アイドルマスター 私たちのM@STERPIECE!   作:なめこP

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第4話 強欲文民

「鹵獲しろだと!!?潜水艦を!!?北京が!!?」

「リィ国家主席からの直令だそうです」

「そ、そうか。聡明な主席は対日戦における潜水艦の重要性も理解しておられるのだな」

(あっぶな…)

 フーはリィの名を聞いた瞬間に大慌てでお世辞の消火剤を投下した。リィ体制になってからいつどこで密告されるかと言う恐怖が増長して敵わない、台湾侵攻反対派の軍上層部を大粛清しながら東南アジア全体から怒りを買わせるような行為を平然と実行できる奴が国民の首に縄を巻いているのだから現代の中国とは露骨なまでに病的な状態だと断ずる他なかった。政治委員どもの権限も肥大化してるから何をされるかたまったものではない。

(今度娘に漫画買うんだよ)

 そう思いながら彼は娘から貰ったペンに繋げてあるシャオヘイと言うキャラクターのキーホルダーを指で撫でることで彼は辛うじて冷静さを装いつつ周りから見たら自身の言葉が嘘でないと証明するために大急ぎで鹵獲命令実行への対策を考えた。

「潜水艦の深度は?」

「詳細は今現在」

 その時、艦隊頭上を航空機が見下ろす様に堂々とY-9型対潜哨戒機が空を切り裂いた。

「今更かよ」

「おせぇぞ」

 艦橋内の士官たちが各々恨み言を発露した、音紋が手に入らぬ以上は止むを得ぬ措置とは言え北京がアメリカと何某かの交渉をしたせいか到着があまりに遅すぎる。

「よし、準備急げ!各艦に連絡!錨ならびにロープを艦艇から繋げたまま海中への投下を準備!敵原子力潜水艦の鹵獲を何としでも成し遂げる!」

 フーは頭を切り替え今後の問題を考えて導き出した対策を命じた、潜水艦を鹵獲すると言う最低最悪な命令を果たす為に可能な事と潜水艦の弱点、それらを総合した命令だ。

「対潜哨戒機、敵潜位置知らせ!」

〈こちらY-9六番機、敵潜水艦の位置を確認!艦隊方位1-6-0!距離10300深度100メートルに強力な磁気反応を確認!直進のコースを執る模様!反応は通常動力艦にあらず!〉

「六番機へ告ぐ、敵潜水艦の位置をリアルタイムで知らせ続けろ。我々はこれより敵潜水艦へと向かう!ただいまよりノース・ポール鹵獲作戦を開始する!面舵一杯最大戦速!」

 思考が纏まり命令を下令するといよいよ自らの戦い方を定められた艦隊は迷いと言う白波を蹴散らかし一気に船足を上げ始める。

001型戦艦寮寧はディーゼル機関を、002型戦艦山東はガスタービンをそれぞれ追加駆動させ始めた。六軸あるスクリューはその回転数を上昇させていき波を切り裂く艦首からの白波は一気に高まり始める、艦隊はその進路をノース・ポールの凄む海域へと転進した。

その一方で戦艦含めた各艦は錨鎖庫から錨を次々と落とし始める、フリゲート艦に至ってはプラスチックで出来た鎖に重りを結び巻き海中へと沈めて行く。軍艦が釣りでもしているかのようなシュールな光景が展開し始めた、これがもし夜ならば艦橋の明かりによってイカ漁とでも錯覚されるだろう。

 この奇抜奇妙な光景を前にフーは北京からの命令を憎悪するしかなかった、どうにも今回はお得意の艦砲を使う好機は無く奇抜で不慣れな戦い方を強いらされそうだからだ。

 

都内315プロ事務所

 

「うっわ!なんすかこれ!」

「ぎゃおん!」

 ダンスのレッスン室では休憩中だった伊瀬谷四季の素っ頓狂な声が響いた。秋月涼がその声に驚き彼もまた素っ頓狂な声を出し互いの驚きを共鳴しあう。

「涼ちんこれ見るっす!」

「いきなり大声ださないでよ、びっくりするな~」

 そう言いながらも差し出されたスマホを見ると恐ろしい光景が流れている。

 天安門広場でミサイルらしきものを載せた大型車両が人々を轢殺しながら停車、降車した軍人たちが死体を踏みつけながら人々を射殺しつつその背後でミサイルが発射準備を始める様子が克明に映っている。ミサイルが鎌首を上げるように角度を付けて行き完全な垂直になるあたりで映像は途絶えた。

「これ、AI生成じゃないよね?」

「だとしても細かすぎるっす、コメント欄も同じこと書かれてるっす…」

“人や車両に破綻がない、これたぶん本物だ”“また何か悪だくみかよあの国は”“天安門でこれするってリィ政権ヤバすぎだろ”“お得意の『AI合成による国家名誉棄損』投稿来たぁあああああ!”“Weiboサーバーダウンしてて草”“いやちょっとシャレにならないだろこれ…”“何人死んだ…”“頼むから平和になってくれ”

 そんなコメントで溢れかえっていた、中国政府はどうやらこの映像を「海外勢力によるAI生成映像」という線で蹴りを点けながらこの映像の削除要請をSNSの会社に次々と申請しているようだ。しかしネットの海で一度映像や写真が広がれば根絶する事は出来ない。

「なんか、変なこと起きてないよね?」

「もしかして撃つつもりだったんすかね?」

「怖い事言わないでよ、それじゃ核戦争だよ…」

 最近はどこもかしこもきな臭い、ロシアとウクライナは戦争が終わる気配が無いしアメリカ経済は『ダウンフォール』以降いつまで経っても改善されず毎日20件以上の銃関連事件が起きている、しかも最近は大統領の過激なパフォーマンスが原因で日本でも反米デモが起きている、一方の曽山政権は有能で成果も出しているがアイドルたちの間では「よく分からないけど不気味な感じがする」と言う戦々恐々の空気一色だ。

何と言うか世界はこんな物騒だったのか、そんな失望を感じる日々だ。

「ねぇ、最近の世界ってブレーキ壊しちゃった感じするよね」

「そ、そうすっね」

「練習、しよっか」

 天安門での映像の一場面を切り取ったスクリーンショットが別アカウントから流れて来る、それは英語圏からのものなのだが今度はしっかりと“AI生成ではない根拠”が解説付きで貼られている。

 二人はそれが完全に視界に入ってしまうまえにSNSのアプリを閉じた。嫌な事や不安を煽る事態が多すぎる。

同じアカウントから南海艦隊の001型戦艦『寮寧』と002型戦艦『山東』そしてその他フリゲート艦多数が湛江の港から姿を消したことを示唆する衛星画像付き解説投稿を見ることなんぞ終ぞなかった。

 

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