完璧すぎて疲れる執事は勇者の末裔   作:gp真白

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完璧執事の観察記録:弟の成長数式

 

あれから数日が経過したが、僕の日常は変わらない。要塞に滞在するお嬢様(アリア様)の安息の維持という最重要執務を遂行しつつ、学園からの非論理的な依頼を完璧に処理する日々だ。

 

ふと、情報の整理のために学園のデータを漁っている際に、たまたま目にした資料の中に**「グリムレポート」**という一部の文書の記載があった。

 

グリム様はアリア様の弟という立場でばかり注目されるが、そういえば彼もまた、若くして天才と謳われる程の人材であり、学内では一二を争う人気を持っていると記憶している。

 

僕は、彼の女性関係については良く知らないが、あの師匠(マスター)にして、あの弟子(グリム様)である。半年の修行で非論理的な根性を身につけた彼が、普通の人と数理的に釣り合うとは到底思えない、と演算した。彼が選ぶ相手も、きっと奇妙で、完璧な不完全さを秘めているのだろう。

 

完璧な精神統一

その夜、要塞に戻り、お嬢様の部屋で寛ぎながら、そのグリム様の人気と恋愛の可能性について伝えてみた。

 

「グリム様が、ですか?まるで夢を見てるみたいだわ!」

 

お嬢様は、手を叩いて笑っていた。彼女の記憶の中の弟は、未だに癇癪を起こし、決闘を申し込んでくる**「不完全な変数」**のままなのだろう。

 

確かに、僕が最初にグリム様と会った頃は、彼はいつも怒り心頭で、その感情的な揺らぎが彼の魔力操作の数式を常に不安定にしていた。

しかし、半年間の修行を経て、今の僕の視点から見ると、彼はだいぶ精神統一して心の制御を行えていると感じる。あの怒りや反発心を、魔力的なリソースに変換できるようになった。彼の成長の数式は、実に美しい。

 

師と弟子の絆

そして、もう一つ、僕の数理的な観察において顕著な変化がある。

時折、僕の母である喫茶店のマスターから、裏の執務や王都の情勢についての仕事の依頼について話す以外にも、グリム様のことについて頻繁に話すようになったのだ。

 

「グリム様は、最近コーヒー豆の選定について非論理的な質問をしてくるのよ」「あの体術なら、今度ホムンクルスの殲滅に連れて行っても大丈夫かしら」といった内容だ。

 

そして、先日、通信魔道具越しに母が口にした一言が、僕の家族の数式に新たな定数を加えた。

 

「口では色々言っても、あの馬鹿な弟子は、今では大切な家族のように感じていますよ」

 

マスターは、裏切り者の襲撃で瀕死の重傷を負っても民間人を守るような、不完全に優しい勇者だ。その母が**「家族」**と口にした言葉は、数理的な事実として極めて重い。

 

僕もまた、非論理的な決闘者として現れたグリム様を、大切な家族の一員なのだろうと感じている。

 

グリム様は、僕の執務を不安定化させる非論理的な変数から、僕の安息を維持してくれる**「裏の執事」**という、最も完璧な家族へと昇華したのだ。

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