公安襲撃事件の首魁たる、アカネは死に
虎の子のサムライソードも、蘇生手段を失ってお縄となり
ダメ押しと言わんばかりに、マキマは原作めいた*1残敵掃討を*2敢行したため*3
烏合の衆と化していた犯人たちは、文字通り皆殺しとなった。
(恐らくは)トカゲの尻尾切りを兼ねているとはいえ、血も涙もない。
少なくない犠牲を払いながらも、何とか危機を乗り切った公安。
職員が事後処理に追われる中で、ある時驚愕のニュースが組織を貫いた。
――マキマが倒れた、と。
むべなるかな、デンジ・パワー・アキ・姫野をはじめ
デビルハンター東京本部は、蜂の巣をつついたような大騒ぎとなった。
裏で特に動揺していたアキをちゃっかり見つけたデンジが
姫野にその事実を密告し、一緒にいるための時間を作る口実の起点にしたり
一時的にとはいえ、合法的に定期瀉血を逃れる形となったパワーが
プチ暴走して事案になりかけたり(襲撃犯逮捕の件と相殺された)
ドミノ倒し同然に、付随する様々なことも起きた。
しかし、騒げど騒げどマキマが復帰する気配は一向になく
殺到する、何が起きたのかという問い合わせにも
知らぬ存ぜぬが貫かれるばかり。
唯一面会を赦された者らの素性が、身内ですら無かったという事実は
デビルハンターたちに、要らぬ憶測の種を萌芽させるばかりであったが…。
一体誰が、想像するであろうか。
内部へゴシップの蔓延を許す方が、ずっとマシだとみなされるような真実が存在することを。
面会人こそが下手人であり、正しく身内であり
世間を賑わすライダーの正体である、などという頭の悪すぎる与太話を。
都内の某病院。
白く静謐な室内に、3人の男女が居た。
「…やってくれましたね、死の悪魔。まさか、狂犬病の悪魔*4を私の飼い犬たちに嗾けるとは」
「…」
「やってくれましたね、シーちゃん。まさか、狂犬病の悪魔を私の飼い犬たちに嗾けるとは」
「実行したのは私と落下だけど、発案者はシー君」
俺には一瞥もくれず、マキマちゃんを見据えるシーちゃん。
ごく僅かな表情の変化だったが、末妹を憐れんでいるように見えた。
「…契約の力で、マキマちゃんは自分の死を日本人に押し付けることが出来る。だから、アンタを真正面から無力化するには1億回以上殺さなきゃいけない。手間も代償もナンセンス極まりない」
一息。
「けど、契約には穴があった。例えばマキマちゃんへの害意が何者にもないまま、勝手に致命傷を負った場合。ダメージは肩代わりさせられない…今回みたいにね」
「狂犬病の悪魔が攻撃したのはあくまで
あちらこちらが麻痺した身体でベッドに臥せるマキマちゃんは、顔だけを俺の方に向けた。
「1つ…いいえ、2つほどよろしいでしょうか?何故、狂犬病の悪魔の力を抑えているのです?弱体化しているとはいえ、その気になればもっと早く私を殺せているでしょうに。何故、私に面会など求めたのです?私の権能を理解しているなら、極力近づきたくなどないハズ…貴方は他人にマウントを取るタイプにも見えません」
俺は思わず肩をすくめた。
「答えは1つだ。こうして、マキマちゃんとお話がしたかったから。ちなみに、少なくとも今は支配の力なんて怖くもなんともないね。ソレ、自分より程度が低いと思えなきゃ発動できない制約付きでしょ?まんまとしてやられた相手を、操り人形になんて出来っこない」
「…回答になっていませんよ」
「なっていますとも…さて、マキマちゃん。シーちゃんに聞けば分かるであろう、アンタの力についてまでならともかく。俺みたいな一介の民間のデビルハンターごときが、何で契約についてまで把握していたのでしょーか?」
「それは…」
事実は小説より奇なり。
俺は、マキマちゃんに滔々と語った。
これまでのこと、これからのことを
ある程度かいつまみつつも。
「にわかには、到底信じられません。ですが辻褄は完璧に合いますし、何より――」
「生々しすぎて作り話に聞こえない、って?そりゃそうだろうね。平行世界の未来とはいえ、自分のことについては特に」
