完璧すぎて疲れる執事は勇者の末裔   作:gp真白

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釣り堀の賢者と命の対価

 

一行を乗せた馬車が止まると、目の前には砂漠の真ん中にあるとは信じがたい、青く澄んだ水をたたえたオアシスが広がっていた。周囲は不自然なほど濃い緑に囲まれ、魔力の波長が静かに、しかし力強く流れていた。

 

オアシスの畔には、釣り竿を垂らした一人の男がいた。黒衣を纏い、背が高く、耳の先が僅かに尖っている。彼こそが、古老さえも超える知識を持つ七賢者の弟子、**「緑の錬金術師」**だった。

 

緑の錬金術師の歓迎

 

「ようこそ、命の対価を背負った勇者たちよ」

 

緑の錬金術師は振り返らず、静かに声をかけた。彼の手元では、釣り糸が水面をわずかに揺らしている。

 

マスターは警戒しつつ、一歩踏み出した。「我々が誰だか知っているようだな」

 

「知らぬわけがない」錬金術師は竿を上げ、小魚を釣り上げた。「私は七賢者の弟子として、この世界を創造の理によって見守る役割を担っている。特に、破壊の道を歩む者と、それに抗う生命の番人であるあなた方には、強い関心がある」

 

シエルは核心に迫った。「単刀直入に伺います。僕たちの短命の呪いは、七賢者の残した数式ですか? そして、それを解く鍵を、あなたは知っているのですか?」

 

緑の錬金術師は魚を水に返し、ゆっくりと立ち上がった。その双眸は、シエルたちの体の奥底を見透かすように深い緑色をしていた。

 

「短命の呪いは、呪いではない。あれは**安全装置(セーフティ)**だ」

 

呪いではなく、安全装置

 

この予期せぬ言葉に、グリムが声を荒げた。「安全装置だと!? 毎年命を削られ、戦いの度に死期を早める力が、どこが安全なんだ!」

 

「静かに」マスターがグリムを制した。

 

緑の錬金術師は静かに続けた。

 

「あなた方の究極奥義は、世界を創り替えるほどの絶対的な力を持つ。だが、その力は命の理を無視するほど巨大だ。七賢者は、その力を世界が受け止めるために、あえて制御の鍵を設け、『力の代償』として生命エネルギーを設定した」

 

シエルは息を飲んだ。「...つまり、僕たちの命こそが、究極奥義を暴走させないための魔力抑制剤だというのか」

 

「その通り。そして、その制御の鍵は七賢者の秘宝に隠されている。特に、武術大会の賞品であるマモン王国の秘宝は、命の代償を別のエネルギー源、すなわち**『物質の極致』へと変換**するための鍵だ」

 

取引:七賢者の知恵

緑の錬金術師は、目を細めてシエルたちを見た。「七賢者の秘宝を手に入れれば、あなた方は命を削らずに戦う最初のステップを踏めるだろう。しかし、ビアスとその七天のホムンクルスは、それを阻止するために全力を尽くす」

マスターが尋ねた。「あなたがそこまで知っているなら、なぜ我々を助け、ビアスを討たない?」

 

「私は創造の理を護る者。破壊の理を直接討つことは、世界の均衡を崩す。だが、あなた方には助力しよう。マモン王国の武術大会に出る前に、あなた方に生命錬金術の初歩として、**『体内の魔力循環を一時的に命の対価から切り離す方法』**を教えよう」

 

彼は静かに指を立てた。「ただし、対価はもらう。あなた方がマモン王から手に入れる秘宝に関する情報を、私に全て開示すること。そして、私に釣り餌を持ってくること」

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