チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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パーフェクトブルー大好き!


[第4話] 作戦開始

「あーっ…つ、疲れた…!」

 

とある山間部で、俺は土の香りに包まれながら大の字を描いて伸びていた。

現役バリバリのデビルハンターの身体、という下地があるとはいえ

慣れない動きには慣れない筋肉と神経を使うもの。

今日もかれこれ半日ほど、武器人間形態における飛行訓練を行っていたのだが

まあ、振り回されること振り回されること。

 

タケコプターだのヘリブースターだの何だのと

軽口を叩く余裕があったのは、仕様確認を始めた初日のほんの数分だけ。

重力と慣性による身体負荷がエグ過ぎて、何度首の骨を折ったことか。

樹木や岩場への激突回数?ハハッ、ゲイリー。

時速500キロ越えなんてマークでき(カタログスペックが高く)ても

制御できなきゃ意味がないんだって!

 

それでも、短期的にでも集中して打ち込んだおかげであろうか?

時速50キロ、その程度であるならば

何かを抱えながらでも、かなり精密な飛行と姿勢制御が可能となっていた。

パワー全開でかっ飛ばした場合に、即死するのは相変わらずだが

木々を縫うように飛び回ることが出来るのは、大きな進歩である。

 

「クァンシちゃん…いや、レゼちゃんクラスでもう人間やめてるわコレ。何でまともに戦えてるんだか」

 

息を切らしながら原作勢にドン引きする俺のもとへ

歩いてきたのはシーちゃんだ。

ただの付き添いではなく、俺が死んだときの蘇生係をお願いしてもらっている。

改めて、推しにダサい姿を見られるのは恥ずかし…いや。

彼女の力になれない方が、ずっと恥ずかしいな。

 

「お疲れのところ悪いけど、速報。デンジ君が支配に保護された」

 

「!!…ぃっつ~」

 

思わず、跳ねるように上体を起こしてしまった。

鈍痛が全身を苛むが、それどころではない。

 

「今、車でハイウェイを走行してる。どうやら、始まったみたい」

 

想定よりやや早い、もう来てしまったのか。

となれば、こうしてダラダラしている時間も惜しい。

実戦と鍛錬をさらなる密度で――

 

「ぅぐっ?!」

 

逸る気持ちと共に、気合で起き上がろうとした瞬間

物理的にシーちゃんの尻へ敷かれてしまった。

 

「休息も作戦のうち。死の悪魔とヒトの世界を繋いでるのは、シー君だけだよ。気持ちは分かるけど、焦っちゃダメ」

 

「あっ…ちょ、それはそうなんだけどそうじゃなくて!」

 

「?…ああ、気遣いが足りなかったね」

 

俺の身体を視認して一言。

わざとらしく、口に手まで添えている。

言葉と裏腹に、全く悪びれていなさそうなのは気のせいではないと思う。

 

「短時間で何回も死んだせいで、スイッチがバカになってる?疲労と推しの密着がダメ押し??」

 

間違いない。

段々と、分かるようになってきてしまった。

傍目にはいつもの無表情のままだが、心の中で満面の笑みを浮かべている。

お、鬼…悪魔…最強の悪魔だったわ!ガッデム!

 

「カラオケ店の、仕返し。参った?」

 

「ま、参った!ごめ――」

 

舌を突っ込まれた。

時間にすれば、ほんの数秒ぽっちの接触。

体感的には永遠にも思える恍惚の中、申し訳程度に残った理性が懺悔を始める。

デンジくんごめん、キミがゲロキスされるまで俺は不介入を決め込んでるのに…。

シーちゃんの顔が、唇を伝う銀糸と共に離れていく。

 

「よろしい」

 

「…シーちゃん、これはマジでお願いするんだけどさ。今すぐ立ち上がった方がいいよ。嫌なら、その、座る場所を変えるでもいいから」

 

「知ってる。気にしなくていい」

 

「…マジで言ってる?」

 

「マジ」

 

脱力して、ふと茂みを見やる。

蜘蛛の巣に絡め取られ、食われることを待つだけの存在となった蝶が

こちらに何かを訴えかけようとしていた。

安心してくれよ、俺はお前の同類だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、東京郊外。

平和そのものであったハズの、昼間の大通りは

血と悲鳴が渦巻く地獄と化していた。

 

「恐れろ、人間ども!俺様はハクビシンの悪魔!貴様ら、残らず食ってやる!!」

 

トマトの悪魔などとは比べ物にならない

かつて地球を支配していた、恐竜を思わせるような

10メートルを超過する圧倒的体長。

特殊な能力こそ兼ね備えてはいないものの

その凶悪なフィジカルを力任せに躍動させ、建物を破壊し、人間を血煙に変えていく。

 

「俺様はここだ!どうしたデビルハンター、恐れをなしたか!?」

 

当たらずとも遠からず。

近場に居た民間のデビルハンターたちは、とっくの昔に現着し

事態の収拾にあたった…のだが。

今現在、道路や壁面にへばりつく肉塊が、その末路であった。

既に公安へと、山と飛んでいる通報を受理して

彼らが鎮圧にあたるまで、一体どれほどの被害が出るであろう?

