チェンソーにかける愛   作:皮入れ大根

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リング大好き!


[第9話] 押し付けちゃダメ

公安襲撃事件の首魁たる、アカネは死に

虎の子のサムライソードも、蘇生手段を失ってお縄となり

ダメ押しと言わんばかりに、マキマは原作めいた*1残敵掃討を*2敢行したため*3

烏合の衆と化していた犯人たちは、文字通り皆殺しとなった。

(恐らくは)トカゲの尻尾切りを兼ねているとはいえ、血も涙もない。

 

少なくない犠牲を払いながらも、何とか危機を乗り切った公安。

職員が事後処理に追われる中で、ある時驚愕のニュースが組織を貫いた。

――マキマが倒れた、と。

むべなるかな、デンジ・パワー・アキ・姫野をはじめ

デビルハンター東京本部は、蜂の巣をつついたような大騒ぎとなった。

 

裏で特に動揺していたアキをちゃっかり見つけたデンジが

姫野にその事実を密告し、一緒にいるための時間を作る口実の起点にしたり

一時的にとはいえ、合法的に定期瀉血を逃れる形となったパワーが

プチ暴走して事案になりかけたり(襲撃犯逮捕の件と相殺された)

ドミノ倒し同然に、付随する様々なことも起きた。

 

しかし、騒げど騒げどマキマが復帰する気配は一向になく

殺到する、何が起きたのかという問い合わせにも

知らぬ存ぜぬが貫かれるばかり。

唯一面会を赦された者らの素性が、身内ですら無かったという事実は

デビルハンターたちに、要らぬ憶測の種を萌芽させるばかりであったが…。

 

一体誰が、想像するであろうか。

内部へゴシップの蔓延を許す方が、ずっとマシだとみなされるような真実が存在することを。

面会人こそが下手人であり、正しく身内であり

世間を賑わすライダーの正体である、などという頭の悪すぎる与太話を。

 

都内の某病院。

白く静謐な室内に、3人の男女が居た。

 

「…やってくれましたね、死の悪魔。まさか、狂犬病の悪魔*4を私の飼い犬たちに嗾けるとは」

 

「…」

 

「やってくれましたね、シーちゃん。まさか、狂犬病の悪魔を私の飼い犬たちに嗾けるとは」

 

「実行したのは私と落下だけど、発案者はシー君」

 

俺には一瞥もくれず、マキマちゃんを見据えるシーちゃん。

ごく僅かな表情の変化だったが、末妹を憐れんでいるように見えた。

 

「…契約の力で、マキマちゃんは自分の死を日本人に押し付けることが出来る。だから、アンタを真正面から無力化するには1億回以上殺さなきゃいけない。手間も代償もナンセンス極まりない」

 

一息。

 

「けど、契約には穴があった。例えばマキマちゃんへの害意が何者にもないまま、勝手に致命傷を負った場合。ダメージは肩代わりさせられない…今回みたいにね」

 

「狂犬病の悪魔が攻撃したのはあくまでティラミス(愛犬)たちで、私も彼らも感染しているとは夢にも思わず普段通りにスキンシップを取っただけ、というワケですか」

 

あちらこちらが麻痺した身体でベッドに臥せるマキマちゃんは、顔だけを俺の方に向けた。

 

「1つ…いいえ、2つほどよろしいでしょうか?何故、狂犬病の悪魔の力を抑えているのです?弱体化しているとはいえ、その気になればもっと早く私を殺せているでしょうに。何故、私に面会など求めたのです?私の権能を理解しているなら、極力近づきたくなどないハズ…貴方は他人にマウントを取るタイプにも見えません」

 

俺は思わず肩をすくめた。

 

「答えは1つだ。こうして、マキマちゃんとお話がしたかったから。ちなみに、少なくとも今は支配の力なんて怖くもなんともないね。ソレ、自分より程度が低いと思えなきゃ発動できない制約付きでしょ?まんまとしてやられた相手を、操り人形になんて出来っこない」

 

「…回答になっていませんよ」

 

「なっていますとも…さて、マキマちゃん。シーちゃんに聞けば分かるであろう、アンタの力についてまでならともかく。俺みたいな一介の民間のデビルハンターごときが、何で契約についてまで把握していたのでしょーか?」

 

「それは…」

 

事実は小説より奇なり。

俺は、マキマちゃんに滔々と語った。

これまでのこと、これからのことを

ある程度かいつまみつつも。

 

「にわかには、到底信じられません。ですが辻褄は完璧に合いますし、何より――」

 

