魔法少女?ノ魔女?裁判   作:まのさば脳焼き人間

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第11話「裁判という名のエマちゃん鑑賞会」

最初に切り出したのは、やはりレイアだった。

 

「さて、まずは何から話すべきかな。」

「それはもちろん、犯人を示す明確な証拠からですよ!」

「んなもんあったら苦労してねぇよ。」

「ふっふっふー。それがあるって言ったらどうします?」

「......死体に犯人の名前でも書いてあるってのか?」

 

確か、ノアの血で描かれたイラストが蝶だったからマーゴが犯人だとシェリーが発言する場面だったはず。

あまり俺が介入することもないし、ほとんど聞き流しておくか。

 

「死体の後ろ、そして周囲......そこに『血で描かれた』蝶の絵が描かれているんです!」

 

そうして会話を続けるのを見ていると、エマが意を決して会話の中にある矛盾点を指摘した。

 

「ちょっと待って。本当にそれは血が使われてるのかな。もしかして......ペンキとかの画材だったんじゃない?」

「いえ、血でしたよ!」

 

 

あっ...このエマはダメなエマだぁ...。

 

俺はエマの発言に対して軽い絶望を覚えてしまった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「あれはおそらく、被害者が最期まで持っていた『筆を使って』描かれた...」

「【筆で描かれた】ってシェリーちゃんは言うけど......本当にそうかな?」

「それは......たしかに、筆じゃなくても良いかもしれませんけど。」

「たしかにノアちゃんはスプレーアートをメインにしたアーティストだったけど......そういう事じゃないのよね?」

「......みんな【ドリッピング】ってs...」

「魔法だ。魔法を使って絵を描いたんだ。」

 

俺はエマの発言にかぶさるように発言した。

流石に軌道修正していかないと時間切れで冤罪処刑が発生してしまいかねない。

 

「ノアの魔法【液体を操作する魔法】で普段絵を描いているっぽいんだが...」

「あっ!」

「だからあの絵はノアが魔法で描いた絵に思える。それなら血で蝶の絵になるのも違和感はない。」

「......そもそも、ノアちゃんの出血量で筆を使って絵を描くのは物理的に難しいと思うわ。」

「......自分の血であんな大きな絵を描くなんて、普通なら不可能だろうね。ノアくんが死んだ後に他人によって描かれたと考えるのが自然だ。......しかし、この牢屋敷においては物理法則に次ぐ第二の法則......【魔法】という選択肢が入ってくるというわけだね。」

 

そこから議論は原作通りに展開していく。

よかった。俺でも軌道修正できたようだ。

 

シェリーがマーゴを殺人犯と発言し、その否定にノアの絵が描かれたアンアンのスケッチブックを提示し、そこから自殺ではないかとマーゴが議論を進め、エマが自殺の線は低いと論破していく。

 

おおよそ記憶している通りの原作の展開だ。

 

凶器にはボウガンの矢が使われて、そのボウガンは事件前日から壊れて使えなくなっていて、直接矢を刺す必要があって、犯人はハンナだとレイアに断言される。ただ、エマが殺人をした痕跡があるのは不自然だからハンナ以外にも殺人が出来る可能性があることを掲示して、シェリーが互いのアリバイを話し合う必要があると議論を進めた。

 

よしよし...ここも原作通りだな。

 

「でもそもそも【死亡推定時刻】がいつなのかもわからないんじゃないかしら?」

「死亡推定時刻...ね。」

 

俺はそう言って昨日撮影していたスマホの動画を見つめる。

これを流せば、議論はかなり進むだろう。しかし...流していいものなのだろうか?

 

「ん?なになに?...ルナっちなにみてるん?」

「うぇ!?」

 

考え事をしていたせいかすぐ近くにココがやってきていることに気が付かなかった。

ココの囚人番号は669番。すぐ隣だった。

 

「...なにその動画...ちょっと貸せ!」

 

そういってココが瞬時にスマホを奪い取る。俺はその早業に一切対応できず、無常にもココにスマホを奪い取られる。

 

「ほっほー。なるほどなるほど。え?ルナっちなんでこんな動画撮ってるん?」

「あら?あまり議論に関係ないお話は。」

「ありあり。超ありだって。...だってこいつ、ノアの死体を昨晩の時点で撮ってるんだよ。しかも血が流れてるからまだ死んでそんなに時間たってないよこれ......。」

 

そういってココがドン引きした目線をこちらに向ける。皆一様に疑いのまなざしを向けている。

 

「つまり、ルナちゃんは死亡推定時刻が確実にわかるものを所持していたってことよね?しかも映像に残してみんなに知らせずにこの場になるまで黙っていた...これは、怪しい行動になるんじゃないかしら?」

「死亡推定時刻を話し合う前に、その映像についていろいろ聞かせてもらおうか?この映像によって君が犯人か、もしくは共犯の可能性が出てきたのだからね。」

 

レイア、お前...自分よりも疑わしい奴が出たからって嬉々として追い詰めよって...。

 

「...はぁー。じゃあまずはその映像を撮った理由と、今まで黙ってた理由から話す。

まず、その映像を撮った理由については、その場で違和感があったからだ。丁度レイアが配信に行った後だ。」

「なるほど!スマホで撮った動画データには撮影した日時と時間が残りますが、確かに昨日の21時を指し示してますね!」

「てことは、城ケ崎が死んだのはそのすぐ前ってことになるわけか。」

「もしかしたら、彼がノアちゃんを『殺した』のかもしれないわ。」

 

パリーンッ!

