魔法少女?ノ魔女?裁判   作:まのさば脳焼き人間

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第16話「メルルはママだった?ママか。」

その夜。医務室にはナノカが来ていた。メルルが食事に行ったタイミングを見計らって来たのだろう。

 

「......その...ごめんなさい、撃ってしまって。体の方は大丈夫?......天音ルナ。」

「......ナノカか。こんくらいなんでもないさ。致命傷じゃなかったしメルルの処置も良かったし。」

「......そう...それは良かったわ。......その...えっと......本当に撃つつもりじゃ......」

「気にするな。お前はミリアに目掛けて撃った。射線上に俺がいた。そうだろう......。」

「......あなたは本当に......。」

 

ナノカは心の底から申し訳なさそうな表情をする。ナノカが誰のことも撃ちたくないのは1周目第3裁判でよくわかる。

俺のせいでそんな表情をさせてしまったことに罪悪感が込み上げてくる。ナノカから触れられるかもしれないと警戒していたものの、当のナノカは怪我をさせたことに負い目があるのかこちらに触れられる距離であるにも関わらず、一切触れる素振りがない。

 

「......ほんとうに...ほんとうに」

「あ~もうしょうがねぇなあ!」

 

そう言ってナノカをこちらに引き寄せ、抱きしめる。

あまりにも泣きそうな表情で目に涙さえ溜めていたから見ていられなかった。衝動的だった。最早【幻視】がどうのこうの考えたくなかった。

肉体的に疲労しているからか、天の声による囁きによって精神的に疲労しているのか、その辺をよく考える体力も残ってなかった。

 

もうナノカの【幻視】は今発動しないことに賭けるくらいしか考えたくなかった。

 

「お前が黒幕に対して並々ならない殺意を抱いているのは知っている。そのうえでミリアを黒幕と思ってこれまで行動しているのはお前がそれがベストだと考えた結果なんだろ?

みんながお前を否定しても、俺はお前を肯定するから......いつも通りに行動してくれ。それがお前ができる俺への贖罪だ。」

「......あ、天音...ルナ......ごめんなさい...ごめんなさい。」

 

ナノカは俺の胸で静かに泣き続けた。俺はそんなナノカの背中を優しくなで続けた。

 

 

しばらくしてナノカは泣きやみ、涙を流して赤くなったまぶたのまま医務室から出て行った。帰り際「何があっても、私があなたを守ってみせる。」と言っていた。

 

...特に驚いていた様子はなかったし【幻視】は発動してなさそうだった。良かった、これで原作知識がナノカに渡って原作崩壊する可能性は減った。衝動的な行動だっただけに後悔したのは後の祭りだったけれど...それでも女の子が自分のせいで泣いているのを見ると体が勝手に動いてしまう。この癖は変えていかないといずれ原作どころの話ではなくなりそうだと思った。

 

しばらく天井を眺めているとメルルが医務室にやってきて食事を届けてくれた。流石にあ~んは恥ずかしすぎて辞退した。食事くらい自分で取れると言って無理やり食器を奪い取った。その後もシャワーは浴びれないからと体を拭こうとしてくれようとしたものの、それも辞退しようとした。メルルとタオルで綱引きをしていると、騒ぎを聞いて駆け付けたエマやシェリーにメルルが連れていかれていった。「お世話させてください~。」という声がドップラー効果で聞こえてきてクスっと笑ってしまった。

 

就寝時間は、自分の房へ戻るより医務室にいた方がいいだろうと全会一致し、付き添いにメルルが一緒にいることとなった。

 

 

「よ~しよ~し。いい子いい子~。」

(恥っずい...でも...安心する。メルルママ概念はもしかしなくてもあるのかも知れない。)

 

メルルに頭を撫でられながら囁き声で安眠を誘われてしまう。血が抜けて体力が落ちたのか、今日走り回って疲れてしまったのか...原作乖離の気配を感じて精神的に疲れてしまったからなのか...俺は意識が薄れるように眠りに落ちていった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

【氷上メルル視点】

 

彼が眠りについたようでほっと一安心します。

こうして寝ている姿を見ると、年齢よりもかなり幼い印象を受けてしまいます。おそらくこれが彼の本来の姿なのでしょう。

 

いつも何か思いつめたような表情で周りを見ていて、私はそれが...【未来視】を持つ姉から事前に入れ知恵が入っているのではないかと警戒していました。

本来であれば、彼ではなく、彼の姉がこの牢屋敷の...私の同室になる予定だったんです。

でも、送られる途中で何か手違いがあったのか、姉ではなく彼がこちらに来てしまいました。

 

もちろん。私は彼の真の魔法を知っています。だから彼が初日に魔法について嘘をついたことにすぐに気づきました。【未来予知】なんて彼にできるわけがないので、姉から入れ知恵されていると考えてました。

 

ですが、そう考えると色々と不自然な気がしてならないんです。

彼の姉の魔法は調査の結果、少なくとも1年先の未来が見通せるという強い魔法です。なら、私が黒幕だと気付くのは時間の問題のように感じます。もしかしたら、牢屋敷に来る前に私が黒幕だとバレていてもおかしくありません。入れ知恵するなら私のことを真っ先に警戒していないとおかしいと思います。私はそれを利用して、黒幕と相部屋の状況で常に私に警戒するようにして、ストレスにより魔女化を進められると思っていたんです。

 

しかし、彼は私に対してほとんど警戒をした様子は見せず、どころか同じような魔法を持つナノカさんに最大限の警戒をしていたように見えます。

 

彼が何を姉から聞いているのか...何故彼が魔法を偽っているのか...どうして彼は目立ちたくないのか...どうしてそう言いながらも目立つ行動をとるのか......。

なぜ...なのでしょうか?今もずっと疑問に思っています。

いつかきっと...彼の口から語ってくれるのでしょうか?

