魔法少女?ノ魔女?裁判   作:まのさば脳焼き人間

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第17話「俺たちの脱獄はこれからだ!!」

気球は無残にも破壊されていた。

全員揃った塀の前で気球だったものだけがそこにあった。

 

「わたくしたちが頑張って作ったものが......こんなのってないですわ......。」

「一体誰がこんなことを......。」

 

そして、アリサがミリアの首リボンを掴み、至近距離で睨む。

 

「おい、おっさん!」

「ぐっ...がっ...。」

「隠し場所はおっさんしか知らなかったはずだ。おっさんがやったのかよ!?」

「......。」

 

そこから原作の流れ通り、弁明の機会もなく......ミリアは懲罰房へと連れてかれた。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

俺は昼の自由時間、ミリアの捕まっている懲罰房の前まで来ていた。

 

「......あぁ...ルナくんか。」

「大丈夫......ではなさそうだな。」

「あっはは......」

 

力なく笑うミリアは磔刑台に拘束されている。かなり体に負担がかかるのか時折苦しそうな表情を見せる。

 

「おじさんに構わなくていいんだよ、ルナくん。キミまで裏切り者扱いされちゃう。」

「別にいいだろそんなこと。どうせ周りが勝手にそう思うだけさ。」

「よくないよ!!......そんなこと...よくないよ。」

「......。」

「ルナくんは......みんなから......慕われているのに。」

「......そんなことないさ。」

「そんなことある!!」

 

ミリアの剣幕に驚いてしまう。

 

「ふう...ごめんね。感情的になっちゃったみたい。で...おじさんに何か用かな?裏切り者のおじさんにできることなんてあるか分からないけど。」

「用というほどでもない。俺は少しミリアと話したかっただけさ。」

「......何かな?おじさんから話すことなんて......。」

「世間話でもなんでもいいんだ。それこそ......好きな映画の話とかお前の好きなものとか......。」

「......突然だね......どういう風の吹き回し?」

 

せっかく話せる機会があるというのに......今日の夜からはもう話せなくなってしまうから。今のうちに話せるものは話しておきたいと思ったからだ。

 

これまで、原作の流れを壊さないように出来るだけ行動してきたつもりではあれど......それを抜きにしても俺は原作の子たちを上辺だけしか知らないのではないかと常々思うようになった。

 

だからこそ、今更ではあるものの......あまり交流の出来ていなかった子たちに、面と向かって話しておきたいと思ったから。

 

「......悪いな......ただ、みんなから尋問してこいだとかは言われてない。俺のただの興味なんだ。お前とこうして対面で喋る機会なんて最近なかったからさ。」

「......もしかして、おじさん......今日のうちに死んじゃったり?」

「......それはない。」

「言い淀んだね。もしかして、キミの魔法って、一日以上未来が見れたり?もしくは魔法が成長したとか?」

「......勝手な憶測だ。」

「じゃあ...勝手に憶測するね。ルナくんは、おじさんが今日死ぬ運命が見えてしまった。それはルナくんとの会話で回避できるか......回避が不可能な運命か。」

「......。」

「ルナくんが他人と関わるときは......いつも死が近くにある気がしてね。」

「......気のせいだよ。」

「でも今はおじさん拘束されてるし、懲罰房で拘束されてるだけで死ぬ運命なら...牢屋敷側は懲罰房なんて用意しないしね。」

「......それ、は......。」

「てことは......この後にやってくる子たちの中で、おじさんを殺そうとする子がいるってことだね......まいったな。気球も壊しちゃったし、黒幕と疑われちゃったし......みんなにはおじさんを殺害する動機が十分あるね。」

「......。」

「でも...ルナくんの魔法は、ルナくん自身が少女同士の殺害には使えないって言ってたよね。でもおじさんを殺そうとする子がいて、ルナくんがおじさんにコンタクトを取ってきたってことは.......ルナくんの魔法は嘘だったってことになるね。」

「......全部たまたまだ。それに、それは空想を越えた妄想だ。」

「じゅあ一つ聞かせて......おじさんに会いに来たのはなんで?この質問におじさんが納得する答えを示せなかったら、さっきの推理は当たっていたものとするよ。」

「......それは......それ、は......。」

「......ぷっ...ルナくんって......案外衝動的に動いちゃうよね?ヒロちゃんの時しかり、おじさんの時しかり。」

「ぐっ......。」

 

全部......ミリアの言うとおりだ。俺は原作をたどると言っておきながら、衝動的に行動をおこして自分の知っている未来から遠ざかる行動をしている。

 

本当ならさっさと自殺したほうが、俺のいない本来の歴史にもどるのに...それも怖くてできやしない。

 

俺が知る未来にしようとしながらも、その光景を俯瞰で見ようと立ち回ろうとする蝙蝠野郎。

 

それが俺だった。

 

