チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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エイリアン大好き!


[第41話] はまれやわなに

俺は昔、与えられたおもちゃを暇に任せて片っ端からぶっ壊してしまう、親の財布と愛情を踏みにじるクソガキだった。

生まれ持ったバカみたいな筋力も然ることながら、センスとロジックの両方で効率的な壊し方が分かってしまうのが大きかったのだろう。

触れるもの全てを破壊していく悲しきモンスター同然の少年期を送った結果、20前後の時にはフラストレーションが爆発寸前となってしまう。

"だから"俺は、食い扶持としてデビルハンターの、それも民間ではなく公安の門を叩いて壊すことにしたのだったか。

つまるところ、簡単には動かなくならないおもちゃが欲しくて欲しくてたまらない馬鹿が、図体だけデカくなってしまった次第である。

 

結果は今や全人類が知る通り、いつの間にやら背中へ貼り付けられた自他共に認める最強のデビルハンターというラベルが示す通りだ。

爪の悪魔・針の悪魔・ナイフの悪魔…こいつらとの契約やら代償やらによって、最早ロクに悪魔の力すら借りられない身体となってしまったが

顎を消し飛ばされそうになったただ一回の例外を除き、重傷すらも負うことなくぬるま湯のような戦場を駆けスクラップの山を築いて来た。

俺にとっては遊び足らないようなおもちゃであっても、他の連中にとってはむしろ遊ばれるようなおもちゃであったことなど星の数ほどあり

捻り潰されていった奴らのことなど、精々名前と顔を記憶しておくだけでいっぱいいっぱいと言える。

 

しかし、そんな俺も一度は危ない場面と遭遇したように、何事にも限界だとか例外だとか言った線引きが存在する。

遥か上空の宇宙空間において繰り広げられているらしい、落下の悪魔と闇の悪魔の最終戦争はその最たるものだ。

排除命令が下った際は対処してやれる策や自信などいくらでも存在するとはいえ、一旦理外のドンパチが始まってしまったら、人間様は蚊帳の外なのだから。

マッハ30を上回るスピードで戦えるのなら戦えるに越したことはないが、生物一匹を殺すにはオーバースペックだと言わざるを得ない。

最強のデビルハンターたる所以は、純粋なフィジカルや異能ではなく何でもいいからとにかく最後まで立っているのが誰よりも上手いということ。

 

「気持ち悪いな。顔がニヤついてるぞ岸辺、本当に気持ち悪い。変なモノでも食ったか?」

 

同行中のクァンシから飛んでくるいつもの悪態を受け流しつつ、作業する手は最高効率を維持しつつ、返した。

 

「そりゃお前、人生でもう二度と出会えないだろう最高のおもちゃと遊ぶ準備をしてるからな。心の一つや二つ、年甲斐もなく踊るもんだ」

 

文明の光が人類の生息圏より闇を駆逐してから久しいものの、闇の悪魔と言えばビッグネーム中のビッグネームであることに変わりはない。

むしろ"残った闇が濃くなった分"相応に強化もされているハズだから、総合的に見て弱体化しているのかどうかすら疑問は尽きない故に。

加えて、送電網が麻痺した途端にドイツとソ連を叩いたということは、奴さんが相当にお冠であるらしいことを窺わせる。

恐らく最後はデンジ――チェンソーマンの心臓を奪取するつもりだったのだろうが、それを落下の悪魔が阻んでいる構図。

同じ根源的恐怖を司る悪魔とはいえ間違いなくかなりの苦労を掛けているので、全てが終わった後であの女を一番高い料亭なぞに案内してやるのは良いアイデアかもしれない。

 

「作戦通り、落下の悪魔が闇の悪魔を"ここ"へ落とせなきゃプランBだが。ジロウから緊急連絡があるまでは仕込みを急ぐぞ」

 

