――パン!
ついに鳴った。
運命の、ゴングが。
「なんだ、こん音…」
昼下がりの、どこにでもあるようなラーメン屋に
不意に木霊した、聞き慣れぬ乾いた音。
真っ先に反応したのは、餃子に舌鼓を打っていたデンジだ。
箸を止めて耳を澄ませるが、それ以上の音は聞こえてこない。
「知らんとは愚かじゃの…太鼓の音じゃ」
「祭りか…」
適当な返事をするパワーに、アキが続く。
「ここのラーメン、よく食えるな…味、酷くないか?」
仲間内の、他愛のない会話。
割り込むように店内の空気を震わせたのは、一人の男だった。
隣のテーブルにいつの間にか座っていたその男へ
デンジ・アキ・パワー・姫野の視線が集中する。
姫野が思わず、誰…?と呟いたのは無理も無かろう。
「俺はフツーにうめえけどな」
と、デンジが答えれば
「舌がバカだと、幸福度が下がる」
と、男は返す。
新手の因縁もいい所である。
見かねた姫野は、アキにアイコンタクトを送る。
それを受けて3人に対し、店出るか、と提案するアキだったが
男の、口と舌は止まらない。
洪水さながらに、早口でまくし立てていく。
「俺のじいちゃんは世界一優しくてな。高い店でいいモン食わせて貰ったな~。じいちゃんヤクザだったけど正義のヤクザでさあ…必要悪っていうのかな…じいちゃんみたいな人はさ。女子供も数えるほどしか殺したことないんだと。薬売った金で欲しいモンなんでも買ってくれてさ…み~んなに好かれた江戸っ子気質のいい人だった…」
おもむろに、懐から1枚の写真を取り出すと
それをデンジに見せつけて、言い放つ。
「デンジ、お前も好きだったろ?」
写っていたのは、幼少の時分であろう男と老いた髭面のヤクザ。
ゾンビの悪魔の口車にまんまと乗せられ、廃工場にて生ける屍に成り下がった挙句
ポチタと融合を果たしたデンジに、ゾンビの悪魔ごとバラバラの肉片と散った
惨めな社会悪の、薄汚れたメモリーだった。
「なんのつもりだテメえ…」
続けて、男が懐から取り出したのは果たして
「銃の悪魔は、てめえの心臓が欲しいんだとよ」
拳銃だった。
――パン!
ノータイムの発砲。
銃口は間違いなくデンジの頭を狙っていたし
事実、原作では脳天への一発を受けて即死してしまったのだが
野生の勘に身を任せたデンジは、咄嗟にテーブルの向かい側へ。
男は舌打ちしつつ、再びデンジに照準を合わせてトリガーを引くも
「…!!」
血の魔人は、手を拱いてなどいなかった。
男の顎を目掛け、頭部をもぐ勢いで右のアッパーカットを叩き込むと
即座に距離を空けつつ、叫んだ。
「チョンマゲ!!」
「コン…!」
衝撃から立ち直ったアキは、急ぎ狙いを澄まし
店内に、狐の悪魔を顕現させた。
*
一方、都内の某高層ビル屋上。
その場にはまるで似つかわしくないいで立ちの、女の姿が2つ。
一人は女子高生、一人はシェフ。
ご存じ、死の悪魔と落下の悪魔だ。
「銃声…どうやら、始まったご様子。不肖、落下の悪魔、いつでも」
「予定通り、私が目になる。操作は任せたから」
落下の悪魔が頭を下げると同時に、死の悪魔は自身の口に右手を突っ込んだ。
そのまま、口内にひっかかった魚の小骨を抜くかのように
何かをかたどった、小型のオブジェをズルズルと引っ張り出していく。
唾液まみれのソレをしっかと握り、彼女は宣言する。
「…――***」
オブジェの正体は、死の悪魔の眷属。
現代――無論、90年代においても――日本では、すっかり彼の者の恐怖など
過ぎ去りし時に埋もれた感情となり果てて久しいが
ひとたび猛威を振るったなら、身の毛もよだつ凶悪無比な災害と化すことだろう。
「行け」
ガイド然として、真っすぐに構えられた死の悪魔の手のひらから
落下の悪魔の能力により、***の悪魔が射出された。
狙いは、彼女の射程範囲ギリギリに位置するマキマの自宅。
…の、"通気口"だ。
「口を見つけた。力を弱めて。10メートル…5メートル…ストップ。真上にフィルター、ぶつけて破壊…オーケー」
ちょうど、カメラ付きのラジコンを操作するように。
通気口を破壊した***の悪魔は、ダクトを駆け巡り、建物内部に浸透し
ついに、リビング側の通気口へと到達する。
スリット越しにターゲットを視認した死の悪魔は、満を持して命じた。
「感染させて。漏らすことなく」
オブジェから元の姿に戻ってもなお、ダクトに収まりきるほど小柄な侵入者は
しかし主が求めるまま己が力を行使し、ターゲットを強制的に罹患させていく。
後は、もう優しいものである。
室内には一歩も足を踏み入れることなく、元来た道をたどるだけ。
僅か数分の所業であった。
「作戦完了。ここから先は、シー君に任せる。私たちは、すぐに撤収。できる限り、痕跡を残したくない」
「かしこまりました。それでは、失礼いたします」
ナチュラルに死の悪魔をお姫様抱っこした落下の悪魔は――
「思うんだけど。私を抱く必要、ある?」
「当然ですッッッッッ」
今日も、平常運転である。
*
「――え?」
狐の悪魔による迎撃の影響で、今や瓦礫の山と化してしまったラーメン屋。
店内(と定義していいのかは最早定かではないが)にて、姫野は尻もちをついていた。
腰を抜かしたりしたワケではなく、デンジが勢いよく覆いかぶさってきたからだ。