 

「逃げ遅れてる近隣住民は?!」

 

「30メートル先のアパート!寝たきりの80代男性がまだ未搬送!」

 

「4課の連中は何やってんだ!!」

 

狂騒と混沌が臨界に達する寸前。

ハクビシンの悪魔を、上空より見下ろす影があった。

 

「ハクビシンの悪魔を確認。制圧開始」

 

そう宣言したのは、パーティー用の馬マスク(白)を被った女子高生である。

丸腰の仁王立ちで現場を睥睨するその姿は、滑稽を通り越していっそ勇壮さすら滲む。

空中にて足場にするのは、大型のドローン。

ヒトの顔のような意匠と、ぶら下がる手足付きの胴体に、何の意味があると言うのか。

 

ともすれば、カネだけは無駄にかけた新手の芸人扱いもやむなし。

余りにも場違いな闖入者を、しかし迎えたのは歓声だった。

 

「ら、ライダーだ!」

 

「ライダー!ライダー!」

 

「悪魔は1匹だけだ、やっちまってくれ!」

 

「退避!退避っ!!」

 

その名は、ライダー。

最近、俄かにメキメキと頭角を現した民間のデビルハンター。

正体は謎に包まれており、分かっているのは女性であろうことだけ。

女子高生の制服も、コスプレなのか何なのかも定かではなく

その上で、この凄惨さを極める空間に安堵と希望の空気が伝播したのは――

 

「パージ」

 

呟きと同時に、足で何かしらのスイッチを押下すると

何と、胴体が切り離されたではないか。

自由落下した胴体は、手足を広げてハクビシンの悪魔にガッチリと取り付いた。

 

「なんだァ?てめェ…」

 

ライダーのビジュアル的インパクトへあっけにとられ

胴体を振り払わなかったのが運の尽き。

取り付かれた頭部に、ハクビシンの悪魔が意識を向けた刹那。

 

「ドカーン」

 

胴体が大爆発を起こした。

 

「があああああっ?!!あづっ…ぃ、ヒヒッ!死ぬ死ぬ死゛ぬ゛ぅぅぅぅぅっ!!!!!!!!!!」

 

脳天に直撃。

体内に充填されていたのは、エレクトロンとテルミット。

つまり、数十キロのエレクトロン焼夷弾を叩き込まれたのだ。

これには悪魔と言えど、ひとたまりも無い。

燃焼しきるまで絶対に消えることのない地獄の業火が、白く輝きながら全てを消し炭にしていく。

 

「リロード」

 

ライダーが再び、足でスイッチを押下する。

すると、シュコンッ!と抜けた音と共に頭部から再び胴体が生えて来た。

ソレを見てしまい、悶え苦しみながらも半分ほどが損壊した顔の色を青くしたのはハクビシンの悪魔だ。

 

「ま゛…ま゛でっ」

 

「パージ。ドカーン」

 

2度目の大爆発。

悪魔からは、最早悲鳴も上がらなかったのだが。

 

「リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ。ドカーン。リロード。パージ――」

 

執拗に、丹念に、真心すら感じる殲滅劇。

絶対的な裁きが、ここに下った。

 

「制圧完了。帰投する」

 

安堵と希望の空気が伝播した理由は

ライダーの対悪魔制圧成功率が、未だ100パーセントをマークしていたからであった。




宇枝 慈郎:オリ主。むちうちになりそう。4話目でようやく武器人間設定が活かせたってマジ?ちょうちょ。

死の悪魔:最強の悪魔。死を全く忌避しない鍛錬を観てキュンです。ネオジムみてーな距離の詰め方してる。くも。

ライダー:なぞのでびるはんたー。日本で同族殺しのヒーローと言えば仮面ライダーだよな!ウマ娘。

ハクビシンの悪魔:オリ悪魔。害獣死すべし慈悲は無い。決して作者の私怨が混じったりはしていない。

姫パイどうする?

  • 生きろ、そなたは美しい
  • 死んでくれ姫野、若く美しいまま
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