完璧すぎて疲れる執事は勇者の末裔   作:gp真白

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涙の別れと、マモン王の「貪欲」な取引

 

一連の七天ホムンクルスとの激戦と、短命の呪いの克服という歴史的な騒動が収束した夜、マモン王直々の盛大な祝宴が宮殿で催された。

 

宿での静かな夜と「本当の別れ」

アリア様は体調が優れないとして、宴を欠席し、シエルも付き添いで宿に戻っていた。別室の静かな空間で、シエルはアリア様のために淹れた温かい紅茶をゆっくりと飲んでいた。

 

アリア様が、不安そうにシエルを見つめる。

「シエル、もう本当に勇者の呪いで寿命が縮むことはないの?」

その問いに、シエルは縦に首を振る。その瞬間、シエルは内心で少し困った、と思った。

 

この事実が王国で知れ渡れば、今のリリアンヌ姫の立場は大きく変わるだろう。彼女はもはや**「呪われた勇者の婿」ではなく、全く新しい存在として世界に認知される。それは、自分たち勇者の一族が王族から離れる**ことを求めてきた以上、仕方がないのかもしれない。

 

しかし、それはアリア様との関わりが、これ以上無くなるという証でもあった。アリア様自身がそれを良く理解しているのに、自分では何もできないという虚無感が、シエルの胸にあった。

 

そんな中、アリア様はシエルのために涙を流していた。

 

「良かった……本当に……良かった……」

 

声にもならない声でそう言いながら、アリア様はシエルに抱きつき、その夜はずっと泣かれていた。

 

本当の別れがやがて来ることをアリア様は理解している。だが、それでも自分のことで泣いてくれる人が、母親以外に居てくれることに、心の中で嬉しい気持ちでシエルはいっぱいになった。

 

そして、**「この方を絶対に守らなければいけない。何をしてもこの方だけは、自分がホムンクルスから守ってあげなければいけない」**と、心から感じたシエルだった。

 

宮殿での「貪欲」な宴会

一方、マモン王の宮殿では、大宴会が続いていた。

グリムはマモン王に切り込んだ。

 

「なあ、ここに来る途中、石油で出来た遣いを放ったの、マモン王だろ?なんであんなことしたんだよ」

 

「貴様等が来ることは緑の錬金術師殿から聞いていてな。ホムンクルスが来ることを想定して開く大会に、貴様等がどれだけ踊れるか試したかったのだよ」

**マスター(シズク)**は、呆れたように笑う。

 

「そんなことだと思ったよ」

 

「今宵は宴の席だ!飲め、飲め!」

 

マスターは相当お酒に強いらしいが、実際見たことは無かったグリムは、乗り気でマモン王とガブガブ飲んでいる姿を見て「化け物だな」と思った。

 

「それにしてもマモン王はホムンクルスなのに、何故国を立ち上げ、しかも緑の錬金術師とコンタクトを取れているんだ? 普通、七天ともなれば他のホムンクルス達が黙ってないと思うが」とマスターが質問する。

 

マモン王は笑いながら答えた。

 

「あんな自分から破滅しようとする連中と心中なんてごめんだわ。石油のあるこの地域で金を儲けて、自分の欲の為に世界を牛耳る。それを踏まえて可能なら協力すると言う建前があるから今ここに居られるんだ。元々武術大会もその条件で開いただけだしな。本当は、緑の錬金術師に、今回景品になっていた七賢者の秘宝と呼ばれる癒しの円盤は、アイツの提案から成り立っている。『世界が変わる瞬間に立ち会いたいなら、言う通りに動け』とな。まあお陰で狙われるハメになったがな」

 

マモン王の言葉に、グリムは「全然笑えねえだろ!?」と言う。

 

「なーに、もしものことがあっても緑の錬金術師に復活してもらえるように頼んでるから大丈夫だ。その為に恩を売ってるからな」と、マモン王は平然とお酒を飲み続ける。

 

マスターは「恩を売ったって、何をしたんだよ」と聞くと、マモン王は小指を立ててこう言った。

 

「これだよ、これ。あいつ、歳の割に女を作ったことが無かったらしいからな。最初は**『作っても仕方がない』**と断られたが、一目惚れした女には弱かったようで、金と場所を貸したら簡単に条件を呑んでくれたわ。男とは単純な物だな」

 

マモン王が笑っている中、マスターは少し顔を下に向けて考えていた。

グリムは「ほらよ」とハンカチをマスターに渡す。マスターは驚いた表情を見せたが、にこっと口角を上げて、「弟子に気を遣われるとは、情け無い師匠だな」と笑っていた。

 

「これからシエルもマスターもどうするんだよ」と聞くと、マスターは「分からない。だがシエルだけは、王都のアリア様の城で働いて貰えるように色々手を回すよ」と言う。

 

グリムが「マスターは行くところあんのかよ」と聞くと、「そんなことお前が考えることじゃねーだろ」と笑って、グリムの首を絞めてきた。

 

マモン王は笑いながら「もっとやれ!」と煽り出し、無茶苦茶な中、朝を迎えた。

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