魔法少女?ノ魔女?裁判   作:まのさば脳焼き人間

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第15話「鉱山にはカナリアを連れてくらしいよ?」

 

「やっぱりこの塀、高いですねえ。うーん、破壊できればいいんですけど......」

 

翌日、牢屋敷の外に出たメンバーは塀の前にやってきていた。

 

 

俺を連れる形で。

 

 

確かここは大勢が動き回ると目立つからという理由で、エマ、シェリー、ミリアの3人しかいなかったはずだ。

 

「......なんで俺まで。」

「えー?だってルナさんの魔法は【未来予知】ですよね?私たちに危険なことがあった時、真っ先に知ることができるじゃないですか。あなたの未来予知が発動しない間は私たちは安全ってことです!!」

「......俺は炭鉱のカナリアかなんかか?」

「...炭鉱の...カナリア?ルナちゃん。なにそれ。」

「昔の炭鉱労働者は、一酸化炭素中毒にならないように、空気の乱れに敏感なカナリアを連れて鉱山を掘り進めたらしい。カナリアが鳴いたり様子がおかしくなったら空気が乱れ始めているからすぐに地上に避難したんだとよ。」

「まさしく今のルナさんの魔法が炭鉱のカナリアとしてピッタリですね!!」

「えっと...ルナくん?嫌ならおじさんたちに構わず自分のことをしてくれていいんだよ?」

「......別に嫌とは言ってない。解読作業も進まなかったから息抜きに今日くらいは付き合ってやる。」

「ありがとう、ルナちゃん。」

 

まぁ...俺がもし未来予知の魔法を有していて......原作を知らないか、嫌いであれば積極的について行ってあらゆる不幸からエマを含めてみんなを守ろうとしただろう。

それこそ、鉱山のカナリアの如く危険なものやことがあれば真っ先に知らせていけば殺人は起こらないだろう。

 

ただ、それはまのさばの原作崩壊にあたるし、何より黒幕のメルルが黙っちゃいないだろう。

 

 

 

もし、本物の【未来視】だった姉ちゃんが牢屋敷にいたら、どんなことが起こったんだろう?意外とメルルのこと、黒幕と知りながら仲良くしようとしてたり。

 

今考えても詮無いことか。

 

 

 

しばらくして、エマたち一行は湖畔へとたどり着いた。

そこには湖を見つめてため息をついているアリサがいた。

 

「アリサちゃん!ちょうど良かった、探してたんだ!」

「ああん?...天音もいるのかよ。ウチはおめえらに用はねえ。こっち来んな。特にハエ女。不快なんだよおめえ。」

「ハエじゃなくて妖精さんがいいです......。」

 

目の前でシェリーが気落ちしているのをミリアが慰めている。

...アリサのセリフに何か違和感があったような?...まあいいか。

 

「アリサちゃんに、力を貸してほしいんだ。ボクらの脱獄計画には、アリサちゃんが必要なんだ。」

「ウチが必要......?」

「ですです!エマさんが思いついたんです!【気球】を作ろうって!」

「マーゴちゃんが布を調達してきて、ハンナちゃんたちが裁縫してくれてる。」

「我々は気球を飛ばす場所を探してます!」

「見つかったらおしまいだからね......塀の近くで、かつ目立たないところじゃないと。」

「うん。そうやってみんなで力を合わせて気球作りをしてるんだ。ただ、問題は燃料で......。アリサちゃんの魔法、【発火】なら気球を浮かせることができるんじゃないかって。」

「ウチが必要......ウチが、必要......。」

 

不良娘が年相応に可愛い反応を見せるのはやめてくれ。俺に効く。

 

「あっさり落ちそうですね。ルナさんの件を考えても、だいぶチョロい気がします、彼女。」

「うん、そうだね。ボクももう少し踏み込んでみる。」

 

そう言ってアリサに詰め寄るエマ。エマアリはもしかしなくてもある。

 

「......アリサちゃんがボクたちには必要なんだ!アリサちゃんじゃなきゃダメなんだよ!」

「......ウ、ウチじゃなきゃ、ダメ......!?」

「そう、アリサちゃんにしかできないんだよ。みんなアリサちゃんのことを待ってる。」

「ウ、ウチを待ってる......!?」

「お願いアリサちゃん!」

 

ただ、一歩詰めたエマに対して、アリサは一歩引いていた。

 

「あれれ......。」

「......天音は......。天音はどうなんだよ。」

「......え?俺??」

 

俺はアリサについ聞き返してしまった。

おかしい。ここはアリサが「ウチが協力したら失敗する。」といって結局協力するのをやめるはずだ。

なんで俺の意思確認が必要なんだ?