 

 

私は疑問を胸に抱いたまま、隣のベッドで眠りにつきました。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

朝、起きると知らない天井だった。

驚いて飛び起きようとすると脇腹に鋭い痛みが走る。

 

「!!...いってぇ!」

「ダ...ダメです!まだ無理な運動はしないでください!!」

 

そう言ってメルルは俺を支える。

そうか...俺、撃たれて医務室で寝てたのか......。

 

「そうか...悪い。包帯を変えたいからそれをくれないか?」

 

そう言ってメルルの持っている包帯を指さす。女の子に肌さらすのってなんだか恥ずかしいし。

 

「それもダメです。自分でしようとしないでください。私が包帯を変えます!」

 

そう言ってメルルは手際よく包帯を変えていく。その都度魔法で治療をしている為、昨日よりも幾分傷は目立たなくなっていた。

 

「だ...大丈夫ですか?痛くないですか?」

「ああ、ありがとうメルル。助かるよ。」

 

包帯を変えてくれたメルルの頭をなでる。感謝の意を示すとともに、夜間俺の頭をなで続けたことへの当てつけだ。

 

「そんな...そんなそんな...私にできるのはこれくらいですから...えへへ。」

(こうしていると、同年代の女の子のように見えるけど...でも俺たちよりもはるかに年上のおばあちゃんなんだよな......。)

「何か余計なことを考えませんでしたか?」

「いやそんなことは....ただお前はすごくかわいいなと思ってな。」

「か...かわ...えへへへへ。」

 

 

次の原作開始はいつだったかな...描写上は数日後だったからかなりここから間が空くな。そこの期間に怪我を出来たのは僥倖というべきか...それとも描写がないバッドエンド選択肢がもしかしたらあったのかもしれないことを考えると今動けないのは良くないことなのか......とにかく、今は怪我の回復しか俺にすることがない。

 

(頼むから俺が動けない間に誰も死なないでくれよ!!)

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

そこから数日、まともに医務室を出れないまま時が過ぎ去り、怪我の方も無視して動けるくらいになるまで回復したころには、エマたちの脱獄計画も終盤に差し掛かっていった。

 

久方ぶりにラウンジに出ると、アリサとナノカを除いたみんながそろっており、ギョッとしたような目線を向けられる。俺はそれを無視してソファに陣取る。

 

「ルナちゃん。もう動いても大丈夫なの?」

 

エマが心配そうな表情で聞いてくる。全員俺の返事を聞くためかじっと待っている。

 

「ああ。メルルからも、もう動いて大丈夫だとお墨付きが出たからな。散歩がてらみんなの様子を見に来たんだ。その様子だと、みんなのほうは特に何事もなさそうだな。」

「うん。脱獄計画の方も、後はアリサちゃんの説得をするだけなんだ。...そこで、ルナちゃん。お願いがあるんだけど......。」

「俺にアリサの説得か...あんまり気乗りはしないんだけどな。」

「そこをなんとかお願いします~。ルナさんだけが頼りなんですよ~。」

「わたくしたちでは聞く耳を持ちませんでしたわ。やはり仲のいいルナさんが適任のように思います。」

 

 

 

「その必要はねぇよ。」

 

その言葉にみんな声の主を見る。アリサがラウンジにやってきたようだ。

 

「天音...怪我の方は大丈夫なのか?」

「お前が心配するほどでもねえよ。全く...みんな大げさなんだから。特に昨日や一昨日なんてもう完治しているも同然だったじゃねえか。」

「それは...お前が無茶をするからだろ...頼むから死なないでくれよ......。」

「死なねえよ。」

 

そんな俺とアリサの会話にエマが割って入ってきた。

 

「えっと...お邪魔なのは承知しているんだけど...アリサちゃん...あの。」

「二度は言わねえ。協力してやる。桜羽は天音がいなくてもウチに説得し続けた。だったらウチもその姿勢に応えなきゃ筋が通らねえだろ。」

「......まぁ...それなら文句はありませんけどー?あーもうなんなんアイツ。怖いっつの。」

「いだっ、いだっ......おじさんに当たらないで......。」

 

エマは感極まったのかアリサに抱きついていた。

 

「アリサちゃん、来てくれてありがとう......。本当に、嬉しい。」

「ったく、しつけーんだよおめえはよ。全員ここから出してやる。それでいいんだな?」

 

そこからは原作の流れ通りの様子を見せた。

 

俺はずっと壁になったかのようにそのやり取りを見ていた。

 

 

でもこの後気球はアンアンの策略によって壊されちゃうんだよね。そして、気球を完成させたとしても黒幕のメルルが動かないわけがないんだけれども。

 

”でも、もしかしたら気球でも逃げられるかもしれないじゃない?みんなの努力を無駄にするの?”

 

流石に気球で逃げられるわけがないし、俺たちの魔女因子を何とかしない限り国からの処分は変わらないからな...やっぱりこの周でなんとかするのは無理なんじゃないか?

 

”だったら自由に動いていいんじゃないかしら?どうせ何をしたところで意味がないのなら”

 

2周目は1周目魔女化ココの記憶送信。3周目は記憶引継ぎがあるからそれも難しいんだよ。全てを救うには原作通りでなきゃいけないんだ。

 

”難儀なものね......。”

 

それっきり天の声は聞こえなくなった。

 

天の声との会話が少し長くなったことで、俺の魔法が強くなっているような感じがして、少し嫌な気分になった。




次回更新は11月14日になります。

次回
第17話「俺たちの脱獄はこれからだ!!」
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