 

「いや、その可能性は限りなく低いんじゃないかな?」

 

!?

幻聴か?確かに今反論成功の音が聞こえたような...

 

「だって考えてもみてよ。少なくともこの時間帯、ハンナちゃんやメルルちゃんが自分の監房にいるはずなんだ。

動画を撮影するだけならまだしも、殺人を起こすとなると、流石に準備する物音やノアちゃんの悲鳴が聞こえてくるんじゃないかな?」

「確かに...あの時何か監房の外で音がしたような様子はありませんでしたわ。」

「私たちも、特に気になる音は聞こえませんでした。」

「それに、この時間のすぐ前には、ルナちゃんがシャワー室から出てくるのを僕たちは見てるから、その映像の時間に殺人をすることは出来なかったと思うんだ。」

 

「...話を続けるぞ。違和感があったってのは、ノアの様子を見ようとしたときに視線がノアの監房に向けられなかったからだ。なんていうか見ることを無意識のうちに拒否しているような...そんな違和感。俺は嫌な予感がして、画面を見ないでノアたちの監房を撮影したんだ。手振れが酷かったり、ノアの死体に構わずカメラが動いているのもそれが原因だ。」

「ルナっちの撮影が下手だったんじゃないの?」

「茶々を入れるんじゃない。...それで、その後すぐに死体発見の連絡をゴクチョーにしようとしたんだけど、そこで『この時間に死体が発見されたら、いつ魔女裁判が開かれて、どれくらい捜査の時間があるのか』と考えたんだ。」

「あなた...もしかして自分が眠いからってノアさんの死体を放置して寝たわけじゃありませんわよね?」

「俺だけに限った話じゃないと思うぞ。初めての魔女裁判。初めての死体捜査。そんなものを一日の疲れが残っている状況で行ってもみろ。確実に見落としが発生するぞ。」

「そ...そんなことないと思うけど......」

「幸いにも俺一人しか死体は見つけてなかったからゴクチョーアナウンスは昨日流れなかったわけだけど。そこの配信者3人は死体を見つけずに自分の房へ戻っているようだしな。」

「うぐぅ!?......」

「あっはは......」

「にわかには信じられないね。」

「とにかく、死体に細工された様子もなさそうだったし、今日一日捜査に時間を割り当てられたことで...お前たちにもいろいろと見えてきたものがあるんじゃないか?」

「見えてきた...もの?」

「まぁ...その話はあとでするとして、今はノアの死亡推定時刻を確定させよう。検死とか全くやったことがない俺には詳しいことは言えないが、少なくとも20時から21時の間に死亡していることはこの映像から見ても明らかだ。」

 

そして、そこから何とか原作の流れ通りに軌道修正する。

マーゴ、アリサ、ナノカ、エマ、メルル、ハンナ、シェリー、そして俺の計8人がその時間帯娯楽室にいたことを証言する。

 

俺に至ってはシャワー利用時間も加味されて替えの服が無かったことからも犯行は現実的じゃないと擁護が入る。

 

「あ、...あてぃしとそこのザコ...ミリアも配信の準備をしていた時間っぽいしあてぃしらはアリバイあるわけ。」

「ザ...ザコ...」

「......あ、あら?なら、大半の人にアリバイがあるということですわね......?なら誰が......。」

「......おいおい、ふざけてんのか?長い時間アリバイがない奴、そこにひとりいるじゃねーか。」

「長い時間アリバイのない人......それって。......アンアンちゃ」

「蓮見レイア。お前だけがまだアリバイを証明できていない。」

 

...エマが間違えるのはもう目に見えていたからこそ、先んじて発言することができた。

 

「......そういえば、あの出来事があったあと、レイアさんとお会いしましたね......。」

「......レイアちゃん。あのときキミは......いったいどこで、何をしていたの......?」

 

「............。......さて、なんだったかな。申し訳ないけれど、あまり覚えていないよ。」

「......んな言い訳、通ると思ってんのか?」

「そんなことを言われても......困ったな。本当に覚えていないんだし......。疑われたままは気持ちが悪いし、少しだけ自己弁護させてもらおうかな。...その時私が何をしていたか......をね。」

 

(......俺がレイアのアリバイがないと指摘してしまったし...ここからは俺が指摘していくか。)

俺はかねてより嫌だった原作介入をここで行うことに決めた。

(いや、これは原作介入じゃない...エマの代わりに推理するふりをするだけだ。)

 

そこからレイアの自己弁護は始まっていく。




次回更新は11月6日になります。


Q.湯上がり直後のルナくんはどうだった?
A.桜◯◯マ「......エッチでした///」


主人公くんは描写されてないだけで原作キャラの好感度上昇行動をそれなりの頻度で取っています。主人公視点だとそれが当たり前の行動すぎて独白する必要もないくらい。

他キャラ視点でそれらが明らかになるのはもう少し先ですね。まずは第一裁判をお楽しみ下さい。
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