知らん赤の他人から、突然自分の黒歴史を暴露されたようなものである。
本人としてはたまったものではないだろう。
その証拠(?)に、気づいているのかいないのか、マキマちゃんの顔は真っ赤になっていた。
「というわけで、マキマちゃんの計画は公私共に破綻しまーす。チェンソーマンはn」
「や、やめ…っく」
顔中から漏れ出す蒸気を幻視するほどの、羞恥と狼狽を見せるマキマちゃん。
シーちゃんと違ってポーカーフェイスを維持できないのは、何だかんだで末っ子感あるなあ…等と呑気に考える。
「シー君。私の妹、面白い娘でしょ?」
「シーちゃん!!」
茶化した結果、マキマちゃんがガチトーンでキレたため
シーちゃんは両手の人差し指で、口元にサッと×印を作った。
なにそれかわいい。
「まあ、だから。今はそれどころじゃないだろうけど、俺とシーちゃんの計画を邪魔しないでくれってことが言いたかったんだ。少しでも人類のことを想ってるなら…頼むよ」
これは暗に、マキマちゃんへ2択を迫っているに等しかった。
あくまで、彼女が罹患しているのは"狂犬病の悪魔の能力による狂犬病"だ。
現実にはコンマ数パーセントほどの可能性が存在する、自然治癒がありえない。
俺の要求を呑んで(能力を解除してもらって)マキマとして生き永らえるか?
俺の要求を拒んで(能力に侵されたまま死に)ナユタとして生まれ変わるか?
「俺としては、光のオタクになることをお勧めしとく。クソみたいな世界でスカッと生きるには、魂込めた推し活が一番だね…っと」
言いつつ、シーちゃんを抱き寄せる。
「シーちゃん。今、幸せ?」
「最高に」
そのまま、熱烈なキスをした。
マキマちゃんへ見せつけるように、じっくりと時間をかけて。
「支配。これは嫌味でも何でもなく言うんだけど…寄り添ってくれる理解者が居るって、とても素敵なことだよ」
名残惜しそうに、舌を出したまま口を離したシーちゃんが断言する。
「寄り添ってくれる、理解者…」
天井へと視線を戻したマキマは、何を想っているのだろうか?
*
ソ連某所。
辺り一面に銀が広がる、森の中。
防寒着に身を包み、淡々と歩き回る1組の男女の姿があった。
恐らくは狩りの最中であろうか?
男の方は、弓矢を所持していた。
「師匠、キツネ狩りに何の意味が?」
ちょうど獲物を発見し、見事一撃で射殺した折
男の疑問に、師匠と呼ばれた女が口を開くものの――
「トーリカ、命を殺した感覚はありますか?」
どうやら、まともに会話する気が無いらしい。
男…トーリカも、それが日常であるかのようにサラリと受け流す。
「そうですね…弦の振動しか感じませんね」
「そうですか」
トーリカは狐だったものに近づくと
慣れた手つきで皮を剥いでいく。
肉塊と化したソレを軽快に担いだ時、師匠より再度の一方的な質問が飛んだ。
「トーリカ、命を殺した感覚はありました?」
「…毛皮は家の仕事で剥いでましたからね。特に何も…」
これより始まるは、狩りのシーズン。
次なる脅威が、何本もの矢じりとなり
爆発的なスピードで日本へ、デンジの心臓を目掛けて、音もなく飛来しようとしていた。
宇枝 慈郎:オリ主。ついさっき金髪の変なガキに上着をパクられた。東京が一体何をしたっていうんだ。
死の悪魔:最強の悪魔。食事も恋愛もぐァつぐァつ行く肉食系ライダー。いっぱい食べる君が好き。
マキマ:支配の悪魔。危うく"にゅあ~"が断末魔になるところだった。分からせられて無意識で喜んでいる。
狂犬病の悪魔:オリ悪魔。すっかり弱体化してネズミのような姿に。致死率99パー越えの無法な力は健在。
トーリカ:ソ連のデビルハンター。超高校級の極道。終末期ケア専門士。
師匠:ソ連のデビルハンター。ゲッター線照射障害を起こしている。活字中毒。
マキマどうする?
-
自分は生姜焼きが好き
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自分は回転寿司が好き