 

「天音もここにいるってことは...桜羽達に協力するってことか?」

「いや俺は炭鉱のカナリア......。」

「...炭鉱の......カナリア。......チッ......そういうことかよ。」

「えっと...アリサちゃん?」

「ウチは協力しねえ。少なくとも、天音を引き連れた桜羽達なんかには。」

「そんな、アリサちゃん......!話を聞いて...。」

 

そう言ってアリサはエマたちとすれ違うように立ち去っていく。

 

「天音。おめえも利用されてばっかでいんなよ。」

「...えっ?」

 

 

パァン!!

 

一瞬。空気を裂くかのように銃声が轟き、ミリアの足元に銃弾が刺さった。

パン、パンパンッと続けざまに銃弾が撃たれてくる。

 

「ぎょえええええええぇ!!撃たれた!!撃たれたああああ!!死ぬうううううぅ!!!!」

「落ち着いてくださいミリアさん!当たってません!」

「チッ、看守が来てるぞ......!」

 

遠くから看守が鎌を掲げながら猛スピードでやってきている。

心なしか「私のナノちゃんに悪いことした子はいねぇがー!!」と聞こえてくるようだった。

 

「あ。あうあうあう、おじさん、腰ぬけちゃって......。」

「仕方ないですね。背負っていきます!よいしょっと!」

 

そのまま全力で駆け出していく。

 

「うわあああっ!!おじさんには速すぎるよおぉ~!!」

 

そして、ミリアが手を放してしまっていた。それは俺にはゆっくりとスローモーションのように見えた。

このバッドエンド選択肢があることを知っていたから走り出した瞬間から俺はシェリーの後ろでずっと待機していた。

 

(間にあえええええ!!!)

 

そして体を滑り込ませ、ミリアを抱きかかえた。お姫様だっこのような体勢になった。

 

パァン!

 

「......ぐっ!!」

 

ナノカの最後の抵抗なのか、一発の銃声が轟いた。

 

それは俺の脇腹を貫いていた。

 

幸いにも射線上にはミリアを含め、誰もいなかったから被害者は俺一人で済んだ。

 

ただ、あまりの痛さでミリアを手放しそうになる。

 

(気張れ!!俺は男だろう!!銃弾がなんだ!心臓や肺にダメージがいってないんだからまだ死ぬわけじゃない!)

 

「ルナくん!今銃声聞こえたんだけど!!すっごい青い顔してるけど大丈夫なの!?ねえ、ルナくん!!」

「うるせえ!今は黙って運ばれてろ!!!」

 

 

そうして牢屋敷へと逃げおおせた。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

【黒部ナノカ視点】

 

「はぁ...はぁ...はぁ...どうしようどうしようどうしよう......。」

 

当たっちゃった!!当たっちゃった!!当たっちゃった!!

 

どうしよう...彼に...天音ルナに当てるつもりなんて全くなかったのに...それどころかあれ以上撃つつもりなんてなかったのに......。

 

まるで銃が『こいつは消しておくべきだ』とでも言うかのように私の体が勝手に動かされて...彼に照準が合って...そのまま引き金を引いてしまった。最後の抵抗で照準をわずかにずらすことができたけれど...それでも彼に命中したのは見えてしまった。

 

「...私にはまだやるべきことはある...けど......。」

 

これでもし彼が死んでしまったら......潔く私がやったと自首しよう。

だって...彼は......。

いや...これ以上考えるのはよそう。夜までに彼の死亡通知が来なければ......誰にも見つからないように牢屋敷に行って彼の様子を見よう。

きっと医務室にいるはずだから。

 

 

”牢屋敷に残された魔法は、大体同じ境遇になった子たちへ向けた無差別なもの。それがナノカちゃんの大魔女や黒幕へと向けた指向性のある意志と絡み合うとこんなことも起きるのね......。とっても面白いわ。魔法って”

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

その後、医務室でメルルから止血の処置をしてもらえた。

 

「...こんなにひどい傷...後もう少し銃弾がずれていたり、時間が経っていたら...取返しのつかないところでした。」

「ああ...助かったよメルル。」

「しばらくは安静にしてください...血も足りていませんし、無理に動くと傷が開いてしまいます。」

「ご...ごめんよぉ~。おじさん...ルナくんに迷惑かけてしまったね。」

「いいって。死んでなければ魔女裁判も起こらないし...誰も不幸にならない。今回はメルルの処置が良かったから、俺もしばらく動けないくらいで済んでる。儲けもんだ。」

『これで貴様も医務室仲間だ。先輩であるわがはいに敬意を払うがよい。』

 