いつにも増してキレッキレの、悪魔よりも悪魔らしい発想と実行能力を兼ね備えた狂人謹製のプランは、自信満々な様子で俺に告げるのだった。

いわく、当作戦を遂行するだけで十分おもちゃは壊せると。

いわく、アイツは誰よりもデビルハンターに向いていると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夥しい宇宙線の雨が降り注ぐ地球大気圏ギリギリの暗黒空間にて、私と闇の悪魔の決戦は遂に終焉を迎えようとしていた。

敵が暗黒にその身を溶け込ませようとすれば、私は音を置き去りにしたスペースデブリを散弾のように全方位掃射することで応戦。

しかし闇が周囲を包み込んでいる場合には如何なる攻撃も不可視の障壁に阻まれるため、潜伏座標を特定こそすれど無傷のまま反撃へと転じられる。

果ての無い、茶番と評しても強ち間違いではない死闘を丸々ひと月ほど、観客も居ないまま一秒のインターバルすら許されずに演じていたのだが。

サラミを薄く薄くスライスしていくように、ジワジワと私が劣勢に追い込まれていたからだ。

 

(いくら私が最上位クラスの悪魔だとは言っても、死の悪魔様の眷属化ならびにライダー教会内における活動実績が、確実にこの身体を弱体化させていますね。対する闇の悪魔はパワー全開、素のスペックは全盛期と比べれば見る影もありませんけど…今では地球全土を"闇"が覆っていますから、長期戦になれば不利を強いられることなど自明の理)

 

今こそフェーズ2に移行するべきだと冷静に判断した私は戦術をガラリと変更、戦いの様相は消耗戦からへ"掃討戦"とダイナミックに変化する。

闇の悪魔側の目的が何であれ(チェンソーマンの心臓をしぶとく狙っている等の場合は猶のこと)、最大の障害となっている存在は自分とみて問題ないハズ。

予め想定していたように、向こうの心理としては落下の悪魔を排除できるものなら排除してしまいたい、という思いが強いと踏んでいるのだがどうであろうか。

敵も愚か者ではないのだから、露骨に私が生餌として振舞ってしまうと勘付かれたり警戒されてしまうのがオチだと言わざるを得ない。

だが、長期間に渡る演技ではない真剣勝負の果てに疲弊した落下の悪魔が逃げ腰となっていたら?終わりの見えぬ殴り合いに闇の悪魔がうんざりしだしたら?

 

(――ほら、こうして食いついてしまうでしょう?私は、貴方が深追いしてくる理由の自然発生を今か今かと、手ぐすねを引いて待っていたのですよ)

 

さて、ところでそもそもの話…闇の悪魔とは超越者と呼ばれる存在であり、地獄に生を受けてから一度も死を経験していない不届き者だ。

よって、仮に死を迎えた際は最期の場所を問わず必ず現世へと転生することになるが、ミソとなるのはここ。

上位の悪魔は"死を迎えるというプロセスを無視して"、地獄の悪魔の制御下にある扉を肉体ごと(通常は魂のみ)通過することで現世-地獄間の往来を可能としている。

この自然法則に干渉できるのは地獄そのものである地獄の悪魔だけだから、何か致命的なインシデントが起こっても被害者側に出来ることがないのである。

どうあれ、つまり必ず扉を通過しなければならないということは――細工は流々、仕上げを御覧じろ。

 

(地獄の悪魔よ、ライダー代理として命じます。私を地獄へと、契約地点へと導きなさい)

 

散発的な攻撃をバラ撒きながら、振り切らない程度のスピードで逃げる私を闇の悪魔が追い縋る。

そうは言っても依然としてマッハは優に超過している、この状況で急制動をかけることなどそれこそ重力操作能力でも有していない限りは不可能だ。

必然的に、進路上へ突然現れた扉に突入していった私の後を、不本意であったとしても追う形となってしまったことが運の尽き。

重力制御により闇の悪魔との相対座標をガッチリ固定した私は、地獄の合流ポイントへぬるりと降り立った。

合流地点には岸辺とかいう人間と、クァンシとかいう武器人間、生贄となった首切り死体たちに…ジロウ様と死の悪魔様が居た。

 

「お疲れ様、落下ちゃん。さあ――終わらせようか、全部」




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