ヴヴン!!!!!
一面に広がる、血と肉の海。
けたたましいチェンソーの駆動音を轟かせながら、一人の男が舞っていた。
四方八方から圧殺しにかかる塊を、斬って刻んでズタズタに。
致命傷を幾度となく負っているハズなのだが、男は止まらない。
「テメエが俺に切られて血イ流して!俺がテメエの血イ飲んで回復…!」
下半身を丸ごと持って行かれても
頭をゴルフボールのように吹き飛ばされても
それがどうした、と言わんばかりに胸のスターターを吹かすと
瞬く間に再生していく自身の身体を盾に
男――デンジは、吠える。
「永久機関が完成しちまったなアア~!!これでノーベル賞は俺んモンだぜ~!!」
結論から言うと、俺はデンジくんたちへ事実を伝えることにした。
自分たちは民間のデビルハンターであること。
このホテルには偶然居合わせたこと。
永遠の悪魔の能力に囚われて立ち往生していたこと。
嘘は言っていない、何一つとして。
但し、聞かれないことについては何も答えない。
心に飼っていてよかったインキュベーター。
ドローンの武器人間・死の悪魔という裏の素性。
つい先ほどまで奥の部屋で盛っていたこと。
エトセトラ、エトセトラ…その全てをマスクしたのだった。
「しかし、お二人とも災難でしたね。チェックアウト前に、あの厄介な悪魔に絡まれるとは」
すっかり余裕を取り戻した様子で、俺たちを労わってきたのはアキくんだ。
初手で気さくに早パイ!と、口を滑らせなかった俺はきっと成長している。
ちなみに、ヒロカズくんとコベニちゃんは、数時間ほど前から廊下で意識を手放していた。
デンジくんが永遠の悪魔をシバき始めて、恐らくは丸1日ほどが経過しただろうか。
重度の精神的疲労と単純な睡魔に、脳が屈服してしまったものと思われる。
「ええ、全く。獰猛な悪魔が巣食っていたものです。もう、この空間で干からびて死ぬものとばかり」
隣で、シーちゃんが無表情のまま噴き出していた。
そこに何の違いもありゃしないでしょうが。
責めるようにこっちを睨みつけてこないでほしい。
可愛すぎて思わず抱きしめたくなるから。
「ふ~ん。その割に慈郎君もシーちゃんも、初めて会った時から全く動揺してないように見えんだけどな~?」
シーちゃんが出会い頭で威圧し、きょっ…という情けない断末魔と共に
カチコチの置物と化してしまったパワーちゃんを、膝上に抱えつつ
姫野ちゃんが悪戯っぽく会話に割り込んでくる。
初手で気さくに姫パイ!と(以下略)
「そこは俺たちもデビルハンターの端くれ。相応の覚悟が決まっているというだけですよ」
実際問題、永遠の悪魔など恐るるに足りず。
ただ不死身なだけで、痛みに耐えきれず心が折れてしまうような野郎だ。
そんな精神性だからこそ、ライダーにビビってコソコソと逃げ出してきたのだろうが…。
デンジくんがこの場に居なかったとしても、俺とシーちゃんで十分に始末することが可能な悪魔など
ライダーの名声ポイントを稼ぐ、おやつにしかなっていないのであるからして。
「お、言うねぇ。4課のデビルハンターとして、耳が痛いや…醜態も晒しちゃったし」
目を伏せつつ、自嘲気味に笑う姫野ちゃん。
原作で起きたやり取りは、一通り繰り広げられることになった。
つまり、恐慌状態に陥ったコベニちゃんがアキくんを刺したり
それを視た姫野ちゃんが、腰を抜かすほどの衝撃を受けたり。
言わばプロ中のプロが、見せてはならない姿をこれでもかとお披露目してしまったのだ。
プライドを刺激されもしよう。
「何、生きてればいいんです。結果として、誰も死んでいない。後は、デンジくんが奴さんを自殺に追い込むだけ。我々はただ、こうして談笑でもしているだけでいい」
一息。
「そうして、ホテルから脱出した暁には。皆で彼を労えばいいんじゃないでしょうか。単純な話です」
「…ねえ、慈郎君?突然だけど、質問いいかな」
「はい?」
「死ぬのは怖い?」
「全く」
「敵に復讐したい?」
「面倒なんで結構です」
「人と悪魔のどっちに味方する?」
「俺が愛したいと思った方に」
「100点。日本の将来は明るいね」
「何ですかソレ…あ、じゃあ景品下さい景品。何か知りませんが、満点回答をしたプライズを」
「景品?」
「そうですね…先ほど、デンジくんとキスをする約束をされていましたが。グレードアップを希望します」
俺は顎に手を当てる。
同時に、わざと嫌らしい笑みを浮かべた。
「彼、誰がどう考えても今回のMVPになるでしょう?本人に言うのは何ですけど、キスだけで釣り合うとは思えません」
ニヤつく俺を見つめていた姫野ちゃんは一瞬、呆けた顔となり
すぐにケラケラと笑い出した。