なんだこのアンアンの態度。心配なんかまったくしてなさそうな顔しやがって。

 

「足を引っ張ってばかりで、情けない......。おじさんのせいでアリサちゃんもいなくなったし。」

「おじさんのせいじゃありませんよ!あ、おじさんって言っちゃいました。なんだかミリアさんといると、脱力してしまいますね。ある意味癒し系ですよ。」

「う...うん。ルナちゃんが撃たれるまで大騒ぎしてたから、その姿にちょっと笑っちゃったよね。ルナちゃんが撃たれてそんな空気はなくなっちゃったけど。」

「うう......迷惑かけてごめんね......。」

 

「と...ところで、アリサさんの方はどうでしたか......?」

「あの後...ルナちゃんがナノカちゃんに撃たれてるのに気づいて...利用していたボクたちに激昂して話を一切聞かなくなっちゃったんだよね。」

「ここは一旦ルナさんの容態が回復するまで説得は待ちましょうか。ルナさん...説得に協力してください!」

 

は?

 

 

まてまて...ここは「話し合ったらなんとかなると思う。」といって前向きになるシーンじゃなかったか?

なんでこんなことになっているんだ?

 

 

もしかして...俺がいたからか?

俺がいるせいなのか?

 

「...あぁ...説得には協力する。俺が撃たれなければこんなことにはならなかったからな......。」

 

俺は原作通りに進むかどうか分からない暗闇に放り込まれたような感覚がして...元々血を流しすぎたのかふらつくようにベッドに倒れこんで眠った。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

【桜羽エマ視点】

ルナちゃんがベッドに倒れこんで眠ると、みんな自由に行動しだした。

 

(???)

 

ボクは、ふと視線を感じてベッドに座ってるアンアンちゃんに目を向けた。

アンアンちゃん、今ボクを見てた?

 

「アンアンちゃん。具合はどう?」

 

アンアンちゃんはぷいっとそっぽを向ける。

すると、ミリアちゃんはアンアンちゃんに近づいていった。

 

「アンアンちゃん。寝てばかりで暇だろう?おじさんと映画を見にいかないかい?」

「............いく。」

 

(えっ......!?)

アンアンちゃんは直にベッドを降り、ミリアちゃんの後ろをのろのろとついて行った。

 

「......はええ、ミリアさん、どうやってアンアンさんを手なずけたんでしょう?」

「う、うん。意外な組み合わせ......。」

「以前、一緒に医務室に向かうのを見かけたんですけど...そこから意気投合したみたい、です......。ミリアさんは大人なので、安心できるのかもしれませんね。」

「ああ、保護者みたいな感じでしょうか?」

「ミリアちゃん、優しいしね。」

(やっぱりミリアちゃんは黒幕じゃないと思う。)

 

「うん。やっぱり...アリサちゃんを探そうと思う。ルナちゃんのことは気がかりだけど、なんとかアリサちゃんを説得してみせるよ。」

「ルナさんは私の方で看病しようと思います。お、お...男の人なので......いろいろ大変だと思いますけど...頑張ります。エマさんたちも...無理はしないでくださいね。疲れたらいつでも休んでください。」

「では私は、マーゴさんの部屋に行きます。あ、でも私は来んなって言われてるんでしたぁ。邪魔にしかならないって、ひどいです!」

「あはは......。」

 

ボクたちの脱獄は今のところ順調に進んでいってる。アリサちゃんのことも...ルナちゃんのことも...ナノカちゃんのことも気がかりだけど、それでもきっとボクらは脱獄できるんだ!!

 

 

”ほら...あなたがいてもいなくても変わらないじゃない。だから自由に原作なんか気にせず楽しめばいいのに”

「......うるせぇ。」

 

 

その呟きはボクには聞こえなかった。

 




次回更新は11月12日になります。

原作だとシェリーがミリアを担いでからナノカは銃を撃つ事は止めてます。
本編の最後の足掻きはナノカの無意識行動ではなく、主人公の出自と魔法の副作用みたいなものです。

この情報だけで主人公の魔法とか設定とか予想ぶち抜きされても困るので感想には主人公の正体については書かないようよろしくお願いいたします。

次回
第16話「メルルはママだった?ママか。」
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