「生々しすぎて作り話に聞こえない、って?そりゃそうだろうね。平行世界の未来とはいえ、自分のことについては特に」

 

知らん赤の他人から、突然自分の黒歴史を暴露されたようなものである。

本人としてはたまったものではないだろう。

その証拠(?)に、気づいているのかいないのか、マキマちゃんの顔は真っ赤になっていた。

 

「というわけで、マキマちゃんの計画は公私共に破綻しまーす。チェンソーマンはn」

 

「や、やめ…っく」

 

顔中から漏れ出す蒸気を幻視するほどの、羞恥と狼狽を見せるマキマちゃん。

シーちゃんと違ってポーカーフェイスを維持できないのは、何だかんだで末っ子感あるなあ…等と呑気に考える。

 

「シー君。私の妹、面白い娘でしょ?」

 

「シーちゃん!!」

 

茶化した結果、マキマちゃんがガチトーンでキレたため

シーちゃんは両手の人差し指で、口元にサッと×印を作った。

なにそれかわいい。

 

「まあ、だから。今はそれどころじゃないだろうけど、俺とシーちゃんの計画を邪魔しないでくれってことが言いたかったんだ。少しでも人類のことを想ってるなら…頼むよ」

 

これは暗に、マキマちゃんへ2択を迫っているに等しかった。

あくまで、彼女が罹患しているのは"狂犬病の悪魔の能力による狂犬病"だ。

現実にはコンマ数パーセントほどの可能性が存在する、自然治癒がありえない。

俺の要求を呑んで(能力を解除してもらって)マキマとして生き永らえるか?

俺の要求を拒んで(能力に侵されたまま死に)ナユタとして生まれ変わるか?

 

「俺としては、光のオタクになることをお勧めしとく。クソみたいな世界でスカッと生きるには、魂込めた推し活が一番だね…っと」

 

言いつつ、シーちゃんを抱き寄せる。

 

「シーちゃん。今、幸せ?」

 

「最高に」

 

そのまま、熱烈なキスをした。

マキマちゃんへ見せつけるように、じっくりと時間をかけて。

 

「支配。これは嫌味でも何でもなく言うんだけど…寄り添ってくれる理解者が居るって、とても素敵なことだよ」

 

名残惜しそうに、舌を出したまま口を離したシーちゃんが断言する。

 

「寄り添ってくれる、理解者…」

 

天井へと視線を戻したマキマは、何を想っているのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソ連某所。

辺り一面に銀が広がる、森の中。

防寒着に身を包み、淡々と歩き回る1組の男女の姿があった。

恐らくは狩りの最中であろうか?

男の方は、弓矢を所持していた。

 

「師匠、キツネ狩りに何の意味が?」

 

ちょうど獲物を発見し、見事一撃で射殺した折

男の疑問に、師匠と呼ばれた女が口を開くものの――

 

「トーリカ、命を殺した感覚はありますか?」

 

どうやら、まともに会話する気が無いらしい。

男…トーリカも、それが日常であるかのようにサラリと受け流す。

 

「そうですね…弦の振動しか感じませんね」

 

「そうですか」

 

トーリカは狐だったものに近づくと

慣れた手つきで皮を剥いでいく。

肉塊と化したソレを軽快に担いだ時、師匠より再度の一方的な質問が飛んだ。

 

「トーリカ、命を殺した感覚はありました?」

 

「…毛皮は家の仕事で剥いでましたからね。特に何も…」

 

これより始まるは、狩りのシーズン。

次なる脅威が、何本もの矢じりとなり

爆発的なスピードで日本へ、デンジの心臓を目掛けて、音もなく飛来しようとしていた。

*1
「うぇ」

*2
「と言いなさい」

*3
「目です」

*4
感想欄で当てている方がいらっしゃいました。正解!!正解!!正解!!正解!!




宇枝 慈郎:オリ主。ついさっき金髪の変なガキに上着をパクられた。東京が一体何をしたっていうんだ。

死の悪魔:最強の悪魔。食事も恋愛もぐァつぐァつ行く肉食系ライダー。いっぱい食べる君が好き。

マキマ:支配の悪魔。危うく"にゅあ~"が断末魔になるところだった。分からせられて無意識で喜んでいる。

狂犬病の悪魔:オリ悪魔。すっかり弱体化してネズミのような姿に。致死率99パー越えの無法な力は健在。

トーリカ:ソ連のデビルハンター。超高校級の極道。終末期ケア専門士。

師匠:ソ連のデビルハンター。ゲッター線照射障害を起こしている。活字中毒。

マキマどうする?

  • 自分は生姜焼きが好き
  • 自分は回転寿司が好き
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