植物っぽい種族になって麦わらの一味の船に乗ろう!   作:九条空

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船の上①

 船に乗り、船にぼく専用の花壇が作られるのはあっという間だった。

 こんなに親切にしてもらえるとなると、ぼくも彼らにいろんなことをしてあげたいという気持ちになってくる。

 

 ぼくの花壇の前で、ウソップとチョッパーが植わっているぼくをしげしげと見ている。

 興味深そうにしているが、彼らが飽きるのも時間の問題だろう。

 なにしろぼくは植物で、植物というのは大して動いていない時間の方が長いからだ。

 なにかしてあげたほうがいいかな。

 

「いろいろ役に立てると思うよお。ぼくら人気者だったみたいだしねえ」

 

 というわけで、本来ならきっと誰にも言わず、秘めておくべき内容を話すことにした。

 ロビンはぼくらの種族に詳しそうだし、ぼくが話さなくても知っているのかもしれない。

 だとすればやっぱり、ぼくの口から語るべきであろう。

 それが誠意というもののような気がする。

 

 あと、特に何も考えていなかったので、ルフィには見せちゃったし。

 

 ぼくは腕を木の枝にして、ゆっくり伸ばした。

 それだけで「おお~!」という歓声が上がるが、まだまだこれからだ。

 

 オレンジ、マスカット、栗、グレープフルーツ、パイナップル。

 たぶん人間が食べられたはずの果物を色々生らせた。

 

「食べていいよお」

「すっげえ~!」

 

 目を輝かせ、ウソップとチョッパーは果物をもぎとった。

 皮をむいてむしゃむしゃ食べている。

 おいしそうに食べてくれて、ぼくも嬉しい気持ちだ。

 

「うめえ! すげェなお前」

「えへへ」

 

 褒められて、素直に嬉しかった。

 こういった交流は生まれてこのかたしたことがない。

 ぼくは植物たちと、ある程度の意思疎通ができるが、植物にはあんまり褒め合うという文化がないのだ。

 

「お前がいたら果物食い放題ってことか!?」

「うん。ぼくら、歩く果樹園とか、そういう扱いされてたみたいだからねえ」

「おおう……」

 

 ウソップに気まずい顔をさせてしまった。

 ぼくは何かまずいことを言っただろうか。ただ真実を言っただけのはずだが。

 

「しかしすげェなァ、これ無限に出せんのか?」

「無限ではないねえ。生命力使って生らしてるし」

「え! お前、命を削って……!?」

 

 チョッパーに深刻な表情をさせてしまったので、ぼくは慌てて――といっても植物にとっての慌てるは、人間にとってはとてものんびりに見えるが――否定した。

 

「寿命とかは使ってないよお。人間的に言うとどんな感じかなあ……ああ、涙を流すとかかなあ? いつでもできるけど、ずっとやってると疲れるかなあってくらいだよお」

 

 ぼくのたとえは、あまりよくなかったらしい。

 チョッパーとウソップは慌てた。

 

「しんどいならやらなくていいぞ!?」

「平気だよお」

 

 ぼくらは種族的に、皆献身的であったようだ。

 ぼくの力で皆の腹を満たせると、ぼくの気持ちも満ちるのだ。

 

 トンタッタ族が皆正直者で騙されやすいように、ぼくらはついつい人に尽くしてしまうらしい。

 だから絶滅したのかもしれない。

 せめてトンタッタのように、どこぞに匿ってくれる国でも見つけられていたら違っていたのかもしれないが――あるいはぼくが知らないだけで、どこかにぼくらの国があるのかもしれない。

 せっかく冒険に出るのだから、そういう希望を持って世界を旅するのもいいだろう。

 

「それからチョッパーには、これ」

 

 自分の髪の毛をかきあげる。

 ぼくが指で触った部分の髪の毛が変質して、緑色の草に変化した。

 こめかみのあたりからそれを千切って、チョッパーに渡す。

 受けとったチョッパーは草を検分して、驚いたようだった。

 

「これ、ちょうどなくなって補充しなきゃと思ってた薬草だ! な、なんでだ!?」

「きみの体からその匂いがしたから、必要なのかなあって思ったんだよ」 

「おれみたいに鼻もいいんだな!」

「チョッパーほどじゃないよお。植物以外のことは、あんまりわからないだろうしねえ」

 

 この場合の鼻が利く、嗅覚が鋭いというのは言葉通りの意味ではなく、察することができるという意味合いに近い。

 ああいう匂いのする植物はいくつかあるが、そのうち薬効が認められているのは1つだけだから特定できた。

 植物由来の薬に関しては、多くのことに協力できるだろう。

 貴重で高価な葉っぱや木の実も生らすことができるから、きっと節約になるはずだ。

 

「ぼくを船に乗せてよかったなあって、ちょっとくらいは思ってくれた?」

「いや、ちょっとどころではねえ」

「えっと、あんまり要らなかったあ……?」

「違う違う、逆逆。役に立ちすぎだ」

「役に立ちすぎると、困ることがある?」

「うーん……困るこたあねえけれども……」

 

 ウソップは顎に手を当てて少し考え事をした。

 こういうとき、人間のコミュニケーションって難しいなあ。

 植物相手だったら、考えていることまで全部すぐにわかるのに。

 

 ウソップはニカッと笑って、ぼくの背中をぽんと叩いた。

 

「おれたち仲間なんだからよ、もっとリラックスして過ごしていいんだぜ!」

「させてもらってるよお~。ウソップ、花壇つくってくれてありがとうねえ」

「おう! 困ってることあればすぐ言えよ!」

 

 とても親切にしてもらって嬉しいから、ぼくも親切にしてあげたいと思うのだ。

 ぼくはこの船と仲間たちが、もうすっかり大好きになっていた。

 




これは短編なんです、本当なんです。
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