既にこと切れている彼の身体には、出来立てホヤホヤの銃創が2か所。
こめかみへの1発が致命傷になったであろうことは、想像に難くなかった。
「姫野先輩、すぐにデンジを蘇生してください…パワーは援護を頼む」
混乱の中、アキは矢継ぎ早に指示を飛ばした。
アイツはマズい、1秒でも早く体勢を立て直さなければ、という思いが顔に滲む。
彼が刺すような視線を送り続けているのは武器人間、通称:サムライソード。
気づけば接近を許していた、デンジと何やら因縁があるらしき襲撃犯は
その身体を丸ごと食らった狐の悪魔の頭を真っ二つにしながら、中から無傷で這い出してきたのだ。
「なんなんじゃ、アイツ…デンジみたいに変身しおった」
「来るぞ!」
フィジカルに任せた突進を繰り出したサムライソードは
まず、アキに狙いを定めていた。
頸部を一刀両断せしめんと、足首へスナップをきかせつつ
両手を構え、回転斬りの体勢に移行する。
体重を乗せて振りぬかれた2枚の刃を
スライディングで躱したアキは、勢いを利用して
サムライソードの背面を取りに行った。
コマのように1回転することで、応戦する腹積もりでいたサムライソードは
唐突な軸足への痛みへ顔をしかめ、集中を切らしてしまう。
ふくらはぎに突き刺さったのは、血で作られたナイフ。
デンジの血を用いて、パワーの能力により作られた刃先が
彼女の投擲によりクリーンヒットしていた。
その隙を見逃すアキではない。
釘の形をした剣を構え、契約している悪魔へ命令を下そうとした刹那
「間に合った!!!」
サムライソードに対し、上空から発煙弾がブチ込まれる。
奇襲に次ぐ奇襲を受けた盤上は、いよいよ混沌を極めつつあった。
「刀野郎は不死身!付き合うだけ時間の無駄!テキトーにあしらって離脱、離脱!!」
武器人間形態と化した俺は、喉を潰さんばかりに空から声を張り上げた。
「その声っ…?!この間の…」
「ご名答!」
アキくんには短く返答しつつ、急ぎ降下。
我に返った姫野ちゃんが、慌ててスターターを吹かせたのを見て
俺の発言と併せ、リミットを悟ったのであろう伏兵は
たまらず物陰から飛び出してきた。
「逃がすか…!」
「おっと、"アカネちゃん"一本釣り成功!そりゃあ、焦って出てくるよな?」
「ッ!?」
原作知識とサーモグラフィで、近くに隠れてるのは知ってたんだなコレが。
俺はハナッからここでケリをつけるつもりだよ!
ほら、俺の方なんて向いてて大丈夫か?
その動揺、命取りだぜ??
「復かァ~つッ!!」
「デンジ君!敵は女!!」
武器人間として蘇生したデンジくんが、姿勢を低くしたまま吶喊。
姫野ちゃんの指示を受け取ると、チェンソーでアカネちゃんの胴体を薙ぎ払った。
「仕留めた!後は…パワーちゃん、ちょっと失礼!」
「ぃひっ!?お、おいウヌ!何を――」
「大柄な娘*1だけど、このくらいなら許容範囲!人一人抱えるくらいワケ、ない、ねぇッ!」
沢渡/アカネちゃんになったことを確認した俺は
パワーちゃんを右手で抱きかかえながら、再び空中へ。
「おお!?」
「俺の血をやるよ!だから食らわせろッ!!なるたけ煙幕の中にッ!!」
続けて、遊ばせていた左手を自分の頭部に持っていき
ローターの回転に巻き込んだ。
肉が裂かれ、骨の砕ける、何とも厭な感覚。
激痛に歯を食いしばって耐えていると
手指の粉砕からやや遅れて、噴水のような出血が始まる。
「おお!!」
「デンジくん!流れ弾からアキくんと姫野ちゃんを守って!」
「サウザンドテラブラッドレイン!!」
パワーちゃんの力で短剣型に凝固した俺の血が
サムライソードを中心に雨あられと降り注ぐ。
ボルテージが最高潮に達したパワーちゃんは、盛大に鬨の声を上げていた。
「ワシが最強じゃああああ!!」
宇枝 慈郎:オリ主。生姜焼きの目を気にしなくていい段階へ入ったため弾けた。サボごっこ中。
死の悪魔:最強の悪魔。宇枝にお姫様抱っこされての空中デートを懸想してる。爆走姉妹デス&ウォー。
デンジ:原作主人公。優しくてツラの良い女が死ぬのは銀河の損失だと思ってる。メイン盾来た!
パワー:血の魔人。不潔で偏食で虚言癖持ちの集英社3重苦。AUOと剣神リスペクト。
早川 アキ:4課のデビルハンター。究極生命体のASMRを爆買いしている。残高2円。
姫野:4課のデビルハンター。デンジにより心臓への銃撃を免れる。代わりに違う一撃が入った。
モミアゲ:刀の武器人間。ヤクザの孫。俺またつまらぬものを切っちゃいました?
沢渡 アカネ:公安襲撃事件の首魁。宇枝がはっちゃけたので竜頭蛇尾。タイムパラドックスだ!
狐の悪魔:配布SSR悪魔。非イケメンにも優しい面食い。土下座すればギリやらせてくれそう。
落下の悪魔:死の悪魔の眷属。なんでこの娘は愉快犯一直線なんすかね?計画通り。
***の悪魔:オリ悪魔。死の悪魔の眷属にして(能力だけは)最強最悪。おそろしいねえ。
姫パイどうする?
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生きろ、そなたは美しい
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死んでくれ姫野、若く美しいまま