾」

 

レゼと違いアサの考えが筒抜けとなっている故にそれはもう上機嫌なヨルであったから、発揮した精度と処理速度は段違いだと言える。

人型リモコン爆弾と化した元レゼに対し、武器化の権能を行使することで"スイッチ押下時"のアクションを上書き。

いわば人型リモコンパイルバンカーとでも形容すべき魔改造を、血液の残が許す限り繰り返したのだった。

 

「ふふん。人質を取ったのが仇になったな?その図体で、四方八方に触手を絡ませては逃げるに逃げられまい」

 

「私たちは持ち場を離れる必要なんてない。スマートに、キミだけを殺すことにしたよ。正義」

 

底抜けに明るい満面のドヤ顔を湛えるヨルと、永久凍土のように冷ややかな態度のレゼ。

対照的な2人が生み出したクリーンな兵器が、正義の悪魔本体めがけて殺到していく。

そもそもの話――クァンシのソレに劣るとはいえ――彼女のフィジカルは爆弾の悪魔の力を差し引いて考えたとしても、超人的なスペックを誇っている。

近接攻撃の射程距離まで接近すること自体は鼻歌交じりに可能である以上、正義の悪魔が迎えた末路など敢えて記すまでもないことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

改めて思ったことだが、私は別にライダー教会の理念に心酔していたワケではなかった。

いや、もちろんお題目は立派だと思っているしライダー様の大ファンではあるし特に入れ込んでいるのがチェンソーマン、もといデンジ君だという事実はある。

しかし、その心理の根っこは敬愛といった美しいばかりのモノではなく、もう少しドロッとした憧憬とでも言うべき感情だ。

非公式・非公認でライダーの真似事をしていたのは、正にソレが理由だと断言してもいい。

要するに、私は人気者を応援したかったというよりは人気者になりたかったのである。

 

火の悪魔が授けてくれた力は、いち女子高生にとってタダで入手できる麻薬に等しかった。

自分なりに相当な理性を働かせて色々と自重していたつもりではあったのだけれども、やはり何の訓練も経験も無しに悪魔を狩れるようになったのは

言い訳の余地もなく酷く鮮烈な全能感を精神へ焼き付けてしまい、制裁先が人間も対象となるまでそう時間は要さなかった故に。

つまり例えば――被害者に殴る蹴るの暴行と罵声を浴びせていたいじめグループの、四肢と声帯を搔っ切ってやった。

罪悪感の一つにでも苛まれるかもとは思っていたが…正直に言おう、私は絶頂していた。

 

クラスメイト達も犯人への非難など一切せずに、称賛・感謝・安堵の大合唱だったからもうたまらない。

何よりライダー教会から私たちを始末するべく、デビルハンターとしてのアサちゃんだったりが差し向けられて来なかったから、止まる理由もないだろう。

だってライダー様なら絶対に偽ライダーのことを把握しているハズ(事実、していた)で、あんな教義を掲げている以上は私たちが問題行動を起こしてると判断したなら看過できる道理がない。

力を得るまでもなく初めから紙ペラ同然だった法律も道徳も倫理も、むしろ邪魔な概念だと切り捨ててからは更に身体と心の調子も上がったものだ。

だからきっと、私は今こそツケを支払わなければならないのだと思う。

 

「っくショォ~…こりゃあキリがねぇぜ!ホテルん時の野郎みてーだな!」

 

隔離施設内で、私の制御を失って肥大化しながら暴れる身体を相手に死闘を演じる、一人の武器人間が居た。

言うまでもなくデンジ君その人だったのだが、何やら様子がおかしい。

誰もが知ったるいつもの形態でもなく私のようなマニアのみぞ知る黒い形態でもなく、言わば"赤いチェンソーマン"。

ザックリした考察になってしまうのは仕方がないとして、デンジ君の人格を持った"チェンソーマン"のように思える。

ここに来てのニューフォルム、切り刻まれる激痛も忘れて垂涎の光景に見入っていたがそんな場合ではないだろう私。

 

「デンジ君!私はいいから、逃げてっ!火の悪魔は今、私の中で理性を飛ばしちゃうくらい強くなってて…再生能力だって、ほぼ無尽蔵なんだよ!?」

 

「あぁ~ン?」

 

「万が一、チェンソーマンの心臓が取り込まれたらもっと酷いことになる…!だから、こんな偽善的なクソ女は見捨ててさ…ね?」

 

「んだよアサの奴、ユウコにはいっ…言わなくて当然か?残念ながらよォ、こちとらサツジンハンだぜサツジンハン!!俺みてーなワルが、人ん話なんざ聞くわきゃあねーだろうがぁっ!!」

 

ギャハハと高笑いするデンジ君に、一瞬だけ絶句しつつも私は食い下がる。

 

「それに!火の悪魔は心を読んでるっ!長引けば長引くほどデンジ君は不利に――」

 

「…は~ん、そんじゃ好きなだけ読んでみりゃいいぜ。ユウコ、多分お前も出来んだろ~??」

 

吠え、飛び、チェンソーをぶん回す彼に気圧されて、思わず心を覗かせてもらったのだが。

もらった、のだが…。

 

(何て、こと…デンジ君。ずっと、ずっと自然な形で。私をカッコよく助けて、いい雰囲気のままにエッチすることしか考えてない…!!!!!)

 

「ヤベー悪魔をぶっ飛ばしたんなら、ベロチューじゃ釣り合わねー!!最強にインテリなデンジ君はエッチ1発がソーバだって知ってんだぜぇ!!?ジロウと姫野に教わったかんな!!!!!」

 

何を教えてるんだあの方たちは、と辛うじて脳内ツッコミを入れるも。

私は最早、ただただ笑うしかなかった。

 

「は…ハハッ。何だそりゃ…あはははハッ!」

 

「…あっ!けどよ、ユウコが俺とヤりたくねーならナシなナシ!エッチは好き同士だから愉しくて気持ちいいんだぜ!!」

 

「待って、おなかよじれる…ハハッ!分かった、分かったから…!」

 

一息。

 

「…じゃあっ、デンジ君さ?私のこと、カッコよく助けてよ!信じてる!私、デンジ君のことが大好きだから!!ずっと、見てたんだからっ!!!!!」

 

その時、チェンソーの回転速度が数倍くらい跳ね上がったように聞こえた。

私には何故だか、これでもう何とかなったのだという確信があった。




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