完璧すぎて疲れる執事は勇者の末裔   作:gp真白

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文明滅亡前の記憶

 

その日の夜、シエルはいつもの喫茶店でマスターと向かい合い、グリムは不機嫌そうに離れた席に座っていた。テーブルの上には、グリムが持ち帰ったオーパーツの水晶のスケッチが広げられている。

 

「なるほど。つまりこの水晶は古代の文字を羅列するだけでなく、特定の元素に反応する何かしらのオブジェクトということですね」シエルはコーヒーを一口飲み、冷静に分析した。

 

「解析装置として使っていたんでしょうが、こんな物を古代に生きる人たちが使っているなんて、とてもじゃないけど今の技術では考えられない程の技術を感じますね。まるで文明が滅びる前の世界を見ているようだ」

 

マスターは、リリアンヌ姫から借りている勇者の一族の文献に目を通しながら、静かに頷いた。

「その考えは間違ってないと思うぞ」

 

「なんでだよ」グリムが口を挟んだ。

 

進化前の人類

マスターは文献から顔を上げ、グリムに説明した。「この世界は元々、精霊たちとエルフ、後は元素に反応する魔物たちが蔓延っていた世界だったんだ。とてもじゃないが、人間が住める世界ではなかった」

 

「人間が錬金術を発明するまでの文明は、ここ最近の話だ。そして、勇者の一族は、人間の進化する前の初期人類だと言われているんだ」

 

マスターがそう言うと、グリムは「ふーん」と答えながら、まるで珍しい動物でも見るようにマスターを見ていた。

 

「僕たち勇者の一族は、猿の進化系ではないですよ」シエルが冷静に突っ込んだ。

 

「おい、お前、私をなんだと思ってんだ」マスターはグリムに鋭い睨みを効かせた。

 

「なんだよ、いつもはゴリラみたいな身体能力でボコスカ殴ってくるババアが、本当に普通の人間じゃないんだって思っただけだよ」グリムが口を滑らせた瞬間、マスターの鉄拳が炸裂した。

ゴンッ!ゴンッ!

 

マスターに頭をボコボコにされているグリムを尻目に、シエルはコーヒーを飲みながら言った。「女性には紳士になった方が良いですよ、グリム」

 

王都に隠されたシンボル

その時、コーヒーの表面に反射した光が、カップの側面に描かれた絵柄を際立たせた。シエルはハッとして、その古代のシンボルのような絵をじっと見つめた。

 

(この絵は、まるで何かの生物を表しているようだ……)シエルはそう呟くと、突然、あることを思い出した。

 

(リリアンヌ姫の通う学校のシンボルを思い出しました。王都の直系で建てられた公立の学園だったはずだ。とすれば、王宮に行けばこの模様のことについて、分かることがあるかもしれない。)

 

シエルはマスターに文献の内容を尋ねた。「文献の内容で、理解できたことはありますか?」

 

「まあ、ぼちぼちかな。知ってることもあるけど、初耳のことも色々書いてある。ただ気になっているのが一つあって、少し考えているんだよ」

 

マスターはシエルに文献の一部を指差した。そこには**「賢者の森から勇者の一族が産まれた」**という伝承が記されていた。

 

存在そのものが世界のタブー

「古老の言っていたホムンクルスとはまた別の意味で分からないことがある……。勇者の一族は存在そのものが世界のタブーと言えるほど隠されてきた存在だ。ホムンクルスなんてもっともそれに近い筈だ」

 

シエルは、勇者一族とビアスのホムンクルスが、世界の歴史の闇で対の関係にあるのではないかと感じた。

 

「そう思いながら、古老のいる賢者の森にマスターも行ってみますか?」

マスターは資料とシエルを交互に見て、何かを深く考えているようだった。

「ふむ……色々と調べる必要がありそうだな」

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