「そんな顔しないの......別に責めてるわけじゃないんだよ?ただ、ひとつ聞きたいことがあって。」

「......なんだ?」

「もしかして、ルナくんは......黒幕が誰なのか......この牢屋敷にどんな陰謀が渦巻いているのか......もう知ってたりするんじゃないのかな?」

「......お前には何も話せない。」

「陰謀を聞きたいんじゃないんだ。いや、本当は聞きたいんだけど......おじさんが聞きたいのは別にあって。」

「聞くだけなら......。」

 

 

「ルナくんは......多くの少女たちを見殺しにしながら......何をする為に行動しているの?黒幕も知って、陰謀も知って......これ以上何をする為にこれからも少女たちを見殺しにし続けるの?」

 

ミリアは真っすぐ俺を見つめながらそれを問うた。

 

 

ミリアはまるで俺が真の未来予知......姉と同等の能力を持っていると確信したかのような口ぶりだった。

 

そっか。そりゃそうだよな。

 

ノアの裁判じゃ明らかに怪しい行動だった死亡動画撮影。

10分のスピード推理。

 

 

ここに俺が来た時点で、『制限のない未来予知』に近い能力を持っていると勘づかれてもおかしくない......か。

 

 

ミリアには悪いが...エマを確実に生かすために、少しだけ話すか。

 

「俺は...俺はもうこの牢屋敷の黒幕や陰謀にはたどり着いている。...でも俺では意味がなかった。」

「......意味がなかった?」

「俺が知ったところで現状を変えられるものではなかった。」

「ルナくん?どういうこと?」

「真相にたどり着くべきは......エマ。桜羽エマだ。」

「エマちゃんが?」

「ああ。数多の死を乗り越えた先でエマが真相を知ることが現状を最も変えられる。俺はその未来にたどりつく為......なんとしても桜羽エマを生かす。たとえ何を犠牲にしてでも......。」

 

俺は踵を返す。もうじき昼の自由時間が終了になる。

 

「そっか......。エマちゃんが......。」

 

ミリアはそれっきり、何も言葉にしなかった。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

【佐伯ミリア視点】

 

ルナくんが行った後、夜時間になるまで誰も懲罰房に来なかった。

 

ルナくんにはああ言ったけど、本当は殺されることに対してずっと怖くて震えていた。

ナノカちゃんに撃たれかけていた時も、怖くて立てなかったくらい。それに、シェリーちゃんにおぶられた時も、あまりの速さに驚いて手を放してしまったくらいに怖かった。

 

その後はルナくんにキャッチされて、そのままお姫様抱っこで運ばれて......少し恥ずかしかったけど、直後に響いた銃声と彼の顔をしかめる様子をみて......ルナくんが死んじゃうんじゃないかって怖くてその日は気晴らしと称してアンアンちゃんと映画を見る口実に一緒にいたほどだ。

 

そして...しばらくすると誰かが来た。

顔を上げるとそこにはアンアンちゃんがいた。

 

「......気球を壊してほしい、とおねだりしたのは、すまなかった。わがはいの【洗脳】が、発動してしまったようだ......。」

 

声を聞くのは珍しいと思ったけど、薄暗い上にのぞき窓から字を見るのは難しかったから、仕方なく喋っているのだろう。

アンアンちゃんは言葉を発することに、自分の魔法が発動するかもしれないって......いつも気を付けているから。

 

私はそれに出来るだけ微笑んで答えて見せる。

 

「ああ、それはなんとなく......。気球を壊したいって思っちゃったのは、アンアンちゃんに言われたからだろうなあって。でも、アンアンちゃんのせいじゃないよ。やったのはおじさんなんだし。......それにね、おじさんも......。」

 

「全部あいつが悪いんだ!」

「あいつって......?」

「......桜羽エマ。......あいつが出よう出ようと騒いだから!みんながその気になって!

あいつはいっつもわがはいの邪魔をする!ルナだって!あいつが連れまわしたから撃たれた!!あいつが殺そうとしたようなものだ!!あいつは......ルナはあんなに優しいのに!」

「アンアンちゃん、落ち着いて......。」

 

私はどうしてもそう声をかけずにはいられない。アンアンは正常などではなかった。

 

「わがはいは、あいつを殺そうと思っている。」

「!?」

 

私はあり得ないと思った。

いくらなんでも......アンアンちゃんがそんな殺意に飲まれるなんて......。

 

アンアンちゃんの様子からして、彼が撃たれる前からかなり深い交流があったような取り乱しようだった。

 

そう思い、少し記憶を探ると......。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

「なんだ?体調が悪いから医務室に連れて行ってほしいだぁ?......仕方ねえなあ。ほれ、おぶれ。そこまで連れて行ってやる。」

「こんなのまずくて食えたもんじゃないだぁ?じゃあなんで取ってきたんだよ......わかったわかった。それよこせ。」

「医務室の先輩たるわがはいを敬い、添い寝の権利だぁ?......流石にそれはちょっと。......そんな寂しそうな顔をするなよ......手くらいは握っといてやる。」