「120点。アハハはハハっ…ぶっ飛んでるよ、慈郎君!」
悪魔のような笑い声だけが、この場を支配していった。
*
永遠の悪魔を撃滅後、ある日の朝。
広く、東京を一望するバルコニーにて、向かい合う男女が居た。
「人を見下ろしながら食うメシはウメえな…」
デンジと姫野である。
サンドイッチを頬張り、乱立するビル群を眺めながらそう呟いたのはデンジだ。
場所は、姫野の自宅。
朝ごはん食べれる?と、姫野に誘われるまま椅子に腰かけたデンジは
観葉植物に囲まれながら、優雅なひと時を過ごしていた。
「デンジ君は変わってるね…普通、この状況とか気まずくて帰ると思うんだけど」
自身は朝食に手を付けることもせずに
頬杖を突きながら、真っすぐにデンジを見つめながら
姫野はポツリと尋ねる。
「タダ飯食えるのに、なんで帰るんだよ…それによ」
「それに?」
「こうして見てっと、み~んな昨日はヤることヤッてすまし顔してたんだなって。デンジ君は感慨に浸っちまって、それどころじゃねーんだ…」
姫野は腹を抱えて笑いだした。
バンバンとテーブルを叩きながら続ける。
「クッ…は、ぁははははは!!なに、何だよその…ありきたりな、ぷふっ!自分、真剣ですみたいな顔しながら!」
デンジ・荒井・コベニの新人歓迎会にて。
ビールをしこたま飲み干し、終には吐いてしまった姫野だが
潰れて、気を失うまでは行かなかった。
ミジンコのように残った理性が稼働し、何とか帰宅したまではよかった。
問題は、その際に隣へ座っていたデンジの手を引いて自室まで連れ込んでしまったことだ。
無論、抵抗しようと思えば出来た。
しかし、この世界線においてデンジは(ゲロ)キスを経験していない。
酔いがそこまで回っていなかった頃、姫野は宇枝の言葉を思い出しており
キスより凄いプライズについて、考えている内にアルコールで脳を溶かした結果
先に嘔吐感を覚えてしまったためである。
よって、デンジ視点ではご褒美をお預けされた形となってしまった故
このまま付き合えば、今度こそイケるのでは?という打算が働き
姫野に引っ張られるまま、猛獣の巣穴に足を踏み入れてしまった。
「何とでも言いやがれ…俺んチンチン、今ぁちゃんとついてんのか~…?」
朝、目を覚ました時にこそ
やっちまっただとか、桜の代紋掲げる人間が未成年をだとか
滝のように冷や汗を流しながら苦悩していたのだが。
色々と素直な反応を見せるデンジを見て、すっかり姫野は居直っていた。
図々しく生きましょう、は彼女の座右の銘だ。
「…デンジ君さ、マキマさんのこと好き?」
「超好き」
「え~。じゃあ、私のことは?」
「超好き!」
再び笑う姫野。
「素直でよろしい。そんなデンジ君に、1つ提案をしようじゃないか」
「てーあん」
「うむ、うむ。私のこと、超好きなんでしょ?それなら、お願いを聞いて欲しくてさ。私とアキ君、くっつけてよ。私は、デンジ君とマキマさんをくっつけるように協力するから」
流石にデンジも、少しの間面食らった様子であったが
じきに不敵な笑みを浮かべると、問うた。
「アイツんドコ好きなの?」
「顔」
「は~ん…いいぜ、そんなら"契約"だな」
「いい子。今日から私達は先輩後輩じゃなくて…せ、じゃない間違えた。友達でいこう」
因果は、少しずつ、確実に捻じれていく。
今日は、一つの決着の時。
宇枝 慈郎:オリ主。デンジを不憫にしたくなくて種だけ蒔いた。エライことになった。俺は悪くねぇっ!
死の悪魔:最強の悪魔。大分人間らしい反応をするようになった。永遠の悪魔が割を食った。私は悪くねぇっ!
デンジ:原作主人公。ノーベルクソキス賞受賞を逃す。ソ連の魚雷ガールを歯ぎしりさせてる。
パワー:血の魔人。夢はパルデアで配信者になること。しのあくまは ぜったいれいどを つかった!一撃必殺!
早川 アキ:4課のデビルハンター。玉を投げたり蹴ったり集めたりすることが生きがい。チョロイン。
姫野:4課のデビルハンター。キノコ狩りの女。この先生きのこれるかは神の味噌汁。
東山 コベニ:4課のデビルハンター。必殺技は墨俣一夜城築城。お前も家族だ。天丼が大好き。
荒井 ヒロカズ:4課のデビルハンター。当小説では荒井=ガルガリ説を採用するからこの後撃たれて死ぬってさ。
永遠の悪魔:モブ悪魔。アトラクタフィールドから逃れられず。もぅまぢむり…。出身地は8番出口。
姫パイどうする?
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生きろ、そなたは美しい
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死んでくれ姫野、若く美しいまま