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

結構交流していた。なんならアンアンちゃんのほうから彼に構いに行っていたくらいだ。

 

レイアちゃんがいた時からこういった掛け合いは見ていたから、彼とアンアンちゃんはそういう兄と妹のような関係だとみんな納得して見ていた。

 

最近だとあまりにいつも通りの風景すぎて、みんなもう何も気にもかけなかった。

 

 

きっと、アンアンちゃんもいつも通りを装いながらもルナくんの暖かさに触れて絆されていったに違いない。

ルナくんが撃たれて病室に駆け込んできたときも、気丈にふるまいながらも震えていたように思う。あれは映画が怖くて震えていたんじゃなくて、彼が死んでしまうかもと思って震えていたんだ。

 

 

そう考えている間にもアンアンちゃんは話を進めている。

 

「もう計画も立てている。わがはいはもうあいつを許せない。殺さないと気がすまない。」

「アンアンちゃん、それは......。」

「わがはいには簡単なんだ!誰かを【洗脳】さえできたら、わがはいが疑われることなく、殺害できる!あいつさえいなくなれば!あいつさえ!あいつさえ......っ!」

 

「......。」

 

私は少し考え込む。

ここで、アンアンちゃんの殺害が成立すれば、ルナくんの望みが絶たれてしまう。

かといって、アンアンちゃんの殺害を止めようにも、とうのアンアンちゃんは他の人を使って常にエマちゃんの命を狙うことだろう。

 

 

 

エマちゃんを生かすなら......アンアンちゃんは......ここで殺しておかなければならない。

 

じゃあ...今の状況からアンアンちゃんを殺すには......。

 

先んじて行動しようにも......私はここに拘束されたままだし、その間にアンアンちゃんの計画は成立してしまうだろう。

 

なら、先にアンアンちゃんにエマちゃん以外を殺してから、魔女裁判でアンアンちゃんを処刑するしかない。

 

でもアンアンちゃんが殺人をする対象はエマちゃんだけだ。他の人では成り立たない。

 

 

そっか。......彼がここに来たのは......そういうことだったんだ。

じゃあ。今から私もルナくんの共犯者だ。

ルナくん。キミから貰ったこの命......ここで使わせてもらうね。

 

「......ぷっ、あはは!傑作だよアンアンちゃん!」

「ミリア......?どうしたのだ......?」

 

「あ、そうそう。看守に捕まった時にね、咄嗟に、鍵を口の中に隠したんだ。ボクはいらないから、こんなもの飲み込んじゃうね。」

「!!......桜羽、エマ......!」

 

そうしてアンアンちゃんがどこかから持ってきたのか、懲罰房の鍵を使って中に入ってきた。

 

そして、近くにあった刃こぼれのひどいナイフで......。




次回更新は11月16日になります。


主人公視点では、アンアンは同年代の女の子というよりも、さらに年下の女の子として扱ってた為「妹がいたらこういうことしてたんだろうな」とか考えながらやってました。同い年なのにね。
もちろん、原作に関係ない部分だと思って思うままに行動していました。基本主人公視点のお話は主人公が「原作にはこういったことがあったよな」「原作にあったシーンでこういうことはなかったぞ!?」という思考を中心に描写しています。

だから原作で描写されてない部分はあまり物語の本筋に関係ないと判断して適当に過ごしてたりしてます。他にも描写されてない主人公の行動があったりして。


アンアンは最初「こいつチョロいわwwwどこまでチョロいか試してみよwww」というノリで主人公に様々な頼み事をしてました。
そして何度も何度もやってくうちに魔法抜きで頼み事を引き受けてくれる得難い存在になってました。
アンアンにとっては揶揄いやすいおもちゃではありましたが、そんなお気に入りのおもちゃに傷を付けて、あまつさえ壊そうとしたエマが心底憎い相手に映る事でしょう。だからこそ、いずれ本当に大切なものを壊してしまうエマを先に壊そうと動きました。


主人公がもしアンアンちゃんに構わず原作通りレイアに全部押し付けてたらアンアンの殺意の対象は脱獄しようとしたエマとレイアを殺した主人公になってました。

だからといって何が変わるわけでもないんですけどね。


そして、懲罰房に主人公が訪れていなければ、ミリアはアンアンちゃんの殺害に対して『主人公に助けてもらった命だから勝手な真似をして命を捨てるわけにはいかない』
と考えて嘘入れ替わりを話す事はしなかったでしょう。



皆さんの中で「ミリアはそんなこと言わない!思わない!」と感じた方は私と解釈不一致をしているので大人しくブラウザバッグしてください。

次回
第18話「手分けして捜査に当たろう。俺は賑やかし。」
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